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 「うわっ!?アヴィルが女を連れてきた!?それも、メルヴェル殿以外の!」


 毎回ながら、リダルンディの驚きようには少し引く。


 「アヴィルくん!?帰るって、ここ!?」

 「リダルンディ、俺、最近、朝食全然食えてないからさ、コイツに作らせる」

 「「…は!?」」


 今度はカロサとリダルンディの声が重なった。


 「駄目なら、メルヴェルを呼んで作らせるか…」

 「学校のそれも寮にメルヴェル殿が現れたら、生徒達がパニックになりかねない。それに、アヴィルの食事事情も心配していた所だ」


 なら、OKと…。


 「カロサ、自己紹介を一応、しておけ」

 「これは願い事?」

 「じゃあ、しなくて良い」

 「アヴィルがそう言っているが、一応、してくれると有り難い」

 「仕方無い…私は召喚の女神カロサモンティス。アヴィルくんや、メルヴェルさんから、カロサと呼ばれています」


 忘れそうになるが、召喚の女神カロサモンティスは、神なのだ。あくまで神であって、人間ではないのだ。

 人間の感性そのものに似すぎて、すっかり忘れそうになる。


 「召喚の女神…?」


 驚いて硬直しちゃっている者が居た。


 「次はリダルンディの番だろ?」

 「あ、ああ…私はリダルンディ・フェーンリィ。この国立高等魔法学校の学校長を勤めています」

 「リダルンディくんね、分かったわ。これから宜しくお願いするわ」

 「あ、はい…」


 カロサから、くん呼びされてる…。

 もしかすると、カロサの方が俺よりも、また、ヴァールデンやリダルンディよりも年上なのかも知れない。多分、メルヴェルよりも?

 カロサとリダルンディは握手を交わした様だ。


 「じゃあ、俺は(学校の)制服に着替えてくるわ。校長室の更衣室で」

 「何でアヴィルは、校長室に更衣室があるのを知っている?」

 「何度か使ったことがあるから?」

 「何で使ったことがある事自体、奇怪(おか)しいのだが…」



 俺は校長室にある更衣室で着替えた。

 実は、学校の制服は《収納》で持ち運んでいたのだ。今度は、魔法師団の制服を《収納》しておく。


 「じゃあ、カロサ。俺達は寮の部屋へ行くぞ」

 「あ、うん、待って」

 「早くしないと先に《瞬間移動》して行っちゃうぞ」

 「えっ?アヴィルくん、魔力の使いすぎには…!」

 「使い過ぎとは考えたことは無いが?まあ、掴まれ。―――《瞬間移動》」



 俺とカロサで、寮の部屋の前まで移動した。時間的にはまだ、午後の授業が終わった位。

 まだ、ルデンは帰って来ていないだろう。

 俺はドアを開け、部屋に入る。


 「あ、アヴィルくん、私もここに寝泊りしなきゃダメ…?」


 よく考えれば、ここは男二人が住んでいる部屋だ。そこに女性であるカロサを泊まらせるのは、不味かったか…。


 「別にこの部屋でなくても良いぞ。リダルンディに言って、他の部屋を用意させるか…」

 「あ、別に良いの!良いんだけどね…」

 「俺が使っているベッドを抗菌しておくから、それを使え」

 「あ…うん、有り難う」


 俺はベッドに無属性魔法の《清掃》を使い、綺麗にベッドメイクした。


 さて、俺の寝るベッドが無くなった訳だが…。

 まあ、不眠生活でも別に良いんだがな。どうせ、授業中に寝るんだし。


 『ガチャ…』


 おっ?ルデンが帰ってきたな?


 「…ああ、アヴィル、居たんだ…」


 んん??

 その時のルデンの表情は、いつもの元気が無いように思えた。


 「どうした、ルデン」

 「…まあ、いっか…。僕の父親、現王太子が何者かによって殺されたと報告が来て、明日、僕は王宮に行かねばならない」


 …ヴァールデン、まだ言ってなかったのか。


 「まあ、アヴィルに言っても解らないよね…父親を殺されたと言う気持ちは」

 「誰が解らない、って言った?」

 「え?」

 「俺は父親だけでなく、母親も殺されてる。だから、ルデンの気持ちは少しは解る。それに、何か見知った様な口調で喋られても、普通にウザく感じる」

 「何を言って…?」

 「父親一人、殺された位で何をメソメソしてんだ、そう言う事だ」


 家族がまだ居る分なら良いだろう…?俺には居ないんだから。


 「無理だ!僕には耐えられないんだァッッ!」

 「…ガキが」

 「ガキって言った?アヴィルは僕らと同い年だよね!?」


 んな訳あるか。

 十二歳の子供達の中に十八歳の俺が混ざるのはどれだけの事か…。


 「あのぅ~…私は何を?」


 カロサをすっかり。


 「貴女は誰ですか?ここの学生では無いと思われますが」

 「私は召喚の女神カロサモンティス。カロサで良いわ…」


 急に上から目線になった、カロサ。


 「僕はヴィールデンタータ・ティナラータです。貴女は、我が王族に語り継がれる、世界と別世界を繋ぐ役割を担っていると言う、あの?」

 「あの、かは解らないけれど、そうね。この部屋でお世話になるわ、殿下」

 「カロサ、コイツの事はルデンで良いんだぞ」

 「あ、そうなの?」

 「いやいや…僕の事をルデンと呼ぶのはアヴィルだけだよ?」


 どうやって、普及させよう…。


 「私は基本、この部屋で料理を作る事になっているわ。これは、校長のリダルンディくんの頼みでもあるわね」

 「じゃあ、カロサモンティス様は、アヴィルの分だけ作るんですね」

 「ルデンも食ってけ。メルヴェルに料理を習い、そこそこは美味しい筈だからさ」


 カロサは住居人となったその日から、メルヴェルに料理・家事などを色々と扱かれていた。

 何でも、俺に尽くす時に恥じない様にらしい。そんなときが来るのかよ…と思っていた矢先に、こんな時が来たわけだ。


 「あのさ、メルヴェルって…あの、メルヴェル殿だよね?」

 「ルデンの言いたい人と同じだと思うぞ。元魔法師団団長補佐メルヴェル・アディブルワだからな。俺の言っているメルヴェルは」

 「アヴィル?メルヴェル殿を呼び捨てにしたら…不敬罪で処刑されるよ」

 「されねーだろ」


 と言うか、現魔法師団副団長のアレドラントにも同じ様な事を言われたな。


 「はぁ~…アヴィルは法に裁かれないんだったけ?」

 「どっちかと言うと、俺自体が法そのものだな」


 俺中心になる様な法を、メルヴェルがヴァールデンに圧力を掛けて立法しかねないからな。


 「本来、そう言った言葉を言うのは国王陛下位なんだけど…」

 「じゃあ、国王を脅せば良い?」

 「本当に処刑されるよ?笑い事では無く」

 「処刑執行人か、処刑台に勝てば良い」

 「処刑台に勝つって何?」


 俺でも解んね。

 俺とルデンが話し込んでいると、突然、カロサが立ち上がった。


 「時間も時間だし、夕食を作り始めるわね」

 「宜しく」

 「すみません…」


 カロサは部屋に併設されている台所に行き、夕食を作り始めた。

 何だか、ルデンが申し訳なさそうであった。


 「なあ」

 「何、アヴィル」

 「お前、明日、王宮に行くんだろ?」

 「うん。王命で収集が掛かったから」


 遂に、明日、ルデンに王太子を任命するんだろう。

 遅ぇな…。


 「んじゃ、俺も付いて行く」

 「は?王宮だよ!?アヴィルじゃ、入城すらさせて貰えないよ?」

 「ま、大丈夫だろ」


 それに、俺は一応、ルデン、お前の護衛でもあるのだから。学校の敷地内に居るならまだしも、その外に出るとなれば俺が付いて護衛する(行く)しか無いからな。

 でも、そんな俺がお前の護衛だと言うことは、口が裂けても言えない。


 「大丈夫なわけ無いからね!?もう…」


 そう言いながら、ルデンは溜息を吐き、そして、ある教科書とノートを取り出して、何かを書き始めた。


 「何してんだ?」

 「今日の授業の復習だよ。解らなかったから勉強してるの。邪魔だけはしないで」


 ふ~ん…。

 ルデンのペン先を見た。


 『我らが尊い神以上の存在であらせられる、魔法師団団長殿は何年何月何日にお産まれになったか。神聖暦で答えよ』


 そこには、そう問題が書いてあった。

 優等生且つ、学年首席のルデンが解らないとは不思議な程の問題だった。


 「何を見てるの?」


 視線を感じ取ったのか、俺に気付いたらしい。


 「…いや、そんな問題が解らないのかと思って」

 「…解るの?」

 「ああ、まあな」


 だって、俺の生年月日だよ?


 「答えてみてよ。聞くだけ聞いておく」


 何だよ…聞くだけ聞いておく、って。


 「神聖暦330年6月6日だ」


 これって、真面目に答えて良かった奴なんだろうか…。

 ルデンは教科書から答えを確認している。


 「当たってる…何で、アヴィルは解ったの?」

 「何でって…」


 そりゃ、自分の生年月日ですもん。


 「授業にちゃんと出席していなかったアヴィルが何で知ってるの…?」


 自分の授業があるとか先ず、恥ずかしい限りなんですけどね?


 「まあ、アヴィルに聞いても無駄だよね」

 「一理ある」

 「それを自分で言ってて悲しくならないの?」

 「今回はならないな」

 「今回は、って…前回があったのか」


 似たような、な。


 「出来たわよ、夕食」


 丁度良いタイミングかは判らないが、夕食が出来上がったらしい。


 「この部屋に食料があまりにも少なすぎてたから、神パワーで創り出したわ」


 神パワー??


 「魔法とは違うのか?」


 俺はカロサに問う。


 「人間と一緒にしないでちょうだい。私達は人間と同様に魔法を使うわ。でも、人間でも成し得ない事――つまり、物質そのものを創り出す事を私達神は神パワーと称してるの。その神パワーを私達神は魔法と併用して使ってるのよ」


 あれ?神では無い俺は、何も無い所から水晶を創り出してるぞ?それに、魔王だって、魔族を創り出してるよな?


 「あ、と言うことは国宝である、あの水晶を創り出した魔法師団団長殿はやはり…神様ですか?」

 「あんな物、私達神でも創れないわよ。死んで早く、私達神と同じ種族になれば良いわー」


 カロサよ。何故、俺の顔を見る。

 てか、俺が水晶を創り出してる事を知ってたんだな?

 あと、付け足し。俺を殺すんじゃない、カロサ。


 「まだ、魔法師団団長殿は神様ではない、と…」


 急にルデンが気落ちした。

 勝手に気落ちしてるけど、ルデンもルデンで俺を殺すんじゃない。

 まだって何!?俺って、人間じゃ駄目なの!?



 脳内超スピードでツッコミながら、カロサの作った料理を食べた。

 メルヴェルの味に似た料理だった。

 …普通に美味しかった。



 ルデンは夕食を平らげた後、明日は忙しいと言って、直ぐに寝た。

 カロサは食器などを片付け、俺の昨日まで使っていたベッドで寝た。

 俺はルデンとカロサの寝顔を見続けた。

 まあ、それぐらいしかやる事は無いしな。




 そして、夜が明ける。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。

***

余談(飛ばしても大丈夫です!)



 大晦日のアヴィルくん



 12月31日の夜。世間は冬休みで、明日、新たな年を迎える。


 俺の居た世界でも、地球と似たようなものはあった。

 年越しのカウントダウンはやってた。

 少し違う所は、年末年始は王都で大きな祭りも開催されてた。が、日本はカウントダウンで集結するだけだった。


 そして、大晦日のこんな真夜中に俺の暮らすアパートの部屋に、何故、有田と原田が居るのかがよく解らない。

 有田は三人分の蕎麦を作ってた。(勝手にキッチンを使って)


 「何で有田は蕎麦を作ってる?」

 「まさか、滝川殿は知らないのであるか!?」


 知りません。


 「滝川殿の知識に無駄にムラがあるのであるな…。有田殿が作ってるものは、年越しそばである!」


 原田が胸張って言った。

 見たところ、普通の蕎麦…だよな?


 俺はふと、時計を見る。後、三十分位で日付が変わりそうな時間だった。眠くなっても、原田が寝させてくれなかった。

 二人は、この部屋に上がった時に「三人でカウントダウンするよ(である)」と言って上がった。断っても無理矢理入った事だろう。


 有田が三杯の蕎麦を並べ、食べた。

 普通に美味しい、普通の蕎麦だった。



 日付が変わる十秒前。

 有田と原田は声に出して、カウントダウンし始めた。


 「「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1――――――」」


 日付が変わった。


 「明けましておめでとう」

 「あけおめである!」


 新しい年を迎え、それを祝っていた。

 二人は俺を見詰めている。まるで、何かを言えと。


 「明けましておめでとう…?」


 日本は言わなければならないのか?

 初めてこの言葉を聞き、喋った。

 有田や原田は、待ってましたと何故か、嬉しそうだった。

 ふむふむ…日本はカウントダウンして終わりではなく、カウントダウンしたら祝うのだな。


※※※


 …今、思えば何でアイツらは俺なんかと、年越ししようと思ったんだ?

 次の年、高校二年生で迎えた年越しにも上がり込んでた。


***

次の更新は明日1月1日です。

それでは、皆様、良いお年を!

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