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「ぐっ…あ、あれ?身体が凄く軽く…なった?」
「はあはあ…トール、助かった?んだね…良かったよ…」
「「「シュード!!」」」
俺は手助けと言うことで、負傷者の治療を少し遠くから行った。直ぐに良くなり、元気になったが、治療をしていた僧侶の男性が倒れた。魔力が枯渇したな、これは。
「…!だ、誰だ!」
治療をしてやった男性は魔法使い。その魔法使いの男性とは別の魔法…使い?の男性が俺に気付いた。それにしても、魔法使いとは思えない筋肉質な男性だな。
女性の剣士は、剣を抜き、戦闘体制に入っている。
俺は抵抗しない意思表示をするべく、両手を挙げながら近付いた。
「あー、俺は別にお前らとは戦う事は無いから、安心しろ」
「安心も何も、アタシ達よりも年下の癖にムカつく野郎だね」
あー、そうかもね。自分でも認めるよ、ムカつく野郎だと。
俺って、何歳設定になるのだろうか。十八?六十五?幾つ?
「その服装…魔法師の方じゃ!?」
治療した男性…トールって呼ばれてたな。トールは俺の格好を見て驚いている。
トール達魔法使いの上位職業『魔法師』だもんな…しかも、その魔法師団の制服。
魔法師ってだけで、こんなにも?
『GYOO!!!』
蛇のような魔獣が現れた。
「坊主!」
坊主…俺の事ですかね、女性の剣士さん。
「俺が一撃で消し去ろうか?」
提案よ。提案。
消し去るよりは、一撃で絶命させる方が近いかな?魔石云々は採れるように。冒険者の生命線、生活費の足しになるように。
「余計なっ…!」
女性の剣士さん、俺を止めようとした。
「《避雷針》」
俺は光属性の《避雷針》で絶命させた。ショック死と言う奴。
黒焦げにならず、綺麗なまま殺せる。
「……」
剣士は、お口あんぐり。固まっている。
「あー、そうだ。その僧侶、魔力が枯渇してるな?魔力回復させるか。《超回復》」
《回復》のワンランク以上も上の魔法。
《回復》は身体の損傷(かすり傷)を治す程度だが、《超回復》は身体の損傷のみならず、魔力も全て回復させる、超便利な魔法。
「あれ…?僕はいったい…」
「…坊主、助かった、礼を言う。有り難う。アタシは、アナ。見ての通り剣士さ。坊主の名前、教えてくれよ」
剣士さんことアナはそう言った。
フルネームで名乗るべきか否か。いや…。
「俺は、アヴィルだ」
俺が名乗ったら、トールが前に出てきた。
「僕は魔法使いのトールです。先程は有り難うございました」
「俺は同じく魔法使いのロダンです。先程の手助け、有り難うございました」
別に堅くならなくても…。
「僕は僧侶のシュードです。《回復》の上位魔法いや…最上位魔法、《超回復》で、僕を助けてくれたんですよね?有り難うございました」
「俺は俺の出来ることをしたまで。お礼は…取り敢えず、受け取っておく。兎に角、ここはまだ、ダンジョン内だ。少しの間だが、世話になっても良いか?」
アナ達は、お互いに顔を見合せ…。
「勿論だ、アヴィル!」
アナが俺に手を出した。握手だな。
俺も。
「宜しく」
***
アヴィル除く勇者達。
「わ、私達って…ずっとコレをしなくちゃいけないのかな…?」
奈菜は、ずっとそう嘆いていた。
勇者達は朝からずっと、魔力を感知する為の訓練として、精神集中を続けていた。
「そこの若造!集中出来てねーぞ!」
一瞬途切らせた奈菜は、メルヴェルに怒られたのである。
「火の精霊よ!《火傷》!」
「あああッッ!!??」
メルヴェルは奈菜を全身大火傷にさせた。
奈菜は痛みに耐えられない。
「魔力が感知出来れば、自分で魔法を使って回復出来るが、お前はまだ出来ねーだろ?」
メルヴェルは一向に止めなかった。
メルヴェルの肩に手を軽く叩いた人が居た。それは、ガードラーレだった。
「何だよ、ガードラーレさんよ?」
「やりすぎだ。治してやれ」
「ちっ…光の精霊よ。《超回復》」
メルヴェルは《超回復》により、奈菜の身体の火傷は綺麗に治った。
「痛かったぁ…。滝川くん、助けてよ。辛いよ」
「今度、痛い目にあいたく無かったら、集中しろ!」
奈菜の嘆きはメルヴェルに掻き消された。もう、大火傷のような痛みを感じたくなかった奈菜は、精神集中に戻った。
「兎に角、メルヴェル。お前はやりすぎだ」
「そうか?この人数居ても、団長殿には敵わない。強くなっても、直ぐに負ける」
「それは分かってるが、勇者共が倒すのはあくまでも魔王。魔王に勝てるぐらいで十分だ」
「わーかってるてば。ただ、団長殿に恥じないように強くするだけだ」
「ここに来た、我等魔法師全員がそう思ってるぞ」
「そうだな」
***
「…ここがボス部屋」
アナがそう呟いた。
俺とアナ達冒険者パーティーは、ボス部屋の手前のドアの前に居る。
「いつでも魔法は発動は出来るようにしてるよ!」
トールが叫ぶ。
「おう、俺もだ!」
「僕もだ!」
ロダンが応え、シュードも応えた。
「アヴィルは準備しないのか?」
アナが俺に聞いてきた。
「俺は…準備しなくても大丈夫だ」
「強い敵に戦闘準備は必要だろう!?」
アナは怒っているのか…?
「逆に敵の方に準備は出来ているのか、聞きたいね」
俺はそれだけ強いから。多分。
「…そうだよな、アヴィルは強かったな。よし、行くか!」
「「「「おう(うん)!」」」」
俺達はボス部屋のドアを開けた。
『GYUOEEE!!!』
うむ、何と気持ち悪い魔獣なのだ。
…これは、キメラと呼ばれる魔獣なのだな。
「アタシが斬りかかる!魔法で援護してくれ!」
援護。トールとロダンが援護すれば、取り敢えず、今のところは大丈夫だろう。
俺なんかが魔法を飛ばせば、ボスである魔獣は絶命してしまう。一瞬にしてサヨナラだ。
「火の精霊よ、我に力を!《火の粉》!」
「水の精霊よ、我に力を!《雫石》!」
ロダンが《火の粉》を、トールが《雫石》を発動させる。
《火の粉》は火属性魔法で、唯々、小さな火を飛ばすだけの、弱い魔法。
《雫石》は水属性魔法で、唯々、小さな水の雫を垂らすだけの、弱い魔法。
トールの《雫石》により、ロダンの《火の粉》は消えている。
これでは、魔力が惜しいところだ。言うなれば、無駄遣い。
「ぐわぁぁっっ!!??」
アナが魔獣の尻尾に飛ばされた。
シュードがアナの治療をするために、駆け寄る。
ところで俺は、静かにドア付近で観戦中である。
「アナ!今、治療する!」
「待て…シュード。ここは、何も動かない、アヴィルにやらせる」
「しかし…」
結構、遠くに居る方なのだが、ボス部屋は音が反響する。良く、聞こえる。
俺に治療を頼ったら、シュードがな…。
「シュードは戦ってくれ」
「アナ…僕は魔法耐性が光属性しかない。それも、《回復》しか出来ないんだ!」
俺は、アナとシュードの場所に向かった。見たところ、アナから血が結構出てる。
これでは、シュードの魔力じゃ、治るまでに魔力が枯渇する。
「俺が魔力援助する。シュード、お前が治療しろ」
「あ、アナが…」
「俺に頼るな、シュード。強くなれないぞ」
「アヴィルが治療しろ。これはアタシの命令だ」
はあ…。
「命令?俺は命令何ぞ従わない主義なんでな。シュードの援護ならしてやるぞ」
「ぐっ…」
「アナっ!?」
アナは気絶。血が足りなくなったな。
「シュード、今すぐに始めるんだ」
「うん…。光の精霊よ、我に力を!《回復》」
少しずつだが、回復はしていっている。ほんの少しずつ。
「援護するぞ。《魔力譲渡》《魔法強化》」
効果は出たのか、アナの治りが早まった。
アナは目を覚ました。傷は全て塞がっていた。
「アナ!」
「んっ…ありがと。アタシ、倒してくるわ!」
アナは魔獣に向かった。
「アヴィル…有り難うございました。その…魔力のみならず、魔法の強化もしてくださるなんて…」
「トールや、ロダンもそうだが、敬語は止めてくれないか?」
急でわりィな。
「はて…?」
「俺は堅苦しいのは嫌いなんでな」
「はは…でも、僕は僧侶ですが、『魔法使い』は上位職業『魔法師』に憧れるものらしいですよ。なんでも、トールとロダンは昔から、「魔法師団の団長殿のように強くなってやる!」って…言ってたんですよ?」
俺の様にね…。俺は物語にでも、なっているのかな?
「なあ、シュード」
「何ですか?アヴィル」
「俺にはジリ貧にしか、見えないんだよなぁ…」
「そうですか?」
「トールとロダンの魔力が後、僅かだな」
後、疲れが溜まっている様に見える。
「それじゃあ…援護に!」
俺は走り出そうとしたシュードの、襟元を引っ張り、シュードを止めた。
「待て、ここは俺が決める」
俺は十分だろうと思い、攻撃をする事に決めた。
「アナ!トール!ロダン!離れろ!」
俺は叫ぶ。
「は?何を言ってんだ、アヴィル!」
「しょうがない…三人纏めて《瞬間移動》!」
俺の《瞬間移動》は、アナ、トール、ロダンに掛かり、シュードの元へ移動させた。
「よし、じゃあ…殺るか!《雷撃》!」
『GYOEEE!!??』
日本に転移させられる前の遠征で、魔獣の大群を一撃で惨滅させた光属性魔法である。
一瞬にして、魔獣は絶命。惜しくも、丸焦げ。骨ごと灰にならなくて良かったけどさ。
「えっと…終わったぞ?」
「…」
アナ達は固まっている。
「あー、アナ?俺は報酬は要らねぇから。俺は帰るわ。じゃあな」
俺はそそくさと、ボス部屋に出現した《転移》の魔方陣に行き、そのまま、外に出た。
もう、遇うことはないだろうな…。
夕方か。
メルヴェルの自宅に戻らねばな。
「《瞬間移動》」
俺は《瞬間移動》でメルヴェルの自宅前にやって来た。
そして、ドアを開ける。
「お帰りなさいませ、団長殿」
メルヴェルが出迎えてくれた。
「ただいま、メルヴェル」
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次の更新は8月7日の予定です。




