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 メルヴェルの作った朝食も美味しく頂いて、メルヴェルと一緒に王宮へと向かった。


 「フードを被られて、正体を隠すのは分かりますが…もう、この時から被られるのですか?」


 王宮まで辿り着くまで意外と距離はあるが、既に俺はローブに付いているフードを被っていた。

 俺はフードを被り、極力声を出さないように筆談と言う方法を取って、正体を隠すとメルヴェルには伝えてある。…ナシェリアにも言っておかねばな。


 「王宮に近くなれば、勇者も居る。何せ、勇者と俺は顔見知りだ。直ぐバレる。それなら、もうこの時から、被っておいた方が良いだろう」

 「団長殿は、抜け目は無いですね」


 メルヴェル…その表現は、俺を誉めすぎてはないか?


 「ええ、勿論そのつもりですよ」


 俺、何も言ってないよな…?分かりやす過ぎなのか?


 「私は団長殿に全てを捧げているつもりです。団長殿の行動、仕草、表情から全てを読み取り、何をお考えかを知れます」

 「ご自由にどうぞ」


 俺はエキサイトしている?メルヴェルに唯々これだけを言ってあげた。メルヴェルはと言うと、間を空けずに嬉しそうに返事をしていた。

***

 菜奈(なな)Side



 昨日、就寝前に私達のパーティーは王様に呼ばれた。

 「――と言うわけで、明日、その者達と会ってくれぬか」と王様は言った。

 魔王討伐に私達のパーティーが最前線に立つことが決まった瞬間でもある。


 「王様、質問があります」

 「申してみよ」


 有田くんは、王様に質問があるようである。


 「その者が魔王の住み処を特定したのを分かりましたが、僕達の様に勇者と言う訳では無いのでしょう。僕達の足を引っ張る可能性はどうなのですか?」


 一理ある。私達がその者達を守りながらだと、全員が死に、負けかねない。

 なら、その者達を加えるのを私達が拒否する。


 「メルヴェル殿の押しなのだ…仕方無いだろう?それに、責任は全てこの余、ティナラータ王国王ヴァールデン・ティナラータが取ろうではないか」




 私達は王様が言ったことを信用する事は無かったが、そのまま、その人達と会うことにした。

 それで、今、面会する部屋に四人で向かっている。


 「メルヴェル様の勧めなんでしょ?」

 「それでも、勇者では無いとなると…」


 有田くんは未だに渋んでいるが、早璃南(さりな)と原田くんに限っては、「決まった事だから仕方無い」で済ませていた。

 だけど、私は人が増えるのは反対だよ、早璃南。私は聖女として回復サポートをするのが主な役割だから、回復するのが忙しく大変になっちゃうよ…。



 部屋に入ると、メルヴェル様とフードを被った男性、そして女の子??が、座って待っていた。

***

 俺とメルヴェルが部屋に着くと既に、ナシェリアが待っていた。


 「遅いぞ、アヴィル。口裏合わせする時間が短くなってしまうではないか!」

 「団長殿に口答え…無礼!」

 「ひっ…」

 「メルヴェル、余計な事はするなよ」

 「はっ…」


 もしかすると、メルヴェルとナシェリアは合わないのかも知れない。




 俺が正体を隠す方法をナシェリアに伝えた。


 「成る程…筆談か。極力、アヴィルに話が回らないように妾はすれば良いのだな?」

 「ああ、頼んだぞ」

 「頼まれた」

 「メルヴェルも宜しくな」

 「はい」


 口裏合わせが済んだ。

 そして、数分もしない内に勇者パーティーの四人が部屋に入室して来た。

 ――久し振りだな、クラスメイトよ。


 「メルヴェル様、そちらの方達がサポーターですか?」


 有田が部屋に一歩入った直後に聞いた。

 有田は、日本の世界で委員長と言うものを努めていた。何かと気になった事はハッキリと言う人である。


 「ああ、そうだ。失礼の無いように」


 メルヴェルさん?


 「分かりました」


 有田は引き下がる。


 「取り敢えず、自己紹介だな。妾はナシェリア・ランドゥルフだ。宮廷筆頭魔法師をしておる」

 「こんな小さな()まで働いているの??」


 白鳥さんとは別の女子…荻原さんだろう。おいおい…いきなりの爆弾発言は止した方が…。


 「妾を小童(こわっぱ)扱いか?聞けば()の子、()の子ら…二十に満たぬ子供らしいではないか」


 俺は知らないーっと。


 「大丈夫だよ。大きなお姉さん、お兄さんに囲まれて怖かったね、よしよし」


 白鳥さんまで爆弾を投下した。

 俺は行動を極力避けるために、見ているだけだ。ついでにメルヴェルもだ。

 メルヴェルはどちらかと言うと、俺の方を見ているがな。


 「妾は男の子、女の子らよりも年上だぞ?一回り位は」


 あれ?女性って、こう言った類いの話を自分からしないものなんじゃないの?


 「嘘…」


 荻原さんが呟いた。


 「失礼な小童達よ…」


 ナシェリアは怒り心頭。


 「怒らせた妾は恐ろしいと覚えておくが良い!火と水の精霊よ、我に力を《龍炎》」


 部屋の至る物が焼け、濡れる。

 この部屋の壁から外は燃えない仕組みになっている。と言うより、壁が魔法自体を弾く性質になっている。


 「団長殿、魔法を消す事をお勧めします。このままでは、何も始まらずに時が過ぎるだけですので」


 メルヴェルが俺の耳元に言ってきた。

 事実、ナシェリアの自己紹介のみしか行っておらず、すべき事が沢山、残っているのだ。

 俺はメルヴェルに用意させた紙に、伝えたいことを書いていく。


 『わかった。ナシェリアの《龍炎》を消そう』


 俺は何も発しないで《魔法削除》を使った。これが本来の無詠唱。

 アフターサービスで、部屋内の至るところを《修復》した。


 「あっ…妾の《龍炎》が」

 「「「「龍が居なくなった?」」」」

 「よく聞け、お前ら。失礼の無いようにと言っただろう?そして、直ぐ怒り狂うようであればナシェリア・ランドゥルフ。貴様の加入を不許可とするが?」

 「「「「「すみませんでしたぁっっ!!」」」」」


 ナシェリアと勇者パーティー達は、メルヴェルにお叱りを受けている。そして、返事はまるで軍隊の様…。


 『メルヴェル。そこまでにして、始めようか』


 俺はメルヴェルを止めない限り、始まらないと思い、紙に書いて伝えた。


 「申し訳ありませんでした。早速、始めさして頂きます」

 ((((メルヴェル様が敬語を使って敬うなんて…このフードの男、何者?))))

 「早速、伝えなければならない事がございます」


 俺は思う。勇者達や、ナシェリアの引き様を見る限り、メルヴェルの口調は俺仕様になっているのだろうと。


 「この御方が、討伐すべき魔王の住み処を特定された事です。そして、各地で魔獣大量異常発生(スタンピード)が起きており、魔王は着実に力を付けている事です。ですので、早急に魔王を討伐しなくてはなりません」

 「質問があります」


 有田が手を挙げる。


 「団長殿、発言を許しますか?」


 メルヴェルは俺の耳元で聞いてきた。なので、返答を。


 『許す。今後も、許可を得なくて良い』


 一々、聞いてこなくても良いんだぞー。言っても無駄だって事は分かっちゃいるんだよ、うん。


 「では質問を聞きましょう」

 「はい。魔王の住み処を知っているのは、魔王の(しもべ)、若しくは魔王本人である可能性は無いんですか?」


 俺が魔族だと??失礼な。


 『俺は敵対した魔族から聞いた』


 魔族疑惑を少しでも晴らす為に、紙に書いて伝えた。


 「信じられません。勇者でもない貴方が、魔族を倒せる筈がありません」


 勇者じゃないと魔族は倒せないのか。

 俺は戦ってみて思った。勇者達には敵わない相手だと。なのに、お前らが言うのか?


 『それで、お前達は魔族と戦った事はあるのか?』

 「無い…」

 『魔族は単なる魔獣なんかよりも遥かに強い。更に魔王はそれも凌駕する力を持っているだろう』


 俺は普通に喋るのと変わらないぐらいの速さで紙に書いていく。勿論、《身体強化》を使って。


 「確かにそうでしょう。しかし、貴方が魔族よりも強いと言う確証がありません」

 「それならば、私が保証しよう。それでは駄目か?」


 メルヴェルは有田を含める勇者達のみに対して言った。


 「この宮廷筆頭魔法師ナシェリア・ランドゥルフも保証するぞ」


 ナシェリアって、俺が魔族を倒した所を見てたっけ?まあ、いっか。魔族の死体を見た訳だし。


 「…分かりました。ですが、一回、メルヴェル様と決闘してください」

 『メルヴェルが良いなら俺は構わない』

 「承りました。では、決闘場に移動しましょうか」


 俺の力を見る為だろうか。だったら、自分が相手になれば良い。

 まあ、弱すぎて殺してしまったら、元も子もないからな。相手が少し強いメルヴェルで良かったぜ…。




 俺達は王宮にある決闘場に向かった。

 王宮にある決闘場と言えば、前、アレドラントと戦った場所だ。


 『メルヴェル、手加減はするなよ』

 「団長殿の御命令とあれば」


 この会話は誰も聞こえなかっただろう。

 決闘場に着いた時、有田が言った。


 「ルールはこちらから設定させて頂きます」


 お前がルールを設定するのかよ…。まあ、良いけどさ。


 『問題ない』

 「私はこの御方の指示に従うまで」


 俺が良いなら、メルヴェルも良いって言うよな。


 「これから《障壁》をお二人に張らせていただきます」


 有田がそう言うと、荻原さんが俺とメルヴェルの前に立ち、無属性魔法の《障壁》を張った。

 柔すぎる。魔力にムラが有り過ぎて、魔法を一発当たっただけで、この《障壁》は壊れるだろう。


 「その《障壁》は、魔法を直接十回当たれば、壊れます。先に相手の《障壁》を壊した方が勝ち、と言うルールです」

 『この《障壁》は十回も持たない』

 「私達を舐めては困るぞ、ガキ共」


 メルヴェルも気付いているんだろうな。魔力にムラがあることに。


 「張り直すのを勧める。ナシェリア・ランドゥルフが張り直せ」


 まあ、荻原さんよりも魔法使用歴は長い訳だしね。魔力のムラは少なくて、少し頑丈に張れる。

 俺が《障壁》張ってたら、広島の原爆は防げたのかも知れないな…なんて思いながら、日本史の授業を受けた記憶があった。


 「分かりました。妾が張り直しましょう」

 『その前に俺が、先に張ってある《障壁》を消してからで良いか?』


 俺は荻原さんに申し訳ないと思いつつ、《障壁》を《魔法削除》で消させてもらった。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。

***

余談(飛ばしても大丈夫です!)


 ナシェリアを怒らせてしまった時の対処方法



 もし、あなたがナシェリアを子供扱いし、激怒されてしまったとします。その場合、あなたは魔法で殺されてしまうことでしょう。アヴィルくんの様に強ければそれで良いのですが、念の為に。



 怒らせてしまったのであれば、出来るだけ沢山の肉料理を振る舞う事が望ましいです。そうすれば大抵の事は許してくれる筈です。仮に許してくれなかったとしても、肉料理をずっと気が済むまで与え続けておいてください。多分、いつかは許してくれると思います。

―――――――――――――――


 「な、何だ、この文書は!?妾を怒らせてしまった時の対処方法だぁっ!?」


***

次の更新は11月3日です。

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