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 「はあはあ…」


 あれから、数えて七十三回、両腕を切り落とされた。その都度、《超回復》で治している。

 俺は息切れ…。


 「もう、終わりですか?貴方は大したこと無いんですね、本当に」


 七十四回目の切り落とし。


 「《超回復》」

 「それの繰り返しですよね。観客も、詰まらなさそうです。今度は別の部位を切り落としましょうか」


 そう言って、俺の上半身と下半身を両断した。

 これは流石にこたえる。


 「《超回復》」

 「上下バラバラになっても、元通りですか」

 「意識のある内に回復すれば良いのさ…《龍炎》」


 俺は《龍炎》でシンファを捕まえる。


 「これは魔法ですか?締め付けが緩い様ですが」


 ユザリアナを締めた時よりも、強く締め上げている筈なのだが。


 「まあ、この私を締める事は大罪ですよ」


 《龍炎》をシンファは押しきった。

 シンファの背中には見たことのある羽が生えていた。

 それは、魔族特有の羽。

 それに、尻尾も生えている。


 「お前、魔族か」

 「魔族の事を知っているのですか、貴方は。そうですよ、私は魔族。魔王様のみお慕いする魔族よ。その中でもトップクラスの脅威なの、私は」


 ここでも魔族…。


 「何で俺はこんなにも魔族と縁があるんだ?」

 「貴方は他の魔族と会ったことがあるんですか?」

 「散々、迷惑掛けられたが」

 「そう。貴方はいずれ、魔王様と戦う羽目になるでしょう。その時にまた、私と貴方とで戦うかも知れません。それまでに強くなっておいて下さいね」

 「次が無ければそれで良いのにな」


 シンファは飛び去っていった。

 シンファは場外。つまり、試合には勝った事になる。

 勝った気はしないが。


 『シンファはどこへ行ったー!?シンファは場外!なので…勝者ー、アヴィル!』


 俺は舞台上から降り、ナシェリア達の元へと向かった。


 「アヴィルー!無事だったかー?」


 ナシェリアは少し泣き目で飛び付いてきた。


 「まあ、無事だったが」

 「観戦していた妾達からすれば、何度も腕を切り落とされている様に見えていたが?」

 「事実だしな」


 ナシェリアの目から出てくる涙が、より一層、増えた。


 「そう言えば、対戦相手の女性…どこへ行ったんだ?」


 ナシェリアの隣に居るマクリエルは、腕を組ながら、俺に聞いてきた。


 「どこかは分からないが、飛んでいったな」

 「その女子(おなご)…背に、羽が生えていなかったか?」

 「生えてましたか?」


 ナシェリアは目が良い様だ。シンファの背中に羽が生えていた事が見えていたらしい。

 多分、マクリエルの見えなかった目が常人であろう。それほどに素早く、残像が見える以上に速い羽ばたきであり、即刻に飛び去ったのである。

 マクリエルを含む常人には、《瞬間移動》または《転移》に見えた事だろう。


 『さて、今回の武闘祭の最後ー!決勝戦だぁッッ!!』


 アナウンスが流れ、会場に居る人達の歓声が今まで以上に活気に満ち溢れた。

 俺達の間にある重めの空気は、このアナウンスによって掻き消された。

 一応、シンファとの試合は勝った事になっているので、次の試合は俺とナシェリアとの試合となる。


 『決勝戦で戦う者達の紹介と、いきまーす!』

 「今までそう言った事をしてなかったのに、何故、決勝戦だけ紹介をやるんだ?」


 俺はふと、疑問に思った事をマクリエルに聞いた。何せ、優勝常連だったらしいからな。


 「武闘祭は、このパワレント村で祀られる神様への献上する神聖な祭りだって言っただろ?」

 「ああ、言ってたな、昨日、そんな感じの事」

 「その武闘祭で一番、神聖な試合だからな。決勝戦は。その試合で戦う物の名を神様に紹介すると言う意味でやっているらしいぞ」

 「ふーん…」


 俺を紹介する内容とか無いだろ。


 『幼女の姿をした上から目線の女性、優勝常連のマクリエルを倒した実力は本物!ナシェリア・ランドゥルフ!!』

 「妾は幼女では無い!」


 ナシェリアは文句を言いながら、舞台上に上がった。


 『女性に対しても男性と同様に締め付け上げる鬼畜物ー!アヴィル!』


 俺は舞台上に上がる。


 「鬼畜とは酷い言い様だな」

 「そうか?いつも通りのアヴィルだろう?」

 「誰にでも平等な紳士とでも言え」

 「自分で言ってて、恥ずかしくは無いのか?」


 うっ…それを言われると、だんだんと、恥ずかしさが込み上げてくる…。

 ナシェリアはニヤニヤしながら、こちらを見ている。


 「アヴィルは鬼畜と言われようが、誰にでも優しいのは、知っているぞ(小声)」


 ナシェリアは何かをボソッと言った。


 「何か言ったか?」

 「な、何でも無い!」

 『それではー、戦闘開始ィィッッ!!』


 タイミングを無視したアナウンスによって、ナシェリアは魔法を繰り出そうとしている。


 「《龍炎》ではアヴィルに敵わないのは解っている!なら…!火と闇の精霊よ。我に力を!《隕石(メテオ)》!」

 「その魔法はナシェリアのオリジナルか?」

 「ああ、そうだ。昨日、一晩中掛けて、やっと編み出せた新たな魔法だ!」


 ほう…。追尾機能が付いていると見た。

 中々の魔法だ。ちゃんと構造がしっかりしている。


 「そんな自信満々のところ悪いが…消させてもらう。《魔法削除》」


 ナシェリアの《隕石》は消えた。大きな隕石がゆっくりと落下…と言うことは無かった。


 「ああ…妾の一晩が、一瞬にして…」

 「天変地異の想像――悪夢でも見せる魔法なのか?」

 「無論、そうだが」

 「本物を落とそうとはしないのか?例えば、その魔法に地魔法を入れたりとか…。こんな感じに―《隕石》」

 「あの一瞬で妾の魔法を見切っただと…?」


 俺はナシェリアの《隕石》に、手を入れて放った。

 本物の隕石。

 本物の天変地異。

 この辺一帯は、湖と化すだろう。


 「追尾機能もそのままだから」

 「なぬ?それでは妾が逃げても、その場所は必ず、破滅するではないか!妾は絶対に死ぬと言う事でもある…」

 「ああ、そうだな」

 「わ、妾の敗けで良い!だから、その《隕石》をどうにかするのだ、アヴィル!」


 俺は審判の目を見る。一応、この武闘祭全試合に審判はついていたのだ。


 「分かった。この《隕石》をどうにかすれば良いんだろう?なら、簡単だ。《魔法削除》」


 俺が放った《隕石》は、《魔法削除》にて、完全に消え去った。


 「本物の隕石が消え…た?」

 「一応、本物だが、所詮、魔法の創造物だ。魔法を消す魔法なら、消え去る代物だ」

 「約束だな、妾の完敗だ。妾の編み出した魔法を更に凄いものに変えた。悔しいぞ、アヴィル。アヴィルを敵にすれば、一溜りも無いな」

 「そんなこと…あるな」

 「過大評価したり、過小評価したり、極端でもあるな」


 身に覚えがあるんだよ。だって、一国の最強集団――魔法師団の団長をだからさ、俺。


 『話は纏まったでしょーか!?ナシェリア・ランドゥルフの敗けを認めた事により、今回の武闘祭を制したのはー…アヴィルだぁッッ!!』


 俺とナシェリアの会話の様子を見て、一段落がついている所を見計らった、アナウンスが流れた。


 「取り敢えず、舞台から降りるか?ナシェリア」

 「妾は降りるが、アヴィルは残っていた方が良かろう?」


 俺は残っていた方が良いと…?


 「そうであろう?主催者とやらよ!」


 ナシェリアはアナウンスをしている人を含めた人達が座っている、テント席に声を掛けた。


 『そうですねー!』


 そのテント席から返答として、アナウンスを通している。

 そして、ナシェリアはそのまま、舞台上から降りた。


 『それではー、我がパワレント村の戦の神パワレント様より祝福の儀を執り行いますー!』


 舞台上に白色の鎧を着た人達が数人、何かを持って上がってきた。

 一分足らずで、組上がったのは…祭壇?


 「今から何をするんだ?」

 『祝福の儀です』


 神からの祝福って何が起こるんだ…?


 「この私にパワレント様を降ろし、儀式を執り行います」

 『このお方はパワレント村の唯一の巫女レガーナ・パワレント様ですー!』


 俺よりも少し背が高い女性は、巫女らしい。

 レガーナと呼ばれた巫女は、アナウンスで紹介されると、静かに一礼した。


 「それでは始めさせて頂きます、アヴィル様」


 俺、名前+様付けで呼ばれたのは初めてだよなぁ…。何か歯痒(はがゆ)い。


 「我が村に祀られし戦の神パワレント様よ。我の身体にその御身を降ろし、かの者アヴィルに祝福せよ――」


 レガーナの身体が光だした。

 そして、何者かがレガーナに乗り移った様に見えた。


 「…我輩は戦の神パワレント。汝が今年(こんとし)の武闘祭の優勝者アヴィルだな?」


 レガーナの口から別の者の声が聞こえる。その者はパワレントと名乗った。

 取り敢えず、返答しよう。


 「ああ、そうだ。俺がアヴィルだ」

 「我輩にタメ口…無礼が過ぎぬのではないか?」

 「俺は誰にでも平等で接する主義なんだ。神とて、気にする必要は無い」

 「今年はとても威勢の良い者が優勝したのだな。良い…我輩からの祝福として我輩の加護を汝に贈ってやろう」


 レガーナの身体を使ってパワレントは俺の額の前に手を(かざ)す。

 だが…何も起こらなかった。


 「何故、加護が付与出来ぬ…?」


 パワレントは独りでに驚いている。

 加護を俺に与える事が出来なかったのだ。


 「汝は何者なのだ?禍々(まがまが)しい加護を纏い、他の神の加護を完全に受け付けない…」

 「言っている意味が判らないな」

 「そう、この禍々しさは…魔神であろう。力の底上げとかと言う様な効力は皆無だが、他の加護を付与させない効力がある。その効力はとてと強力だ」


 魔神…何処かで聞いたことのあるような無いような。だが、会った事は無いので、加護をしてもらった記憶は無い。


 「一つ、言っておこう」

 「何だ?」

 「その魔神の加護が汝の足枷になっている事は確かな事だ」


 足枷。


 「我輩にその魔神の加護を取り払ってやる事は不可能だが、我輩の加護を汝に付与出来ぬのは我輩のプライドが傷付く。もし、魔神の加護が取り払えたのなら、この地に再度来て、その時こそ必ず、汝に加護を贈る」

 「それは約束か」

 「無論。我輩とて、神だ。嘘は付けぬようになっている」


 へー。


 「この巫女に身体を返す。その時を楽しみに待っているぞ、アヴィル。我輩の神殿に来るのだぞ―――――…」


 レガーナからパワレント(光)が抜けていった。レガーナは座り込んだ。


 「大丈夫か?」

 「ええ、このくらいなら大丈夫です…」


 俺はレガーナの手を取り、立たせた。

 何せ、舞台上とは言え、女性を泥とかが付いた場所に座らせておくのは気が引けるからな。

 ん?女性を締め付けた俺が言えた事では無い?知るか、そんなもん。


 「すみませんが、アヴィル様。パワレント様とは、どんなお話をされたのですか?」


 レガーナは俺とパワレントが話した内容が気になるらしい。

 今度、神殿に行くかも知れないから、それも含めて説明しよう。

 俺はパワレントと話した事を一つ一つずつ、丁寧に説明したのだった。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。

***

余談(飛ばしても大丈夫です!)


 ナシェリア対シェリフ (シェリフSide)



 『それではー戦闘開始ィィッッ!!』

 「嬢ちゃんの名前…どこかで聞き覚えがあったような気がするが……まあ、いっか!晴れて第四階級魔法師になれた俺の小手調べと行きますか!」


 俺は戦闘開始の合図で飛び出す。

 相手はナシェリア・ランドゥルフと言う幼い見た目の女の子だった。何処かで聞き覚えのあるような無いような名前だ。

 それはそうと、俺は日々の努力のお蔭か、MP(魔力量)が上がり、Lv(レベル)も上がり、晴れて第四階級魔法師になれたのだ。魔法師団の中じゃ、まだまだの下っ端で、まだまだ弱い部類だ。

 俺がこの武闘祭に参加したのは、今の実力を知っておきたい。ただそれだけである。


 「光の精霊よ。我に力を!《光雷剣(こうらいけん)》!」


 第四階級魔法師になった事を切っ掛けに俺だけの(オリジナル)魔法を夜通し三日三晩で創った。

 《光雷剣》は光を纏って、雷を帯びた剣を魔法で形成する魔法である。


 「妾の知らぬ魔法を使いおって……面白い、()の子だなぁ……。火と水の精霊よ。我に力を《龍炎》!」


 相手は俺の魔法を見て、楽しんでいる。

 ならば、俺は手に《光雷剣》を握って、こう言う。


 「物は試しだ。その龍を斬らせて貰おう!――おらぁッッ!」


 勢い良く、《光雷剣》を振り落とす。


 『カシャーン』


 俺の《光雷剣》の剣先が無くなっていた。


 「えっ…?俺の《光雷剣》が??折れた??」

 「まだまだの様だな、男の子よ。妾の《龍炎》にて、気絶す(敗け)るが良い」


 相手の《龍炎》は俺を締め付け、徐々に締め付けは強くなっていった。




 俺のあばら骨が五本程折れた頃(推定)、気を失ってしまった。

※※※

 目が覚めた場所は治療する為のテントだった。そこには、酒に呑んだくれる男達が宴会をしていた。

 折れた骨を自分で治してから、俺も混ざって楽しむ事にした。

***

次の更新は10月6日の予定です。

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