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 「魔法師団の制服、とても良くお似合いですよ」


 メルヴェルは俺が着ていた制服を褒めた。


 「そうか?」

 「ええ。ですが…団長殿専用のローブでは無いことが、問題ですね…」

 そうなのだろうか…。

 「さて、夕食は出来ていますよ」

 切り替え、上手し。切り替え…なのか?

 「楽しみだ」

 「ふふふ」


 あ、メルヴェルが微笑んだ。

 これなら、戦場でも、何処へでも、行けそうな気がする…なんてな。


 「勇者達ですが…団長殿直々に訓練されてはどうですか?」

 は?何故、急に!?俺、絶対にやだよ!?

 俺は息を整えるために、一回だけ咳払いをしてから、こう言う。


 「態々、隠している事を曝け出すのか?元魔法師団団長補佐第二階級魔法師メルヴェル・アディブルワよ」


 もー、長ったらしい。長ったらしいたらありゃしない。

 あ、因みに俺の事をちゃんと言ったら、魔法師団団長第一階級魔法師アヴィル・リヴァーフォールズだよ。長いね。

 兎に角、そんな事よりも勇者共(クラスメイト)の訓練の話だったな。


 「…はっ!すみませんでした!」


 頭を下げている。


 「上げてくれ、メルヴェル」

 「そうですね、隠している事でしたよね。本当に申し訳ありませんでした」


 分かれば宜しい。


 「ああ、そうだ。水晶の方は、王家に寄贈してきてくれたか?」


 あの水晶の反応が気になるのだよ、メルヴェル君。


 「とても喜ばれておりました。ですが、劣化版ともあり、団長殿本人が創られたとは気付かれませんでした」

 「おおぅ…」


 何と!?

 折角、魔法師団団長殿本人が創ったと言うのに!?国宝級にはなるのでは、なかったのか!

 …なんて、嫌がらせで、性能をダウンさせたのだから、そんなことは気にしない。気にしないんだ…。


 「団長殿、明日は勇者達の訓練を視察されてはどうですか?」

 「いや…断固として拒否する。明日はこの王都の大きな図書館に行こうかと思っている」


 本当に行こうと思っているが、断固としてイヤだ。視察は。これは、本心である。


 「予定がおありでしたか…強制では無いので、大丈夫ですよ。でも…いつかは、いらして下さいね、団長殿」

 「覚えてたらな」

 「それでも構いません」


 その時が訪れるか分からない、約束をした。




 俺はその後、三階の寝室に行き、そのまま就寝した。

 今日は楽しかった。

 久し振りに満喫した気分だ。

 日本に転移前はずっと戦争の最前線に立ち、魔法師団の団長として、ずっと血を見てきた。

 日本に転移してからは、日本の事について慣れ、日本に、あの世界に順応するために、日夜四六時中、隠すのに必死だった。

 こんなにも、楽しい日々を俺は送って良いものなのだろうか…?

 俺が帰って来なかった間の五十年間。何が起き、何が変わったのかを、知るチャンスになれば良いな、明日は。


***

 翌朝。


 「おはようございます、団長殿」

 「ああ…おはよう、メルヴェル」


 俺はメルヴェルの挨拶により、意識がはっきりする。言うなれば、それまでは寝ぼけていると言う事だ。お恥ずかしい限りである。


 「団長殿、今日から当分の間、帰れません」

 「何故だ…と言っても、勇者関連か?」

 「はい。訓練時間を増やさなければ、弱いままですので。すみません」

 「…別に気にしていないが」


 昨日から、謝ってばかりじゃないか?メルヴェル。


 「食事等は使いの者に作らせますので、ご安心してください」

 「お、おう…もう、時間じゃないのか?」


 時計を指差して、そう言う。

 メルヴェルは、食器をフルスピードで片付け、出ていった。

 俺も、出掛けるとしよう。



 場所が変わっていない限りは、図書館に辿り着けるだろう。

 図書館行くついでに、俺の自宅だった家の前まで行ってみるか。

 家主が居なくて、寂しがっているだろう。だが、警備も硬い。何せ、王家の物になっているのだからな。入れないな…。

 俺の自宅だった家の前を通過し、図書館へと向かった。

 俺の自宅だった家…外見は変わりようは無いようで、良かった。




 自宅だった家を通り過ぎてから、約十分。図書館に着いた。

 よし、俺の物語?を綴った本を探すか!

 俺の物語を綴った本があるかも知れないと思った理由は、メルヴェル達が作ってそうだからだ。



 ――と、探した結果、分厚い本が何冊か見つかった。

 全部、かき集めて読書が出来る机に向かい、その椅子に座って、本を読み始めた。


 『かの現魔法師団団長殿は、王都にある豪邸にお生まれになられました』


 うん、これ絶対、魔法師団の団員が作った本だね。

 俺の生まれから違うし。王都出身じゃねーし。それに、実家はそこまでの豪邸では無かったし。


 『魔法の才が認められ、魔法師団に若くして入団されました』


 あー、そうだネー。


 『一年後に、団長の座に着かれました』


 そうだった気がするけどさー…。

 それにしても、俺の短い人生に分厚い本を何冊も有るのは何故なんだろうか。


 「其処を退いてくれたまえ」


 俺は本を読み進めていると、突如、メガネの青年に退けと言われた。

 メガネの青年は、魔法師団の制服を着ている。ローブは、刺繍が入っている。

 しかし、俺は退くのはお断りさ。


 「は?ヤダ。何故、退く必要がある?」


 メガネの青年は、怒っている。


 「貴様は、魔法師団団員だな?」


 俺の服見て解らないか?団員だよ。団長も団員に入るよね?

 まあ、ローブが刺繍無しだから、良くても団員程度には見えるだろう。


 「ああ、そうだが?何か」

 「私は魔法師団副団長アレドラント・ミレファームだ」


 それがどうした。って、感じだけど、副団長か…それも、今の。


 「今、読書中なんで。静かにしろ」


 俺は、本に目を落とす。


 「き、貴様…外へ出ろ。実力ってのを、見せてやる」


 いや、実力を見せつけられても…あれ?これの雰囲気って…あれだな。


 「何?決闘か?」

 「ああ」

 「じゃあ、この本達を全部、借りてきてからで良いよな?」

 「それでも構わない。貴様は、これから死ぬのだからな」


 おー、言ってくれるねー。



 早速、本を借りてきた。そして、アレドラントと一緒に外へ出た。本は、預かってもらった。


 「なあ、何処まで行くんだ?」


 アレドラントに着いていった訳だが、図書館から結構、歩いている。


 「王城にある、決闘場に向かっている」


 は?

 勇者共(クラスメイト)が居る、あの王城?

 あー、やべー…。俺、今、極悪犯罪者になってたんだわ…。

 俺自身が創った水晶を割った本人だから。


 「他には場所が無いのか?」


 王城に行かない提案を。


 「この魔法師団副団長を侮辱したんだ。罰だと思え」


 ちっ…。

 生意気な…。アレドラントにとっては、俺が生意気な団員となるのか。

***

 勇者達。


 「今日から夜遅くまで、訓練だ!」


 メルヴェルが叫ぶ。

 倒すべき魔王が、着々と力を強めている為、今すぐにでも仕上げなければならなかった。だが、勇者達は、まだ、魔法が使えなかった。


 「メルヴェル様」

 「シスナータ王女、何です?」


 メルヴェルにシスナータ王女が話し掛けた。


 「魔法師団の副団長様と魔法師団の団員が、決闘場で決闘を行うみたいです。勇者様達の後学の為にも、観戦に連れて行かれてはどうですか?」

 「そうですか。勇者共!決闘場にて、魔法の対人戦を観戦しに行くぞ!」


 メルヴェルは、こう言ったが、こうとも思った。

 (…何か、胸騒ぎがする…。団長殿が、現副団長のお相手じゃなければ良いですが…)

 メルヴェルの思っていた事は、正解である。



 勇者達は嬉しそうに、メルヴェルの後に付いて行った。


 「なあ、メルヴェル」

 「何だ」


 ガードラーレがメルヴェルに声を掛けた。


 「何だか、副団長の方が負ける気がするな」


 まだ、メルヴェルや、ガードラーレなど魔法師を含む、勇者達は決闘場には着いていない。その時の会話だと信じて欲しい。副団長の相手が本当にアヴィル―自分達の団長殿だと言う事を知らない時の会話。

***

 俺はアレドラントに連れられて、王城にある、決闘場に着いた。

 決闘場の観戦者(スタンド)がとても多い事に気付いた。

 見慣れた顔の面々が揃っている。

 …!?

 おいおい、勇者共じゃねーか!確か訓練中だった筈じゃ…。


 「貴様、怖気着いたか!」


 アレドラントは俺に向かって叫ぶ。

 そして、メルヴェルが前に出てきた。メルヴェルが審判をするのか!?


 「これより、魔法師団副団長第三階級魔法師アレドラント・ミレファームと…挑戦者、名を」


 まあ、この立場だったら、そうなるわな。

 現状、相手のアレドラントに名乗ってさえ、いないんだから。


 「魔法師団団員第六階級魔法師アヴィルだ!」


 余裕に偽るねー。俺、第六階級な訳無いし。


 「貴様、フルネームで答えろ!」


 あれ?名乗りって、フルネームじゃなくちゃいけないんだったっけ?


 「挑戦者アヴィル。認めます。それでは…始め!」


 アレドラントは、何故認められた?と言うような顔をしている。

 事実、この国に名字の無い人なんて居ないからな。



 俺は、勝手にハンデとして、立っていてあげるとしよう。

 理由?そんなの、動くのが面倒だから他に無い。

 突っ立っている俺に、アレドラントは当然の如く、魔法を放つ。


 「水の精霊よ、我に力を!《スコール》!」


 《スコール》と言う魔法は、水属性で、強い酸性雨を降らす魔法。水属性の中で結構、上位の魔法。最上位と言う訳ではない。

 しかし、副団長ともあろうお方(笑)が、標準二語とは。

 標準二語と言うのは、魔法発動の時に言う詠唱のようなもの。

 一語目は、『(属性の名前)の精霊よ』で、二語目は、『我に力を』である。

 確か、メルヴェルは一語目だけでいけた筈。

 俺は無詠唱だね。一語目すら言わず、魔法名だけで魔法を発動する。

 まあ、魔法名言わなくても発動出来るけど、言った方が分かりやすいから言うんだよね。



 おっと、忘れていたが、強めの酸性雨が降ってきた。


 「《超レインコート》」


 俺は発動させる。雨に耐えるだけの魔法を、創っといて良かったな。溶けたら嫌だからな。


 「何故、貴様がその魔法を使える!?」


 あらぁ、俺が《スコール》を耐えただけで、怒った。短気なんだね、現在の副団長も。


 「その魔法は、団長殿が創った魔法だ!《超レインコート》の載った唯一の魔法書は、現在、王家が厳重に管理されているのだぞ!」


 嘘…そんな物まで…。

 王家!俺の所有物全て奪うなや!


 「アレドラント、五月蝿い」

 「この副団長に向かって、呼び捨てするな!」


 五月蝿いのは事実じゃん。てか、声出してた?あれー?

 と言うか、俺、団長だから副団長(部下)である筈のアレドラントを呼び捨てにして何が悪い。


 「光の精霊よ、我に力を!《雷撃》!ははは…この魔法は団長殿が大量の魔獣を一撃で(ほうむ)った魔法だ!」


 ああ…そうだな。

 じゃあ、その大量の魔獣を葬った魔法を見せてやろうか、アレドラントよ。


 「《雷撃》」


 俺は、アレドラントの《雷撃》を消し去った挙げ句に、アレドラントにも被害を及ぼした。

 結果、アレドラントの負け。気を失っていた。あらあら。


 「勝者、魔法師団団員アヴィル!」

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。

***

来週はお盆ですね。(地域によって違うかも知れませんが)なので、13~15日に更新しようと考えています。

活動報告に簡単に詳しく書いてあります。

次の話も、読んでくださいね。お願いします。

***

さて、次の更新は8月11日の予定です。


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