エピローグ
やがて、明後日が来て、勇者達クラスメイトを送り返す日になった。
未だに、白鳥さんに俺のことについて話していない。
昨日、メルヴェルの自宅で一日、ゆっくり過ごしてしまったのである。
今日は行っておかなくちゃならないと思い、俺は王宮に出向くことにした。
召喚された時に居た所に、勇者達は勿論、国の重鎮?達が勢揃いしていた。
入った直後に直ぐ、シスナータ王女に見付かった。
「はっ!あの時の極悪人!脱獄して…」
覚えていやがったか、シスナータ王女め。
「シスナータ、止めておけ」
青筋が立っているのが見えるぞ、ヴァールデン。
「お祖父様…ですが、この者はかの魔法師団団長様がお創りになられた国宝の水晶を割ったのですよ?」
「何だと!?」や「極悪犯罪者ではないか!」、「処刑しないのですか、国王陛下!」とか様々な野次が飛び回っている。
「鎮まれ」
この場に居る全ての人が畏縮してしまいそうな程に低いヴァールデンの声が全体に広がった。
そして、この場は静まり返った。
「ランドメントル」
「はっ。それでは、勇者送還の儀を始めさせていただきます。シスナータ王女、宜しくお願い致します」
「分かりました…それでは、始めさせていただく前に一言。勇者の皆様、私達の世界を脅威から救ってくださり、本当に有り難うございました。――では、いきます。彼の者達を元の世界へ戻したまえ《勇者送還》」
《勇者送還》や、《勇者召喚》とかと言う魔法名が付いているが、《転移》と大して変わらない。ただ、時間指定が出来る位。
召喚前の時間に戻るようになっているな。
「滝川くん、魔法陣の中に入らないとっ…!」
俺はいつの間にか、魔法陣の目の前に居た。
白鳥さんにそう言われた。今が、本当の事を言うときだろう。
「白鳥さん、俺は本当はこの世界の住人なんだ。そして、俺は魔法師団団長アヴィル・リヴァーフォールズ」
「えっ?」
「だから、皆と一緒に日本には帰らない。白鳥さん、これを持っててよ。俺の事を忘れないように」
俺は髪の毛を束ねていたリボンを取り、白鳥さんにあげた。
「だったら、私も残る」
「駄目だ。いつか、会えるから」
いつかが来るのかは分からないが。
もう少しで、《勇者送還》しそうな時。
俺は力強く、優しく、白鳥さんを突き放した。
「あの時の返答はOKだ」
それを言った瞬間、白鳥さんを含むクラスメイト達が消えた。
俺はこの大広間から一人、出ていった。
「貴方が魔法師団団長のアヴィルくんだね?」
俺は一人で居た筈なのに、目の前には何か神々しさがある女性が居る。
「お前は誰だ」
「私にお前?結構、失礼だね?」
「知らね」
俺はスタスタと歩き去る。
「あー、待ってー!アヴィルくんには謝罪しておかなくちゃならなかったのー!」
俺はピタッと止まって後ろを振り向き、その女性の顔を見る。
「謝罪?」
「そう!私は召喚の女神カロサモンティス!この世界で言う五十年前、アヴィルくんを転移させることに間違って承認しちゃった事を謝らせてください!」
やっぱり。
承認してたから、俺は日本に…。
「そして、勇者として魔王討伐してくれたので、お詫び+で五つ願いを叶えます」
俺も含まれてましたか。
五つ願いを叶えますと言われても、叶えてほしいものがそんなに有るわけでは無いんだが…。
「アヴィルくんにだけ言っておきます。勇者達が日本に帰るときに、この世界での出来事全てを忘れてしまいます」
なぬ…?
「尚、アヴィルくんが日本に居たと言う事実が日本では消えます。つまり、最初からアヴィルくんは日本に存在しなかったと言うことになります」
まあ、本来、俺は日本に居る筈の無い異分子だからな。
でも、白鳥さんに俺の事を忘れ去られて、俺が渡したリボンを捨てられたら…悲しい。悲しい?
「先ず、一つ目」
「何でもどーぞ」
「白鳥さんの記憶をそのままにしておいてくれるか?」
「白鳥さん?ああ、白鳥 菜奈ね。元より、記憶を消すのは、日本での使用させない為なの。白鳥 菜奈が日本で魔法を使わないと言うのなら、叶えられるけど…」
「お前、何でもって言っただろ…。俺はな、白鳥さんを信じたい。だから、記憶を消さないでくれ」
俺は覚えているけど、向こうが覚えていないのは何か、やだ。
「アヴィルくんがそこまで信じられるのなら、大丈夫でしょう。白鳥 菜奈の記憶はそのままにしておきます。さて、二つ目は?」
「特に無い」
「え?特に無いって何?いや、まだあるでしょ?」
いやぁ、本当に特にこれと言って無いんだよなぁ…。
「しょうがないか。願い事が決まるまで、共に行動しましょう、アヴィルくん」
いや、どうしてそうなった?
メルヴェルに何て言ったら良いか、頭を悩ませるな、これは。
***
菜奈Side
私の目の前には、召喚の女神カロサモンティス様が居る。
これが、王様の言っていた信託なのだろうか。
「貴女の願いを三つ叶えます」
「三つ…」
「はい、三つです」
私は今さっき、片想いしていた人にOKを貰った。そして、その人と突然の別れを一瞬で経験した。
まさか、滝川くん自身が魔法師団団長さんだったなんて思いもしなかった。
だから、あんなにメルヴェル様が敬語で甘かったんだ。それに、魔王を倒す強さも頷けた。
私、もう、滝川くんと会えないのかな?そんなのだけは絶対に嫌だ。
「一つ目、良いですか?」
「どうぞ」
「滝川くんに会いたいです」
「滝川くんと言うと…ああ!魔法師団団長のアヴィルくんか」
下の名前でくん呼び?
私でさえ、した事無いのに…。
「直ぐに会うのは不可能です。日本で人生を全うした後、ティナラータ王国に転生させる方法なら有ります。大体、貴女達勇者が召喚される十八年前位のティナラータ王国に転生する事にしましょうか」
直ぐには会えないのか…。
だけど、会えるのなら。
「二つ目は―――」
私はこのままの勢いで二つ目、三つ目を言った。
そうして、私は日本に帰った。
あの日の数学の授業中に戻ってきている様だった。
ああ、帰ってこられたんだ。でも、滝川くんは居ない。
私の中に滝川くんはずっと居る。
滝川くんがくれたリボンを大切に、通学用バックに付けた。
この日の授業が全て終わった。
早璃南に聞いてみよう。召喚の女神カロサモンティス様に何を願ったのか。
「ねえ、早璃南」
「はい?どうしました?白鳥さん」
あれ?
私の事を異世界では、菜奈と呼び捨てで呼んでたよね?
どうしちゃったんだろう…。
「あ、ううん、何でもない」
「何でもないんですか…まあ、白鳥さんに声を掛けて貰えて嬉しいです。友達になってください、白鳥さん」
「こちらこそ、喜んで」
最初の一歩からやり直し?
「じゃあ、菜奈って呼んでも良い?勿論、早璃南って呼んでね」
私と早璃南はここで初めて連絡先を交換した。
ああ…滝川くんの連絡先、欲しかったな。
後で知った。異世界に勇者召喚され、魔王を討伐した事、滝川くんの事を誰一人として覚えている人は居なかった。
何でか分からないけれど、覚えているのは私だけだったらしい。
皆が忘れても、私が忘れないから。
だから、滝川くん、待っててね。
貴方に会いに行く、その時を――――――――――。
ここまで読んでくださり有り難うございます。
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余談(飛ばしても大丈夫です!)
有田、原田が女神カロサモンティスに願ったもの
有田
・性別(体)を女性にしてください
原田
・本物のハーフにしてください
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次の更新は12月15日です。




