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 勇者達は結果に驚いていた。

 第三階級魔法師である副団長を、第六階級魔法師の小等団員が倒した、と言うところに驚いていたのだ。

 そして、ガードラーレは別の理由で驚いていた。

 ガードラーレは、メルヴェル及びアヴィルに近付いた。


 「あ、ああ…」

***

 俺はアレドラントに勝った。

 勇者共(クラスメイト)が立ち去る所を見届けようとしていると、ヨボヨボのジジイ…シワだらけのお爺さんが近付いてきた。

 シワが無ければ…ガードラーレ・アフロシェルドに似ている。

 ガードラーレは、俺の日本へ転移前の魔法師団副団長で、俺を日本へ転移させた張本人。

 「あ、ああ…」と、ガードラーレ似のお爺さんは呟き、止まった。

 俺の顔を見て、止まったので、ガードラーレ本人だろう。あのお爺さんは。



 数分経った。

 勇者共(クラスメイト)は、全員立ち去った後。


 「団長殿、お疲れ様です」


 メルヴェルがやって来た。


 「メルヴェル、やはり、この御方が団長殿…」


 ガードラーレはそう言った。


 「ああ、そうだ。この方は、ガードラーレさんが異世界に転移させた団長殿だ」


 メルヴェルさん、口調がおかしくないですか?

 ねえ、ガードラーレは青ざめて震えちゃってるよ…。


 「だ、団長殿…あの時はすみませんでした。私は、この場で謝罪の意を込めて自害、致します。どうか、あの時のご無礼を許して下さい!」


 ガードラーレは急に、あの時の謝罪をした。そして、ガードラーレ自身が手に持っていた護衛用の短剣で心臓に向かって、死のうとしていた。

 メルヴェルは、止めようとしない。


 「え、ちょっと!?」


 俺は、気持ち的に必死だ。


 「止めないで下さい、団長殿!」


 そして、ガードラーレは心臓に一刺しした。倒れこみ、血を滅茶出した。大量出血だ。

 メルヴェルは、ずっと見てるだけで、治療をしてやる気配はない。

 俺は、ガードラーレの脈を確認した。


 「脈は有るようだな。よし、《超回復》」


 一瞬で、身体の損傷を治す。

 死んでなくて良かった…。


 「団長殿、治して良かったんですか?」

 「俺は今はもう、怒っていない。だから、死ぬ必要は無いと思う」


 怒るのが面倒なだけなんだがな。


 「そうですか」


 メルヴェルは舌打ちをした。何で!?


 「うっ…」

 「目覚めたか?ガードラーレ」

 「何故、私が…生きてる!?」


 うーん…マジで死ぬ気だったか…。


 「ガードラーレさん、団長殿により、命が助かった。判るな?」


 メルヴェルが睨むと、ガードラーレは身体中が震え上がっている。

 こらこら。俺の居なかった五十年の間に何があったんだ?

 聞いてはならない域に達してそうなので、蔵に(ほうむ)ろう。


 「だ、団長殿…有り難きお心遣い、感謝致します!」

 「えっと…有り難く、その感謝の心を受け取っとくぞ?」

 「有り難うございます!」


 ガードラーレはヨボヨボのお爺さん(外見)なのだが、大粒の涙を流し、ずっと土下座状態である。この世界に土下座と言う文化は無い筈なのだが…。


 「顔を上げてくれ、ガードラーレ。泣き顔はガードラーレには似合わない」


 俺には上から目線であるガードラーレしか思い浮かば無いからなぁ…。


 「そう…ですか」

 「ああ。…そうだった!図書館に借りた本を預けてたんだった!」


 俺は急に思い出した。本を借りていたこと。本を預けてたこと。

 ガードラーレに気を取られて、すっかり、忘れていたわ…。

 本当に急に思い出したのだ。

 俺は走って王城を抜け、図書館に向かった。


 「…団長殿はお忙しい方だな、メルヴェル」

 「それなのに、ガードラーレさんが転移させたんだぞ?」

 「うぐっ…」


 残されたメルヴェルとガードラーレはそんな会話をしていた。




 俺は図書館に着き、借りた本を受け取った。

 …流石に全部借りなくて良かったのかもな…。

 うん、重い。

 俺の拠点としている、メルヴェルの自宅三階に持って到着するまでに、夕方になっていた。

 よし、本の続きでも読むか。


 『DONDON!』


 ドアを強く叩く音がした。来客か。

 朝、メルヴェルが食事は使いの者が来るとか言ってたな。その、使いの者なのかも知れない。

 俺は一階に降り、ドアを開けた。

 そこには、メガネを掛けた、昼間決闘した相手、アレドラントが居た。


 「…貴様の為に食事を作らねばならないのか!?私は!」


 キレていた。感じ悪…。入った瞬間から、これとは。


 「頑張れ、食事係」

 「メルヴェル殿の命令なのだ。屈辱だが、作らねばならない」

 「じゃあ、宜しく」

 「き…貴様ァ…」


 抑えて、抑えて…。俺の夕食が心配である。



 俺は出来上がってしまう料理が心配なので、読み途中の本一冊を持って来て、近くで読み始めた。


 『団長殿は遠征にて、数数多(かずあまた)の地域住民を治療し、魔獣の大群を光属性魔法の《雷撃》一撃で消し去られた』


 意外と、《雷撃》で打った方が楽だしね。それも、無詠唱でね。


 「なあ、アレドラント」

 「貴様に呼び捨てされる筋合いは無い!」

 「お前さ、標準二語だろ?魔法を一語だけで言えたり、無詠唱で放れる事が出来たら、嬉しいか?」

 「メルヴェル殿や、ガードラーレ殿は天下の御方だ。一語だけで言えれば、神が舞い降りたものだ。貴様、一体、何の話をしているのだ?」


 無理矢理話せば、話してくれるのね。よく喋るね、メガネの青年(アレドラント)


 「無詠唱で魔法を発動出来ねえのか、っていう話だ」

 「ふっ…神以上の存在である団長殿以外に出来る人が居るわけ無いだろう?」


 その団長殿は俺です。

 神以上の存在扱いされるとは、ちょっと歯痒い。

 てか、俺以外に無詠唱出来る人って居ないんだっけ?


 「案外、出来るかもよ、無詠唱。魔力値(MP)が高ければな」


 俺は偶々(たまたま)、一階に置いていた俺専用の水晶を食卓の上に置いた。


 「そ、それは…水晶か!?何故、こんな所に…」


 確か、水晶は王城(俺が砕いた)と魔法師団の本部にだけしか無いから、ここにある事が不思議なのだろう。

 俺が馬鹿正直に砕いたと言ったら、鬼の形相のアレドラントが出現する事だろう。


 「魔法師団の本部にある水晶の性能パワーアップ版だ」

 「…貴様、触れてみろと言うのか?」

 「解ってるなら、さっさと触れろ」


 無理矢理、アレドラントを水晶に触れさせた。


ーーー

 Name:アレドラント・ミレファーム Age:18

 Lv:210 Mr:水、風、光

 HP:9476/9476 MP:95322/96786

 Job:第三階級魔法師、魔法師団副団長

 Title:魔法師団高等団員及び副団長

ーーー


 「…何か、魔法師団の本部にある水晶よりも、性能が高くないか?」

 「よくぞ、気付けたな、アレドラント。てか、先程、俺が言ったし。しかし…魔力値(MP)は少ないな。無詠唱どころか、一語だけも無理か」


 ふむ…。


 「貴様ァ…」


 アレドラントは怒りを抑えるのに必死のようだ。しかし、溢れに溢れかえってるのだよ、青年。


 「なあ、アレドラント。夕食はまだか?」


 俺は思い出した様に聞いた。

 腹の虫が鳴ったからである。


 「後、盛り付けだけだ!何故、副団長である私が、貴様のような小等団員の為に!」


 補足。高等団員と言うのは、団長、副団長、団長補佐などに就く、団員の事を示している。他の団員は小等団員と呼ばれている。ある種の差別思想。良くも悪くも言う人も居る。

 並べられた料理は意外にも美味しそうに見えた。

 だって、怒り狂いながら作った料理だから、意外だと思った訳。


 「アレドラントも食うのか?」


 アレドラントは何も無かった様に座った。


 「ああ、そうだ。メルヴェル殿の命令だ。「貴様に食事を作り、共に食せ。」とな」

 「あっそ」


 そして、意外にも美味い。メルヴェル程では無いが。


 「貴様、何が望みだ?」

 「何?」


 何の話か解らんな。


 「解らないのか?貴様は私に公式な決闘にて勝ち、私に屈辱を味あわせたのだ」


 あ、成る程。決闘の対価ねー…。

 アレドラントって、魔法師団副団長だったっけ。じゃあ…。


 「団長の自宅に行きたい」

 「殿だ」

 「は?」

 「団長殿と言え!」


 俺自身の事を他人行儀に頑張って言って、精々、『団長』だったのにぃ…。


 「はいはい、団長…殿ね」

 「ああ、そうだ。それで、団長殿の御自宅に行きたい―と。申請が必要となる。早くて一週間後になるだろう。それでも良いなら、そうしてやる」


 一週間も掛かるのぉ…。


 「じゃあ、それで宜しく」

 「私は食べ終わったし、帰るとする」


 いつの間にかアレドラントは夕食を食べ終わり、片付けも終わっていた。


 「お前、帰るの?」

 「帰るに決まっているだろう」


 理由になっていない。


 「泊まっていけば?三階の寝室が空いてるしさ。どうだ?どうせ、朝食も作るのだろう?」


 メルヴェルの事だ。夕食のみの筈が無い。


 「ぐぬぬ…そうしてもらう。決して、貴様に(そそのか)されたからと言う訳ではない!」


 めんどくせぇ奴…。


 「三階だぞ?三階。間違えるなよ?」

 「間違えのしようが無いだろう!?」


 少し遊んでみた。



 アレドラントは三階の寝室に入り、鍵を閉めた。俺など入れさせないとでも言うように。

 俺、寝床無いじゃん…。

 二階?駄目だ。絶対に駄目だ。メルヴェル()の寝室に入るのだけは駄目だ。

 精神的に未熟過ぎないか?俺…。

 よし、書斎に籠るか。



 俺は書斎に籠り、一晩中、本を読み漁った。

***

 アレドラントSide



 私はアレドラント・ミレファーム。若くして魔法師団の副団長になった私は、自他共に認める、天才魔法師である。

 私は、一人の同性の小等団員に屈辱を味あわせられた。何故、この私が勝てないのか、解らなかった。

 そして、メルヴェル殿の命令で、その小等団員の食事を作る羽目になった。それは、決闘後に目が覚めた時、メルヴェル殿が見下す様に申し付けたのだ。だから、私は命令を断る事が出来ず、従った。



 …そう言えば何故、アイツは、団長殿の御自宅に行きたいと言ったのだ?それが良く理解出来ない。行きたいと思えば、御自宅の目の前までなら直ぐに行ける。しかし、私に言ったのだから、目の前だけではなく、中まで行きたいと言っているのだろう。それは何故なのだろうか。御自宅の中は、魔力が高濃度で蔓延しており、魔力酔いを起こす。魔力酔いは、自分よりも遥かに高い魔力が高濃度に蔓延している状態で、船酔いなどの様な症状をもたらす事だ。しかし、団長殿の御自宅は、良くて吐き気、悪くて死だ。

 それなのに、何故アイツは、行きたがるのだろう?



 決闘で解ったアイツの強さとは何だ?

 アヴィル。貴様は必ず、私が倒し、この屈辱を晴らしてもらうぞ。

 私にとって勝手だが、ライバルとなった。





 絶対に勝てないと知るのは、もう少し先の話。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。

***

いよいよ、今週はお盆ですね。

予告していた通りに13~15日は毎日更新させていただきます。是非、読んでください。

***

次の更新は8月13日です。

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