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 『BAAANNN!!』


 俺は豪華に装飾された結構重く分厚い扉を、勢いよく開けた。


 「…」

 「…」


 そこから何故か暗黙の時間が流れた。

 ヴァールデンは固まっている。

 呼んどいて、何で何も喋らねーんだよ!?

 こちとら、気不味い空気になるだろうが!




 そうして、二分位は見詰め合っていた事だろうか。漸く、ヴァールデンが口を開いた。


 「そこで立ってるのも疲れるだろう…?椅子に座らぬのか?いや、躊躇いもなく座るのだろうな…」


 俺はずっと、扉の前で突っ立っていたのだ。足が疲れてきた頃だ。


 「じゃあ、遠慮なく」

 「遠慮は少しはしろよ?」

 「ん?」


 遠慮する必要は何処にあるのやら。

 ヴァールデンは少し間を開けて言う。


 「…本当に変わらぬな、アヴィルは」


 急に何なんだよ…。


 「アヴィル、聞いても良いか?」

 「何をだよ?」

 「先程の我…どうだった?王としての威厳とか」


 さっきのルデンの任命式についての評価を俺に聞いてるのか?


 「威厳の方は三点」

 「何点中なんだ?」

 「そりゃあ、百点満点中だろ?」

 「厳しすぎるだろう…?」

 「あーでもな、ルデンに掛けてやった言葉は良かったかもな」


 一人では無い、と言った所。


 「ルデン…?」

 「ヴィールデンタータの事だ。長いから略した」

 「成る程。我もこれから公の場以外で使うとするか。とは言え、あの言葉は本来、お前に使いたかったんだがな」


 ここにも居たよ。本来、俺の為が。


 「何で俺に使おうと思っていたんだよ、あの言葉」

 「お前は何でも一人でやろうとするだろう?強いから」

 「まあ、強いからな」

 「少しは否定しないのな…。まあ、それに、家族は死んでしまっている。一番言いたいのは、もっと、我らを頼れと言いたいのだよ」

 「はあ」

 「お前は強くて優しい。だからこそ、他の人を傷付けたくない。傷付けないように、一人で何とかするだろ」


 俺はそこまで優しくはない。だが、一人で何とかするのも、事実である。

 魔王討伐の時だって、そうだった。


 「我らは皆、魔法師団団長殿(アヴィル)に頼られる為に日々、努力しているのを忘れるなよ」


 そうだ。皆が俺を、魔法師団団長を神以上の存在とし、一歩でも近付ける様に邁進しているのは、俺に頼って欲しいから。

 でも、どうやって頼るんだよ…。


 「取り敢えず、いつでも皆は俺の味方だと言う事だけは覚えておく」

 「今はそれで良い」

 「仲間、か」

 「うむ」


 『DOOOON!!』


 俺とヴァールデンは二人だけの空間で話していると、そこへ、大きな爆発音が鳴り響いた。


 「何の音だ!?」

 「何か襲撃して来たんじゃね?」


 その後、部屋の扉にノック音がした。


 「入れ」


 ヴァールデンは、ノックをした者を入れた。


 「失礼致します!大変です、陛下!王太子殿下と王女殿下が!」

 「なぬ!?王太子にはフェージンが付いているだろう!?どうした、フェージンは!」

 「それが、フェージン様が押されてまして…」

 「何だと!?」


 ふむ…結構、強めの敵が現れた様だな。


 「場所は何処だ」

 「大広間です」


 大広間って、任命式とか何やらしたあの大広間?大広間って、一つだけだった様な気もしなくは無いしな。


 「ヴァールデン」

 「何だ、アヴィル」

 「ここは命取りになるから、役作りはしない。手を繋げ」


 俺は手を差し出した。


 「うむ。皆の者よ、我はこのアヴィルと共に先に大広間へ向かう」

 「はっ!」


 ここまで知らせに来た近衛騎士達は、一斉に敬礼している。

 少し疑われると思ったのだが…まあ、いっか。


 「よし、行くか。《瞬間移動》」


 俺はもう、ルデンに魔法の実力がバレても良いやと思っていた。

***

 ルデンSide



 時は少し戻る。


 「何で、ここにアヴィルが居たんだろう?爺は知ってる?」

 「いえ、私めには何も」


 アヴィルは国王陛下である祖父に用があると言って、先程、すれ違った。


 「あら、王太子さまじゃない。ここに居らしたのね」


 目の前からシス姉様が現れた。


 「シス姉様…王太子さまだなんて、僕にはまだまだ…」

 「何言っているのよ、ヴィールデンタータ。貴方はこの国を背負う次期国王陛下なのよ」


 そうだった…ね。


 「そうだわ。大広間に行きましょう」

 「さっき、行ったばっかりですよ?それに、片付けの邪魔に…」

 「既に終わってるわよね、フェージンさん?」

 「ええ、この時間なら終わってますね」

 「さあ、行くわよ、ヴィールデンタータ!」

 「えっ!?あっ、ちょっと!?シス姉様ー!?」




 僕はシス姉様に手を引っ張られながら、大広間に着いた。

 爺は、微笑ましいと言いながら、とてつもなく笑顔だった。

 大広間に着くなり、王座の方向に向かってシス姉様は指差している。


 「歴代の国王陛下が座ってきた王座よ」

 「あの…それぐらいは知ってますけど?」

 「きっと、歴代の国王陛下達は何らかんの覚悟を持って座るのよね、きっと」

 「覚悟…」


 祖父はあの王座に座ると、祖父ではなく、国王になっていた。それは、覚悟の表れなのだろうか。


 「貴方には、まだ時間があるわ。ゆっくりでも、その覚悟を見付ければ良いのよ」

 「覚悟を見付ける?」

 「そう。何を行動するにも覚悟が必要なのよ。これから先、色々な取捨選択する中で、覚悟を見付けていくの」


 そう言うものなのかは僕には解らないけれど、大体はそう言ったものなのだろう。




 「ここに居たか」


 僕とシス姉様が話していると、爺の声ではない男性の声が聞こえてきた。

 僕達三人は、後ろを振り向いた。

 あれ?この人、何処かで…。何処だったかな。


 「あ、貴方は…!いえ、とても若すぎですよ…」


 爺はこの男性に見覚えがあるらしい。


 「王太子に任命されたお前は、邪魔だから殺す。これは、あの御方の命令だからな」

 「殿下!ここは、お下がりください!」

 「爺、一人には出来ないですよ!?」

 「ヴィールデンタータ、ここは危険よ!」


 僕は、王太子だから。次期国王だから。

 国民を守る!


 「殿下、この御方はこの私めよりも強いです。ですから、早くお逃げください!」

 「僕だって魔法師の端くれだ。光の精霊よ、我に力を!《雷撃》!」

 「――《魔法削除》」


 えっ…消えた?

 僕の《雷撃》が消されてしまった。


 「こんな弱い魔法を俺に放つのか?お前、嘗めてんだろ?」


 弱い…?


 「殿下!お逃げください!」

 「ほら、逃げるわよ!貴方が死んだら、国民全員が悲しむわ!」

 「でも…」

 「《呪殺》」


 男性は魔法を放ったが、その魔法を爺が庇った。


 「ちっ…」


 男性は舌打ちした。


 「うっ…!?」

 「爺!?」


 爺は苦しみ始めた。

 ああ、どうしよう…。爺でさえ勝てない、この男性に僕が勝てる訳ない。

 僕は死ぬ?



 ふと、前を見た。

 その時、見知った背中が二つあった。

 一つは国王である祖父の背中。もう一つは、アヴィルだった。

 何でここに!?

 魔法がちゃんと出来ないアヴィルでは、直ぐに死んでしまうよ!


 「フェージンはルデンを守ったんだな、良くやった。助けてやろう。《浄化》」


 アヴィルは爺に光属性最上位魔法の《浄化》を掛けた。

 アヴィルは魔法が出来ないんじゃなかったっけ?何で、最上位の魔法が使えるの?

 僕は多分、アヴィルの事を何も知らないんじゃないかって、この時、思ったんだ。

***

 俺とヴァールデンはルデン達が居る大広間に《瞬間移動》で移動した。

 見れば、フェージンは《呪殺》に掛かっており、とても苦しそうにしていた。

 なので、《呪殺》を《浄化》してやった。

 さてさて、ルデンを殺そうとした敵は…。


 「あれ?何でここに?」

 「アヴィル!?お前の父親、生きてるし、若すぎじゃないか!?」

 (は?この敵の男性、アヴィルの父親なの!?僕を殺そうとした男性が!?)

 「ちょっと、黙れ。ヴァールデン」

 「す、すまない…。少々、取り乱した」

 (アヴィルに謝った!?国王である祖父が!?)


 おいおい、何でここに、元父親であり魔族のグレファが居るんだよ…。


 「お前、何をしに来た!」

 「あ?その王太子になったソイツが邪魔だから殺す為に来た」

 「アヴィル、これは一体、何を言っているのだ?」


 一応、ヴァールデンに説明しておくか。


 「アイツは俺の元父親で、今は魔族。名はグレファ。敵だ」

 「魔族がまだ居たのか…?魔王を倒せば、魔族とやらも…」

 「魔王は討伐したさ。()()と言う存在は」


 もしかすると、アイツも何処かで生きているのか?でも、俺が刺したしな…。

 でも、グレファとかが行動をとるのは、アイツの命令のみだし…。


 「《雷撃》」


 俺はグレファに放った。

 放たれた場所には誰も居なかった。


 「ちっ…」

 「倒したのか…?」

 「いや、あれは逃げたな。これからも、ルデンを殺す為の刺客が来るだろうな」

 「これからも頼んだぞ」

 「まだ、学校に行かなきゃならないのか…」


 俺から溜息が漏れる。


 「あ、アヴィル?」


 ルデンが俺を呼ぶ。


 「何だ?」

 「アヴィルは一体、何者なの?」


 俺とヴァールデンで顔を見合わせる。


 「もう、隠すのは難しいだろう?」

 「そんな気がしてた」

 「なら、明かせば良かろう?」

 「そうするか…」


 俺はルデンの顔を見る。


 「帰ったら教えてやる。取り敢えず、ここは解散しようか」

 「うむ。時間が時間だしな」

 「メルヴェル、居るか?」

 「はい、ここに」


 きっと、遠くから《瞬間移動》して来たのだろうけれど、その場所から俺の声が聞こえたのか?謎。

 まあ、それはいっか。踏み込んだら不味い気がするしな。


 「あの…役作りは、もう、しなくても宜しいんですか?」

 「ああ」

 「それは良かったです」

 「取り敢えず、学校の寮の部屋に移動する。手を繋げ」

 「それでは、お手を拝借しますね。カロサ、お前はこっちに繋げ」

 「分かりましたよ…メルヴェルさん」


 因みに、カロサはメルヴェルと一緒に来ていたのだ。


 「ルデンも」


 俺はメルヴェルと繋いでいない方の手を差し出した。


 「えっ、あ、ああ…」


 ルデンが手を繋いだのを確認した。


 「じゃあな、ヴァールデン」

 「宜しく頼むぞ」

 「《瞬間移動》」




 俺は、メルヴェル、カロサ、ルデンと共に学校の寮の部屋の前に移動した。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。


***


次の更新は明日、1月3日です。

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