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 魔王討伐へと出発する日になった。



 訓練の成果として、有田と原田は形ばかりの《身体強化》に成功した。出来は、まあまあな所だな。

 一方、白鳥さんは《回復》の短時間化が出来、《超回復》は遅いが出来る様にはなった。

 ナシェリアに荻原さんについて聞いたら、大分強度がある《障壁》を張れる様になったのだとか。ナシェリアの《龍炎》の締め上げ三回耐えられるらしい。

 個々に何となくではあるが、訓練の成果があった。


 「それでは行ってまいります」


 有田がこの場を代表して、メルヴェルに言った。


 「くれぐれも、全員生きて帰って来てくださいね」


 このメルヴェルの言葉は、勇者達やナシェリアだけでなく、俺にも向けた言葉だった。


 『じゃあ、魔王の住み処の目の前までに移動させる。各々で手を繋いでくれ』


 有田、原田、荻原さん、白鳥さん、俺、ナシェリアと言う感じに手が繋がった。


 『では、移動する』


 俺は前にロプスアと言う魔族に聞いた所へと《瞬間移動》させた。





 魔王の住み処があり、この場所は俺にとって幼い頃の思い出の地でもある。その地下に魔王が居る。

 そう、ここは俺の弟と沢山遊んだ丘。また、俺と弟だけの秘密の丘でもあった。

 周りは沢山の木々に囲まれ、遠くからはこの丘を認知出来ないから、俺と弟以外は誰も知らない。それは、両親も例外では無かった。

 その場所の地下が魔王の住み処となっている。何か胸騒ぎもしていた。

 これはただの偶然では無いのだと。


 「何も無いではないか」


 ナシェリアが俺に聞いてきた。


 『ここの地下が魔王の住み処だと聞いた』

 「でも、どうやって入るのだ?入り口が見当たらないぞ…?」


 確かに、ただ草原が広がるだけで、地下への入り口が見当たらない。

 地下は別空間になっていると言っていた気がするが、それはどうやって入るのだろうか。


 「――貴様らは何者だ」


 俺達の目の前に一人の女性が現れた。

 その女性には、犬のような耳に尻尾が生えていた。


 「獣人…?」


 白鳥さんが呟いた。

 残念ながら、日本のラノベ文化によく登場する獣人は、この世界では存在しない。


 「我は魔王様の忠実な臣下、魔狼のガブリア。魔王様の住み処に侵入しようとする者を我が殺す!」


 …番犬かな?

 ガブリアと名乗った耳と尻尾が生えた、この女性は魔族なのだろうか?魔族の特徴の羽と先端が尖った尻尾は生えていない。しかし、ガブリアは魔王の忠実な臣下と言った。なら、魔族?

 ガブリアは殺気プンプンで飛んできた。


 「「彼の者を護りたまえ《障壁》」」


 ナシェリアと荻原さんが、有田と原田と白鳥さんに《障壁》を張る。

 俺が護られてないと言う人も居ることだろう。俺まで張るとなると、二人の負担が多くなるから、俺には張らなくて良いと言ってある。

 それに、俺は自己防衛出来るし。


 「「彼の者の身体を高めたまえ《身体強化》」」


 有田と原田は《身体強化》をし、剣を抜いてガブリアに対抗する。


 「軽い。これで、我に対抗するとは嘗められたものだ」

 ガブリアは易々と素手で、有田と原田の剣を受け止める。

 「なっ…!?」

 「嘘…」


 これでも、二人は《身体強化》をしている。通常の力の数倍以上の力で剣を振っている筈…。


 「貴様らは終わりだ」


 ガブリアは有田を殴り殺そうとした、その時――。


 「ガブリアさん、ストップですよ」


 メイド服を着た魔族のメーディが現れた。


 「メーディ、何だ」


 ガブリアは有田の目前で拳を止め、メーディの方向へ顔を移している。


 「魔王様より伝言を預かっておりますのでお読みさせていただきます」

 「ま、魔王様からぁっっ!?(萌)」


 ん…?

 何か声色(こわいろ)が劇的に変化した様な気がするが?怖いくらいに。


 「では、読みます」

 「早く早く♪」

 「「犬へ。この者達は客人だから、我が城に案内せよ」との事です」

 「えっと…()が、この者達を中に連れて行けば良いってこと?」


 一人称、それだったっけ?

 まあ、いっか。何か魔王が入れてくれるらしく、結果オーライ?になったから良しとする。



 「では、門を開ける」


 ガブリアがそう言うと、目の前に扉が現れた。その扉の先はずっと下へと続く長い階段だった。

 ガブリアがどんどん下へと下って行こうとしていたが、俺達は立ち止まっていた。


 「貴様ら、早く付いて来い」


 ガブリアに言われてしまった。


 『行くか』


 俺の筆談による言葉に一同は賛同し、頷いていた。

 そして、俺達はガブリアに付いて行って、階段を下って行った。




 「…これ、何処まで続くのだ?それに薄暗いし、気味が悪いぞ…」


 ナシェリアが呟いている。

 確かに、階段は延々と続いている。そして、薄暗く、気味が悪い感じがする。

 やっと、階段を下りきった所は…何処かで見覚えのある通路だった。

 何と言うか、俺の実家と自宅が半々に繋がった様な感じ?

 俺達は静かに通路を通り、ガブリアがとある部屋のドアの前で止まった。


 「ここから先は魔王様が居られる。くれぐれも無礼の無いように、人間共」


 そう言って、ガブリアはドアを開け、「入れ」と言って俺達を部屋の中に押し入れた。

 部屋に豪華な椅子があり、それに座る男性が居た。その男性は、顔全体を覆うように不適な笑みの仮面を着けている。

 俺、この男と会ったことがある。一瞬だけど。


 「のう、この()の子…前リヴァーフォールズ辺境伯爵とその奥方を殺した奴にそっくり…いや、その者だろう?」

 『そうだろうな…お前が魔王か』


 その仮面の男性にハッキリと言った。


 「ふふふ…ははは…。いかにも僕は魔王ですよ。会いたいと思っていました」


 仮面の男性は自分が魔王だと答えた。

 と言うか、会いたいと思っていた?ああ、勇者にか。


 「僕が会いたかった者を勇者だと思いましたか?まあ…今はそれでも良いですよ」


 違うのか…?まさかとは言わんが、俺に会いたかったと言うのか!?コイツは…。

 兎も角、魔王って上から目線の残虐な奴を予想してたが、何この口調。もっとムカつくような口調だと予想してたのに。

 予想外…。

 俺達はその感情、考えていることが理解しにくい魔王に、緊張感を高めて、臨戦態勢を取っている。


 「もう、殺るんですか?いきなり魔王と戦うのは詰まらないでしょう?僕は魔王ですよ。強い臣下だって沢山居るんですよ。来い、グレファ、マドレア」


 魔王は二人の魔族を呼んだ。


 「「お呼びですか、魔王様」」

 「じゃあ、この目の前に居る勇者達を殺して」

 「「仰せのままに」」


 二人の魔族は何処か見覚えがある顔の男女だった。魔族としてではなく、多分、人間として、幼い頃…。


 「若き日の、歴代最強王宮筆頭魔法師と剣姫によく似ている気がするのだが…」

 『ナシェリア、知っているのか?』

 「知っているも何も、学校の座学の授業で習う。教科書にも大きく乗っている…!」


 マジかよ。


 「あら?私の事よく知ってるのね?」

 「俺の事も知っているようだな?」


 …もう、姿と声で一致しました。

 この魔族のグレファとマドレアは、俺の死んだ筈の両親だ。


 「あれ?もう気付いたんですか?まあ、良いです。殺れ」

 「「御意」」


 グレファとマドレアは俺達に向かって来た。

 マドレアは剣、グレファは魔法で殺しに掛かってくる。


 「「彼の者を護りたまえ《障壁》」」


 ナシェリアと荻原さんは自分自身を含めた俺以外の仲間に《障壁》を張った。

 俺も自分自身の身を守らないとな。


 《障壁》


 俺は俺自身の全方位に《障壁》を張った。


 「「彼の者の身体を高めたまえ《身体強化》」」


 有田と原田はマドレアの剣を剣で受け止めようとする。


 「貴方達人間の勇者はこれぐらいなのね。殺るのは簡単ね」

 「「ぐっ…」」

 「のう、この二人の魔族の男女…どうする!」


 ナシェリアが俺に判断を委ねた。

 この場の判断をするべき者は俺じゃないだろう…。


 『ここは、生け捕りにしよう』

 「生け捕り!?この魔族達を…何故?」

 『何でだろうな。でも、この魔族達がそうなら、何年振りかの再開だからか?まあ、記憶が無いように思われるがな』

 「分かった…生け捕りにするぞ!」

 「「「「はいっ!」」」」


 願わくばかな。


 「私達を生け捕り?そんな事は出来ないわよ」

 「俺達はお前らを殺すのみ。生け捕りにするのは五十年そこら早いっ!」


 五十年()()()…?

 五十年…五十年…。

 俺が帰ってきたのも五十年後の世界。なら、大丈夫?


 「騎士の貴方達は私が相手よ」

 「魔法師のお前らは俺が相手だ」


 マドレアは有田と原田に言い、グレファはナシェリアと荻原さんに言った。


 「犬、居るか?」

 「はいっ、ここに居ります、魔王様!」


 魔王はガブリアを呼び出した。

 また、敵が増える…。


 「残りの…あの聖女を殺れ」

 「了解致しました!」


 聖女って…白鳥さんじゃないよね?

 ガブリアは白鳥さんに向かって突進している。


 「キャァァッッ!?」


 助けないと、白鳥さんが!

 白鳥さんに、ナシェリアと荻原さんが張った《障壁》の上に俺の《障壁》を張った。


 「魔王様の為だ。死ね」


 ガブリアは白鳥さんの顔面を殴ろうとした。

 白鳥さんはその瞬間に目を瞑る。

 だが、白鳥さんに衝撃が走ることは無かった。


 「あ、あれ?痛くない?」

 「我の拳の衝撃が無効化された…?」

 『俺の《障壁》がお前の拳よりも勝っただけだ』


 俺は白鳥さんとガブリアの合間に入り込む。


 「貴様ァ…」

 「フードの方…!危険です、逃げてください!」


 ガブリアは今までに見てきた中で特に威力を増した力で俺の顔面に――。


 『効くか。俺自身にだって《障壁》を張ってる』

 「くっ…」

 『次は俺の番だな』


 《雷撃》


 俺はガブリアに放つ。

 ガブリアは《障壁》など張らないようだ。


 『…ほう、この威力で耐えるか』

 「嘗められたものだ」


 結構、魔力を込めて、強威力で放ったんだがな。(もろ)に当たって、ただの掠り傷未満の怪我で済むとは…。

 まあ、多少は嘗めているのには違いはないがな。


 「我は魔王様の命により、この女を殺す。邪魔をするのであれば、貴様も殺す」

 『じゃあ、俺を殺してから殺す発言をするんだな。犬児(いぬころ)が』

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。

***

余談(飛ばしても大丈夫です!)


 獣人やエルフなどは、この世界には居ません。が、魔王が創り出す事は可能です。人間では無い、人間の様な何かは、全て魔王軍なのです。


***

次の更新は11月27日です。

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