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 王の御前。

 勇者達とナシェリアは頭を垂れているが、俺とメルヴェルは普通に立っている。


 「――魔王は討伐されたか。ご苦労だった」


 ヴァールデン、お前にだけは言われたくない言葉だな。あ、コイツ、王だったわ。


 「王様、僕達は元の世界に帰れるのでしょうか」


 有田は聞いた。

 俺はここが故郷の元の世界であるが、他の勇者(クラスメイト)達にとっては異世界。家族と離れ離れで生活をしている。

 帰れるかどうかは最重要要項なのだろう。


 「ああ、帰れるだろう。その前に勇者達には多大なる迷惑を掛けた。一人一つずつ願いを叶えよう。そして、魔王を討伐した功労者である其方達には一人三つずつ願いを叶えようではないか」

 「その願いは何でも叶うんですよね?」

 「うむ。願いは我ら王族ではなく、召喚の女神カロサモンティスが聞き届ける。我はカロサモンティス様の声を代弁している」


 召喚の女神カロサモンティス。

 祀っている場所はないが、力はある女神。存在が知られているのは、古い文献のみ。

 学生時代、ヴァールデンから聞いた。

 異世界とこの世界を繋ぐ役割を持ち、召喚または転移が起きたときの承認をするのだと。

 俺がガードラーレに日本へと転移させられた時、召喚の女神カロサモンティスは承認をしたんだろう。

 最終結果で、その女神が承認しなければ転移は成立せず、日本へと飛ばされずに済んでいたと言う話だ。


 「神様が叶えるのなら、本当に何でも叶うのですね」

 「うむ。欲しかったものなどが手に入る」

 「ものが平仮名表記なのは、物だけではなく、人も手に入ると言うことですか」


 有田が、メタい。メタいぞ。


 「まあ、そう言うことだ」

 「そうですか」


 俺やナシェリアも含まれるのかな、その功労者とやらに。勇者では無いが。


 「願いは勇者達が元の世界へ帰る時に神託がある。まだ、時間はある。それまでに考えておくと良い」


 これで、ヴァールデンとの会話が終わった。




 「滝川くん!」


 メルヴェルとも別れ、一人で王宮内を歩いていると白鳥さんに声をかけられた。


 「どうしたの、白鳥さん」

 「デ、デート…い、行きませんか?」


 はえ?デートのお誘い!?

 遠くから荻原さんが白鳥さんを見守っている。

 多分、「頑張れ」とか応援を言っているんだろうな…。

 その更に奥に有田と原田も見守っているのが微かに見えるが、気にする事でも無いだろう。


 「うん、良いけど。何処へ行く?」

 「じゃあ…王都に。私が王都の街を案内するから」


 どちらかと言うと、白鳥さんよりも俺の方が王都に詳しいのでは?

 まあ、乗っておくか。


 「宜しく」

 「う、うん!頑張るね!」


 頑張るって、何を??

 俺は白鳥さんに付いて行く。


 「そう言えば、滝川くんはいつ牢屋から出たの?」


 王宮を出てから数歩分歩いた所で白鳥さんに聞かれた。

 召喚後直ぐに、水晶を割って激怒したシスナータ王女に牢屋に放り込まれたんだった。


 「牢屋に入った直後に自力で出た」

 「えっ…?」

 「ん?」


 何か変な事でも言ったかな?


 「その日の内に出てたって事?」

 「そーだよ?」

 「やっぱり凄いね、滝川くん。そんな脱獄?も出来ちゃうなんて…」


 あんまり嬉しくはないかな。脱獄が出来ることを褒められても。

 取り敢えず、話を変えておくか。


 「そうだ、白鳥さん、王都の何処を案内してくれるんだ?」

 「先ずは、魔法師団団長さんの自宅を案内するよ。メルヴェル様に聞いたら、外してはならない観光スポットだって」


 んんん???


 「だから、これ、借りてきちゃった」


 あら、指輪ないの。俺の魔力が込められた。

 借りたと言うことは、メルヴェルには内緒か。俺と一緒と言うのは。





 俺の自宅のドアの前まで来てしまった。


 「じゃあ、開けるね。彼の物に力を分け与えよ《魔力譲渡》」


 この指輪に発動しろと念じれば簡単に発動する。魔法道具とは便利すぎる物だ。


 「直ぐに閉まっちゃうから、早く入ろう!」

 「あ、うん…」


 直ぐに勝手に閉まるのは不便だなと思いつつ、もう少し良い方法は無いのかと思いながら、白鳥さんに引っ張られる様にして、俺の自宅に入る。


 「団長さんはね、五十年前から行方不明なんだってさ」

 「あ、うん、そうなんだ」


 俺っす、団長さんは。


 「団長さんが行方不明だから、私達が代わりに召喚されたんだって。行方不明じゃなかったら、私達は今、日本に居るのにね」


 俺が行方不明じゃなかったら、白鳥さんにも会えてないし。先ず、日本にすら居ないし。


 「滝川くんはどう思う?」

 「何を」

 「団長さんの事」


 うーん、自分の事かな?


 「どうって…よく分からないけど」


 自分の事って、自分が一番よく知ってるとか言うけど、実際は一番よく分からないと思うんだよね。


 「色んな魔法を生み出しているって聞くし、凄いんじゃない?」

 「そうなんだよ、団長さんが生み出した魔法を簡単にした魔法書が沢山出回ってるんだよ」


 うん、知ってる。

 間違いだらけだったけど。


 「ナシェリアさんがよく使う《龍炎》だったかな?それも、団長さんが生み出した魔法なんだって」

 「へー」

 取り敢えず、相槌を打っておく。

 「本当に凄い人だよね」

 「うん、そうだな」



 俺達は、次に魔法師団の本部へと向かった。何と、そこもメルヴェルが外せない観光スポットだと言ったらしい。

 丁度、俺が団長だと知っている例の団員は、今日は休みを取って帰省中だった。

 何処かホッとしている俺である。


 「その服って、魔法師団の制服だよね?」

 「うん、まあ」

 「私達と別行動で魔法師団に入団してた?」

 「そ、そうなるかも?」


 実際、白鳥さん達クラスメイトと出会う前から魔法師団に入団してました。


 「やっぱ、ここは来たことがあったりする?」

 「うん、(何度も)来たことある」

 「もしかして、私よりも王都に詳しい?」

 ギクゥ…!

 「それは…」

 「詳しいんだね。あ、そうだ、付いてきて」


 俺はさっきからずっと白鳥さんに付いてきていたが…。何も聞かずに、そのまま魔法師団の本部から外に出、白鳥さんに付いて行く。



 着いた場所は俺でも知らないような場所であった。

 そこは、王都を全貌出来る様な場所だった。


 「ここは知ってた?」

 「いや、ここは本当に知らなかった。こんな場所があるとは」

 「何か滝川くんの知ってる事、知らなかった事って、無駄にムラがあるよね」


 そうだろうか…。


 「団長さんが行方不明になった後、早く帰ってくるようにって願って創られた灯台なんだって」

 「へぇー」


 俺が早く帰ってくるようにと願って創られた灯台なんだぁー。

 恥ずかしさのあまり、ぶっ壊しそうだが、この絶景は最高なので破壊衝動に耐えよう。


 「ねえ、滝川くん」

 「ん?何、白鳥さん」

 「私は滝川くんの事が…好き…です。付き合って下さい」


 ……。


 あれ?俺は今、何をされてる?

 白鳥さんが俺を告ってる??

 何故?


 「滝川くん…どうかな?あ、返事はいつでも良いからね!」


 白鳥さんはそのまま去っていってしまった。

 …俺を置いていくか?普通…。

 ここは初めて来た所。ほぼ帰り道も分からない様な状態だった。


 「どーやって帰ろうかな」


 このままメルヴェルの自宅に直行するべきか、王宮に行くべきか。

 メルヴェルもまだ、王宮だろうし、王宮に行くか…。

 空を飛んでいった方が良さそうだな。…その方が、道に迷うことは無いし。


 「《飛行》」


 俺は王都の上空を滑空中。

 王宮は王都の中で一番大きな建物だから、直ぐに見付かる、見付かる。




 当然の如く直ぐに見付かり、王宮の裏に着陸した。

 極秘散歩中のヴァールデンが丁度、降り立った場所に居た。着陸した俺に驚いていた様だった。


 「何で空から降りてきた」

 「空を飛んでたから」

 「見れば判る…そうだ、アヴィル。お前は勇者達と勇者の世界に行くのか?」


 急過ぎやしないか?


 「俺はこの世界に残るけど」


 勇者達クラスメイトは、日本が故郷なら、俺はこの世界が故郷。其々が故郷に居られる。居るべきなんだろう。


 「そうか…勇者送還は明後日の予定だが、ちゃんとそれまでに別れを告げとけよ」


 ああ、そうか。俺が残るなら、クラスメイト達とは永遠に会えなくなるのか。


 「…めんどくせ」

 「めんどくせではない!ちゃんとやっておかないと、悲しむ者もあろう!?」


 悲しむ者…か。

 思い浮かぶとすれば、白鳥さんとか泣きそうだな。


 「居るかも?」

 「ほれみろ。だから、別れを告げとけよ、アヴィル。学生時代の卒業式だって、それをせずに、泣きじゃくった友人共が何人居たか…」

 「それは知らない」

 「お前は卒業式が終わってから直ぐに帰ったからだろうに…」


 はて、そうだったかな?

 卒業式してから後、魔法師団に入団したりとか結構、濃密なイベントが起こりまくったからな…。正直、記憶に無い。


 「本当に変わらないな…」


 ヴァールデンは溜息を吐きながら、そう言った。

 溜息吐かれるほどなのか!?俺ェ!?


 「…今日もメルヴェル殿の自宅に帰るのか?」

 「本当は俺自身の自宅に帰りたいがな」

 「観光スポットに住むのは…」

 「ヴァールデン、俺の自宅を観光スポット化をしないでくれ…」

 「わ、我ではないぞ!それは」


 怪しい…。


 「まあ、いっか」


 ヴァールデンはホッと一息を吐いた。そんなに緊張感高まる時だった?


 「今日は勇者達と会食だが、アヴィルはメルヴェル殿の自宅に帰るのなら仕方無いのだろう」

 「仕方無いね」

 「一応、国を代表する世界的にも有名な調理人ではあるのだがな」

 「そんな者達よりメルヴェルが作った方が良い」


 断固としてだ。


 「言うと思ったぞ…今朝だって、嬉しそうにしてたからな。作れなかった日々のメルヴェル殿と言ったら、それはそれは機嫌が悪そうで…機嫌取りが必死だった」

 「何かすまなかったな、ヴァールデン。メルヴェルが迷惑を掛けたようで」

 「ははは…」


 本当に(やつ)れている様に見える…。


 「おっ、メルヴェルだ。じゃあ、ここで」

 「我は久し振りに友として話せて楽しかったぞ」

 「俺もだ」



 俺はヴァールデンと別れ、メルヴェルと一緒にメルヴェルの自宅に帰った。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。

***

次の更新は12月11日です。


次回、1部エピローグです。登場人物まとめを投稿とか、今まで投稿したものを手直ししたりした後、2部に入る予定です!

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