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ルデンSide
僕の父親である、ヴィリアルン王太子が先日、何者かによって殺されたと、手紙で知らせが来た。
それが昨日。そして、今日は王宮に帰って来いと祖父――国王陛下より王命を昨日の手紙に書いてあったのだ。
朝に昔から僕に付きっきりで世話をしてくれた爺――フェージン・アリオルドが馬車を引いて迎えに来ていた。付いて行くと五月蝿い、アヴィルとカロサ様と僕の関係性を、友人に収めるのに苦労した。
爺は昔から、僕の世話をしながら、僕の護衛もしていたのを知っていた。だけど、この春から一人、寮生活になって爺は僕の護衛が出来なくなった。
ああ、爺は僕の無事を心配しているんだろう。
本来、部屋は二人一つの部屋なのだが、僕の部屋に僕一人しか居ないのは、もう一人の人物に何かされて、僕の身に何か有ってはいけない為に、僕の部屋に僕一人だった。
だけど、つい先日、僕の部屋にアヴィルが入寮してきた。そして、昨日、カロサ様が泊まり始めた。
積み上げてきた対策はどうなったのだろうか。
「ヴィールデンタータ、久しいわね」
僕が考えながら、廊下を爺と歩いていると、反対側からドレスで着飾った女性が僕の名を呼んだ。ルデンじゃなくて、僕の本名を呼んでくれる人に久々に会った気分。…皆、僕を「殿下」と呼ぶからさ。
その女性は、シスナータ王女。僕の従姉である。
「姉上、お久し振りです」
「固くならなくても良いのよ。私の事は昔と同じ様にシス姉様で良いのよ」
「は、はい…シス姉様、本当にお久し振りですね」
「ええ、貴方が元気な所を見れて良かったです」
「僕も、シス姉様が元気な所を見れて嬉しいですよ」
事実、ここ二、三年は会ってないんじゃないかな?同じ王宮暮らしでも、王宮は広い。王宮に居るのに会えないなんて事は結構ある事だし。
昔、よくシス姉様が遊んでくれたな…。
良い思い出だ。
「それでは、私はこれで失礼するわね。またね、ヴィールデンタータ」
「はい、また」
僕と爺は止めていた足を動かし、目的の部屋に向かう。
目的の部屋には、国王陛下が居る。
気を引き締めて、態度や身なりを見直しながら進んで行った。
***
メルヴェルSide
私は王宮前で団長殿とカロサを見付けた。
「団長殿ー!」
私の周りと団長殿達の周りには誰一人として居なかったので、叫んで呼んでしまった。
私は、団長殿に気付いて貰ったのを確認すると、孟ダッシュで近付いた。
ああ…愛しき敬愛の対象、私の団長殿。
私は、団長殿の名前を呼び捨てで呼んでしまった。
私の事を呼んでくださっていた団長殿はと言うと、私を殿付けしている。何て事っ…!?
ああ、私は明日、天国へと旅立っていくのですね…。
いえ、私は明日、団長殿を呼び捨てにし、上から目線で話してしまった罰として神罰がくだり、地獄へ落とされるのでしょう…。
私達は王宮へと入った。
「メルヴェル殿、何か考えておいでですか?まさか…俺を呼び捨てにしてしまったー!とか、思ってませんか?」
ギクッゥゥ…。
「気にしないで下さいね。短期間の辛抱ですから…」
「何も気にしてはない。だから、必要時以外は喋りかけるな」
あっー!もう…私ったら。
団長殿に命令するなどと…。
それに、私って、そんなに分かりやすいのだろうか…。
気にしてたら、この先の短い人生が、もっと短くなりそうだ。
気長に、気長に。
私はこれから、我慢生活が待っているのよ。
その先にあると思われる幸福を信じて。
***
王宮の大広間(よく行くよな、ここ)に俺達は通された。
そこには沢山の人々が詰め詰めになっていた。
「人が沢山居ますね」
俺はそう言った。不慣れな敬語を使って。
「うむ。ここには貴族位を持つ者全て揃っているからな」
「貴族位ってこんなに有るのですね」
何も知らない学生として俺は偽っている。こんな話をしていても不自然では無いだろう。
まあ、実際、俺も辺境伯爵として貴族位を持ってるからな。ある程度の事は知ってる方だと思う。
「これは、これは。メルヴェル殿ではないですか!」
「久しいな、アードン卿よ」
「我が息子達が本当にお世話になってます」
「うむ。上は未来が輝かしい若者共に団長殿の歩みを学校で教授し、下は我が魔法師団団員としてしっかりと働いてくれているぞ」
アードン卿?このオッサン、家名はアードンなのだろうから…。
変な教科『魔法師団団長殿の歩み』を教えているのは、シュンデイン・アードン。
魔法師団の団員で、何かアードン関連で聞き覚えのある団員が、シェリフ・アードン。
シュンデインとシェリフは兄弟なのか?家名が同じだし…。
まあ、いっか。俺には関係無い事だしな。
「ところで、メルヴェル殿。そちらの学生はどの様なご関係で?」
「王宮に見学しに来た学生だ。暇潰しの代わりに、案内していたのだ。まだ、最終目的地ではないが、これから始まる催物を見せようと思ってな」
「流石はメルヴェル殿ですね」
すげぇな、メルヴェル。
適当な理由が具体的に聞こえて、マジの理由に聞こえるぞ。
「私はこれで失礼させて頂きます、メルヴェル殿」
「うむ」
アードン卿は人混みの中に消えて行ったのと、同時に男性の大きな声を張り上げている声が聞こえてきた。
「静粛に!これより、各王族の方達の入場です!」
その場に居る全ての者達の話し声が止み、大広間に王族共が入って来た。
勿論、ルデンも。
学校の制服に豪華に着飾っていた。
ああ、シスナータ王女も居るやんけ。毎度会う度に睨まれるんだよ。
「それでは、我らが国王陛下の入場です!」
王族共が入場し終えた後、大声を出す男性はそう言った。その声に反応したのかの様に音楽が聞こえてきた。
「華やかな音楽ですねー」
カロサが音楽を耳に聞き入れる様にして呟いていた。
「これは本来、団長殿に捧げる為の曲だ。仕方無く、国王に捧げる事になったのだ」
何か、メルヴェルは悔しそうにしていた。
と言うか、俺に捧げる曲!?
そう聞くと、ヴァールデンの顔が今にも具合の悪そうな顔に見えてくる…。
ストレスかな?
ヴァールデンは定位置とも言えそうな場所に着いた。まあ、その定位置と言うのは王座の目の前なんだけどさ。
「先日、我が息子であり、次期国王であったヴィリアルンが何者かによって殺された。今日、今は亡きヴィリアルンに代わる王太子を任命しよう」
ヴァールデンはそう言った。貴族共の盛り上がり様は凄まじかった。
「静粛に!」
王族共やヴァールデンの入場に声を張り上げた男性が言った。すると、貴族共の話し声が止んだ。
「では、始めよう」
ヴァールデンはここで息を整える。
「ヴィールデンタータよ、前へ」
遠くからでもよく見える。ルデンの「えっ?」と言いたそうな顔が。
「どうした?ヴィールデンタータ。何か我は可笑しな事を言ったか?」
「あ、いえ、何でも有りません」
ルデンはヴァールデンの目の前で跪いた。
「ヴィールデンタータを王太子として任命し、次期国王として我が王国の繁栄と末永い素晴らしい未来を創り上げる事を願う」
「はい。ぼ…私は国王陛下の期待を裏切らぬよう、王太子として次期国王として、この王国の繁栄と末永い素晴らしい未来を創り上げる事を誓いますっ!」
俺は一言一句、同じ言葉を聞いた覚えがある。まさかだが、この言葉は決められているのか?
ヴァールデンが王太子に任命される時に言ってた言葉と同じ…。
「うむ、父親が死んでしまって、今、途方に暮れているであろう」
「国王陛下…?」
「努々忘れるな、王太子。其方は一人では無いことを」
きっと、このヴァールデンの言葉は、ルデンを心に響いた事だろう。
それにしても、一人では無い、か…。
俺は静かに一人、この大広間を出ようとした。
「待て。何処へ行く」
メルヴェルに止められた。まあ、式典中に抜け出すのはマナー違反だからな。
「ヴァ…国王に呼ばれてまして。先に行っておこうと思った訳ですから、ここは抜けます」
「分かった、見逃そう」
「一人で行くの?」
メルヴェルは見逃してくれるが、次はカロサに捕まった。
「ああ」
「付いて行っちゃ、駄目だよね…ここからは」
(ずっと付きっきりなら、ふとした願い事を叶えられるけど…)
俺はメルヴェル、カロサの背を向き、大広間を出た。
今、王宮内を歩いている。
ヴァールデンが指定したプライベートルームは、あの大広間から少し離れている。
ああ、《瞬間移動》で楽に着きたい。歩くのは面倒だ。
かと言って、ここで《瞬間移動》して、着いた場所に誰かが居れば不味い。だから、俺は歩いているのだ。ちゃんと。
ここは、王宮でも王族とその護衛しか入ることが許されないプライベートルームが揃う場所に差し掛かる。国王ともなれば、一番奥の豪華なプライベートルームなのだ。
はあ…。
何でよりによってヴァールデンが国王なんだか。一番遠いじゃねーかよ…。
「あれ?何でここにアヴィルが居るの?」
うわぁ…ルデンに会っちゃったよ…。俺とは別ルートだな、きっと。
ルデンの傍らにフェージンが居る。護衛であるため、傍に居るのは当たり前だが。
「用があって来た」
「僕に?」
「いや、国王にだが?」
何で、ルデンに用があるだけでここまで来る必要があるんだ?
「国王陛下はお疲れだよ。国王陛下に何の用があるのかは知らないけれど、伝言なら聞くよ」
「んー…どっちかと言うと、国王に呼ばれたのが正しいな、これは」
「僕達王族なら分かるけど、一国民であるアヴィルが呼ばれるなんて分からないな。それも、プライベートルームにでしょ?」
「ああ。多分、既に待たせてるだろうし、もう行くわ」
俺はルデンとフェージンを横に過ぎ去った。
ヴァールデンの待つ、プライベートルームを目指して歩きを少し速めて、進めんでった。
一番豪華なプライベートルーム。それは、国王のプライベートルームである。
他の外壁とはまた違い、より一層、煌びやかで豪華な装飾が施されているのだ。
…俺が何を語ってんだか。
やっと、ヴァールデンの居る部屋に辿り着いた。本当に遠かった。
俺はマナーとかをガン無視して、勢いよく、扉を開けた。
ここまで読んでくださり有り難うございます。
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***
余談(飛ばしても大丈夫です!)
ルデンによるアヴィルとカロサを友人収め(フェージンSide)
「それで彼等は殿下とどの様なご関係で?」
私は先輩は勿論、カロサモンティス様も知っている。なので、殿下を心配する必要は無いのだが、疑う素振りを見せておかないと、何かと不自然でしょう。
「あー、えっとー…あ、友人、友人だよ。彼等は僕の友人。不安なのはわかるけど、安心して、爺」
友人・・・ですか。
先輩とは、先輩後輩それ以上の関係にはなれなかった。殿下が何処かズルいと感じてしまうのは何故でしょうか。嫉妬してしまいます。
「やはり……疑わしい?」
「え、ええ、まあ」
「あんな感じだけれど、大丈夫だと思う。一人は魔法が発動出来ない程だし」
先輩が魔法発動出来ないと言う体をとっているのを、陛下から聞かされています。態々、魔法を不発にする…流石は先輩。いつかはその技術、御教授頂けたら………。
「爺。心配しなくても良いよ。本当にあの二人は、大丈夫だと思うから」
・・・微笑ましいですね。
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次の更新は明日1月2日です。




