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 「我は魔狼、狼だ。犬ではない!」


 俺の発言に、ガブリアは怒ったようである。犬児(いぬころ)と言ったのが不味かったのかな?


 『――だが、お前。魔王から犬と、呼ばれてんじゃんか』


 創造主(魔王)が犬と言うんだから、犬なんだろう?


 「歴とした狼だ。決して犬などではないが、魔王様は特別なのだ。貴様だけには言われたくない!」


 狼と犬、大差無いと思う。が、そこを拘るガブリアは、魔王から犬と呼ばれるってどうなの?


 『さては、お前…魔王の忠実な臣下(ペット)なの?』

 「我は魔王様に創られ、生を受けた。魔王様に敬愛し、命令に従うだけ。それが我の人生、我の生きている価値そのものであり、幸福なのだ。それを、貴様のような部外者…それも、下賎な人間に知ったような口調で言われたくない!」


 俺を押し倒し、足で俺の腹の丁度真ん中辺りをぐりぐりさせる。

 勿論、こんなのを《障壁》で防ぐことが出来るが、敢えてそれをしなかった。

 一度位は、攻撃に当たっても良いと思った。


 ――グフォッ!


 吐血。まあ、これが俺の血ではないがな。他人から見れば、俺が血を吐いたと見える。

 クソ不味いが、魔獣の血は便利だな。これからも、活用していこう。

 そして、無理矢理、痛がってる風を装う。

 俺…帰って来てからと言うもの、演技の才に目覚めたかも知れないな。


 「さっきの威勢はどうした、貴様。やはり、大したことないな」


 俺の演技に楽々乗っかってくれている、ガブリア。


 「ふ、フードの方っっ!」

 「何が起きている!?今、助けに行くぞ!」

 「逃がさねーよ」


 白鳥さんの早々ない悲鳴に、ナシェリアが気付き、助けに行こうとしたが、相手グレファがそれを(さえぎ)る。

 その瞬間に見せたナシェリアの隙に、グレファは魔法を沢山撃ち込む。

 ナシェリアは遠くの方へ飛ばされてしまった。


 「ナシェリアさんっ!?」

 「次はお前だ。お前は隙を見せすぎて、相手にならないぐらい弱く、詰まらない。お前は余興の後残り位にしかならない」

 「そっ、そんな…」


 荻原さんは後退りしている。魔法を使う相手に後退りなど意味をなさない。

 魔法は前方後方に優れている。だから、剣より魔法の方が普及しているのだ。この世界では。


 「魔王様の為。詰まらないが、俺は弱々しいお前のような魔法師も殺さねばならない。だから、死ね」

 「い、嫌だよぉ…水の精霊よ。我に力を《龍神》っっ…」

 「《魔法削除》」

 「死゛にだぐない゛よぉ…」


 荻原さんの《龍神》が一瞬にしてグレファが《魔法削除》により消し去ってしまった。

 荻原さんは完全に泣いてしまっている。


 「《呪殺》」


 グレファは無詠唱で魔法を発動した。闇属性の魔法、絶対に相手を殺す魔法の《呪殺》を荻原さんに掛けたのだ。


 「お前はこの先、死ぬ運命しか無くなった。徐々に苦しみ、死に逝くのみ」

 「うっ、うっ…」


 荻原さんは死ぬのを待つしか無くなったと思ったんだろう。

 そんな絶対を俺は覆す。


 ――《浄化》


 「苦しみもがくのが、お前の…?《呪殺》が消えて?え?は?」

 「苦しく…無くなった?」


 常人が掛けるよりも強く掛かっていた。どっとと、魔力を消費…と言う事はない。

 俺には魔力の底がなかった。無限の魔力、最高。

 俺はガブリアに踏まれ続けている時の気持ちが合っているかはさておき。


 「まあ、《呪殺》が効かないなら、他の方法で殺せば良い――《焼死》」

 「アアッッ!!??」


 荻原さんは、今、燃える熱さで苦しくなった。《呪殺》なんかよりも、比にならない位、強い筈だ。



 メルヴェルとの約束。誰も死なせない。

 だから、助ける。


 《浄化》


 先程よりも魔力を込める。ちょっと辛いか?

 ついでに。


 《超回復》


 所々にある火傷を治しておく。


 「はあはあ…。また、苦しく無くなった…?」

 「ぐぬぬぬ…おい!犬に踏まれているフードのお前!」


 グレファは俺に向いて言う。少し離れた所に居るし、マドレアと有田と原田を挟んでいる。


 『俺?』


 取り敢えず、(とぼ)けてみる。


 「《瞬間移動》――ああ、お前だ」


 グレファはその短距離に《瞬間移動》を使って飛んできた。

 俺の目の前にグレファの足が近くに来ている。


 「おい、犬。どけ」

 「…仕方無い」


 ガブリアは俺の上から退いた。

 ガブリア、グレファの言う事も聞くのか?

 犬って呼ばれてたなぁ…。


 「お前だな、俺の魔法を消したのは」

 『俺は魔法()消してないが?』


 呪いを浄化()しただけであって、魔法は消してないのだ。


 「嘘を言え!じゃあ、一体、何をした!」


 俺の首を掴んでいる。


 「苦しいか?声に出ない位は」


 ああ、苦しいよ。

 相手はもう、父親ではなくなった魔族なのに、どうして無意識にこんなにも幼い頃の記憶と、重ねてしまうんだろうな。


 「じゃあ、死ね」


 一応、息子に死ねは無いだろう…あ、いや、既にアイツ()の息子じゃねぇんだわ、俺。

 魔族の間の子にはなった記憶はねぇんだよ。

 じゃあ、殺し返す?

 いや、俺が生け捕りにすると言ったんだっけ。

 殺したら、嘘つきとナシェリアに罵られるか?


 「ふっ…」


 久し振りの(筆談でない)発言が、これとは…少し後悔したかも。

 白鳥さんが近くに居たが、気付かれない程度の発言でもあろう。


 「何が可笑しい」

 『俺も死ぬわけにはいかないんで、ね』


 《水蒸気爆発》


 火属性と水属性との複合魔法。

 水成分が高温の炎に当たって爆発を起こさせる。

 大きめのを、一発、グレファと俺の間に撃ち込んだ。


 「ぐっ…!?」


 グレファに怪我を負わせることが出来たのか、グレファは俺を掴んでいた手を押さえている。

 俺は瞬時に治療したので怪我は無い。



 さて…どう、生け捕りにするか。

 麻糸の縄で縛り付ける?それだと、直ぐに(ほど)け、脱け出されてしまうな。

 じゃあ、光環(リング)みたいな奴で嵌めて拘束する?


 「お前は今何をしている!隙だらけだぞ!舐めてやがるのか!?――《爆弾》!」


 うるせーな。こちとら、お前を生け捕りにする方法を考えてやってんだよ。あと、隙じゃねえ。

 殺すのは容易い事だが、生け捕りにするのは何倍も難しくなるんだよぉ…。

 俺はグレファの《爆弾》を《魔法削除》で消しながら、生け捕り方法を編み出すのを再開させた。



 拘束する概念から行ってみよう。

 拘束するのは、悪意、悪質。つまり、闇属性が効果を十分に発揮できる。しかし、俺よりも魔族の方が闇属性に使い慣れているだろう。よって、効かない場合の確率の方が高い。

 悪者を捕らえる事は人の善意とも考えられなくはない。なら、光属性でも良いのだと思う。それに、何と無く、魔族には物凄く効きそうな気がする…。

 大分、魔法のイメージは立った。魔法名は―――


 《魔束光環ディヴァファスシオリング


 光属性の魔法で、今、俺によって誕生した《魔束光環》は、対象より少し大きめの環が出現し、対象に近付いて締め付ける。

 魔法は魔法だが、物質として存在させる事が重要で、《魔法削除》をしても消えさせない。

 あと、もう一つ。

 《魔束光環》は、必ず対象が悪意のあるのが条件だ。悪意が無ければ、魔法が発動すらしない。


 「ぐわっ…!?何なんだ、コレ!?」


 うん、まあ、発動はするよね。殺そうとしてたからなー。


 「《魔法削除》、《魔法削除》、《魔法削除》…!何故、消えないッ!?」


 まあ、無理矢理、物質として存在させたものだから、魔法として存在はしていないからな。消えるわけない。否、消させてたまるかよ。

 グレファの生け捕り完了。



 次は…あら、有田と原田、瀕死じゃないの。


 「騎士とは言え、勇者なんでしょう?勇者って、こんなものなのかしら?」

 「き、貴殿は剣を使うのである。なら…騎士ではないのか?」

 「ええ、騎士よ。私は魔族の中でも一番、剣の扱いに慣れてるの」

 「騎士とは思えないですよ…」


 「だって、私、魔王様の命令に従うだけなのよ。私は魔族()騎士。魔王様の剣なのよ」

 マドレアは笑顔で有田と原田に切り傷を付けていく。

 取り敢えず、有田と原田に。


 《超回復》《身体強化》


 「傷が消えた?それに疲れも…」

 「強くなった気がするであるぞ!」


 お前ら自身でやった時より効果は五十倍以上あるからなー。

 この世の人間を凌駕する力を出せるぜ。はっはっは。

 ナシェリアと山越えした時は、今の千二十四分の一の魔力だけしか使わなかったとだけ言っておこう。


 「「はあっ!」」


 治療と強化してやった有田と原田は、マドレアに立ち向かう。


 「あら?先程より強く?重い?…《瞬間移動》」

 「…居ない?」

 「消えたであるか?」


 マドレアは俺の前に笑顔で現れた。


 「貴方よね?騎士同士の戦いを邪魔したのは」

 『どうも騎士同士の戦いには到底、見えなかったので、横槍入れただけだが』

 「どっちかが全滅、死ぬまでが騎士の戦いなのよ。邪魔するなら、私は貴方と戦ってあげるわよ」


 余計なお世話だ。

 マドレアもグレファの様に生け捕りしておくか。まあ、何をされてもするつもりだからな。


 ――《魔束光環》


 「あら?これは何の魔法?本当に捕まってしまったわ。まあ、これを力の限り壊せば良いのだけれど。ふふっ」


 マドレアは、不適な笑みをし、力を入れていく。グレファとは違い、物理で壊そうとしている。

 見た感じ《身体強化》は使っていない様に見えたが、《魔束光環》の耐久がギリギリだった。

 取り敢えず…《物体強化》

 無属性魔法の《物体強化》は、物質が壊れにくいようにする魔法。《身体強化》とほぼ同時期に生み出されたらしい。どうでも良いが。


 「壊れないわねぇ…あら、グレファ、貴方も生け捕りにされてたのね」

 「何とでも言え…マドレア」

 「私は好きよ。そう言う所」

 「俺もだ」


 ラブラブ夫婦だな、相変わらず。

 人間だった頃()魔族になって()も。暑苦しい程に。


 「よくも、グレファさんとマドレアさんを!」


 忘れてたが、ガブリアも居たんだった。


 《障壁》


 三百六十度、四方八方に張り直す。


 「があっ!?」


 当たらない。


 「ぐぬぬぬ…我の本来の姿で殺るしか無いようだなァッ!?――GAAA!!』


 おお…大きな犬。

 ガブリアは本当に大きな犬になった。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。

***

余談(飛ばしても大丈夫です!)


 ガブリアの呼んでもオーケーな呼び方


 魔王、グレファ、マドレア→犬(名前で呼んでくれたら、もっと嬉しい)

 メーディ、シンファ他魔族→名前+さん付け


 ガブリアは狼であり、犬では無いのです。間違ってしまったとしても、決して犬だと言うのは止めましょう。飛んできて、殴り殺されてしまいます。

***

次の更新は12月1日です。

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