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 俺とルデンはメルヴェルとカロサが作る朝食を食べ、学校の校舎へと向かった。


 「初めてじゃない?一緒に登校するの」

 「そうかもな」


 教室に入るなり、ルデンの周りには沢山の生徒達の人集りが出来た。

 俺はその人集りを横に、席へと向かった。

 席に着くなり、窓の外を眺め、ボーっとしていた。




 数分後、人集りから抜けて着席しに来たルデン。


 「助けてくれても、良かったんじゃないの?」

 「ふっ…」

 「何で、鼻で笑うのさ?」

 「いや、つい」

 「もう…」


 この後、授業開始チャイム音が教室内を鳴り響いた。

 この時間の教科は、『魔法師団団長殿の歩み』。つまり、教科担任として、今、教鞭を振るっているのは、シュンデイン。


 ああ…暇。


 俺は、自分自身の魔法書(落書き帳)を机の上に出した。

 何をするかと言うと、オリジナル魔法の書き足しだ。

 書き始めた頃、シュンデインが大声で喋った。


 「また、貴方ですか!?今は教科書を読みなさいと指示している筈ですが、何を書いているのです!?」

 「落書きしてる」

 「はぁっ!?」


 シュンデインの堪忍袋勃発。生徒達は一斉に俺の方向を向いていた。


 「あ、アヴィル!?今、落書きって…て言うか、その本!落書きしてる本って!」

 「魔法書」


 ルデンは「終わった…」と言いながら、頭を抱えている。

 シュンデインは俺の落書きしていた本を取り上げて、こう言った。


 「これは…!魔法師団団長殿の魔法書!?貴方はこの本を知ってて、落書きをしているのですか!?」

 「ああ」


 そりゃ、俺のだしな。


 「これは国宝にも指定されている物…!」

 「きっと、団長本人は思っている筈だ。この本は落書きしか書いていない、とな」


 周りの生徒達の血の気が引いている様に見えた。


 「私は生徒を突き出すような真似はしたくはありませんが、仕方ありません。貴方を近衛騎士団に差し出します」

 「へー」


 俺は、また、牢屋に入るのかなー?

 シュンデインは息を整え、次の様に言った。


 「先ず、校長先生に報告しますので、付いて来なさい」

 「じゃあ、コイツも連れてっても?」


 俺はルデンを連れて行こうとした。


 「で、殿下をコイツ…?」

 「あはは…アヴィル!?何で僕を!?(小声)」

 「護衛の俺がお前の傍に居ないと何かと不味いだろ?学校とは言え…(小声)」

 「先生、アヴィルに付いて行っても宜しいですか?」


 ルデンは立ち上がった。

 それを見た、シュンデインと周りの生徒達は驚いていた。


 「…ま、まあ、良いでしょう」


 俺は席から立ち上がり、シュンデインにルデンと後ろから付いて行った。




 校長室の目の前まで着き、シュンデインがドアをノックした。


 「シュンデイン・アードンです」

 「入れ」

 「失礼致します。貴方達も入りなさい」


 シュンデインが入った後に続いて、ルデン、俺と言う順番に入った。

 俺の顔を見たリダルンディは、一瞬、ほんの少しだが、驚いた様な顔をした。


 「それで…シュンデイン先生はどの様なご用事で生徒達と?」

 「実はですね、国宝とされる魔法師団団長殿の魔法書に落書きを授業中に、この生徒がやっておりまして」


 俺の方向を向きながらシュンデインは、リダルンディに用事を言った。


 「そうですか…。では、何故、王太子殿下がここに居るのですか?」

 「僕は付き添いです」


 シュンデインにリダルンディが聞いている筈なのだが、ここはルデンが答えた。


 「処分は私がしましょう。シュンデイン先生は授業にお戻りください」

 「分かりました、失礼致しました」


 シュンデインは部屋から出て行った。


 「ふぅ…王太子殿下はアヴィル()をご存知で?」

 「は、はい、一応。魔法師団団長殿である事も知ってます」

 「なら、良いか…」


 何の確認なんだ?それは。


 「一先ず、アヴィルに魔法書を返す」


 シュンデインに取り上げられた、魔法書をリダルンディから返された。


 「やはり、アヴィルは処刑されてしまいますか…?」


 ルデンがリダルンディに恐る恐る聞いた。


 「いや、罪にすら問われないだろう。罪の前にメルヴェル殿がねじ伏すだろう」

 「私がどうしたって?」


 勢いよく、ドアが開かれた。

 おお、メルヴェルの降臨。


 「「メルヴェル殿!?」」


 ルデンとリダルンディの声がハモる。


 「朝振りです、団長殿」

 「おう」

 「朝振り…?メルヴェル殿、まさか寮にお泊まりになられました?」

 「うむ」


 リダルンディはより一層、顔色が悪くなっていく。


 「部屋と寝床の配慮が出来ず…」

 「団長殿と同室で過ごせるので、その配慮は要らない」

 「そうですか…」


 何かリダルンディはホッとしたらしい。


 「それで、メルヴェル殿は何故、校長室に来たのですか?」


 ルデンがメルヴェルに問いた。


 「ああ、今度の、国立高等魔法学校と魔法師団の合同特別魔法強化訓練についての話をしに来たのだ」


 学校と魔法師団の合同特別魔法強化訓練?何ソレ?


 「その時期が来たんですね…」


 その時期とは?


 「なあ、ルデン」

 「何?」

 「合同特別魔法強化訓練って何だ?」

 「それは、毎年恒例で、魔法師団団員と、学生達の交流及び魔法の強化が目的の行事。この行事があるから、この学校を目指すと言う生徒も居るぐらい人気なんだよ」

 「生徒は志望者の中から各学年上位三名選ばれ、また、団員は志望者の中から上位五名が選ばれます」

 「へー」


 要は、生徒は九名、団員が五名の計十四名が参加出来るのか。その強化訓練は。

 生徒は各学年、約百名。魔法師団は多分その倍以上。

 志望者もそれなりに居ることだろう。


 「それで、ルデンは志望するのか?」

 「そりゃ、勿論」

 「俺は志望しない。先ず、役作りしてたら選ばれる事は無いだろうし」

 「そうだったね」


 最弱を偽っている俺には、行ける筈がない。


 「と、思いまして、団長殿は正体を隠しながら、指導教官として参加して頂きます。今回は」


 何やと!?


 「王太子は一学年の主席、参加が認められる事がほぼ決定しているでしょう。護衛役をさせられている団長殿は王太子の近くに居た方が宜しいかと」

 「そうだな…」

 「では、学生の方の選定は頼んだ」


 そう言い残して、メルヴェルは部屋を出て行った。


 「それでは僕達も教室に戻ります」

 「うむ」


 俺とルデンは校長室を出た。


 「ねえ、アヴィル」

 「何だ?」

 「僕にさ、魔法を教えてくれない?選考大会までに」

 「選考大会?」

 「合同特別魔法強化訓練の選考大会だよ。次席とも差を付けておきたい」


 そんなものがあるのかよ…。

 俺の学生時代(前の)では、そんな行事無かった記憶しか無いんだよぉ…。後、合同特別魔法強化訓練も。


 「どうしてそこまで差を付けたいんだよ?」

 「僕は次期国王として強くありたいんだ。だから…」

 「何で次期国王として強くありたいんだ?国王は別に弱くても良いじゃないか。国民に護って貰えば」

 「そ、そうかも知れないけど…僕は国民と共に協力して国を創るものと思っている。だから、僕自身にももっと力が必要なんだ」


 そう言うものなのかな?俺は国王になった事が一度も無いから知らんけどさ。


 「でもさ、俺じゃなくても良くないか?」

 「えっ?」

 「もし、俺が魔法師団団長だから、強いからとか、そう言った理由なら断る。違うのなら、()()命令をしてみろ、次期国王として」


 俺は人の命令には基本、従わない主義なのだが、時と場合によるのだ。


 「アヴィルが最強の団長殿だからと言う理由じゃない。アヴィルを信じているから…」


 ルデンは唾を飲み込み、呼吸を整えて、真っ直ぐ俺の目を見て言った。


 「アヴィル・リヴァーフォールズに命ずる。我に魔法を教えよ。尚、この命令に拒否権は無い。」

 「人を命令し、動かすには、それ相応の覚悟と責任が伴う。これだけは覚えておけ」


 俺は溜息を吐きながらそう言った。


 「つまり…?」

 「お前はさっき、拒否権は無いと言ったばっかりだろ…」

 「あ、そうだった」

 「毎晩、夕食後、寮の部屋で」

 「え、部屋?」

 「そこまで驚く事か?」

 「勿論、魔法とかも使うんだよね?」

 「使う。魔法は実践あるのみだからな」


 思い付いたオリジナル魔法も、その場で使ってみる事が大切だ。

 効力とかも一目で解る。

 駄目だった場合、その場で改変させられるからな。


 「部屋が壊れちゃうよ!?」

 「壊れたのなら、直せば良い」

 「そう簡単に言うけどねぇ…」

 「ま、気にするな」

 「気にするなと言われても…」

 「いちいち気にしてたら日が暮れるぞ」

 「…アヴィルに言われるなんて思ってもみなかったよ」


 何だと?


 「俺が何にも気にしていない様にでも見えてたりしてたのか?」

 「まあね。確かに全てに気にしてたら日が暮れるね」

 「へー、そう言うものなのか」

 「へーって…」

 「教室だから」

 「あっ…」


 話している内に教室の目の前に着いていた。

 教室の前で俺達は別れる。

 先にルデンが入り、俺が三テンポ位遅れて入る。

 俺を見付けた生徒達は、まるで人ならざる者を見るような目で見ていた。

 ルデンはと言うと、生徒達に囲まれていた。

 俺は席に着くと、一人の女子生徒が俺の席の前に来た。

 この女子生徒は会った記憶がある。以前、俺がこの学校に来て、事務室を案内した女子生徒が居た。その女子生徒と同一人物かも知れない。


 「貴方の様な極悪犯罪者が、何故、まだここに居るのよ?と言うか、何故、戻ってこれたのよ?」

 「は?極悪犯罪者?俺がか?」


 俺、このクラスで既に、そんな扱いになってんの?


 「ええ、そうじゃない?魔法師団団長殿の魔法書に落書きをしたのだから。てっきり、殿下と戻ってくる事など無いと思っていたのに」

 「ああ、そう言う事か」

 「そう言う事かで済む様な問題ではないの」

 「それなら、不問になったから」


 多分、不問以前の案件。王国が勝手に俺の所有物を国宝にしたのだから。それに、俺の物を落書きしたり、破壊したりするのは自由だろう?


 「不問になる筈が無いわ!」

 「実際になった。文句があるのなら、直接、校長に文句を言いに行けば良いだろうが」

 「はぁっ!?」

 「それに、何でお前が俺に怒る?理由と動機が無いだろう?」


 俺はこの女子生徒に怒っている理由を聞いてみる事にした。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。

***

余談(飛ばしても大丈夫です!)


リダルンディせんせーは、処分は自分がすると言っておきながら、アヴィルくんの処分はしません。


***

次の更新は1月8日です。

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