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8

 俺達は寮の部屋に入り、机を囲んだ感じに座っている。

 俺の目の前には丁度、ルデンが座っている。


 「それで、アヴィルは一体、何者なの?」


 俺は息を吸い、呼吸を一応、整える。


 「何から話そうかな。えーと…俺は魔法師団団長だ」


 急だったか?


 「待って、整理が追い付かないんだけど」

 「王太子よ、この御方は正真正銘、我らが魔法師団団長殿であらせられる」


 メルヴェルのフォロー?により、ルデンは落ち着きを少しだけ取り戻した。


 「ちょっと信じ難いけど、メルヴェル殿が言うから本当なんだろうけれど…」

 「まあ、信じなくても良い。今まで通りに接せれば良いから。次だ」


 ルデンは唾を飲み込んだ。


 「さっき、ルデンを殺そうとした奴は俺の元父親である」

 「元?」

 「ああ。一度、魔王と言う者に殺され、魔族にさせられていた。因みに母親もだ」

 「発言をお許し下さい、団長殿」


 メルヴェルは俺に何かを聞きたげだ。


 「許す」

 「有り難うございます。私には、団長殿の御両親が亡くなられたまでしか聞いたことがございませんが?」

 「魔族にさせられていたのを知ったのは、魔王討伐時だ。危機もそんなに無いだろうと思い、言わなかった」


 これは、俺の落ち度かも知れないな。


 「そうでしたか…それは、しょうがないのかも知れませんね」

 「それに関しては謝罪する。すまなかった」


 俺は頭を下げ、数秒後、頭を上げた。


 「そして、ルデンの父親ヴィリアルンが誰に殺されたかだが、魔族に関連している者で違いない」

 「関連している者?魔族で決まりじゃないの?」


 ルデンが聞いてきた。俺の考えをそのまま伝え答えよう。


 「いや、魔族は人間を眷属にする事が出来る。それで、魔族の力を人間が借り、使えるようになる。だから、眷属になった人間が殺したと言う可能性があるんだ」

 「そんな事が…」

 「王座を狙っていたが、自分が国王になれないと分かり、ヴィリアルンを殺した。しかし、新しく邪魔者(王太子)が現れてしまい、その邪魔者――ルデンを殺そうとした」


 これが、ここまでで解る真相だろう。

 だが、誰が、王座を狙い、ヴィリアルンとルデンを恨み、殺そうと企んだのかは解らない。

 まあ、魔族が関わっているのは変わり無いが。


 「王座を狙う…」

 「居ないか?何か狙いそうな親戚とか」

 「いや…特に」

 「ふーん…。ああ、そうだ、今日からこの部屋にメルヴェルも泊まるから。暗殺対策はバッチリだ、良かったな」

 「えっ?」

 「それに、一応、ここででは、俺はお前の護衛だから」

 「は?」

 「これからはほぼ付きっきりで行動する」

 「はい??」


 既に、ルデンは話に付いて行けていなかった。

***


 アヴィル達が《瞬間移動》した後の王宮。



 やっと、目を覚ましたフェージンが言った。


 「あれ?王太子殿下は何処へ…」


 それに、ヴァールデンが答えた。


 「アヴィルと共に学校へ《瞬間移動》して帰って行ったぞ、ついさっき」

 「あ、そうですか」


 意外にも、サラッとした返事だった。その場に居る自分自身を含めた全員がそう思ったのである。


 「お祖父様、お聞きしたい事がございます」


 殆ど空気となっていたシスナータがヴァールデンに言った。


 「何でも聞いてみよ、シスナータよ」

 「はい。先程のアヴィルとやらは、国宝の水晶を割った極悪人ですが、お祖父様は何故、その極悪人ととても仲が宜しいんですか?」


 この時、ヴァールデンは「しまった、シスナータは知らないのか」と思った。


 「実はな、アヴィルは我の学生時代のルームメイトなのだ」

 「えっ、そうなのですか!?でも、あの者は勇者召喚で…」

 「我も驚いたのだ。アヴィルは勇者の居る世界に五十年前、転移させられており、この世界で五十年後、向こうの世界で三年後に勇者召喚で戻って来れたらしい」

 「でも、水晶を割ったのは変わりはありませんが」

 「あー、その水晶はアヴィル自身が創った物だから、お咎めなしだ」

 「自分自身が創った…?」

 「アヴィルは魔法師団団長だぞ?あの」


 シスナータは当分、驚きで全く声が出なかった。


 「王女殿下、因みに私はあの御方の一つ後輩に当たりますよ」




 後日、シスナータは知恵熱を引き起こし、三日程寝込んだのだとか。

***

 あれから少し時間が経ち、メルヴェルとカロサは食事を作り始めた。


 「もう、夕食を作り始める時間ですね」


 と、メルヴェルが言い、カロサを強制的に台所に連れて行ったのである。


 「そう言えば、前、アヴィルは《雫石》を失敗させてたよね?あれは、演技?」


 教室に入り、自己紹介をした時か。

 水属性最下位魔法の《雫石》を不発させたんだった。


 「あれか。ああ、勿論、演技だ。態々、不発させたんだよ」

 「そんなことが出来るの?」

 「出来るとも。だがな、メルヴェルでさえ出来ない、凄い技術らしいぞ」

 「メルヴェル殿でも…アヴィルさ、僕の前だけで良いからさ、ちゃんと自己紹介してよ」


 急に自己紹介って言っても…。


 「俺はアヴィル・リヴァーフォールズ。魔法師団団長であり、リヴァーフォールズ辺境伯爵でもある。国王ヴァールデンや、学校長のリダルンディは同級生、フェージンは学年が一つ下の後輩だ」


 関係性をサラーッと言ってみた。


 「もう一度、聞いてもいい?アヴィルは何で編入出来たの?」


 入寮したその日にルデンから聞かれた質問だった。


 「ルデンの護衛の為に、ヴァールデンから通えと言われたからだ」

 「そうだったんだね」


 国王の命令だと解った途端に、俺が編入した事に納得したようだった。


 「俺が魔法師団団長であり、本当は魔法が使えると言うのを、教師含める学校の全ての人達に言わないでくれよ」


 動きづらくなるかも知れないからな。


 「分かってるよ。アヴィルが僕にも隠していたんだからさ」

 「有り難う」

 「お礼を言われる程じゃないよ。それに、僕の方がお礼をするべきだ」

 「どうしてだ?」

 「あの魔族から助けてくれたんだから。有り難う」


 逆にお礼を言われた。


 「そうか。ルデンからの感謝の気持ち、受け取っておくが、俺の感謝の気持ちを受け取っておいてくれよ」

 「…そうだね。そうしておくよ」


 俺とルデンが話している間に、メルヴェルとカロサが料理を作り終えていた様だった。

 いつもより何だか豪華な食事に見えた。




 団欒をしながら、その豪華な料理を食べた。

 メルヴェルとカロサは、食器などを片付けている。

 ルデンが手伝おうとした時、「大丈夫です」とメルヴェルに断られていた。

 それは別に良いが、忘れていた事が一つあった。それは、メルヴェルの寝る場所だ。

 元より、この部屋は二人部屋で、二人分のベッドしかない。俺のベッドは現在、カロサに使わせているが、メルヴェルの分ともなると(らち)が明かない。


 「ねえ、アヴィル。昨日とか、寝てないんでしょ。カロサ様の寝床確保の為に」


 ルデンが途方に暮れていた俺に言ってきた。


 「まあな。だが、メルヴェルの分をどうしようか…」

 「それなら、アヴィルは僕のベッドで一緒に寝よう。ああ!悪い意味とかは無いんだよ!?それで、カロサ様とメルヴェル殿は二人で一つのベッドを使って貰うんだ」

 「まあ、それしかないか…」

 「なら、早速、台所に居る二人に」


 俺は台所に行き、メルヴェルとカロサにそう言った。


 「分かりました。では、私はこのカロサと寝れば宜しいんですよね?」

 「えっ?」

 「えっ、とは何だ、カロサ。団長殿の御命令だ。神と言えど団長殿の御命令は絶対…」


 メルヴェルはカロサに圧力を掛けている。


 「はい…」


 始めて見た。人間に命令されて、圧力を掛けられ、最終的には命令を聞く神を。

 メルヴェルは俺の命令は絶対と言った。その効力は神であっても絶対なんだと。

 行き過ぎには程があるんだがな。


 「じゃあ、それで」

 「分かりました」

 「…」


 カロサはメルヴェルの圧力に怯えながら、黙々と皿を洗っていた。


 「中断させてしまって、すまなかったな」

 「大丈夫ですよ。私の事を心配して下さったのでしょう?迷惑よりも、有り難みを感じてますよ。有り難うございます、団長殿」

 「そうか」

 「それよりも、王太子と御一緒に、大浴場でも行ってみてはどうでしょう?」


 学校の寮の一階に、大浴場がある。

 各部屋にお風呂が備わっているが、大きい所に入りたいと言う生徒が現れ、この寮に設置されたのだ。

 そして、何故メルヴェルがその事を知っているかと言うと、メルヴェルもこの学校の卒業生であるから他に無い。


 「誘ってみるとするか」




 俺はルデンに大浴場に誘った。

 すると、まさか、誘われるとは思っておらず、ルデン自身から誘おうとしていたらしい。

 部屋はメルヴェルとカロサ達に任せ、俺とルデンは大浴場に向かった。



 「…」


 着ていた学校の制服を脱ぎ、下半身にタオルを巻いた(半裸)状態になった時、ルデンが俺を凝視して、固まっていた。

 そんなに見られると、恥ずかしいんだが…。


 「どうしたんだよ…そんなに俺の身体が気になるのか?」

 「あっ、いや、何て言うか…アヴィルの身体が華奢で、肌白過ぎて驚いてる…」

 「それを言うなら、お前の身体もだろう?」

 「それ以前に、アヴィルの長い銀髪と肌白過ぎな身体に合い過ぎだよ」


 これを言われるのは初めてではない。実は、ヴァールデンも言っていたのだ。祖父孫と揃って同じ事を。


 「アヴィルは髪の毛を纏めたままなんだね」

 「ああ、そうだな」


 俺は髪の毛を纏めるリボンを二つ持っていた。一つは、白鳥さんにあげた。そして、今着けているのが、もう一つ目となる。

 あー、アイツ(元弟)も俺と色違いで二つ持ってたよな。



 俺とルデンは一通り身体を洗い流し、大浴場の湯に浸かっている。


 「気持ち良い~」

 「適温だ」

 「アヴィル、ここでは髪の毛を上げるんだね」

 「邪魔だからな。切ろうかな…」

 「何か勿体無いから、僕が止めるけどね」

 「それは俺の勝手だろう?」

 「そうだけどさ、仕方無いと言うか、何と言うか~?」


 俺とルデンは他愛ない話を浸かりながらした。




 そして、俺達は部屋に戻り、就寝した。

 次に目を開ければ、ルデンやメルヴェル、カロサはまだ寝ているが、朝になっていた。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。

***

余談(飛ばしても大丈夫です!)


フェージン様はアヴィルくんに《呪殺》を《浄化》して貰い、目を覚ました後、浮かれに浮かれてました。


 (先輩に助けて貰いました…!御礼の言葉が言えなかったのは残念でしたが、この上無い幸運!)


ルデンを護りきれ無かった事に対して、悔やんでもいました。


 (先輩に御迷惑をお掛けしてしまいました……)



***

次の更新は1月5日です。

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