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 放課後になった。

 あの実技教科の後の授業は全て教室で座学だった。一応、起きてはいたが、何だこの授業はと思うような授業ばかりであった。


 俺とルデンは寮の部屋に帰って、俺はルデンの魔法を見ていた。


 「まさか、本当に部屋で魔法を練習する事になるとは…」

 「嘘だと思っていたのか?」

 「何処か頭の片隅にそう思っていた僕が居たんだよ…」


 俺はルデンが魔法を発動する度、周りの家具などの破損を無属性魔法の《修復》を使っていた。壊す、直す、壊す、直すの繰り返し。


 「ルデンが放てる最高威力の《雷撃》を俺に放ってみろ」

 「えっ!?」

 「的も無いんじゃ、詰まらないだろ?それに、対人は基本だぞ」

 「あのね・・戦争は殆ど無いの、今の時代は。僕ら人間が魔法を放つ相手は、基本魔獣なんだから…。アヴィルに撃つのは気が引けるし…」

 「気にせず撃てよ…。気になるなら、メルヴェルを相手に撃つか?」

 「もっと気が引けるよ!?」


 そう言うものなのだろうか?俺なんか、老若男女関係無く、敵対する(撃っても良い)のなら、どんどん魔法を放つけどさ。


 「まあ、良いから撃て」

 「あのねぇ…」

 「これが魔法師団のやり方だと言ったら?なあ、メルヴェル」


 俺はカロサと一緒に台所に立っているメルヴェルに話し掛けた。

 「用がありましたら、いつでも話し掛けて下さい。必ず、お応え致しますので」と、言っていたから、何も考えずに話し掛けたのだ。


 「そうですね。昔から今に至るまで、ずっとその方法で団員達を鍛えていますね」

 「だそうだ。さあ、放て」

 「わ、分かったよ…。僕が全力で出せる威力で―光の精霊よ、我に力を!《雷撃》!」


 俺にルデンにとっては全力の《雷撃》をそのまま直撃した。

 ルデンは人間に魔法を放つと言う事に躊躇いと言うか何と言うか、そう言った感情を持っている。感情、気持ちがある、今のルデンに戦闘は不向きなんだろうな。

 そう、覚悟が足りない。

 人に勝ちたい気持ちはあるけれど、人を傷付ける事を躊躇ってしまうのだ。


 「はあはあ…だ、大丈夫?」

 「俺に無事か聞く前に、魔力が少なくなっているんじゃないか?」

 「少し、だるみもあるよ…でも、これくらいなら」

 「まあ、もう少しで夕食も出来上がりそうだし、今日は終わろうか」

 「僕はまだ…」

 「息切れしている奴が何を言う。あれくらいの威力で、それだけの魔力が消費されたのには驚きだが、明日も実技教科とかに支障に来すかも知れないぞ?」


 放課後から始めて、かれこれ三時間位やっていたのだ。


 「流石に授業に支障があるのは不味いよね…分かった、今日はここまでにするよ」

 「魔力を酷使した後、身体を休め、魔力を少しずつ回復させていくのも一つの手だ」


 まあ、魔力まで回復させてしまう、《超回復》なんて魔法があるがな。そんで、魔力を少しずつ回復させていくのが重要である。

 それは、微量ながら、魔力が増えるらしいからなのだ。

 不思議なものだな、魔力は。




 気付けば、メルヴェルとカロサが料理を並べ終わっていた。

 俺達四人は食卓を囲んで、夕食を食べ始めた。


 「そう言えば、団長殿」


 突如、メルヴェルが俺に話し掛けてきた。


 「何だ?」

 「食後でも宜しいのですが、国王がこの学校の校長室にてお待ちですよ」

 「そんな話、初めて聞いたぞ?」


 ヴァールデンが待ってるとか、知らないんですけど?


 「えっ!?国王陛下がですか!?」

 「ええ、そうです、王太子。貴方も行った方が宜しいかと」

 「じゃあ、食べ終わったら行くか」

 「分かった…てっ、え!?」


 驚きすぎだと思うが?


 「別にゆっくり食べてからでも問題ないだろう?」

 「だ、だって、国王陛下だよ!?」

 「向こうが勝手に待ってるだけだ。俺達は普通に夕食を食べても誰も咎めやしない」

 「団長殿の言う通りですよ」


 俺達は普通にゆっくりと夕食を平らげた。


 「じゃあ、行くから手を出せ」

 「あ、うん…」

 「よし。《瞬間移動》」


 俺とルデンは校長室へと移動した。


 「お、来たか」

 「…一回ぐらい、アヴィル自身でノックした事はあるのか…?」


 ヴァールデンは兎も角、リダルンディは超常現象でも見るのかの様な目で見ていた。


 「あ、あの…僕も来て良かったのでしょうか?」

 「良い。どうせ、ルデンにも関連する話ではあるのだからな」

 「ルデンって…」

 「アヴィルが呼んでると言ってたからな。我も呼ばせて貰おうぞ」

 「はあ…。あ、長らくお待たせしてすみませんでした!」

 「別に気にして無い。だから安心せよ。どうせ、アヴィルがゆっくり夕食を食べるとかだろうしな」


 ヴァールデンは笑っていた。


 「それで、何だよ話って」


 俺は話を切り出す。早く部屋に戻りたいのが理由で。


 「分かった、分かった。だから、急かすな」

 「急かしているつもりは無いが?」

 「急かしているつもりは無いかも知れないが、我にとっては急かされている様にも感じられるのだ」

 「あ、そう」

 「もう少し興味を持て…と言っても無駄な事とは認知しておる。さて、本題だが、魔獣大量異常発生(スタンピード)が各地で頻繁に起きているとの情報があった」


 俺が倒した筈の魔王が生き返り、力を取り戻したか。年に一回か二回位しか起こり得ない、スタンピードが各地で頻繁に起きているとなればそう考えざるを得ないのだ。


 「それを何故、俺に伝える?国王の権力で、軍を出せば良いじゃないか、勝手に」

 「出来るには出来る。しかし、各地でバラバラに起こり過ぎて、軍の人員がとても足りないのだ」

 「各地で起こっていたとしても、スタンピードを俺が討ちに行けないんだぞ?ルデンの護衛でここに通わされているんだし」

 「それは心得ている。近々、この王都にも大きなスタンピードが起こるかも知れないとだけでも伝えて置きたくてな」


 ルデンを護りながらと言う事になる事を承知しろ、と言う事か。それも、俺自身が魔法師団の団長だと言う事を隠しながら。

 と言う事は、魔法の使用は誰も見ていない場所のみに限られる。


 「それと…」

 「まだ、あるのか」

 「うむ。我が弟のヴァーファが最近、王宮でも見掛けないのだ」


 ヴァールデンの弟ヴァーファか。ヴァーファはヴァールデンとは五つ下であり、俺と同い年だった。面識は二回程度。


 「…あんなに大きな王宮に、普通に会っていないだけでは?だから、俺に伝える必要がある内容なのかよ…」

 「分からぬ。しかし、王宮内の使用人達に聞いても見掛けないと申すのだ」


 へー…。

 俺に関係無いがな。


 「もしかすると、我が弟までも…」

 「何でヴァーファを殺すんだ?」

 「…その言葉を避けて話してたんだが。自分自身の心を自分自身で少しでも傷付けない様にする為にも」

 「へー」

 「…」


 場の空気は沈黙した。俺は切り出す様にして続ける。


 「それで?」

 「それで?じゃないだろう?」


 他に何があんだよ?


 「仮にヴァーファを殺すにしろ理由が無いだろう?ルデンやヴィリアルンならまだしも」

 「僕や父上ならまだしも、って何?」


 静かに俺とヴァールデンの会話を聞いていたルデンが口を挟んだ。

 俺はルデンの質問に答えた。


 「王太子が殺されたんだから理由位は何となく分かるだろ」


 王位継承関連だろ、これは。


 「要は、ヴァーファじゃ殺しても王位には関係しない。だから、殺す意味がない、と言いたいのか?アヴィルは」


 俺は頷いた。


 「殺して誰の利になるんだよ」

 「確かに…」

 「逆にヴァーファ自身がヴィリアルンを殺し、ルデンも殺そうと企んでいた張本人かもな」


 俺はそう言った。


 「何故、そう言い切れる」

 「言い切った訳ではない。可能性の一つを挙げただけだ。必ずそうかは、俺にも分からない。そうでなければ良いんだがな」


 そう。これはあくまでも、可能性の一つ。最悪の可能性。

 昨日の王宮にルデン殺害の目的で元父親で今や魔族のグレファがやって来た。これと、可能性の一つとして挙げたのと照らし合わせると、ヴァーファが魔族と手を組んでいると言う風に繋がってしまうからだ。


 「話はこれだけか?」

 「今のところはな」

 「そっか。じゃあ、戻るとする」

 「うむ」

 「ルデン、部屋に戻るぞ」

 「あ、うん」


 俺が差し出した手に、ルデンが手を繋いだのを確認し、《瞬間移動》で寮の部屋に戻った。

***

 アヴィルとルデンが部屋に戻った後の校長室。


 「ずっと固まっているが、大丈夫か?リダルンディよ」


 ルデン以上に空気になっていたリダルンディは、ずっと固まって動いていなかった。


 「はっ…!?あ、大丈夫。うん、大丈夫です…?」

 「大丈夫ならそれで良いんだが…」

 「心使い感謝致す…」

 「あの頃の様に気を楽にして喋ってくれると有り難い。タメ口で」

 「あ…うん、分かった」

 「リダルンディは相変わらずだな、アヴィルに怯えて」

 「慣れないものだ。急に現れて、急に姿を消す…」

 「まあ、アヴィルがこの学校に通っている以上、それぐらいは慣れないとな」


 ヴァールデンはリダルンディに微笑み掛けた。リダルンディは溜め息を吐きながら、こう言った。


 「アヴィルは既にこの学校を卒業しているのに…」

 「我は、それは本当にすまないと思っている」

 「アヴィルにとっては、今のこの学校と言う場所はとても過ごしづらい場所なのかも知れない」

 「早速、何かあったのか?」

 「ははは…」


 ヴァールデンのふとした心配を余所に、リダルンディは乾いた笑い声で誤魔化した。



 ヴァールデンとリダルンディの会話は夜な夜な続き、ヴァールデンが王宮に戻ったのは翌朝だった。

***

 校長室から戻って来た俺達は、風呂で汗を流してから就寝した。




 また次の朝がやって来たのである。

 また変わらぬ朝が。メルヴェルとカロサの作る朝食を食べ、身支度を済ませてから、俺とルデンは登校した。

 相変わらず、ルデンは教室に入る度、人に囲まれるな…。そんなのを横に俺は席に向かう。これも変わらない。


 「お…?」


 俺の机に少し質素な花瓶に入った綺麗な?白い華が一輪あった。まるで、死人に添えるような献花である。

 今日は早めに解放されたらしいルデンが来て、俺に言う。


 「それって…」

 「まあ、単なる嫌がらせだろうな」

 「先生に言った方が良いよね」

 「まあ、待て。今な、思い出したんだ、この献花で。俺、両親が一応死んだ事になってんのに、一度も献花した事が無い事をな」

 「それを言うなら僕もだよ…」

 「あ、そうだったな?」

 「明日は休みだし、一緒に行く?全ての死者が戻る地と言われる、ジュワライルの丘に」


 ジュワライルの丘?ジュワライルは何かどっかで聞き覚えがある。だが、そんな丘は初めて聞いた。


 「それは何処にある場所なんだ?」

 「あれ?知らない?剣姫が昔、死んだ軍人達を埋めて弔ったって言う話を」

 「聞いたことがないな」


 剣姫と言えば、俺の母親。今は()であり、マドレアと言う名の魔族として敵対していた。きっと、何処かで動いているんだろうな。

 それに、母親の死んだ軍人達を弔ったと言う様な、そんな話なんて一切、母親の口から耳にした記憶がない。


 「ああ、そうかもね。あの場所が出来たのは丁度五十年位前だから…合ってる?」


 このルデンの「合ってる?」は、俺が日本へ行き、この世界に居なかった間の年数の正誤を聞いているのだろう。

 俺は頷いておいた。


 「そこに行って、管理している領主に聞けば分かるよ、詳しい事は。それで、どうする?行く?」

 「取り敢えず行っておく」


 そして、今日も授業が始まった。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。


***


次の更新は1月15日です。

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