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「――と言う事を話した」
レガーナに、俺とパワレントと話した事の全てを包み隠さず、一つ一つ丁寧に話した。
「そうですか…魔神の加護のせいでパワレント様からの祝福を受けられなかったと…。アヴィル様は、魔神の加護に身に覚えが、おありでしたか?」
「いや、知らなかったな。俺に魔神の加護があった事を」
「パワレント様から仰られた通り、アヴィル様の足枷になっているのです…その加護は」
「どんな感じに足枷となっているのか、解るか?」
パワレントから足枷と言われたものの、あまり、パッとしないのだ。
「ええと…多分ですが、アヴィル様の居場所を魔神の加護を通して何者かが見られる状態にある…でしょうか?」
俺の居場所を、何者かが見ている。つまり、行動を監視されていると言う事か。
「行動を監視される…つまり、行動を制限されるのと、同じことなのです。ですから、その加護は、アヴィル様にとって、足枷になると言うことなのでは」
成る程…。
俺の行動を監視している輩は一体、何処のどいつなんだろうか…。
「取り敢えず、これから後夜祭です。アヴィル様、是非、楽しんでいってくださいね」
レガーナは真剣そうな顔から一変、笑顔を見せた。
「楽しませて貰おう」
俺は舞台上から降り、ナシェリアの下へと向かった。
「遅いぞ、アヴィル」
早速、ナシェリアから怒られた。
「祝福だけでこんなに時間って掛かるものでは無いんだが?」
優勝経験者は語る。
「実はな、ちゃんと加護を付与することが出来なかったんだ」
「そんなことが…?」
「どう言うことなのだ?」
マクリエルは「そんなことは起こる筈がない」とでも言いたそうに驚き、ナシェリアはマクリエルが何故心配するのかが解らなそうだった。
「優勝者は戦の神パワレント様の加護を貰う事が出来ます。俺だって貰いましたから、アヴィルだって貰える筈です。ですが、神からの加護が失敗するなんて事が起こる筈がないのは、ナシェリアの姐御も知っている、すよね?」
「ま、まあ…素養知識ではあるから、それは知っているが…」
「その起こり得ない事が起きたんだよ」
俺はマクリエルに付け足しを兼ねて言った。
「成る程…神様が失敗なんて事が起こり得るのだな」
漸く、納得したようだ。
「これきりは、考えても仕方無いと妾は思うぞ。時は後夜祭だ。今は忘れて楽しもうぞ!」
そして、切り替えの速さも凄かった。
マクリエルは勿論、俺もナシェリアの後を追った。
「お薦めの出店を紹介するっすよ!」
マクリエルは俺達を、沢山ある内の出店からお薦めの出店を案内してくれた。
「らっしゃい!おおっ!マクリエルの野郎じゃあねーか!あと、武闘祭を優勝したアヴィル?と、惜しくも負けてしまったナシェリア嬢じゃあねーか!」
普通に暑苦しい店主。
俺とナシェリアとは初対面の筈だ。俺達の名前を知っていると言う事は、武闘祭を観戦してたのだろう。そこは、今はどうでも良いか。
「んで、ここは何を売っているんだ?」
「おいおい…言ってなかったのか?マクリエルぅ」
「ナシェリアの姐御とアヴィルを驚かせたくてよぉ」
「はっはっは!サプライズってか!?」
「ああ」
とても仲良さそうに、店主とマクリエルは二人で会話が弾んでいる。
「それで…何が出てくるのだ?妾は凄く気になるぞ」
「まあ、俺も気にはなるな」
「店主!三つだ!」
俺とナシェリアが気になっている事をそれぞれで口に出した後に、マクリエルは謎の物を注文した。
三つなのは、俺とナシェリア、マクリエルの三人で一人一つずつと言う事なのだろう。
「はいよ!三つだな!」
店主が持ってきたのは何かのドリンクだった。
「意外だったか?」
店主は俺達に問う。
「…ああ、意外だったな。何かの串焼きとかかと思った。鉄板に大量の串焼き専用の串が置いてあるからな」
「まさか、こんなハイカラな物が出てくるとは、思ってもみなかったぞ…」
ナシェリア、何故、ハイカラと言う言葉を知っている?
…兎に角、それはさておきだ。
「串焼きか。それも良いな!まあ、この鉄板とかは俺の趣味だ。どうだ?熱い漢と言う感じがするだろう?」
それの行き着く道は鉄板、か…。
全く良く解らん。
「妾は肉が出ればより一層、熱い漢?と言う感じになると思うぞ?このドリンクはどちらかと言うと…可愛い乙女と言う感じがするぞ」
「そ、そうなのか!?」
店主は驚いた様な顔付きで、壁にもたれ掛かる。
「マクリエル、あの店主、大丈夫なのか?」
「アイツは、乙女と言われると駄目らしい…。要はナシェリアの姐御と同じ様に、コンプレックスを抱えているんだ」
「どんな、とは聞かないが、そのドリンク…いつ飲めるんだ?飲んで良い空気では無さそうに思えるのだが…」
早く飲んでみたいのも事実。そして…日本に同じ様なドリンクがあったような気がする。でも、何か違う。
「して、何のドリンクなのだ?この青とか緑とかカラフルな丸い物体が入って…」
ナシェリアが聞いた。
「アコイパト入りミルクオレっす。丸い物体はアコイパトっすね」
店主の代わりにマクリエルが答えた。
アコイパト?
「飲んでも良いのか?」
「店主の事など気にしなくても良いっすよ」
俺とナシェリアはアコイパト入りミルクオレを飲み始める。
アコイパトは…タピオカ??
日本で流行り出した、あのタピオカ??
「このアコイパト…不思議な感じがするぞ!?こんなのは、初めて飲んだぞ…」
「アコイパト入りミルクオレが飲めるのはここだけっすからね」
ああ…これはここだけなのね。
でも、このアコイパト入りミルクオレ…本当にタピオカミルクティーだろ…。
世界が違えども、似たような物はあるわな、そりゃ。人間が作り出すんだもの。
「でも、美味だぞ!なあ、アヴィル!」
「そうだな」
味はとても美味しい。甘過ぎず、苦過ぎず、丁度良い感じ。
「喜んで頂けて何よりっす!まだ、お薦めはあるっすから、どんどん紹介していくっす!」
「次は肉でも案内しとくれ!」
「肉料理の旨い屋台もあるっすよ」
「わーい!」
ナシェリアと、マクリエルはとても仲良しである。
あれ…?俺、寂しい?
まあ、いっか。
***
こうして、色んな店を回れたのである。後夜祭は翌明朝まで続いた。
「もう、旅立つっすね…」
そう、武闘祭の翌日、つまり、今日は次の中継地点へ旅立つ日である。
「マクリエル…」
「マクリエルは、妾達に付いて来ぬのか?」
「ええ…俺は冒険者っすから。それに、パーティーメンバーのユザ嬢も居るっすから…」
ああ、俺が昨日、武闘祭で戦ったユザリアナね。
「別れと言うのは悲しいものだが、永遠に会えぬと言う訳ではないぞ。いつかは、会える」
ナシェリア、良いことを言うなぁ。
「ええ…!そうっすよね!」
マクリエルは何故、そんなにボロ泣きなの?
そして、俺とナシェリアは馬車に乗り込み、外に居るマクリエルと手を振りあった。主にナシェリアが。
そうして、馬車は出発した。
「馬車の行き先がティリー鉱山なのだな。初めて知ったわ」
「…知ってたんじゃ無かったのか?」
「リヴァーフォールズ辺境伯爵領に行くのは初めてなのだ」
ふーん。
因みに、馬車はティリー鉱山の麓に停まる。そして、ティリー鉱山に入山して、山越えをする。
山越えは歩きだ。
「ティリー鉱山って、遭難しやすい山ではなかったか?」
「うん?そうだが?どうした?」
ナシェリアは、変な事を聞くんだな。
「ティリー鉱山を山越えするしか、行く道は無いのか?」
「そうだろう?」
ティリー鉱山を山越え、奥のアラル火山も越える。山道は馬車は通っていないからな。
「アヴィルは、リヴァーフォールズ辺境伯爵領にへは行ったことがあるのか?」
「あるよ。何十回も」
そりゃ、実家がある故郷だからな。
「そう言えば、帰省をする為と、言っておったな。なら、あんな辺境に何十回も行った事があるのだと、頷ける」
思い出して頂き、光栄です。
「あともう少しで着くな」
「む?パワレントからティリー鉱山麓まで、意外と近いのだな?」
馬車でおおよそ三時間半。
「今までの移動で、一番近いのかもな」
「これから…野営か」
「野営…?それはどうやってするものなんだ?」
項垂れるナシェリアが言った野営について聞いた。これまでに何十回も同じ道を通って、帰省していたが、野営と言うものを、一度もやったことがない。
「え…まさか、ティリー鉱山とアラル火山?その二つの山を一日足らずで?妾には到底、無理な事だぞ…??」
二つの山を一日足らずで、山越え出来ていたかと問われると、そうでもない。
「一日でティリー鉱山を越える。越えた先にある街で、夜を過ごす。翌日、アラル火山を越える。こうすれば、良いだろう?」
いつも、俺がそうしていたから。
「越えた先の街からは、歩いてアラル火山に行ける程、近いのか?」
「ああ。どちらかと言うと、街がティリー鉱山とアラル火山に挟まれている」
小さな街だが、商業や旅行業、登山業などが盛んである。
「よくそんな僻地に、住もうと思えたの…」
「じゃあ、ナシェリアに聞くが、リヴァーフォールズ辺境伯爵領の方がよっぽど僻地だ。よくそんな場所に、行こうと思えたな?」
「ぐっ…」
ティリー鉱山とアラル火山に挟まれた街は、リヴァーフォールズ辺境伯爵領よりかは近い。
自分で言ってて悲しくなるが、ティリー鉱山とアラル火山に挟まれた街は人が集まるが、リヴァーフォールズ辺境伯爵領は辺境の極み…僻地過ぎる為、外から人が遊びに来ることなど殆んど無い。
「ええい!妾は何となく行くのだ!」
は…?
「何となくで行く場所なのか…?あんな場所…。今でも、親を何故こんな場所に住んでんだと、怒りたくなるのに…」
事実、不便だと思っている。
「だが、アヴィルも妾と同じタイミングで、向かったからこそ、妾達は会えた」
何このテンプレ。
「まあ、な」
気付いたら、ティリー鉱山麓に到着。話し込んでいたらしい。
俺とナシェリアは馬車を降り、その足でティリー鉱山に入山した。
ここまで読んでくださり有り難うございます。
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余談(飛ばしても大丈夫です!)
後夜祭~アヴィルとマクリエル~
「用を思い出した。少し、抜ける」
俺はそれだけを言って、とある人物の居そうな場所へと向かった。
その人物とは、シェリフの事である。
「久し振りだな、シェリフ」
「おっ?アヴィルか!?何故こんな所に…」
「帰省途中だ」
「そうなのか。それで、俺に会いに来るって事は、何か用でもあるんだろう?」
「シェリフのオリジナル魔法を見させて貰った。取り敢えず、改善点だけでも言っておきたくてな」
シェリフとナシェリアが武闘祭で戦っていた時に使っていた魔法だ。
「ん?これの事か?――光の精霊よ。我に力を!《光雷剣》!」
「そうそう、それそれ。近くで見ると、意図も簡単に折れそうな剣だなー」
「何が言いたいんだ?」
「その魔法に込められたイメージは、光で出来た剣でしかない」
光は一見、強く見えるが、弱く脆いのだ。
「この魔法は、光と雷の剣だ」
「なら、その魔法は光が無い場所、電気を通さないものには効力がないな。所詮、剣に見えても剣ではないんだから」
「ぐっ…アヴィルはこれだけを、言う為だけに来たのか?」
シェリフは俺を軽蔑するのかの様な目で睨み付けた。
「違う。俺はただ、助言をしに来ただけだ」
「助言……」
「ちゃんと、対象物を斬るイメージを持ててるか?」
「斬るイメージ?」
「そう。所詮、それは魔法だ。イメージが全てだ。なら、その《光雷剣》に斬るイメージを持たせば、取り敢えずは何でも斬れるだろう。後は…」
「後は?」
「剣の使い方、基本を学べ。誰かからでも良いから、形ばかりでも良い。取り敢えず、基本を学べ。《光雷剣》を直して良い剣になったとしても、基本がなっていないと、意味が無いぞ」
あれは酷かった。
剣士系の者達が多いあの場で、あんな剣の振り方をしてから……。魔法師団の名誉に関わってくるかも知れない。
「はあ…」
「それじゃ、俺はこれで」
「お、おう」
シェリフはどこか遠い空を見詰めている。
俺はそれに構わずに、ナシェリア達が待っているであろう、出店へと戻っていったのである。
***
次の更新は10月9日の予定です。




