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いよいよ、武闘祭当日の朝がやって来た。
いつも通りの服装になり、腰に【魔剣ヴィヴァロ】をさしてみた。
「アヴィルよ…剣を持ってると、剣士、戦士と見なされ、魔法が使えぬぞ?」
少し寝惚けているナシェリアは、目を擦りながら言っている。
「この剣は普通の剣じゃないぞ」
「まさか、魔剣とでも言うのか?」
「ああ、そうだぞ。魔剣は、魔法に乗せて使うと効果を発揮する…俺は、魔法が無くてもイケる気がするから、別に大丈夫だと思うがな」
「本業の者達に敵うとでも言うのか?」
痛い所を突くよなぁ…ナシェリアは。
「アヴィルのJobは魔法師なのだろう?魔法師なら魔法師で、正々堂々と魔法師の戦いをすべきだと、妾は思うぞ?」
ナシェリアは、断固として、俺に魔法で勝って欲しいと言うのが判った。
「しょうがない、【魔剣ヴィヴァロ】を使うのは諦めよう。よくよく考えれば、魔法師団の制服を着た俺が、魔法を使わずに戦ってたら、他の団員に会わせる顔が無くなるしな」
特にアレドラントとか、アレドラントとか…。
「解れば宜しい」
ナシェリアは何かに勝ち誇った様に、胸を張って、上からの目線で言った。
準備が終わった俺達は、宿の外に出た。
ああ、因みに【魔剣ヴィヴァロ】は《収納》済み。
宿の目の前でマクリエルが待っていた。
「よう、アヴィルにナシェリア!」
「うむ、元気そうだな、マクリエルよ」
「暑苦しいがな」
外は活気に満ち溢れていた。これから始まる武闘祭は、このパワレント村にとって神聖な祭りらしいし、相応の活気さなのだろう。
俺とナシェリア、マクリエルが会話していると、何処からか機械を通した音が聞こえてきた。
『えー、武闘祭出場者は、中央広場にお集まりくださいー』
お呼びだしアナウンス。
マクリエルに付いて行くがまま、俺達は中央広場らしき場所に辿り着いた。
そこは、マクリエルと同様に筋肉マッチョの大男の勢揃いであった。
『それではー、今祭のトーナメント表を発表しますー』
この武闘祭は、トーナメント制で争われる。発表されたトーナメント表を俺達は見た。戦う事になるだろう相手の名前を――。
「アヴィルとは、逆の方になってしまったな。出会えるとすれば、決勝だ」
「妾がマクリエルに(準々決勝で)勝ちさえすれば、出会えるかも知れぬぞ」
なんと、ナシェリアとマクリエルとは、そうそう会えないらしい。遠いぞ。
「まあ、俺がそこまで勝ち進めればの話だがな」
本当にそう。俺だって、無敵では無いからな。
『それではー、初戦ですー。初戦全試合を一斉に執り行いますのでー、それぞれ、指定された場所に向かってくださいー』
俺は指定された場所に向かった。ナシェリアもマクリエルも、それぞれに指定された場所に向かった。
「ここが、戦う場所か…」
「何だ何だ?俺様の初戦の相手がこんなヒョロヒョロのガキだとはなぁ~?ツイてやがるぜ」
相手の筋肉大男の登場~…。
この武闘祭に出場する人達の殆んどが、大男。よし、この初戦の相手は大男Aと仮定して呼んでやろう。
『出場者全員、指定しました位置に行きましたねー。それではー戦闘開始ィィッッ!!』
アナウンスによる、戦いのスタートの幕が切られた。
大男Aは俺に向かって、孟突進していた。
「オラオラオラァァッッ!!」
手にナックルを付けて、勢いよく拳で腹に殴りを入れる。
うーん…そこまで痛くは無い。
大男Aが一万人居ても、ロプスアには勝てない位だろうか。
「俺様の拳を受けてもへこたれないなぁ!?」
「子供の戯れに過ぎないだろう?これくらいの拳は」
煽ってみた。
「アアッッ!?」
「まあ、死なない程度に頑張れ《避雷針》」
軽く、ね。
人間は弱いから。
「グワアアアッッ!?」
あらま。効果はバツグンだったようだ。
大男Aは倒れてしまった。
「…死んでないよな?」
俺は大男Aの息を確認しに行った。
「良かった…死んでない。気絶しただけだな」
まさかの、軽ーい魔法一撃で、気絶とはね…。
『初戦全試合、終了しましたー』
大男Aが倒れたのを確認した直後に終了したアナウンスが流れた。
俺と大男Aの試合が一番、長引いていたのかな?
そうして、次の試合の場所へと向かい、初戦を勝ち進んだ者と戦う事になった。
***
ナシェリアSide
『――それではー戦闘開始ィィッッ!!』
初戦。そのスタートが、アナウンスで切った。
妾は生粋の魔法師。普通の者達よりも強者に入る部類の魔法師。
妾の初戦の相手は、か弱そうに見えるが中々の腕を持つ、剣士だった。
肝が据わっており、全く恐れる事をしない、青年であった。
「子供を傷付けるのは、性に合わないが、やむを得ません!」
剣士の青年は妾のコンプレックスを、さらっと言い放った。
子供体型の妾は、昔からのコンプレックスである事も知らずに――。
即刻、逝って貰うとするか。妾の怒りを買うのが悪いのだ――。
「水の精霊よ。我に力を《低温火傷》!」
水魔法の《低温火傷》は、じんわりと皮膚を痛め付ける。
「アタッ…!?」
効果は直ぐに出る。やがて…剣士の青年は剣を握れない程に痛みを感じ始める。
そして――。
『カタッ…』
剣士の青年は剣を落としてしまった。
剣士にとって、剣は命の次に必要な代物。それを落としてしまった剣士は、事実上の敗北。
それから、三分位経った時。
『初戦全試合、終了しましたー』
初戦の全試合の終了の合図が流れた。
取り敢えず、妾は初戦突破。決勝まで、まだまだ、遠い。
次の試合に気持ちを切り替えるのみだな。
アヴィルとの試合、楽しみぞ。
***
マクリエルSide
昨日の夜、見掛けない顔をした子供のカップルを見付けた。このパワレント村の子供では無さそうな。
あの二人は、魔法使いなんだろう。肌は白々しく、焼けていないし、細くか弱そうな腕をしていたからな。
女の子の方はナシェリアと言い、男の子の方はアヴィルと言った。
二人共、一見、弱そうに見えるが、強いの部類に入る実力は兼ね備えていそうだ。
俺?俺は先手必勝で、軽々、初戦を突破した。毎年、この武闘祭に出場しているし、優勝の常連とは、俺のこと。
見たところ、アヴィルもナシェリアも、初戦突破しているみたいだな。
会える時が楽しみだな。
***
はい、初戦を突破してしまった俺ですが、何と、準々々決勝までも突破してしまいました。
大男Aを気絶させた初戦から、次の試合で大男Bを同じ様に気絶させ、また、次の試合、次の試合でも相手を気絶させた。
準々決勝からは、一試合毎に行うらしく、今から、ナシェリア対マクリエルの戦いだ。
『これよりー、準々決勝を行いますー!第一試合、マクリエル・ヴェラリクス!対ナシェリア・ランドゥルフ!』
観客席から、歓声が上がる。良い感じに盛り上がるようだ。
俺は両者を平等に応援してやろう。
『それではー戦闘開始ィィッッ!!』
さてさて、始まりました。
二人はお互いに相手に向かって飛び出した。
マクリエルは剣を構え、ナシェリアは魔法を放とうとする。
俺の居る場所から、二人の声が聞こえてきた。何かを話している様であった。
「妾はここで倒される訳にはいかぬのだ!」
「同じだ、俺もだ!」
「妾は(決勝でアヴィルと)戦うのだ!」
「俺も(決勝でアヴィルと)戦ってみたいからな!」
「「譲る訳にはいかぬ(いかねぇ)!」」
どちらも戦闘狂?
妙に二人は、同じことを考えている気がする…。
「水の精霊よ。我に力を!《龍神》!!」
ナシェリアは水属性魔法の最高位に値する《龍神》と言う魔法を出した。
龍に模した水の塊が、マクリエルを締め上げる。
「俺のォ!剣はァ!何でもォ!斬ることが出来るッッ!オラァッッ!!」
マクリエルの剣は、ナシェリアの《龍神》を絶ち斬った。
どちらも本気だと言う事が、伝わって来ている。
「なぬっ!?妾の《龍神》を斬っただと!?これなら、無理だろう。火と水の精霊よ。我に力を!《龍炎》!」
複合魔法。異分子の二つが合わさっている。
火と水が一つの龍に形成される。
火属性魔法と水属性魔法の複合魔法――《龍炎》。俺が以前、創った魔法。俺の魔法書の最後の方に載った筈の魔法。
「グワアアアッッ!?」
火と水の龍は、マクリエルを締め上げる。
「どうだ?早めに敗けを認めるとしないのか?」
ナシェリアは煽っている。だが、そんな煽りも虚しく、苦しみもがくマクリエルには、届いていない様に見える。
「ほれほれ~」
締め上げを強くした。
「グハッ!」
マクリエルは口から血を吐き出し、白目を剥いている。
『勝者ー、ナシェリア・ランドゥルフ!ここで、武闘祭優勝の常連が敗退したー!』
マクリエルって、この武闘祭の常連だったの?
『さあて、今年の武闘祭は一体、どうなるー!?』
アナウンスのコメントにより、さらに観客の歓声が熱気に包まれ、より一層、盛り上がった。
第二試合、第三試合…と、決着が付いていった。
俺は準々決勝の最終試合。つまり、第八試合。
『いよいよ準々決勝最終試合ー!ユザリアナ・ランマーク!対アヴィル!』
相手のユザリアナと言う女性は、魔法使い系のJobだろう。腰などに剣をさしていないし、細く、華奢な体型で肌は白いから。
「貴方は、魔法師団員?」
ユザリアナは俺を見た瞬間に、睨み付けてきた。正確には、俺ではなく、俺の服装を見て、だが。
「まあ、そんなところだ」
「ふん!私程の高貴なる魔法師を入れなかった魔法師団の落ちぶれ度が良く解る時って事よね」
「はあ…」
何を言ってんだか、良く解らねぇ…。
「貴方のローブは、高等団員の証拠…ああ…嫉妬で貴方を殺してしまいそうだわ」
「んなもん、知るか」
「ええ、知らなくても良くてよ?」
ウゼェ…。
『それではー戦闘開始ィィッッ!!』
「風の精霊よ。我に力を!《台風》!」
ユザリアナは、風魔法の《台風》を使った。
俺の身体は、《台風》により、巻き上がった。
「《飛行》」
風魔法の《飛行》を俺は使い、強風の風に乗った。
場外に飛ばされては、敗けてしまうからな。コントロールをしっかりとする。
「な、何で、飛ばされてないのよ!?」
そこまで驚く事なのか?
今の魔法師団副団長のアレドラントでさえ、《飛行》は使えると思うが?第一~三階級魔法師なら、自由に使える便利な魔法なんだが。
「飛べないのか?お前は」
「わ、私は第四階級魔法師ですわ!使えるわけがありませんわ!」
惜しい…第四階級魔法師だったか。第一~三階級魔法師の許可が必要だからな、《飛行》の使用は。
「なら、残念だったな。魔法師団の副団長でさえ、使えると言うのにな」
「ぐっ…」
「その傲慢さが、入団を許可されなかった原因だと思うけどな」
この類いだと、入団試験の面接とかで、「高等団員にしろ」だの「高等団員にしなければ、私は入りませんわー」とか言ったんだろうな。
「私を侮辱した罪は大きいわよ。闇の精霊よ。我に力を《呪殺》!ふふっ…これで貴方の人生にピリオドよ」
闇魔法の《呪殺》は文字通り、殺す為の魔法だが――。
「対処方法があるのを、知らないのか?」
「ある訳無いじゃない。…必ず殺す魔法は、誰にも解ける訳が無いわよ」
「《浄化》」
俺は、《呪殺》を解いてみせた。
「ほ、本当に…解けた?」
「さあ、これからが試合の始まりだな」
少し本気を見せて圧倒的勝利を掴んでも良いのかも知れないと、俺は思った。理由は単にユザリアナがウザく感じたから。唯、それだけである。
ここまで読んでくださり有り難うございます。
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余談(飛ばしても大丈夫です!)
当日アヴィルに倒された大男共(第三者視点)
武闘祭の会場横に設置された大きなテントには、複数名の筋肉達磨―大男達が勢揃いしていた。
このテントは怪我の治療をする為だけに設置されているのだ。そのテントに、強靭な筋肉を持った大男が和気藹々としていたのだった。
大男達は本来、負わないような大怪我を負っている為に勢揃いしているのも事実である。そして、この大男達に共通するのが、全員、アヴィルに倒された仲であると言う事。
「まさか、お前もあの魔法使いに倒されたんだな!(笑)」
右腕を骨折した大男は、左脚を骨折した大男に言った。
大男はアヴィルが魔法師である事は知らないので、魔法使いと言ったのだ。
「角言うお前もだろ!(笑)」
左脚を骨折した大男はそう言い返した。
「あんなガキに負けるなんてよぉ……今年こそは!と思ったのにぃ……」
何故か置いてあるビールを片手に酔い潰れた、また別の大男はそう言った。
「皆の衆~、また来年、頑張るぞぉ~」
またまた別の酔い潰れた大男が、この場に居る大男共全員に向けて言い放った。
大男全員は、ここで盛り上がって、更には武闘祭が終わるまで飲み明かしたとさ。来年を願って。
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次の更新は9月29日の予定です。




