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 「まだ、あるのか…それでは二つ目を話してみよ」


 ヴァールデンは溜め息を吐きながら、そう言った。


 「俺、帰省したんだ」

 「帰省の話をしに来たのか?とでも聞こうとしたが、それを言ったのには理由があるのだろう?」


 分かってるね、ヴァールデン。まあ、隣のランドメントルは分かっていなかった様だけど。


 「家はリヴァーフォールズ辺境伯爵家だって知っているだろう?」

 「知っているも何も、アヴィルの行方が知れず、跡継ぎはどうなっているのかなど何も解らない。だからこそ、それを確認させに使いを送ったのがランドゥルフ魔法師なのだ」


 成る程…。だから、俺の父親に用事があった訳か。

 俺は、リヴァーフォールズ辺境伯爵領の現状について説明しようと思ったが、仕方無い。ナシェリアに振ろう。


 「ナシェリア、お前がヴァールデンに報告してやれ」

 「あ、アヴィル!?」

 「お前の仕事なんだろう?」

 「だが、しかし…」


 いきなり振られて、何から言えば良いのか迷っているのか?


 「どうしたのだ?」


 ヴァールデンが口を挟む。


 「ほら」


 俺はナシェリアの背中を軽く押す。本当に軽く。


 「あ、あの国王陛下」

 「何だ、ランドゥルフ魔法師」

 「この件につきましては、こちらからご報告させて頂きます」

 「ランドゥルフ魔法師…肩の力を抜きたまえよ。見よ。アヴィルに限ってはその場で胡座(あぐら)をかいているではないか」


 カチコチのナシェリアに、ヴァールデンは微笑みかける。

 ナシェリアは掛けられた声に確認を含めた感じで俺の方向を見て、俺を凝視している。


 「その話、長くなりそうだし…」


 俺、長話は嫌い。好きには、なれないね。だからこそ、座ってる。暇だし。

 そんなことで良いのかと聞かれれば、「良いんじゃね」の一言で返すさ。


 「分かりました…では、話させて貰う」

 「肩の力を抜き過ぎでは無いのか…?」

 「いえ、国王陛下がアヴィルの様に肩の力を抜けと言ったので」

 「…」


 「先ず、リヴァーフォールズ辺境伯爵領の村の現状は廃村状態で、リヴァーフォールズ伯爵と伯爵夫人は亡くなった」


 簡単に纏めると、そうなるよな。


 「…アヴィル?父上と母上が亡くなっていたのか?よく、そんな通常運転で居られるな?」

 「今、ナシェリアのお仕事中だろ。俺に振るな」

 「ええ…」


 ナシェリアは何も構わず、話を続ける。


 「リヴァーフォールズ伯爵の死によって、アヴィルが現当主となり、辺境伯爵になった」


 そうそう、俺、辺境伯爵になっちまったんだよぉ…。


 「アヴィル…今からでも遅くないだろう?」


 昔、聞いたことがある。

 爵位を賜るか、受け継ぐとき、当代の国王に宣誓する必要があると。

 多分、その宣誓をさせるんだよな。


 「しょうがないな」


 俺は立ち上がる。


 「しょうがないのか?それは国の仕来(しきた)りだろう?」


 ヴァールデンが言った。

 俺には興味の無かった事なので、仕来りも知ったこっちゃない。


 「じゃあ…国の為?民の為?そして、我らが親愛する王の為?んなの知るかボケエ…に、この身に宿る力を振るわれる事を誓う…?何で?誓わねーよ」


 全て自分の為に使う。最後に自分に帰結するならば使う。


 「…アヴィル、宣誓の言葉が何か違う気がするのだが?」

 「気のせい、気のせい」

 「宣誓は終わったか?」


 ナシェリアがタイミングを見計らって聞いてきた。


 「ん。終わったぞ」

 「そうか。のう、アヴィル。付け足しとかあるか?」

 「まあ、俺から言っておきたい事もあるし、ナシェリア。お疲れ」

 「うむ」

 「さてと、俺の両親が死んだことについてだが。何者かに殺された」


 ナシェリア以外は一瞬、動揺している。

 何せ、俺の両親は、元王宮筆頭魔法師と、剣姫と呼ばれた剣の使い手だからな。最強夫婦。

 その最強夫婦が、殺されるなんて有り得ない話だからな、そりゃ。


 「俺は犯人を魔王だと睨んでいる。理由は、魔王は人の魂を食らい、取り込むことによって力を得る。俺の両親は身体から魂ごと食らい尽くされたからな」

 「なっ…」


 ヴァールデンは驚いている。逆に、メルヴェルは納得していた。


 「成る程です…魔王にそんな情報があるとは」

 「まあ、一応、親の仇と言うことで、魔王討伐に参加するわ」

 「アヴィルが、参加するとなると心強いが…一応って何だ、一応って!」


 ヴァールデンはツッコミが冴えてやがる…。


 「ですが、団長殿。勇者共に正体をお隠しでしょう?その件についてどうするのですか?」

 「その件は、自分で何とかする」


 これでも考えた方だからね。


 「何とかって…」


 ナシェリアが言った。まあ、これが普通の反応だろう。しかし、メルヴェルは違った。


 「流石、団長殿です。きっと、素晴らしいお考えが浮かばれているのでしょう…!」


 そこまで素晴らしい考えでは無いし、至って普通の考えしか浮かばなかったし。

 期待され過ぎても困る…。


 「団長殿のサポートですが、弱い勇者パーティーでは足を引っ張るのみですので、今のところ強いパーティーにサポートさせます」


 俺のサポートではなくて、勇者共のサポートなのだが。その方が、好ましかったりする。


 「それが良いな。では、明日、対面して貰って…」


 ヴァールデンがメルヴェルに相槌を打っている。

 あれ?何か、話が進んでる?

 俺主体の勇者パーティー成立~なんちゃって。そんな物出来たらと思うと…。


 「団長殿なら大丈夫ですよ」


 その根拠は何だよ…メルヴェル。


 「あっ、国王陛下?妾も参加させて貰うぞ」

 「何かアヴィルと仲良さそうだし、参加を許諾する」

 「なっ…?」


 俺と仲良さそうなだけで参加を認めただと!?


 「アヴィル、妾も一緒だ。裏口実を合わせようではないか」




 結論、今のところ強いパーティーとナシェリアが俺をサポートする事になった。俺は勇者のサポートをするだけだった筈なんだがな。


 「ああ、そうだ。ルヴァフガンデ街付近で起きたスタンピードの魔獣の死体を出しとく《取り出し》」


 ボトボトと出てくる大量の魔獣――ヒュードリアル達の死体。

 この謁見の間の足場と言える足場が無くなり、ヒュードリアルの山となった。


 「こんな魔獣までもスタンピード…」


 メルヴェルが言った。


 「このスタンピードは人為的である事が解った。ルヴァフガンデ街は魔族の手に支配されつつあり、その魔族の命令に従う様にして、ヒュードリアルを呼び寄せ、スタンピードを起こしたと聞いた」

 「妾はそんな話は聞いていないぞ…」

 「ナシェリアが寝ていた時の話だからな。知らなくても無理は無い」

 「それは、魔族でない人間の私達でもスタンピードを起こせると言うのですか?」

 「少し違う。あれは多分、魔族の魔力を借りているんだと思う。何か、人間ではない様な魔力の痕跡も感じられた」


 正確に言うと、命令されてスタンピードを起こしたサンディーから、その魔力が微かに感じられたと言うべきだ。


 「結局のところ、魔族にはスタンピードを起こす事が出来、人間には出来ないと?」


 メルヴェルが問う。


 「少なくとも、そうかもな。人間と魔族の全面戦争になったとき、数で負けるだろう。人間は」


 俺はそう答えた。


 「兵を出そうと思ったが、国を守る兵が居なくなってしまう…アヴィルにはキツいと思うが――」

 「離れた場所で数ヶ所同時にスタンピードを起こされたらどうする?俺は一人しか居ないんだぞ?それに、ヴァールデンの命令に従うとは言ってもいない」

 「…相変わらずだな。学生時代から何一つ変わらぬ」


 ふーん…。

 後ろに立っているメルヴェルとナシェリアが何かを話し出した。


 「メルヴェル殿、聞いても宜しいですか?」

 「聞きたい事は分かっている。団長殿と国王は国立高等魔法学校の同級生(ルームメイト)同士だ」

 「えっ?えっ…?」


 ナシェリアは俺とヴァールデンを交互に見ている。高速で頭が往き来している。


 「と言うか、俺にとっては五年そこらだからさ、変化ってあるのか?」


 俺はヴァールデンに言った。


 「それでもだ。五年そこらでも変わり様がないのは驚きだ」

 「人の性格の根本的な所は変わらないからなー」

 「アヴィルが言うのか?周りの者達が劇的な変化をしていた中で」

 「変わっていないと言っただろう。変わっていないと」


 メルヴェルもヴァールデンだって、歳を取っても根本的な所は変わっていなかった。


 「話は大分、逸れてしまったな。アヴィル、ランドゥルフ魔法師。其方(そなた)達を魔王討伐に加え、勇者達と共に魔王討伐せよ」


 王として、これだけは言いたかったんだろうな…。


 「はっ!」


 ナシェリアは元気良く、返事を返した。


 「命令されるのは、いけ好かない。だけどな、これは俺から申したことだ。命令に従う感じになって嫌な気分だが、ここだけは従っておくか」


 俺からのヴァールデンへの返事は少し長ったらしくなった。


 「流石は団長殿です。何にも左右されない、素晴らしい御方…!だからこそ、我が魔法師団は独立した最強組織として、成立するのですね!」


 物凄い早口でメルヴェルは天に向かって嬉し涙を流しながら、そう言った。


 「普通に返事したらどうなのだ…アヴィルは」


 ナシェリアはやれやれ、と言った感じに言った。


 「じゃあ、明日にまた王宮に来るわ。メルヴェル、行くぞ」

 「はいっ!今日の夕食はお済みですか?」

 「いや、まだだ」

 「なら、丹精込めてお作りしますね」


 俺とメルヴェルは謁見の間から出ようとした時、ナシェリアに呼び止められた。振り向いたら、こう言われた。


 「また、明日」と。


 俺はこう返す。


 「ああ、また明日な」




 そうして、俺とメルヴェルはメルヴェルの自宅へと帰った。

 俺にとっては二週間位振りとなる、メルヴェルの自宅だ。

 家に入るなり、メルヴェルはキッチンに向かい、料理を始めた。

 数分ぐらいして、料理が出来上がった。

 久し振りのメルヴェルの料理は最高に旨かった。食事中は、俺が帰省中の土産話を主として会話していた。パワレント村の武闘祭で優勝したこと等を。

 久し振りの料理の旨さに、浸りながら寝床に就き、就寝したのだった。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。

***

余談(飛ばしても大丈夫です!)


 アヴィルくんと国王ヴァールデンさまが話している間、暇なランドメントルは、ずっとメルヴェルさまに眼を飛ばされていました。それでも、ヴァールデンさまに対するアヴィルくんの失礼さに怒り爆発してしまいました。


***

次の更新は10月30日です。

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