12
俺は今、シュンデインに連れられ、ルデンと一緒に校長室に行っていた。
一時間目で連行されました。
リダルンディはシュンデインを帰し、俺とルデン、リダルンディの三人の空間となった。
「アヴィル…今日もか」
リダルンディはそう言った。
「今日も、だな」
「はぁ~…」
リダルンディは大きく深い溜め息を吐いた。
「こうも、いちいち連行されてちゃ、疲れるわ」
俺が吐き出した言葉だ。
「この私が言っておこう。この者を連行して来なくても良いと」
「何で昨日の時点で言っておかない」
「き、昨日は、国王陛下が来てたんだぞ?」
…アイツ、何時から居たんだよ?
「まあ、言ってくれるだけでも、有り難い」
リダルンディは自身の胸を撫で下ろし、ホッとしている様だった。
「じゃあ、戻るわ」
「授業中に来ない事を願って」
俺とルデンはリダルンディのその言葉を聞きながら、校長室を出て行った。
「まさか、二日連続で連れて来られるとはね…」
「労力の無駄だな」
「あのねぇ…堂々とその落書き?をするからなんじゃないの?」
「メルヴェル曰く、歴史的瞬間だとよ。落書きが増えるに連れて」
「まあ、アヴィルが書いているのはアヴィル自身が創り出したオリジナルの魔法だけだもんね…そりゃ、メルヴェル殿はそう言うよね」
俺達は教室の近くまで戻って来た。
「まだ、シュンデインの授業中か?」
「時間的には」
「そっか」
「シュンデイン先生も呼び捨てなんだね、アヴィルは」
「基本、皆、呼び捨てだぞ?」
基本だから、例外もあるのだ。
「僕には呼び捨てじゃないよね?」
「長過ぎる名前が悪い」
「自分自身の名前を自分自身が付けた訳じゃないんだけどな…」
例外には、ルデンやカロサが含まれる。後、両親とか?
兎に角、俺達は後ろから静かに教室に入り、席に着いたのであった。
そんなこんなで放課後になり、寮の部屋でまた今日も、ルデンの魔法を見ている。
「――光の精霊よ、我に力を!《雷撃》!」
「もう少し、速く撃て」
「わ、分かった。光の精霊よ、我に力を!《雷撃》!」
「ちゃんと沢山、魔力を込めたか?」
「…!光の精霊よ、我に力を!《雷撃》!!」
ルデンは見込みがある。
昨日よりも撃ち放たれる速度、威力が増しているであろう。
「はあはあ…」
「今日はもう、終わりだな」
「《雷撃》しかやらないの…?」
実際、昨日今日でルデンの魔法は《雷撃》しか見ていない。
「ルデンは風属性のMrがあるか?」
「いきなり、風属性のMr?あるけど、それがどうしたの?」
「飛ぶか」
「は?」
「そのまんまの意味だ。風属性魔法の《飛行》を…」
「待って!?僕、一応、まだ第五階級魔法師なの。第三階級以上の魔法師の許可が無い限り飛べないよ!?」
やれやれ…俺が誰だか、ルデンは忘れているようだな。
「俺は魔法師団団長だ。この王国の魔法師界のトップ…らしいがな。まあ、俺は第一階級魔法師だから、俺が許可すれば大丈夫だろう」
「あ…そうだった」
魔法師団は魔法師界のエリート集団。王宮に駐在している宮廷魔法師は魔法師団の二の次…不思議な話だが。
だから、俺が魔法師団団長である限り、この王国の魔法師共のトップに君臨する。そんな気は更々に無かったがな。
「一応、空を飛ぶんだ。外が良いだろう。メルヴェル、良い場所は無いか?空を跳ぶ練習する場所は」
夕食の煮込み中のメルヴェルは、一旦、手を止めて話してくれた。
「魔法師団の屋外演習場はどうでしょうか。私が立ち入りを禁ずれば、大丈夫だと思いますよ」
「だそうだ。どうだ?ルデン」
「こんな僕の為に…?」
俺は頷く。
「まあ、明後日からか」
「明日、どちらかへお出掛けですか?」
メルヴェルが俺の呟きに質問してきた。
「まあな。確か…ジュワライルの丘だっけ?ルデンと一緒に行ってくる」
「ああ…全ての死者が戻る地の…」
「父上の死にまだ、献花をしていなかったんです。ですから…」
「丁度良い機会だと思ってさ。俺も両親に献花してなかったからな」
両親二人とも、元弟の魔王に殺され、魔族にされた。既に両親ではなくなっても生きているとは言え、俺にとっての両親は亡くなったからな。
例え、全ての死者が戻る筈の地に戻っていなくても。まあ、先祖くらいは居るだろうし。
「どうされますか?馬車の手配とか」
「俺はルデンの行き方に付いて行くだけ」
「馬車の手配は大丈夫です。ジュワライル子爵に僕達が行く事を伝えて貰えれば」
「頼んだぞ、メルヴェル」
「分かりました」
メルヴェルは台所へと戻っていった。
「ジュワライルの丘は近いのか?」
「王都の外れ。歩いて行っても二時間は掛からないと思うけど」
「ふーん…。明日は学校の制服?それとも私服?」
「僕は学校の制服で行くけど…急にどうしたの?」
「いや、特に」
「あっ、そう」
じゃあ、俺も明日は学校の制服を着ていく。
「まだ夕食が出来るのも時間が掛かりそうだし、大浴場に行くかー」
俺とルデンはこの寮にある大浴場へと向かった。
大浴場にはこの前来た時よりも、生徒達が利用していた。
俺達が入るなり、一斉に生徒達がこちらを見る。何故だか、ルデンに視線かと思えば、俺の方に視線が行っている生徒の方が断然的に多かった。勿論、混浴と言う事は無いので、全ての生徒達は男子である。男子共の視線なんて…。
「何で、こちらを見ているんだろうな?」
「さあね」
ルデンに問うと、知らない様な素振りを見せた。これは、多分、知っているだろうな。
俺が「意味が分からない」と言うような表情を続けていると、ルデンが言い出した。
「気付かない?僕が前に言ったけどさ。肌白で華奢過ぎると」
「言ってた気がするな」
「僕達は魔法師を目指してここに来ている」
「急に何だよ?」
「アヴィルのその華奢な身体は、魔法師の典型的以上に典型的な身体付きなんだよ」
「はあ」
「アヴィルのその身体付きに羨みを含めて、見てしまっているんだよ」
典型的以上に典型的な身体付きって何?
俺の身体付きに羨む程なのか!?
「…無自覚だったんだね」
「何も言えないな」
「あはは…そうだ、アヴィルさ、僕以外にも誰かと話してくれば?」
「は?」
「この学校の生徒で話した事のある生徒って、僕とアユハリローズ子爵令嬢位でしょ?まあ、子爵令嬢に関しては、話したの域に入るかは不明だけれどさ」
「…仕方無いか、そこまで言われると」
「行ってらっしゃいー」
ルデンは手を振っている。
俺は手短に、俺を凝視し続けていた男子生徒の目の前まで行った。
そんなにフレンドリーな俺でも無いのだけれど。
「えっと…お前は一年生に編入してきた例の編入生で合ってるよな?」
「例のって…俺はそんなに有名か?」
「一応、俺は三年生で先輩なんだが…。まあ、編入初日に授業一日中寝て、更には国宝に落書きをしたって言う…」
「他学年にも知れ渡っているとは」
「先輩に対する礼儀は覚えておいた方が良いぞ」
覚える気は更々に無いので、ご安心を。
「それで、俺をじろじろ見て何になる?」
「あっ…。それはな、お前が魔法師に適し過ぎている身体が…その何だ?美しいからだからか?」
男に男から言われても、あまり嬉しくはないな…。
「お前が例え、全然、魔法を使えなくても、三年間で何とかなるからな!」
「ふーん…」
「多少は興味を持ってくれよ?今、会話出来たのも何かの縁だ。俺は三年のレイニアータだ。家名はあんま好きじゃないから、敢えて言わないが」
「俺はアヴィルだ。理由は違うが、家名は伏せさせて頂く」
「アヴィル、殿下が待ってるぞ」
レイニアータがそう言った。俺は後ろを振り向いた。
「じゃあ、いつか。また」
「おう!」
俺はルデンの待つ場所へと戻った。
「どうだった?って、まさか、三年の主席に声を掛けに行くとは思ってもいなかったけど」
「レイニアータは三年の主席なのか?」
「先輩をこうも容易く、呼び捨てするとは、流石だよ」
「それほどでも無いけど」
「褒めてないよ?」
「まあ、取り敢えず、上がろうか。長く入り過ぎた」
「まさか、アヴィル…逆上せたの?」
ルデンがニヤニヤしだした。
「…そう言う事にしておく」
逆上せている訳が無かろうに…。
「アヴィルが上がるなら、僕も上がるしか無いよね」
俺とルデンは大浴場から出て、部屋に戻った。
***
レイニアータSide
俺はとある剣の名家の子爵家の人間。
何故、剣の名家の人間である俺がこの、国立高等魔法学校に通っているかと言うと、家族の内、俺だけが魔法師のJobを授かって産まれてきたからである。
この世界は、魔法がものを言う。この国だけではなく、隣国のヨドロコース帝国だって、その奥の国だって…魔法が全てなのだ。
昔、俺の家も、魔法師の血を取り入れて、試行錯誤してきたらしい。その甲斐あって、俺が魔法師として産まれたらしい。
俺が幼少期から家は魔法に力を入れてきた。その為、人の何十倍もの鍛錬を積んできた。
取り敢えず、家が元々、剣の名家だけあって、剣も軽くやってきた。人が、それは軽いの範囲に入るのか?とか聞かれた事はあるけれど。
突然だが、今日も俺は大浴場で汗水を流した。部屋にも風呂はあるが、やっぱり、大浴場は良いものだ。
湯に浸かっていると、大浴場に目を奪われる様な身体をしている男子生徒を見付けた。
それはそれは、とてつもなく肌が白く、腕が細かった。身体の造りは、魔法師として大成する為に計算尽くされたのかの様であった。
彼は巷で有名な一年に編入してきた生徒だった。編入初日に授業一日中寝過ごし、他の日には国宝を持ち込んで、それに落書きをして、校長室に二回位、連れて行かれたと言う噂を聞く。
兎に角、彼――アヴィルの身体は羨ましい。俺は、魔法師ではあるが、騎士の血を引き、騎士寄りの身体だからだ。そうなると、魔力の使い方も変わってきて、俺は魔法師としての魔力の使い道をするが、騎士に似通った方法になってしまい、不利なものになる。
それは別として、アヴィルは何故か、他人の様な気がしなかった。どこか雰囲気としてだが。
ここまで読んでくださり有り難うございます。
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次の更新は1月19日です。




