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「ぐっ…あ、《障壁》…」
『DOOON!』
ナシェリアの《障壁》で守られた有田は、またゴブリンロードに向かって飛び出していくが、荻原さんの《障壁》で守られた原田は軽く飛ばされた。
荻原さんの《障壁》はゴブリンロードでは弱いらしい。なら、魔族とでは無いに等しいな。
「原田くん、少しじっとしててね」
「うむ」
「光の精霊よ、我に力を《回復》」
飛ばされた原田を白鳥さんは回復させていく。少し遅いが、少しずつ怪我が治っていく。
「サリナ、妾はこれから広範囲に攻撃を仕掛ける」
「ナシェリアさん!?あっ、正義くん、一旦退避して!」
「早璃南さん、どうして…分かった」
有田はゴブリンロード集団から一旦退避してきた。
「火と水の精霊よ、我に力を《龍炎》!ゴブリンロード共を締め尽くせ」
ナシェリアは《龍炎》を出し、百三匹位のゴブリンロードを締め殺した。
だが、ゴブリンロードはどんどん湧いてくる。
「わ、私も魔法で!水の精霊よ、我に力を《龍神》!」
荻原さんも負けじと魔法を繰り出す。
水が龍の形に形成される《龍神》だが、歪な形になっている。
荻原さんの《龍神》は、ゴブリンロードを一匹締めるのが、やっとだった。
「ふう…治ったよ、原田くん」
「奈菜殿、忝ない」
白鳥さんの治療がやっと終わり、原田が復活した。
「克臣くん、大丈夫?」
「奈菜殿のお蔭ですっかり無事である!」
「よし、突入だ」
「うむ!」
有田と原田はゴブリンロードに突っ込んで行った。
「妾達は男の子等の支援だ!」
「分かりました、ナシェリアさん!」
ナシェリアと荻原さんは、魔法を駆使して、有田と原田達のサポートをしている。
誰かが怪我すれば、白鳥さんが治療をする。
それだけを繰り返して、だいたい三時間経った頃だろうか。ゴブリンロードの数は減りつつあった。
最初に出会した時に比べれば、だけど。
魔力が大分、消耗してきている様だな。
ナシェリアや勇者達の息が切れ、魔力切れ寸前まで来ている。
勇者達は早めの方で魔力切れになるかと思ったが、よく持ち堪えた方だと思う。
「皆!疲れているとは思うけど、気を抜いたら駄目だ!」
『魔力回復してやる』
俺の言葉(筆談)に荻原さんが答える。
「魔力を回復?そんなことが出来るわけ…」
『怪我やHPも含めて回復してやる』
俺は《広範囲・超回復》を使った。勿論、ゴブリンロードを除外して。
「疲れが…取れたであるか?」
「魔力が満タンに回復してる!」
喜んで頂けて何よりです。
「よし、ラストスパートをかけるよ、皆!」
「「「「おー(うむ)!」」」」
有田の掛け声に一致団結した様だ。
しかし、ラストスパートって何やねん。ゴブリンロードはまだ沢山居るで。
「団長殿、如何ですか?勇者共は」
ほぼ観戦状態にいる俺にメルヴェルが話し掛けてきた。
『正直言って、弱すぎる』
「すみません…これでは団長殿の足を引っ張り兼ねませんよね…」
メルヴェルは何故か、俺に謝罪してきた。
『まあ、俺がサポートするんだ。大丈夫だろう』
「本当にすみません…」
メルヴェルは少し、謝りすぎだな。うん。
「フード男の《雷撃》で終わるぞー!」
「分かりましたー!」
ん?何か、聞こえるな。
ナシェリア、何を言っているんだ。
そして、皆の視線が俺に集まった。
『俺は後方支援のみと言った筈だが…』
「私も見たいです」
『…メルヴェルが言うなら、仕方無い』
溜息混じりの発言である。(※声には出していない)
――《雷撃》
『GUAAA!!??』
ゴブリンロード集団惨滅。
「「「「…」」」」
勇者達は黙りこんだ。一方、メルヴェルとナシェリアは目を輝かせていた。それはそれは嬉しそうに。
『ゴブリンロードは回収しておくから進んでおけ』
忘れてはいけないのが、まだダンジョンに入ってから、直ぐの場所にまだ居ると言う事だ。
「わ、分かりました…皆、奥へ進もう!」
勇者達とナシェリアは奥へと進んでいった。
『メルヴェルも進まないのか?』
「いいえ、団長殿を私はお待ちします」
俺はゴブリンロードの死体を、全て《収納》で回収した。
「《収納》と言う魔法で物を入れたままを維持するのは至難の技です。私でさえ、多くて五十個を三時間程ですが、団長殿は無限に無制限に維持できるのでしょう?本当に凄いです」
つまり、《収納》の維持は、魔力を大量に消費していく。メルヴェルの魔力量でそれ位しか維持できないので、普通の魔法師団員では三十分も耐える事が出来ず、直ぐに魔力切れを起こす。
俺には魔力の底が無く、魔力切れの概念が無い。魔力切れの苦しさを知らない。
俺にはメルヴェル達の辛さを知らないし、解らない。だから、誉めてくれているのだろうけれど、それに応える事が出来なかった。
どんな顔をしていれば良いのだろうか。
「ふふふ…反応に困っている団長殿も愛しいです」
メルヴェルは「さあ、追い付きましょう」と続けて言った。
そして、少し小走りした先でナシェリアを含める勇者達が戦闘中だった。
今度は…緑色のドラゴン。
まあまあだよね。
苦戦中かな?
「緑色如きに苦戦など…」
メルヴェルは怒っているようだ。
ドラゴンの中で最弱の緑色。メルヴェルより、ずっと弱い現副団長のアレドラントでさえ軽々倒せるだろう。
と言うか、ナシェリアは倒せるだろ。宮廷筆頭魔法師なんだからよ。
『まあ、ドラゴンはドラゴンだからな』
「それでも最弱色です。団長殿は緑色のドラゴンを倒されたことはおありですか?」
『ある』
記憶上でな。
「初めて倒されたお歳は、お幾つでしたか?」
『んー…五歳の頃だった気がする』
まだ、王都へ上京する前で、故郷の村に居た頃だ。
ある日、緑色のドラゴンに出会い、倒した。当時、今よりも力が弱かった俺は、色んな魔法を使って倒した記憶がある。
「団長殿は規格外ですが、五歳。それも、未就学児。それででも緑色は倒せてしまえるものなのです」
俺と比べるんじゃない。
見てれば、ナシェリアを含めた勇者達はボロボロ。あちこち怪我だらけ。
言うなれば、ゴブリンロードよりも怪我している。
『全然、ダンジョンが進まないな。仕方無い、軽く手助けしといてやるか』
「団長殿、本当に勇者共が弱ったらしくてすみません…」
勇者達は俺から見れば弱いが、普通の人から見ればそんなに弱くないと思うが…。人から見れば、メルヴェルの過小評価に驚くだろう者が多いんじゃないか?
まあ、俺は緑色ドラゴンを《雷撃》で仕留める。あの時の様に。
まだ、俺、あの時は標準二語の詠唱だったっけ。懐かしい思い出だ。
今回は無詠唱だけど。
『GYUAAA!!??』
緑色のドラゴンはあっさりと撃沈した。あっさりと撃沈するってよく解らないがな。
「メルヴェル様に、フードの方、追い付いていたんですね」
ドラゴンが息絶えたのを確認した有田は、俺とメルヴェルの居る所へと駆け寄ってきた。
フードの方か…無難。
『何かやり果てました感を出してるが、ここは最下層でも何でもない。ドラゴンはただの階層ボスだ。先は長いのにもう、ボロボロだな』
「ええ、まあ」
…見栄えも悪し。
《広範囲・超回復》
傷も服の破れも全て綺麗になおしてしまうのだ。
ついでにドラゴンの死体を回収っと。
「ドラゴンが消えたであるぞ!?」
「そんな訳が…」
「でも、私も消えた所を見たよ?」
「奈菜までっ!?」
ナシェリアは、ずっと動かずに俺の方向を見ている。他の勇者達は、ドラゴンの死体がいきなり消えて少しパニクっている様だ。
原田、白鳥さん、荻原さんのパニックが治まった所で、歩みを再開した。
次の階層へ進む。
しかし、何も居なかった。
また次の階層へ進む。
ここにも、何も居なかった。
また次の次の階層へ進む。
だが、ここにも、何も居なかった。
それを繰り返すこと、七十八回。
「何故、何も居ないのだ…」
ナシェリアが皆が思っていた事を吐き出した。
それに有田が答える。
「可笑しいですね。こんなにも静まり返るなんて…」
確かに可笑しい。
最初の階層にはちゃんと階層ボスが居た。二階層目から、今の階層に至るまで、魔獣一匹も遭遇していないのだ。
階層ボスの魔獣位は居ても良いんじゃないか?
「私…もう、今日は動けないよ」
白鳥さんが嘆いた。それに、メルヴェルの目が光る。
「まあ、時間が時間だしね。ここで夜営しよっか」
荻原さんがそう言った。
「じゃあ、準備しようか。克臣くん、手伝ってよ」
「分かっているであるぞ」
メルヴェルが遂に動き出す。
「おいお前ら…もう、今日は行動しないつもりか?」
勇者パーティーの四人は一斉に顔に青筋が立った。面白い具合に。
だが、ここは俺がメルヴェルの抑止に入らねば。
『俺も疲れたしな。ここで夜営して、また明日、奥へと進もう』
「しょうが無いですね。ここは、この御方に免じて許す!速急に夜営の準備を終わらせること!」
メルヴェル以外の俺達に安堵の息が漏れた。
勇者達は直ぐに気持ちを切り替えて、潔い返事を返した。
そして、直ぐに二つのテントが出来上がり、焚き火の準備も整っている。
…と、その横でメルヴェルが別のテントを一つ組み立てていた。
「妾はどのテントで寝れば良い?」
「ナシェリアさんは私達と一緒ですよ」
「こちらです」
勇者パーティーのテント二つは男女で別れているのがよく解ったが、だからと言って、メルヴェルが別のテントを組み立てる必要は無いんだと思う。
『メルヴェルは何故、別にテントを組み立てた?』
「それは勿論、団長殿と私用の寝床確保の為です」
『それって、つまり…』
「はい、狭い空間で隣り合わせで寝ることになります」
俺、同性の有田と原田のテントで寝泊まりしてみたかったなぁ…。
「そう言えば、団長殿。ナシェリア・ランドゥルフと同じ部屋で、シングルベッドで寝たらしいじゃないですか。それも、何日も」
何で知ってる…。
俺はメルヴェルに逆らう気にはならなかった。否、逆らうのが少し怖かった。なので、メルヴェルと同じテントで寝ることが決定したのだった。
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次の更新は11月13日です。




