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国王であるヴァールデンが居るであろう大広間に向かった。
ヴァールデンは勿論居たが、周りの者達が騒がしく、バタついていた。
「お、アヴィル!丁度良い所に」
こんな状況で丁度良い所とはどう言う事だと思いながら、ヴァールデンの話を聞くとする前に聞きたかった事を聞く。
「ヴァールデン、王宮中が騒がしいな。何かあったのか?」
「うむ…我が息子、王太子のヴィリアルンが未明、何者かによって殺されたのだ」
「ふーん…」
「もう少し、弔事の言葉とかは無いのか…友の子が死んだのだぞ…我は息子が死んで大泣きしたいと言うのに…」
よく見れば、ヴァールデンの目尻には赤く腫れた後があった。
「だから、こんなに王宮が騒がしいのか」
「うむ。これと言って、お願いしたい事がある」
「断る」
お願いしたい事がある?絶対に嫌だね。
「いや待て、何も言っていないだろう!?」
「…じゃあ、聞くだけ聞く」
「うむ!それだけでも有り難い!」
「早く言え」
「じ、実はな、我が息子ヴィリアルンの息子ヴィールデンタータを次期国王とし、王太子とする事にしたのだ。新王太子に護衛を付けたいのだが、ヴィールデンタータはまだ学生。そこで、アヴィルに国立高等魔法学校に通ってもらい、ヴィールデンタータの護衛を頼みたい!」
は…?
俺が、ヴァールデンの孫の次期国王の護衛?それに、国立高等魔法学校に通う??
「いや、待て待て!俺が国立高等魔法学校に通うだと!?俺はそこを卒業してるんだぞ!?」
「明日から編入って事にしておいたから。メルヴェル殿に了承も得た!」
何だと?
メルヴェルに了承を得ているのなら、もう、行くしか無いような気がする…。
「条件がある」
「ごくっ…」
ヴァールデンは唾を飲み込んだ。
「俺が魔法師団団長だと言うことは極秘に。授業中に寝てても起こさない事が条件だ」
どうせ、授業なんて受けてても意味がないと思うしな。それよりか、魔法師団としてずっと遠征に出てた方が為になる。
「勿論、アヴィルが魔法師団団長だと言うことは極秘にするつもりだった。しかし…授業中に寝られるのは…」
「じゃあ、その頼みは断る。友として頼んでいたとしても」
「もう、寝ても良いから!」
俺はニヤッとする。
「明日から編入と言うわけで、今日から入寮してもらう。この書状を持って、国立高等魔法学校に向かってくれ」
投げられた書状には、王命で俺を編入させる内容が書かれていた。
「仕方無い―――《瞬間移動》」
俺は母校国立高等魔法学校に《瞬間移動》で移動した。
あの頃から変わらない建物だった。
「貴方は何者ですか」
学校の敷地に《瞬間移動》した瞬間に誰かから声を掛けられた。その人は多分、ここの学生だろう、女子生徒だった。
魔法師団の制服ではなく、かと言ってこの学校の制服すら着ていない俺は完全に不審者だろう。一応、卒業生であっても、五十年前以上前(俺にとっては八年位前)だからな…教師でさえ知っている者は少ないだろう。
「ここに用が有って」
「それでは、事務室で良いですか?案内しますので、付いて来てください」
まあ、事務室で良いが…場所は知ってるとは言えなかった。
俺がここの卒業生だって言うことも極秘事項の一つだとヴァールデンに付け足しで聞いたからな。
女子生徒に俺は付いていく。
何も変わらない、校舎、制服。ほんの少し、懐かしさを感じた。
「ここが事務室です」
そう言って、その女子生徒とは別れた。
俺は二回ドアをノックして事務室に入る。
「何方ですか?ここの生徒ではないと思われますが…」
「これを渡しに来た」
「学校宛ですね。分かり…国王陛下から直々の書状!?これを持って私に付いて来てください!良いですね!?」
今日が偶々、事務当番の教員の女性は慌ただしくしている。
付いて来いと言われ、取り敢えず付いて行く事にした。俺の性分ではないが。
「貴方は何故、国王陛下直々の書状を持っているのですか?」
「渡されたから」
「見れば分かります。ですから…」
「それ以外の理由は無い」
あまり、良い顔をされなかった。
通常運転がここでは効かぬと言うのか…。
「着きました」
着いた場所は、校長室。
この学校は国が運営しているので、事実上の学校のトップである校長が居る部屋。
「失礼致します」
教員の女性は三回ノックして、ドアを開けた。その校長室には校長だろう、一人の老人男性が座っていた。
「何の様だね」
「はい、国王陛下直々の書状を持った青年が現れましたので、ここまで案内させました」
「成る程。君は下がっても良いぞ」
教員の女性はそのまま「失礼しました」と言いながら校長室を跡にした。
教員の女性が出て行ったのを確認した校長は口を開ける。
「では、その書状を見せて貰おうか」
俺は校長の目の前まで行き、書状を校長の机に置いた。
「ふむふむ…名前はここに記載されているのと同じかね?」
「間違った名前を記載されているのか?」
俺は後ろに回り、書状を確認する。
ヴァールデンは、校長には俺が魔法師団団長であることは知っておいて貰うらしい。まあ、校長位なら良いだろう…。知っておいて貰っても。
誰一人知らないのは居づらいのもある。
なので、俺の名前もフルネームで記載されていた。
「なんだ、合ってるじゃないか」
「アヴィル、アヴィル、アヴィル…?いや、同姓同名のアイツの子孫かも知らない…」
俺の名前を知ったとき、校長は書状と俺を血眼になりながら、物凄いスピードで見比べている。
「同姓同名のアイツってのが分からないが、ヴァールデンがここに通えって言うから…」
もう、校長にすら通常運転で話し込んでる。
まるで友人の様に。
偉かろうが何だろうが一般の人達と同様に扱うのが俺にとっては通常運転。だから、当時王太子だったヴァールデンも普通に呼び捨てにしてました。
「国王陛下の名を呼び捨てにする、アヴィル…本物!?」
「偽者って何だよ…」
「ゴホンゴホン。私はリダルンディ・フェーンリィ」
リダルンディ??
…。
ああ、リダルンディ!俺とヴァールデンとクラスメイトだった、リダルンディか。
いつも、成績は三席だった。
いやー、あのリダルンディが校長をやってるとはー。
「改めて。リダルンディ、久し振り」
「ああ…久し振り。それにしても、若過ぎるだろう…。私と五つ違うとしても、そんなに若い訳が無いだろう」
あれ?これって何処かで…。
ヴァールデンも同じ様な事を言っていた気がする…ああ、これはデジャヴか。うん、デジャヴだな。
「どうした、アヴィル」
「いやー、デジャヴだなーなんて」
「ん?」
「詳しいことは全てヴァールデンに問いただしな。取り敢えず、寮の部屋を案内しろ」
「あ、ああ、そうだったな。あの時と寮の部屋の番号など全ては変わっていない。部屋番号は509。それと、鍵」
「じゃあな」
俺は校長室を出た。
校舎、制服が変わっていないのに上乗せして、寮すら変わっていないのか。何一つ、変わらないんだな。
こう言うのを、伝統のある学校と言うんだったか?…まあ、いっか。
寮は五階建てであり、509の部屋は最上階の奥の一番大きな部屋である。
必ず、一部屋毎に二人部屋であるのは変わらないと聞いた。そして、ヴァールデンの孫ヴィールデンタータと同室となる。
あれ?ヴィールデンタータは二人部屋なのに、一人で住んでる?
最上階の部屋って不便じゃないか?寮と校舎、意外と結構な距離はあると思うし、五階と一階を登り降りするのは結構、めんどくさい。
俺は今、その寮の階段を登っている。日本で言うエレベーターやエスカレーターなどが在れば良いのに…。
五階は辛いって…。何なら、《瞬間移動》してやるか。
――五階ロビーまで。
全く変わっていない寮には、一つの階毎にロビーが設けられている筈だ。最上階の五階も例外無く。
実を言うと、ヴァールデンと同室だったあの学生時代の部屋は509。何と同じだったのだ。
ビックリだろ?俺はそこまで驚きはしなかったけどさ。
ああ、学生時代、ヴァールデンに毎日叩き起こされて、遅刻間際に教室まで《瞬間移動》をしたと言う記憶があるな。
うん、何か同じ日々を送ることになりそうだ。
「《瞬間移動》」
俺は五階ロビーまで《瞬間移動》で移動した。本当に便利な魔法だよ。
五階ロビーに到着して、そのままロビーを突っ切り、廊下を歩く。
奥まで歩く。
何で最上階の奥なんだよ。と、文句を言いながら。これも、あの時と一緒なのだ。
別に鍵など無しに開けることは可能だが、一応、リダルンディに渡された鍵で解錠し、ノック無しでドアを開けた。
元から居る住居人――ヴィールデンタータであろう少年と三分ぐらい目があって、静かな空気のままだった。
仕方無く、俺はそのまま無言で部屋の中に直行して行った。
先に喋ったのはヴィールデンタータの方だった。
「えっと…君が編入して来ると言う…?」
因みに、ヴィールデンタータにも俺が魔法師団団長であることは秘密だ。
それに何と、誰かが俺を童顔と言い放ち、無理矢理、十八の俺を十二と偽らせた人が居る。それも含めた全てが、ヴィールデンタータにも秘密なのだ。
とは言え、自己紹介した方が良いよな…この空気感。
家名まで名乗れば、俺が魔法師団団長だと言うことが即バレの可能性有りだな…。
「ああ、俺が編入して来たアヴィルだ。宜しく、ルデン」
「ルデン??僕はヴィールデンタータ・ティナラータ。この国の王族だよ??」
「王族だから?そんな事は知らね。それに、ヴィールデンタータって名前長いから、お前はルデンな」
ヴァールデンとヴィールデンタータを間違いそうになるから、ヴィールデンタータ、今日からお前はルデンだ。ルデンと呼ばせて貰うぞ。
「僕の名前を長いからと言って略す様な人は初めてだよ…。まあ、宜しく、アヴィル」
ルデンは早速、俺を呼び捨てにした。
まあ、くんとかさんとか付けて呼ばれても、ここで暮らす以上、生きづらさがある。どちらかと言うと、呼び捨てにされた方が良いのかも知れない。
ルデンは握手を求めるようにして、手を差し伸べてきたので、俺はそれに応じるように手を出し、握手した。
「宜しく」
こうして、一応、入寮は済んだのだった。
ここまで読んでくださり有り難うございます。
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余談(飛ばしても大丈夫です!)
リダルンディは毎回、学年三席でした。
理由は、アヴィルが主席、現国王のヴァールデンが次席だったからです。何をしても、三席以上の成績は貰えませんでした。
そして、毎日の様にアヴィルとヴァールデンがコンビを組み、リダルンディに嫌がらせをしてました。
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次の更新は本日12月29日12時です。




