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 「私は団長殿に憧れているの。それに私は一学年次席よ」


 女子生徒は俺の聞いた事に答えた。

 理由は団長に憧れているからと、次席だからか。

 そう言えば、ルデンが差を付けたいと言っていたのは、この女子生徒の事だったのか。

 それは、別に良いとして、次席だから怒るのはよく解らない。俺は深掘りする事にした。


 「それで、次席だからどうした?」

 「ぐっ…貴方はちゃんとした魔法が使えないでしょう?この学校に居る資格は無いのよ!」

 「話が逸れてるぞ」

 「要は上位成績者は下位成績者を強制力のある注意をする事が出来るのよ。貴方は私を侮辱した。その罪は重いわよ」


 上位成績者が下位成績者に強制力のある注意をする事が出来る?何だソレ?


 「それは校則か何かか?」

 「この社会で生きていく為の暗黙のルールよ。弱者は強者に従えば良いの。だから、最強である団長殿は偉いのよ」


 初耳。

 俺は確かに、周りよりも強い。だが、一度もそう思った事がないんだがな。

 それに、この社会で生きていく為の暗黙のルールだと?それこそ、初めて知った。


 「そんなルールや、魔法師団団長が偉いとかも知らないな」

 「貴方は幼少期に親から何を習ったのかしら…」


 女子生徒は呆れながら、この場を去って行った。

 理由は、もうじき、次の授業が始まるからであろう。

 気付けば、ルデンも席に戻っていた。


 「なあ、ルデン」

 「何?」

 「この学校では、上位成績者は下位成績者に強制力のある注意をする事が出来るのか?」

 「そうだよ。この社会では、弱者は強者に従うのが暗黙のルールみたいなものだから。学校にもそう言った事があるんだよね」


 腐ってんな…。

 これが、俺の率直な感想であった。


 「だから、本来、(役作りの)アヴィルは僕に従わなければならないんだけど…」

 「俺は誰にも縛られず、自由に生きていくから。誰の命令に従わない主義だから」

 「ここでは通用しないと思って」

 「心配するな。そう言えば、さっきまで俺を叱っていた女子生徒の名前、知らないな…」


 だと言って、ルデンに聞くものなのか。

 ルデンは、次席でありクラスメイトである女子生徒の名ぐらいは知っているらしく、答えてくれた。


 「あの子はマリアンローナ・アユハリローズさん。アユハリローズ子爵令嬢だよ」

 「この学校は貴族社会が大きく出てるのか?」


 名前だけで良いのに、女子生徒の家も言った…。


 「そうだよ。貴族社会の言わばモデルケースが学校なんだから」

 「()はそんなこと無かったのにな…」


 俺は溜息を吐きながら、そう言った。


 「時代が変わっていると言う事なんだよ」


 俺が(この世界で)五十年以上前に、この学校に在籍していた事を知っているルデンだからこそ、返答出来る回答なのだろう。

 それにしても、時代か…。


 「そう言えば、戦争が少なくなったか?」

 「まあ、そうだね。今から約三十年前、当時争っていた隣国ヨドロコース帝国とは、平和協定を結んだんだよ。今じゃ、殆ど無いに等しいよ、戦争は」


 人と人との戦争ではなく、人と魔族との戦争に力を入れる必要があるから。今は。

 俺達の居るティナラータ王国と、隣国のヨドロコース帝国で、今は協力すべきなんだろうな。

 …俺の失態で、完全に殺すのではなく、生け捕りや、殺し損ねた魔族がちらほら居るから。

 だからこそなのだ。

 人同士の争いは醜過ぎるのだから。


 「なあ、魔法師団の仕事って知ってるか?」

 「何を聞いてるのさ。遠方に行って、強い魔獣を討伐したり、周辺の地域住民の治療じゃないの?」

 「それだけか?」

 「それぐらいでしょ」

 「一応、戦争の時に、先制攻撃や後方で攻撃を仕掛けるのも、魔法師団の仕事なんだがな。要は、人殺しもするって訳」


 相手陣営を潰す目的で攻撃するのだから、人殺しに何ら変わりは無い。


 「嘘…」

 「平和ボケし過ぎている。簡単に憧れているから入団するとか、生半可な考えで魔法師団に入団するのは絶対に、止めといた方が良い」

 「…それを僕に言っても仕方無いでしょ。将来は国王になることになっている僕が、魔法師団に入団したとしても、団員として活動出来る時間なんて無いんだから」

 「ま、そうだな。ヴァールデンの奴も同じ事を言ってたし」


 進路を考えるのは、三年生になってからだ。ヴァールデンはその時には既に、王太子になってたからな。


 「国王陛下を呼び捨てにするのは、アヴィルしか居ないんだろうな…」

 「それで、俺だと気付いたんだよ」

 「国王陛下が王太子の頃から呼び捨て?」

 「無論」


 寮が同室だったから、と言うのもあるがな。


 「流石だよ、アヴィルは」

 「そりゃ、どうも」

 「褒めてないんだけどね」

 「まあ、取り敢えず今は、授業に集中しておけ、ルデン」

 「あっ…」


 俺は別に集中などしないが。

 この俺とルデンの会話は、誰にも聞かれていない様な声でしていた。なので、教師から注意される事無くしていたのである。

 さてと、俺は魔法書に落書きするのを再開致しましょうか。





 この時間の終了のチャイムが鳴り響き、二時限目の授業は終了した。


 「アヴィル、そう言えば、魔法書に落書きって言ってたけど、実際には何を書いてるの?」

 「新しいオリジナル魔法」

 「魔法って、そう言う風に新しく産み出されるの…?」

 「既に産み出された魔法を後からメモ書き要領で書いてるだけだが?」

 「でも、やっぱり、ジャンジャン新しい魔法が出てくるってことでしょ?」

 「違いは無い」


 魔王討伐の最中に出来た魔法の《魔束光環ディヴァファスシオリング》や、《魔光龍炎》とかの書き留めを主にやっていた。


 「魔法書にメモ書き要領で書いていっているのは良いけれど、次は実技教科だから実技訓練場に移動だよ?」

 「は?」

 「いや、は?じゃないから。この前は、寝てたから無視したけど、今回は寝てないから強行突破で連れてくけど?」

 「強行突破じゃなくても行くさ。それじゃないと意味が無い」

 「じゃあ、何で」

 「参加しながらサボれない教科だなー、なんて思って」

 「サボる事前提!?」


 俺は頷いた。

 俺にとっては、全ての授業がほぼ受け直しで、本当に詰まらないからな。




 それはそうと、俺達は主に実技教科で使われる実技訓練場に着いた。

 実技教科では、自分自身のMr(魔法耐性)ごとに別れて、授業が行われる。簡単に言うと、他クラスと合同授業みたいなものとも、考えても良いだろう。

 生徒の中には複数のMrを持つ者が結構居る。その生徒は、実技教科の度に受ける所を変え、ほぼ均等に上達する様にするのだ。

 この感じのカリキュラムは、五十年以上前と大して変化していない。

 俺は全部の所をグルグルと廻ってったな…なんて記憶があり、今回は何処だっけ事件も度々あった。


 「ルデンは何処に行くんだ?」

 「今回は光属性かな」

 「そうか」

 「アヴィルも来るの!?」

 「驚くことか?」

 「ううん、アヴィルが複数のMrを持ってる事を殆どの人が知らないからさ。それに、完全弱者なら、あの時の水属性のみにしておいた方が…」

 「水と光だけで良いだろう、取り敢えずは」

 「あのね、複数のMrを持ってるのは結構、上位なんだよ…?」


 俺の周りに居る人物が複数持ちなんだが?ヴァールデンや、メルヴェルや、ガードラーレ…等々の面子は。


 「いや、複数のMrは普通だろう?」


 ましてや、俺は全てのMr有ります。


 「うん、知ってた。アヴィルに普通が通用しない事が」


 はい?


 「いやいや、普通だろ」

 「なら、そう言う事にしておいてあげるよ」


 何か、ルデンの瞳から「しょうがないな」と伝わってくる、そんな眼をしていた。



 俺はルデンに付いて行った。光のMrを持つ者同士が集まる、その場所へ。

 すると、その担当の教師が俺を見付けて話し掛けてきた。


 「君は編入初日から我ら教師陣に、とても迷惑を掛けていた問題児君だね?」


 結構な言い様である。


 「君は…水属性じゃなかったのかい?」

 「何で、そう言い切れる」

 「違ったのかい?僕はラムソゥワンナ先生から、「Mrに水があると思われるが、最下位魔法でさえ成功しなかった為、他にMrがあるとは思われない」と聞いていたからね」


 へー、ラムソゥワンナがそんな事を。


 「さあ、問題児君。君は、水の所へ行くべきだ」

 「断る」

 「何でだい?」

 「態々、ここまで授業に受けに来てやったと言うのに…そんな生徒を、易々と返すのが教師の仕事か?」

 「受けに来てやった??」

 「そうだ」


 それ以外に理由なんて要らないだろう。


 「やれやれ…一応、僕の授業に参加する事を許可するよ。あくまでも一応。無理だと思ったら、他の所へ行って貰うよ?」


 俺は光属性の実技に参加出来るようになった。


 「――それでは先ず、殿下。《雷撃》を的に放ってみてください」

 「分かりました。光の精霊よ、我に力を!《雷撃》」


 ルデンが教師の指示で《雷撃》を放つ。

 うむ、中々だ。中位の魔獣を倒すには、だけど。だが、魔族に効きやしない威力だ。


 「流石です、殿下。以前より、威力が増してますね」

 「有り難うございます」


 教師はルデンを讃えた。他の光属性を受けに来ている生徒は拍手していた。

 それほどの威力では無いのにな。


 「次はマリアンローナ嬢」

 「はい。光の精霊よ、我に力を。《雷撃》」


 次は次席であり、俺を怒った女子生徒―マリアンローナ・アユハリローズだ。

 威力は…ルデンと良い勝負で、少し弱い位。


 「洗練された良い《雷撃》ですね」


 何と、教師はそんなマリアンローナを褒めた。

 周りの生徒は「おお~!」とか、「流石は次席様だ」など言っていた。

 俺の感想としては、見せ物としては良いものだが、戦闘においては威力の弱すぎる役立たずかな、と思ったのだが。


 「さて、次は君ですよ。放ってみてください」

 「他の生徒には名前で呼んでるくせに、俺は君か…教師よ」

 「君の方こそ僕の名前を知ってますか?」

 「知らない」


 知る場所が何処にあったんだよ。


 「良いでしょう。僕はトゥールムン・カムイですよ、アヴィル君」

 「あ、俺の名前知ってたか」

 「ラムソゥワンナ先生に聞いたよ」


 多分、俺の実力として報告した時かもな。その時に聞いたんだな、きっと。


 「さあ、放ちなさい」


 トゥールムンは俺にそう命令する。

 学生で役を作る今の内は従ってやろうじゃないの。


 「光の精霊よ、我に力を《雷撃》」


 俺は不発させる。

 わざと不発させたのである。

 そんな事は露知らず、トゥールムンは俺に言う。


 「光属性は多少はあるが、不発か。アヴィル君は、他の生徒達の魔法を見て観察して、何処が悪いのかを探すべきだ」


 わざと不発させるのは、結構な高技術であるのにも関わらずか。

 不発させるのは高技術である為、そして、本物の不発と相反して変わらない為、不発させた本人の本当の実力を知らない人は、本当に不発したのだと錯覚する。

 俺はトゥールムンに鼻で笑った。多分、トゥールムン本人は、俺に鼻で笑われた事を知らない。




 他の生徒達の《雷撃》を見た。全員が撃ち終わった所でこの授業の時間か終わったのである。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。


***


次の更新は1月12日です。

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