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「――は?何で加護付与が成功しねーんだ?」
やはり、失敗したか。
ほぼ、これからの会話はデジャヴなのでカットさせていただく―っと。
そして、フューガンディーは戻り、サンディーはサンディーに戻った。
その後の会話もデジャヴ…。
《加護の間》から出てきた俺達は、すっかり夜になっている事に驚いていた。
「すっかり、夜になってしまいましたね」
「アヴィル、明日も観光を…」
「そうだな…晴れればか?雨が降ればこの街を立ち、アラル火山の山越えだ」
アラル火山は活火山だ。雨が降れば、少しだけ活動を緩くなる。乾燥し晴れた日など、活火山の活動は活発になる。
「それなら大丈夫ですね」
「何故、判るのだ?」
ナシェリアはサンディーに聞いた。俺も、ナシェリアに続くようにして聞く。
「天気でも判っているのか?」
「はい。明日は晴天です。次、雨が降るのは来週ですね」
ぬおぅ…!?
晴天じゃあ、乾燥もしてるし…。
因みに、日本がある地球で言う所のヨーロッパ方面の気候に、ここは似ている。
「じゃあ、来週まで、ここに滞在する事になるな、アヴィルよ」
出来るだけ早く帰って、出来るだけ早くメルヴェルに会いたかった…。
「明日も案内させてくださいね。教会でいつまでもお待ちしておりますので。それでは、失礼させて頂きます」
綺麗なお辞儀をして、サンディーは(多分教会に)帰っていった。
「妾達は宿に戻ろう」
「ああ」
俺とナシェリアは宿に戻った。
そして、寝床に着くが…また、俺、眠れないらしい。
ナシェリアは熟睡中なのに…。
「夜風に当たって来るか…」
宿を出た俺はある方向を目指し、歩いている。
そして、目的地に到着し、歩みを止めた。
「なあ、お前…何してんの?」
とある人物に話し掛ける。
その者は俺を見付けて驚いている様だ。
「ひっ…ああ、アヴィルですか…驚かせないでくださいよ」
「見物だな、人の驚いた姿は」
本当に面白い。
「なっ、何て事を言うのですか…?」
「まあ、気にするな」
「気にしますよ…所で、どんなご用事ですか?こんな夜中に」
「俺の質問に先に答えろよ…サンディー。血で身体中ベトベトじゃねーかよ」
俺は教会でサンディーに会いに来ているのだ。
サンディーは身体中、返り血がベトベトと、付いていた。
見掛けた時、内心「うわー…」って多少、引いたわ。
「汚いですかね…」
「その血は?」
「…気にしないで下さい」
溜めがあった。気にはなるわ、そんな溜め。
興味半分、面白半分で揺さぶってみるか。サンディーを。
「誰か殺したのか?」
日本にある刑事系ドラマ。意外にも面白かったな…。
人が日々死んでいく世界から、日々死んでいかない世界に転移してしまった俺の日常の刺激。なんちゃって。
「それは仕方無かった事なんです…!」
否定はしなかったな。
突然、奥から二人の女性の声がした。
「貢ぎ物が増えたの?サンドンレスター」
「人の魂が増えるなら誉めて使わしてあげます」
その女性達はどんどん近付いていく。
「あっ…し、シンファ様、メーディ様…すっ、すみません」
サンディーは青筋をたてながら、その女性達に謝罪している。
ちょっと待て。聞き覚えのある名が聞こえたぞ?
記憶が正しければ、シンファと言う奴と、メーディと言う奴は、魔族…だったよな?
そして、女性二人の姿が現になった。
俺の自宅に居たメイド姿の魔族メーディと、俺をパワレント村の武闘祭で何度も腕を切り落とした魔族シンファだ。
「あら?見覚えのある顔ね?」
「シンファさんも、ですか?奇遇ですね、私もです」
「くっそ、会いたくねぇ奴等に会った…」
本音が溢れた。
「あ、アヴィルは知り合いなのですか?シンファ様とメーディ様に…」
「知り合いだと言われると、虫唾が走る…」
嫌な気分になる。本音だ。
「取り敢えず、サンドンレスター。貴方は私達の命令に失敗した。どう言うことか、分かりますよね?」
勝手にシンファは仕切り直した。それは良いとして、何の命令だ?
「私達は言いましたよね?ヒュードリアルの大群を呼び寄せなさいと」
ヒュードリアルの大群…。
昨日の夜ぐらいに、ヒュードリアルの大群を撃ち落としたなぁ…。そんな記憶があるな、程度としか思えていないな。
「よ、呼び寄せました」
「ですが、この街に一体も居ないじゃないですか」
「良くないですよ、言い訳など」
「で、ですがっ…」
「なあ、一つ聞くぞ。ヒュードリアルの大群ってのは、昨日の夜ぐらいに呼び寄せたのか?」
この状況は、俺が撃ち落としたかも知れない大群が引き金になっているのだろうか。
「え、ええ…何で、知ってるんですか?」
正解。あんまり、嬉しくない正解だなぁ。
「そのヒュードリアルの大群なら、俺が撃ち落としたからな。死体なら全て回収した」
「何て事を…」
「危険だと感じたからだ。それ意外に理由は必要か?」
「いえ…」
「また貴方ですか…本当に何者なんですか」
メーディは俺が何者かが知りたいらしい。
敵に教える事など何も無い!教えようとした所で、教えるものも無い。
「知らなくても良いだろう。それに、人の魂を回収してんのか?魔王とやらの為に」
「人間ごときが、魔王様を気安く呼ぶな…」
メーディの口調がとうとう、可笑しくなってきた。
「め、メーディ、ここは立ち去りましょう!魔王様に報告ですよ」
シンファはメーディを引っ張りながら飛び去っていった。
「――それで、サンディー。お前はいったい、何人殺した」
「ざっと、十三人でしょうか…」
「あっそ。それで、俺かナシェリアを殺す予定はあったのか?」
「ええ…まあ」
殺されそうになる前で良かったな…。
殺されたら、復活してやろう。何かと、世話になってるし。後、恩を返しきれずに死んだら、嫌だろうし。
俺が死んだら?そこまでで良いんじゃね?別に。
「サンディー。お前は何で魔族達と居たんだ?」
「…数日前、行きなり現れて、脅されて…」
「ふーん…まあ、気落ちするな。俺の職場なんて、血みどろだからな」
自分が危うく死ぬところになりそうな職場と言えば、戦場。
何を隠そう、魔法師団の遠征には、魔獣討伐以外にも対人戦もあるのだ。戦争に駆り出される。
「じゃあ、俺は宿に戻らせてもらう。そして、明日、出発させてもらうぞ」
「…」
サンディーは何も発しなかった。
俺は宿に戻り、就寝した。
***
翌朝、目が覚めると、まだ、ナシェリアは気持ち良さそうに寝息を立てて寝ていた。
ナシェリアが起きる前までに、俺は着替えなどを全て済ませておいた。
「…アヴィル?起きてたのか」
「ああ」
ナシェリアが起きたようだ。
「どうしたのだ?そんな湿気た顔をして」
「今日、この街を出るぞ」
「観光はどうしたのだ!?」とかで、泣き付くんだろうな…。
「そうか」
あっさり、納得された。
「どうしたんだ?」
「いや…な。真剣な顔をして言われて、拒否は出来ぬだろう?」
俺を思ってなのか…無理してないか不安である反応だった。
「さあ、妾も準備は終わった。出発だな」
「ああ」
俺達はそのまま、アラル火山麓まで歩いていった。
アラル火山麓に着いた頃。
「アヴィル、今回も《身体強化》を使いっぱしるのか?」
俺は首肯く。
ナシェリアの溜息が聞こえたが、俺達はアラル火山を爆走する。
「のう、アヴィル」
「何だ?」
「そう言えば、サンディーには別れを告げなくて良かったのか?」
「俺が昨晩の内に言っておいた」
「安心した。いつものアヴィルだな」
どこにそんな要素が!?
でも、何処と無く暗めではあったナシェリアはすっかり笑顔である。
それに引き連れて俺も多少、笑みが溢れた気がする。
「このアラル火山を越えた先はリヴァーフォールズ辺境伯爵領なのか?」
「まあな」
今回、ティリー鉱山とアラル火山は最短距離である。遠回りするとなると、本当に幾つかの山を越える事になるからな。
危険もあるが最短距離。否、危険ありまくりの最短距離。
「意外と早く着くものなのだな…行きだけで三ヶ月掛かるものだと思ってたから」
「こう、二つの山を一日足らずで一つの山ずつ越えて行く最短ルートなら、二週間ぐらいで着くものだぞ。俺の見立てより若干、遅いがな」
観光を見立てに入れてなかったからな。
「それで帰りも…?」
「勿論、来た道で帰るが?」
「じゃあ、また、ルヴァフガンデにあるカレーを食べられるな!」
嬉しそうだ。
きっと、あの顔は脳内で何度も高速ガッツポーズを決めている事だろう。
「――さて、麓まで降りてこられたな」
俺達は《身体強化》を解き、歩いている。
「夕暮れになる前に、この大きな火山を越えられるとは…」
「疲れ溜まってるだろ?後、もう少しだから我慢だな」
ナシェリアはやはり、息を切らしている。
「もう、ここはリヴァーフォールズ辺境伯爵領なのか?」
「の目の前だな。ここは」
ギリギリ、領内ではないのだ。
「そう言えば、ナシェリアは何故、リヴァーフォールズ辺境伯爵領に?」
「言ってなかったか?」
どうだか。
「妾はな、リヴァーフォールズ辺境伯爵に会いに来たのだ」
ふーん…俺の父親にねー。何しに会いに行くんだろうか。兎も角、本当に行き先が一緒だった。
「と言う事は、リヴァーフォールズ邸に行くのか?」
「辺境伯爵は、そこにしか居らぬだろう?」
何を当然の事を聞いておる。と付け足して言った。
「アヴィルは実家に行くのだろう?」
「ああ…」
リヴァーフォールズ邸は実家であります。
「なら、もうじき、暫しの別れだな」
「いや…そう言う事にはならないと思うぞ。帰省してきたのを、領主に報告するからな」
俺がリヴァーフォールズ邸に向かう口実はこれで良いかな?
「そんな事をする必要があるのか?」
…まあ、そうなるわな。
「まあ、幼い頃、世話になっているからな。村は領主も含めて家族みたいなものだ」
領主は本物の家族。
「――って、は!?な、ナシェリア!?何で、泣いているんだ??」
諸泣きである。
「辺境伯爵も村の者達も素晴らしいのだな!感動したぞ!」
素晴らしいのかも知れないが、俺には別にどうでも良い事だ。
「ま、まあ、兎も角、リヴァーフォールズ辺境伯爵領の村に着いたようだ」
ここまで読んでくださり有り難うございます。
誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。
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余談(飛ばしても大丈夫です!)
サンディーの十三人目の殺人 (サンディーSide only)
私は一体、何をしているのでしょうか。
ある日、女性二人が突如として現れ、「この街を破壊する」と脅しました。
普通、女性二人がそんな事を言っても、嘘ぐらいにしか聞こえない事でしょう。私にはこの女性達は只の女性には見えなかったのです。何処か狂気を感じたのです。
その日の翌日、目の前で人を残虐な方法で殺めている所を見せ付けられました。私は仕方無く従う事にしました。これも、このルヴァフガンデの民を守る為に――。
※※※
二日後、あの者達は私に殺人を要求してきました。
覚悟と、私の過ちが共存するこの気持ちを振り絞って…。
遂に、私は人殺しとなった。神に仕える者でありながら、関係の無い者を、この手で殺めてしまったのです。
それからほぼ毎日、人殺しを要求してきました。
そして、数えて十三人目となる者とは……私の唯一無二の存在――妹のシルヴィーだったのです。
「し、神官様…?」
「シルヴィー……無理です」
「最近の神官様の行動が可笑しいと思っておりましたが、そう言った理由だったのですね。どうぞ、私を殺ってください」
私は誰も巻き込みたくは無かった一心で、誰にも諭されない様に行動してきたつもりでしたが、流石は私の双子の妹です。ですが…。
私に躊躇いの衝動が起きました。
「この私が殺される事によって、ルヴァフガンデが守られるのなら本望です。そして、兄上が殺ってくださると言うのなら。さあ、お殺りなさい!」
「えっ…」
「何を躊躇う事があるのです!?」
その時のシルヴィーは泣いていました。
「うわぁぁぁっっ!!!」
私は目を瞑り、シルヴィーを刺しました。
「そう、それで良いのです……兄……上…………」
シルヴィーはゆっくりと目を閉じ、死に逝ってしまいました。
私にはシルヴィーの返り血がベッタリと付いていました。
この後、二分もしない内にアヴィルが来ました。アヴィルは、私が誰を殺したのかは聞きませんでした。
***
次の更新は10月20日の予定です。




