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「さあ、これからが試合の始まりだな」
「貴方、本気を出していなかったって訳!?」
うむ、出してないな。どこに出す点があったか、教えて欲しいぐらいだな。
「何か応えなさいよ!」
心で応えても意味がないよなー、そりゃ。
なら、行動で応えてしんぜよう。
「《龍炎》」
ナシェリアの本気を真似て、使ってみるとした。
ナシェリアとは違い、オリジナルの《龍炎》を篤とご覧あれ――
「無詠唱…?それに、第一試合の子供の女が使ってた魔法と同じ?いや…それ以上!?」
「まあ、早いとこ、リタイアしたら?」
「ぐっ…」
身の為でもあるぞ。
火と水で形成された大きな龍は、ユザリアナを締め付けようとする。
相手は女性…服が溶けない様な工夫を施してあるので、裸になることは無い。
「風の精霊よ。我に力を《鎮火風》!」
ユザリアナは《龍炎》を形成する内の一つ、火を鎮火しようとしたのだろう。
それを、水の部分が許さない。
水は風で弾かれても、一つ一つの水分がまた、集まって形成する。
「何で…消えないのよっ!?」
「この魔法の意を知らないのか?風でも、水でも消えない事を」
「こんな魔法知らないわよ!」
「かつて、五十年前に行方不明になった魔法師団団長が居た。その人の魔法書の最後の方にちゃんと載ってるぞ」
俺の魔法書に。何故だか国に管理されていた俺の魔法書に。
「そ、その人の魔法書は、難解過ぎて誰にも出来ない代物よ!」
「第一試合の子供の女…だっけか?魔法、使えてたよな?」
「ぐっ…」
《龍炎》は一時も忘れることなく、ユザリアナへの締め付けを強くしていく。
「お前が魔法師団に入団出来なくて、何故、魔法師団そのものを恨んでいるのかは知ったこっちゃ無い。傲慢な性格に、日々の鍛練等の怠りが悪い」
俺が言えた事では無かった筈だが、こんな傲慢な団員は、俺でも要らないと判る。唯の邪魔で、団全体の戦力低下になり兼ねないから。
「全てを直したら、多分…入団は出来るんじゃないか?」
「…」
ユザリアナは沈黙している。よく見れば、白目を剥いて、静かになっていた。俺の最後の言葉の途中までしか聞いてないな。
俺は《龍炎》を解き、ユザリアナを静かに横倒した。
『勝者ー、アヴィル!ここにて、優勝候補の一人がまた敗けたー!今回の武闘祭、一体、どうなるー!?』
ユザリアナ…お前、優勝候補だったのかよ。
次の試合、準決勝が行われるまで、時間があった。
因みに、ナシェリアとはまだ、対戦相手としては会えていない。
ナシェリアとマクリエルと合流した。
「アヴィル、凄かったぞ!まさか、あれほど威力のあり、綺麗な《龍炎》を出せるとは思ってもいなかったぞ!」
「まさか、ユザ嬢を倒すとは…」
「ユザ嬢?」
俺はマクリエルに聞いた。
「アヴィルと戦った、あの女魔法師のユザリアナだ」
「知り合いなのか?マクリエルとユザリアナは」
「知り合いも何も、俺とユザ嬢はパーティーを組んでんだよ」
驚きの新事実。
「そのユザリアナとやら…入団出来んかったから、魔法師団を恨んでいるとはな」
「そーなんすよ、ナシェリアの姐御。打倒、魔法師団!とか言ってんすよ、毎日」
何か、俺に対する口調と、ナシェリアに対する口調が違くね?それに、ナシェリアに対してそんな態度だっけ?あと、ナシェリアの姐御って何?
「そろそろ、妾の準決勝の試合だな。アヴィル、妾を応援してな!」
「分かった。マクリエルと一緒に応援してやる」
「頑張って下せぇ!ナシェリアの姐御!」
ナシェリアは舞台に上がって行った。
ナシェリアの対戦相手も登場した。
「あれ…?何でアイツがここに居るんだろう?」
「アヴィル、アイツって?」
「ナシェリアの対戦相手。俺、会ったことがある」
確か、魔法師団の遠征の時だったか。
「世間は狭いって、良く言うだろ」
マクリエルの軽い発言に俺はこう思った。
「…そうだな」
マクリエルの言う通りに、世間は狭いってな。
***
ナシェリアSide
妾は準決勝の舞台に上がった。
『これよりー、準決勝を行いますー!第一試合、ナシェリア・ランドゥルフ対シェリフ・アードン!』
妾の対戦相手は、この男の子―シェリフとやらである。
その男の子は、男としては良い身体付きをしているが、魔法師だろうな。
『それではー戦闘開始ィィッッ!!』
「嬢ちゃんの名前…どこかで聞き覚えがあったような気がするが…まあ、いっか!晴れて第四階級魔法師になれた俺の小手調べと行きますか!」
成る程、男の子は妾よりも弱いのだな。敵にそんな事を教えるとは…甘いな。
「光の精霊よ。我に力を!《光雷剣》!」
男の子は、初めてお目にかかる魔法を繰り出した。
詠唱から解る通り、光属性魔法だろう。そして、妾の知らぬ魔法。
あやつのオリジナル魔法なのだろう。
男の子の手には、光を纏い、雷を帯びている剣を持っている。きっと、その魔法で形成されたモノであろう…。
「妾の知らぬ魔法を使いおって…面白い、男の子だなぁ…。火と水の精霊よ。我に力を《龍炎》!」
その剣で斬れるか?
「物は試しだ。その龍を斬らせて貰おう!」
あやつは魔法師であろう。それに、第四階級魔法師であろうとも、龍を討伐は出来ぬだろうし…。
「おらぁッッ!!」
己の力のままに剣を振り下ろす。
妾は生粋の魔法師だが、剣は多少、嗜んだ経験がある。妾は思った。
剣の使い方を間違っている―と。
そして、そんな使い方をしとれば、どんなに凄い剣であろうとも、全て、鈍刀と化すと言うのも。
妾の《龍炎》を断ち切る事が出来ぬのだろうな…。
『カシャーン』
《龍炎》に剣が触れた瞬間、男の子の剣先が折れた。
「えっ…?俺の《光雷剣》が??折れた??」
「まだまだの様だな、男の子よ。妾の《龍炎》にて、気絶するが良い」
妾の《龍炎》は、先の準々決勝でマクリエルと同様に締め付ける。そのまま気絶へと、誘われた。
「…」
『勝者ー、ナシェリア・ランドゥルフ!!』
「シェリフとやらよ、《光雷剣》と言ったか?それを使うのならば、剣の基本を学べよ」
妾はあやつに、届いていないと思うが、それだけを告げ、試合の舞台から降りた。
後は、アヴィルが準決勝で勝てば、妾と戦える。楽しみでしか無いのだ。ふふふ。
***
「ナシェリアの姐御、やっぱ最強!」
隣でマクリエルが言った。
この間、遠征の時に会った時よりも、強くなったシェリフはまだまだ、ナシェリアには届いていなかった。否、ナシェリアが強すぎたのかも知れないな。
シェリフの使っていた魔法は、シェリフのオリジナル魔法だろう。しかし、抜け目があった。これでは、幾ら魔力を籠めても、諸刃の如く軽く、弱い剣になる。
後で直してあげるとして…次は俺の試合か。
あんまり、戦闘を好まないが、後には退けないからな。兎に角、頑張って、勝てばいい。
ナシェリア達に応援されるに相応しくならないと。
生まれて初めて、そう思えた気がする。
俺は試合の舞台上に上がった。
『準決勝第二試合、シンファ対アヴィル!』
相手のシンファと言う女は剣を持っている。
生粋の剣士と見た。
「貴方はアヴィルと言うのね」
「はい、そうだが?」
シンファの問に普通に答えたが、その問自体が謎だ。何で聞いたんだ?
「私が倒す者の名前は覚えておいてあげなくちゃ、可哀想でしょ?」
「俺を倒す?」
「ええ、そうよ」
笑顔で答えを返された。あまり、良い気分ではない。
それは、笑顔と一緒に強い殺気が練り込まれていたからである。俺以外の者なら、ここで棄権するか気絶するような強い殺気。
『それではー戦闘開始ィィッッ!!』
アナウンスのスタートの宣言によって、笑顔でシンファが詰め寄って来た。
「《雷撃》」
俺はシンファに撃った。
「!?」
《雷撃》は当たること無く、シンファの剣は俺の右腕に傷を作った。
少量だが、出血している。
「それだけに驚いていたら、切りがないでしょう?」
そして、俺の右腕をごっそり切り落とした。
「ガハッ…!?」
「意外にも弱いんですね、貴方は」
まあ、こんな傷、一瞬で治してやれますけどねー!
「《超回復》」
ほら、右腕は元通り。
「切り落とした筈の右腕が何故、元に戻っているんでしょうか?なら、いっそ、一瞬で殺してあげた方が良かったんですね」
シンファ…お前は一体、何を言っているんだか。
こう言うのを、狂ってる、と言うんだよな。
「なら、これはどうだ?《スコール》」
水魔法の《スコール》は、強酸の雨を降らす魔法。範囲は、舞台上のみ。舞台から降りれば、敗け。
「これで、お前の逃げ道は無い!」
「逃げ道が無い?そんな訳が無いですよ。それよりも高く、上がれば良いんですから」
シンファは《スコール》の雨雲の更に上へと飛んだ。
おお…こうも簡単に避けられてしまうとは…。
「貴方の魔法も、本当に大したこと無いんですね」
完全にナメてやがる…何かムカつくー…。
て言うか、飛んだだと?
シンファは絶対に剣士。未だに魔法と言える魔法を使ってないから。
俺は一旦、《スコール》を解いた。
「今度は私が貴方の両腕を頂く番ですねーっと」
そんな番は知らない。
シンファは滑空すると同時に、俺の両腕を切り落とした。
「人間と言うのは、痛みに負けて、苦しみもがくもの…の筈なんですがね?何故、貴方は立っていられるんですか?」
そんな痛みなんかよりも、更に精神的苦痛を味わった事のある俺には、我慢は出来る範囲である。
「まあ、こんな怪我、直ぐに治る。《超回復》」
切り落とされた両腕は元通り。
「ジリ貧では無いんですか?ずっと、私が切り落とす度に、魔法で回復などとは。直ぐに魔力切れを起こしますよ」
「残念だったな」
「何でですか?」
「俺にはな、魔力切れの概念が存在しないんだよな」
何せ、俺の魔力量は∞なのだから。
「魔力切れの概念が存在しない人間なんて居るんですか?本当に」
「ああ。試してみるか?」
「何度でも切り落としてあげましょう。貴方の身体を」
シンファの笑みに引き連れる様にして、俺はニヤッとほくそ笑んだ。
ここまで読んでくださり有り難うございます。
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***
余談(飛ばしても大丈夫です!)
ユザリアナの入団試験(第三者視点)
年に一回、入団の募集を募る魔法師団。
約六年前の魔法師団入団試験の面接のこと――。
「次、ユザリアナ・ランマーク」
「失礼します」
試験官が面接室にユザリアナを呼び、ユザリアナが入室した。
「それでは、質問していきます」
「はい」
「貴女が魔法師団に入団する理由ときっかけ、入団後に何をしたいかを簡潔に答えなさい」
「私は高等団員となり、この国の戦力の底上げを致します」
「誰しも高等団員となれる訳ではありません。それは承知の上ですか?」
「いいえ、私を入団させたければ、高等団員にしなさい」
「無理です。この自分の一存で貴女を高等団員にする事は出来ません」
「どうにか出来るでしょう?」
「副団長殿かメルヴェル殿じゃないと決められませんよ」
「なら、良いわ。私を入団させなかった事を後悔すると良いわ」
ユザリアナは退室していった。
(…魔法学校の成績は悪くない。ましてや、入団すればより強くなれるが、あの子を入団させれば………メルヴェル殿に叱責される…)
試験官を努めた団員は、取り敢えず、当時副団長だったガードラーレに聞いた。
結果は、不合格。ユザリアナが魔法師団に入団する事は無かった。
ユザリアナ自身はと言うと、結果に不服していた。
(私を入団させなかった事を後悔すると良いわ……打倒、魔法師団)
魔法師団に敵対心を抱く、珍しい存在になったとさ。
***
次の更新は10月2日の予定です。




