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あけおめ、ことよろです!
「…あれ?アヴィルが僕より先に起きてるなんて初めてだね?」
先に起きていると言うより、俺は貫徹ですが?
「そんなことより、お前が一番最後だぞ」
「ふへ?」
今、カロサは朝食の準備中だ。
「ところでお前は今日、何を着て行くんだ?」
「王宮に?」
俺は首肯く。
「学生の正装は学校の制服だ、ってお祖父ちゃ…あ、こ、国王陛下に言われてるんだよね。だから、僕は制服かな?」
お祖父ちゃんね、言い直さなくても良いんだぞ、ルデン。
「じゃあ、俺も学校の制服を着てくか…」
「やっぱ、行くの?」
「面白そうだから、行く」
「そこまで面白くは無いと思うけど…」
んな事は知ってんだよ…。
ヴァールデンの王太子任命式をこの目で見たからな。くっそ、詰まんなかったのを覚えてる。
だがな、俺はお前の護衛…だから、付いて行くしかねーんだよ。
「さあ、早く食べちゃいましょ」
「本当に美味しいです」
「メルヴェルさんに褒められるかしら?殿下」
「ええ!」
本当に、ルデンとカロサは仲良くなっちゃってから…。
俺達は速めに朝食を済ませ、早急に着替えた。
「ねえ、アヴィル」
「何だ」
「いつものように着崩したら駄目だからね?」
そう言いながら、ルデンは俺の制服のネクタイをキツく締める。
何処かのオカン…。
「やっぱり、違和感ある。ネクタイ緩めるわ」
「僕がせっかく締めてあげた途端に緩めるのだけは…!あのね、アヴィル。これから、国王陛下の御前に行くんだよ?そんなだらしない格好は失礼だって!」
「多分、国王が怒る前にメルヴェルが許す」
そして、ヴァールデンをメルヴェルが脅す。
ちょっと違うな。ヴァールデンの横に立っている髭の男性――ランドメントルがメルヴェルに脅されるのか。
「あのね…一学生にメルヴェル殿が簡単にお許しを頂けるとは限らないんだよ?」
一学生になら分かるが、俺にだからなー。
メルヴェルの機嫌取り大変だって言ってたしな。今、とてもじゃないけど機嫌悪いんだろうな…。
「まあ、怒られたら、直せば良い」
怒られたらが先ず無いと思うけど。
「メルヴェル殿の本質を知らないからそう言えるんだよ…。国王陛下でも手が付けられない猛獣だから」
「メルヴェルが猛獣なわけあるか」
でも、ルデンをよく見ると、身体中に鳥肌を立たせながら、ガクガクと震えていた。
本当に何をしてんだよ、メルヴェル。
「二人とも、準備終わった?外にね、何か豪華な馬車が停まってるんだけどさ、これってルデンを待ってる馬車?」
カロサが窓の外を見てそう言った。
ルデンが確認しようと、窓から少し身を乗り出す。
「…!そうです!あれは、我が王族の家紋が掲げられた馬車です。つまり、僕の迎えですね」
「なら、もう外に出ないとね」
「はい、そうですね、って…カロサ様まで行くんですか?」
「そうよ、アヴィルくんが行く限り私も行くのよ」
(ずっと近くに居れば、直ぐに願い事を叶えられるもの)
俺とカロサ、ルデンは寮の階段を一段ずつ降り、外に出た。
馬車の前で一人の老いた男性が立って待っていた。
「殿下、お迎えに上がりました」
「有り難う、爺」
「して、殿下…後ろのお二方はどちらで?」
「ああ、大丈夫だよ、心配しないで」
「分かりました。ですが、殿下の身に何か起きた場合、処罰をしますので」
男性はルデンに仕えているんだな。
それに見たところ、この男性は結構、魔法の腕が立つ方だろう。
「さあ、お乗りくださいませ、殿下。そして、そちらのお二方も」
ルデン、カロサと言う順番に乗り込んだ。
「…先輩、王宮からの殿下の護衛は任せてください」
俺が乗り込もうとして手すりに手を触れた瞬間に、背後から男性が俺にそう言った。
ああ、やはり、この男性はルデンの世話だけでなく、護衛も努めていたんだな。
それに…俺に「先輩」って言ったか?この男性は。しかも、俺がルデンの護衛をやっている事を知っているようだ。
「陛下から聞いた通り、若すぎますよ…先輩。それに、私が誰だか判らないご様子ですので、私の方から名乗らせていただきます。私はフェージン・アリオルドです。今は王宮で執事長をやっておりまして、ヴィールデンタータ殿下の世話係兼護衛役です」
フェージン・アリオルド?
何処かで聞いたことがあるような気がするが…。
「まさか、先輩。名前を聞いても思い出せませんか?私ですよ、私。先輩の魔法に憧れて、魔法を時たまに教授して貰っていた」
「あー、あのフェージンか。どうも、顔と名前が一致しなくてさ」
フェージンが、五十年後の世界で再会した中で一番、容姿とか全て変わっている。顔の骨格から変化しているんじゃないか位に。
まだ、メルヴェルやガードラーレ、ヴァールデンは顔と名前は一致するからな。
「先輩、陛下から伝言を預かってます」
「何?」
「今日の殿下の王太子任命式が終了した後、陛下のプライベートルームにてお待ちしておりますとのことです」
え~めんどくさいなぁ…仕方無いか。
「分かった」
「先輩は、陛下のプライベートルームの場所をご存知で?」
「ああ、大丈夫だ」
俺はルデンとカロサが座って待つ、馬車へと乗り込んだ。
フェージンは御者台に座った。何と、後輩、馬車を引くらしい。
まあ、そんな事はどうでも良いか。
「アヴィルは爺と何を話していたの?」
「俺の身元について」
俺は適当な事を言った。
何を話していたかなんて、ルデンには絶対に言えない。
言えても言わない気がするが…。
「身元って…何て答えたのさ」
「貴族」
一応、俺は貴族の辺境伯爵位を持ってる。
だから、一応は貴族になる?一応じゃなくても、貴族か。
貴族の威厳とか聞くが、そんなもの気にした事は無い。
「アヴィルが貴族…?信じられないな」
産まれも貴族なんだがな。家が辺境伯爵家だった訳だし。
「それは、私も分かる気がするわ」
オイコラ、カロサ。
「何で信じられないんだよ」
「魔法が全く出来ないし…」
「魔法が出来ていないと貴族ではない理由になるのか?」
「なるよ。騎士の家柄でも貴族であれば、幼少期から魔法は習うしね。今や、魔法の実力次第で働き手が決まる訳だし」
そんな時代…?
「気にした事は無かったが、俺が魔法師団を目指すのは…?」
既に魔法師団に所属してんだけどね。
「諦めた方が良いね。団長殿に憧れる人が多すぎて、年々合格倍率が高くなっているって聞くし」
いや、俺に憧れてどうすんの?
あっ、そう言えば、ルデンや他の者達は俺が王国の魔法師界において最強である事を知らないんだった。
カロサは一人、笑いを堪えるのに必死だった。
「でもさ、実際に団長に会ったことのある者って極僅かだろ?」
俺に会ったことのある者が。
「そうだね。でも、国王陛下や、メルヴェル殿、ガードラーレ殿は会った事があるんだって。僕も会ってみたいかも」
おい、ルデン。現在進行形で会ってるぞ。
メルヴェルやガードラーレですら拝むことが少ない、俺の寝顔まで見れてるぞ?
「着きました、殿下、それにご友人のお二方」
俺とカロサはルデンの友人として収まっていた。
「さあ、降りよう」
「ああ」
俺達は馬車から降りた。
「殿下はこちらですが、お二方はあちらからです」
「じゃあ、また、後で」
ルデンとフェージンは王宮へと入って行った。
俺達は、別門から入る。
「私達が初めて会ったのも王宮なのよねー」
「まあ、そうだったな」
「団長殿ー!!」
遠方より、走ってくる者ありける。
「あれって…メルヴェルさんじゃない?」
「ああ、そうだな。俺はビックリしている事がある」
「何に?」
「このタイミングに、周りに誰も居ない事に」
「正体をバレなくて良いじゃない」
「団長殿、やはり来られてましたか」
「よ、メルヴェル。久し振りだな」
俺に会った事で少しは機嫌を良くして貰って頂こうではないか。
「私、心配してたんですから!ちゃんと食事を取られてるかどうか…」
「ちゃんと食事を取る為にカロサを連れてった」
「私じゃ駄目ですか…?」
「いや、メルヴェルは忙しいだろ?」
「大丈夫ですよ!」
こりゃ…学校の寮に泊まる事になるんだろうなぁ…。何も聞かない気がするし。
「メルヴェル、これだけは守れよ」
「はい…?」
「ルデンに俺が魔法師団団長だと言うことを秘密にしている」
「ルデン…ああ、殿下の事ですか。分かりました。それで団長殿を何とお呼びすれば…?」
よく、ルデンがヴィールデンタータ殿下だと分かったよな。兎も角、俺を呼ぶ名は…取り敢えずだが。
「んー…アヴィルと呼び捨てで呼んでくれ」
「えっ、団長殿を呼び捨てなど!」
「嫌だったか?」
「いえ!滅相も御座いませんですよ?ただ、私の様な若輩者などが団長殿の名を呼び捨てにするのは…」
面白そうだな。よし、振ってみよう。
「宜しくお願い致します、メルヴェル殿?」
「団長ど…」
俺はメルヴェルを睨む。本当は睨みたくはないけれど、ここは敢えて。
「承った。短期間だろうと思うが、こちらからも宜しく頼むぞ、アヴィル」
俺は首肯く。
取り敢えず、メルヴェルに及第点を上げようではないか。
「さあ、入りましょう、王宮へ」
俺がそう言うと、メルヴェル、カロサが返事した。
「うむ、そうだな」
「何か、アヴィルくんが敬語使うなんて違和感ある(笑)」
何で、そこで雰囲気をぶち壊すんだよ、カロサ。
「ここからは王宮だ。神と言えど、分を弁えろ、カロサ」
「俺は分を弁える必要はあるんですかー?」
面白半分で聞いてみた。
「勿論、アヴィルにも弁えて欲しいものだが、別に大丈夫だろう」
おお?
「メルヴェルさん!?私と差が有り過ぎませんか!?私が鞭を受けてるなら、アヴィルくんは飴を貰っていますよね!?」
飴と鞭…。
と言うか、俺に至っては別の意味で突き放されて居るんだがな?
「もう良いか、カロサ。そこまで気にする様な事ではないぞ」
「アヴィルの言う通りだぞ、カロサ」
「気にするわよ!」
言い合いながらも、俺達はルデンが入って行った門とは別の門から王宮へと入って行った。
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