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 入寮したその日の夜、校長であるリダルンディが部屋に来て、俺の明日からの制服や着替え、教科書とか色々持ってきた。

 ルデンは、ここまで校長が来ること自体に呆然していた。


 「何で校長がここまで来たのかな?普通にアヴィルが取りに行くので良いんだと思うんだけどな…」

 「知らね」

 「まあ、僕の勉学に差し支えが無いなら、それで良いんだけど」


 勉学か。

 ここで主席は取った事はあるが、最下位と言うのは取った事が無いな。

 極端過ぎる俺は、学年最下位を目指す事を決めた。普通に面白そうだから。

 成績優秀だとこの先の進路で大きく有利になるが、俺は既に天下の魔法師団団長らしいだから、別に進路など気にする必要が無い訳。


 「まあ、俺は勉学や魔法実技において、全ての教科で最下位を目指すんで。引っ張ったらそれまでと言う事で」

 「僕の話、聞いてた?僕は入学してからずっと主席なんだけど?」


 あ、マジで?


 「主席、没落」

 「僕には不思議に思うんだけどさ、アヴィルはどうやって編入出来たの?」

 「賄賂?」


 ちゃんとした理由を説明する訳にはいかないだろうから、適当にこんな理由を見繕う。


 「賄賂…賄賂!?国立高等魔法学校に賄賂で編入…極悪犯罪者だよ」

 「俺は法に裁かれない」

 「何の為の法律なんだっけ…」


 何の為なんだろう…。


 「兎に角、僕の順位に影響が出てしまうのなら、別の部屋に移動してね」


 俺はそれで良いと思うが、お前の祖父、国王のヴァールデンの決定でもあるからな…。何かと、ここ(学校)で権力者として力が有ったとしても、その願いは絶対に届かないと思う。


***


 こうして、入寮した日も深夜になり、翌朝になった。

 目が覚めると、既にルデンは部屋を出ていた。

 取り敢えず、学校の制服を着て、校長室へ行くとするか。

 俺が編入するクラス(教室)をまだ知らなかった。多分、ルデンと同じクラスなんだろうけれど、時は既に遅し、ルデンは居ないのだから。


 「《瞬間移動》」


 魔法の有り難みをほんの少し噛み締めて、校長室に移動した。




 「うわっ!?」

 「そんなに驚く事では無いだろう?リダルンディ」

 「きゅ、急で驚いた…兎も角、何の用だね?用も無しにここに現れる筈がない…」


 余計な一言が聞こえた気がするが…まあ、良い。


 「俺が行く教室は何処だ」

 「あ…。ヴィールデンタータ殿下と同じと行っても先に行かれてしまったのか…しょうがない。付いて来てくれ、アヴィル」

 「早く案内しろ」

 「…はい」


 リダルンディは俺を教室まで案内することになった。強制的に。

***

 メルヴェルSide



 先日、国王から頼まれた事があった。

 団長殿を殿下の護衛にし、国立高等魔法学校に通わす事。

 私は渋った。

 団長殿は魔王を倒し、お疲れなのだ。それなのに…。

 だが、こうも思った。

 五十年前にガードラーレさんによって転移させられた団長殿は、ここ最近の社会情勢などを知らない。それを含めた上で、学んで来て貰っても良いのではないのか、と。

 そして、昨日、団長殿が入寮したと連絡が来た。ああ、今日からまた、当分、私が団長殿の御食事をお作りして差し上げる事が出来ないのか…。

***

 ルデンSide



 僕の部屋にアヴィルが昨日、入寮して来た。

 この僕が通う、国立高等魔法学校は古くからあり、伝統のある由緒正しく、歴代の国王陛下がこの学校で幼少期を過ごしたと言う。そして、かの魔法師団団長殿もここで勉学に励んだと言われる、凄い学校なのだ。

 それなのに、アヴィルは学年最下位を目指すし、編入は何と賄賂で果たしたと言う。

 ああ、僕の入学からの主席の座が危うい。足を引っ張られて、成績が落ちたら…と思うと眠れない。



 朝、起きて、制服に着替え、食堂で朝食を取って、一旦、部屋に戻ってもアヴィルは寝ていた。

 寝坊するアヴィルを構う暇などは僕には無い。

 そのまま、学校に登校していった。

***


 「――ここだ」

 「そうか、案内ご苦労だった」

 「あっ、その子が編入生ですかぁ~?校長せんせぇ~」


 リダルンディに教室の目の前まで案内して貰い、そこで別れようとした時、教室から一人の女性が出てきた。


 「うむ、そうだ」

 「そうですかぁ~。私はぁ~、ラムソゥワンナ・クリンソンでぇ~、君のぉ~担任のせんせぇ~だよぉ~」


 ラムソゥワンナか。一言で言うと、ウザイ。そんな女だった。


 「アヴィル()、このラムソゥワンナ先生は、とても優秀な先生だ。一年前まで魔法師団に入っていたと言う程である。何か困った事があったら何でも聞くと良い」


 リダルンディに君呼びされるのは…。まあ、仕方無い事なのだが。

 て言うか、一年前まで魔法師団に入っていたから何?と言う感じなのだが。マジで。


 「まあ、多分、困る事など有る訳がないんで」


 そりゃ、一度、履修している教科に困る要素なんて有る訳がない。


 「何この子…感じ悪っ…校長せんせぇ~、私にぃ~任せてください~」

 「…あ、ああ!それでは私は失礼する」


 リダルンディはこの場をそそくさと、去って行った。


 「じゃあ~、入ってぇ~」


 俺はラムソゥワンナの指示にここは従っておくとする。


 「自己紹介、出来るぅ~?」


 俺は一応、自己紹介をする。


 「俺はアヴィルだ」

 「え、えっ?自己紹介ってぇ~それだけぇ~?もっとぉ~他にぃ~無いのぉ~?得意魔法とかぁ~」


 得意魔法か…。基本、何でも出来るから、そこまで得意と言う風に決めた魔法は無いな。

 取り敢えず、水属性魔法の《雫石》で良いかな。あと、不発を無理矢理狙おう。


 「水の精霊よ。我に力を《雫石》」


 超絶久し振りに詠唱したわー。

 無理矢理失敗するのはメルヴェルの力量でも難しい事であり、それが調整で出来てしまう俺は本当に凄い。(メルヴェル説)←これを記載しておかないと、俺が自画自賛している様に見える。

 まあ、結果は不発で終わったけど。何か気不味過ぎる空気になり、空いているルデンの隣の席に座った。


 「アヴィル…あれ、得意魔法だったの?」


 俺は肯定しておく。そんな訳は有る訳がないのだが。


 「嘘…。水属性の魔法でも最下位に位置する《雫石》が不発…?」

 「人を穿鑿(せんさく)するのは禁忌だぞ」


 最もらしい事を言った気がする。


 「気に障ったのなら謝るけれど、ここは実力がものを言うんだよ。アヴィルはそれで生存出来るの?」

 「別に生存していたいとは思っていない。なんなら、家でずっと読書してるか、ゴロゴロしていたい位だ」

 「あっそ。退学処分や、留年になっても僕は知らないよ」


 心配されてたのか?俺は。

 退学処分になろうが、留年になろうが、俺はこの学校を卒業した身だ。別にどうってこと無いのだ。



 そして、授業が始まったのだ。


 「――それで、魔法師団団長殿は数々の人々を救い、我々にとって神と同程度、それ以上の存在となったのです」


 一時限目の授業は『魔法師団団長殿の歩み』とか何とか言う教科らしい。教科書にそう書いてある。

 この教科が確立したのは、メルヴェルのせいだろう。それ以前に誰がする。

 教科別に教科担任と言うものがあり、今、授業をしているのはラムソゥワンナではなく、シュンデイン・アードンだ。



 俺から欠伸が出た。


 「この授業に欠伸とは何事です!問題に答えられるのなら、今回は許しましょう。それでは、団長殿の書かれた数多くの魔法書中の最終巻且つ最後に書かれた魔法は何か。魔法名で良いので答えなさい」


 シュンデインが何か言ってる…むにゃむにゃ…。


 「…」

 「ちょっ、アヴィル!?先生、完全に寝てますよ」

 「そうですか。なら、仕方無いですね。放課後に残っている様に言っておいてくれますか、殿下」

 「分かりました」


 因みに最終巻(と言う訳ではない)の最後に書かれた魔法は《龍炎》である。

 よく、ナシェリアが使っていた魔法。俺が魔王討伐する時に編み出された《魔光(まこう)龍炎》の元となった魔法である。

 俺のオリジナル魔法で、複合魔法の《龍炎》は聞くところによれば、ナシェリアの様なそう言う職に就くような人にしか知らない魔法らしい。

 こんな高等魔法学校如きで、《龍炎》を知っているとなれば、怪しまれる事間違い無しだな…。




 そんなこんなで、授業中ずっと寝ていた。

 昼休み、皆が昼食を取るような時間でも、寝続けた。

 結果、放課後になっていた。

 周りには俺を囲うようにして、今日の教科担任共が勢揃いしていた。


 「何故、団長殿の大切な歴史を話している時に寝るのです!?」


 シュンデインが言うと、他の教科担任が「何と!?それはいけませんなぁ~」とか、「団長殿の有り難みを知らないのですか!?」だの、あーだこーだ言ってやがる。

 いや、団長殿は俺だっての。俺が俺の有り難みを知るなんて意味不明だわ、こりゃ。

 俺は心の中でツッコミを入れながら、説教を静かに聞いた。


 …明日、ダンジョンに潜ろう。

 授業を聞いてても眠くなるだけだし、暇だし。

 ダンジョンに潜りたく無い日はどうしよう。

 よし、俺の魔法書の続きを書こうか。まだ、《魔光龍炎》は書き足してないんだよな。

 説教を聞いている人の脳内とは到底、思えないだろう。説教を聞きながら、明日からの予定を考えているのだから。



 教室に巡回してきたリダルンディが登場してきた。


 「そんなに教師が集結して一体何をやっているのですか?」

 「ええ、この生徒は私の授業をずっと寝ていましたもので…」

 「私の授業なんか、教室で寝ていたあまり、外に出ず、不参加だったのですよ!?」


 俺に対する不満をリダルンディにぶちまける。なんだ、俺に説教をしても溜まっていた不満は解消しきれてなかったのか。


 「彼方達教師陣の不満はよく分かりました。では、明日は私にこの生徒を預けてください」


 …は?


 「え?宜しいんですか?」

 「ええ。さあ、アヴィル君はもう寮に戻りなさい」


 リダルンディに言われたので、俺は何も言わずに教室を出た。


 「《瞬間移動》」


 誰にも見られていない事を確認して、寮の部屋の目の前まで移動した。

 部屋では、ルデンが勉強していた。

 今日の復習だろうか、それとも明日の予習だろうか。そんな事はどうでも良い。

 俺はルデンが勉強している隣で、静かに就寝した。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。

***

余談(飛ばしても大丈夫です!)


リダルンディの言う通り、ラムソゥワンナはとても優秀です。

学生の頃も、常に学年上位の成績を修めていました。

因みに、副団長であるアレドラントとは同級生且つ、同期入団でした。


***

次の更新は明日12月30日です。

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