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 「《雷撃》」


 俺はロプスアに射つ。結構、強めの。

 ロプスアに直撃する。と言うか、当たりに行っている。


 『ハハハッッ…!弱いぞ!こんなものに我が戦友は殺られたと言う事か!情けないな』


 まあ、そんな所だとは思ったよ。イステアの死んだ威力の十倍位の力だけど。敵を讃えるつもりは無いが、流石だと言うべきか。


 『我からも行かせてもらう!』


 ロプスアは俺に向かって直進。

 俺の腹に拳で(えぐ)る。


 「ブハッ!?」


 口からは血が出てきている。

 痛い。そんな感覚に見舞われるのは時間差だった。


 『強者と聞いていたが…そこまで弱者とは思ってもいなかったぞ』

 「ぐっ…ま、まだ…負けてねぇ…ぞ」

 『殆んど虫の息の弱者が何を言っている』


 俺は歯を食い縛って立ち上がる。

 立ち上がったその瞬間から、また、腹に直撃。


 「ゴフッ!」


 さっき以上に血が出てくる。

 そして、俺はまた、倒れる。


 『我の時間の無駄だったようだ。強者と(うた)われたアヴィルは死に、我はまた、強き者を求めて放浪の続きをしようとするか』


 ロプスアは羽を出し、飛び立とうとした。

 ああ…ロプスアは残念だ。

 俺が死んだ事になってるし。俺は生きてる。

 痛い?大量出血?全て、俺の猿芝居。

 騙されてやんの。笑ってやるぜ。


 「もう…終わりか?」


 ロプスアは後ろに居る俺に振り向く。


 『な、何で…生きている!?人間なら死んでも可笑しくない出血量だった筈だ!』

 「は?出血?()()()()ぞ?最初から」

 『いや!してるだろう?』

 「血のりって知ってるか、お前。まあ、いっか。《焼死》」


 ロプスアはどんどん焼けていく。

 …逃げても無駄だ。


 『ぐっ…!?何故、我がこんな魔法に!?ああ…そうか。力の差が多くあったのか』


 いやー、よく効いてるよ。

 必ず殺す魔法よー。


 『我の…敗けだ』


 案外、早い敗北宣言(リタイア)


 「ごめん。それ、消せない」


 消せない事は無いけど。だが、消すつもりも無いんでね。


 『殺し合い…ではない…と、言った…筈だったのだが…?』

 「お前だって、殺気を立てて殴って来ただろ?お互い様だ。さて、教えて貰おうか?」

 『そうだった…な。魔王様の住み処は…の、地下である。其処は…別空間に…なって…』


 ロプスアは息絶えた。呆気(あっけ)なく。

 魔王の住み処が、まさか、そんな場所だったとは思わなかったが。

 王都に帰った後にメルヴェルに伝えるか。俺も魔王討伐に参加する事も。理由は、何か俺と魔王、関係が無い訳が無いような気がしてきたから。俺が一番知ってて、魔王も一番俺の事を知っているとみた。魔王の住み処の場所に。だから、関係が無い訳が無いと考えた。

 よし、取り敢えず、ロプスアの死体に《腐敗阻止》と、《収納》っと。

 一応、お持ち帰りする。

 馬車に戻り、倒した事を伝えよう。


 「ナシェリア、倒したぞ」

 「アヴィル!?心配したぞ!」


 ナシェリアが飛び付いて来た。

 「おおっ!」とか「私達は助かった!」とか「救世主だ!」とか周りが言っている。また、「熱いね~」とか口笛吹いている奴も居た。

 てか、ここでも救世主って呼ばれるの?


 「この馬車から見ておったが…大量出血してなかったか?」

 「ああ…実はな、口とかに、この前のオークの血を袋に入れた奴を入れてたんだよ」

 「え?」

 「分かりやすく言うと、血のりだな」


 この世界に血のりの文化ってあったっけ?


 「はぁ~、妾の寿命が縮まったかと思ったわ…まさか、血のりを含んでいたとは」


 あ、通じた。良かった。

 今、日本だけの文化とこの世界の文化とが混同してるからな、俺は。


 「兎に角まあ、これで先に進めるな」

 「アヴィルは命が幾つあっても足りぬな」


 多分、足りすぎて怖いくらいだと思うぞ。HPが∞の数値を叩き出す俺。

 馬車は揺れながらも、進んで行った。



 陽は一回降り、一回昇った。

 馬車に乗ってから二日目の朝と言う事になる。

 あと、半日すれば、着く頃だ。

 ナシェリアは今、寝ている。夜遅くまで、俺と話していた為か、子供体型のナシェリアは気持ち良さそうに寝ているのだ。


 「…俺も、こんな感じだったのだろうか?」


 幼い頃を思い出した。

 幼き頃に王都に上京した俺は、帰省をする時に馬車に乗っていた。そして、必ず、着くまで寝ていた。


 「騒がしい奴も寝れば、凄い静かになるものなんだな…」


 周りを見れば、静かに寝ているしな。

 よし、俺も一眠りするかぁ…。

 …。

 ……。

***

 目が覚めた。

 丁度、次の中継地点に到着した。

 次々に馬車を降りていくが、俺は寝ているナシェリアを、起こす事に専念している。


 「起きろ、ナシェリア」


 身体を揺さぶっても、軽く魔法を放ってみても、気持ち良く寝ている。


 「こりゃ、当分、起きやしないな…」


 ナシェリアをおんぶして馬車を降り、近くにあるベンチにナシェリアを置いた。




 数分後。


 「んっ…あれ?ここは何処だ?」


 ナシェリアはやっと、起きた。


 「起きたか。とっくに着いてるぞ。ラフターレの次の中継地点パワレント村だ」

 「でも、馬車からここまでどうやって移動したのだ?」

 「俺が背負って運んだ」

 「ふえっ…」


 ナシェリアの顔がどんどん真っ赤になっていく。

 そして、ナシェリアは深呼吸をして、呼吸を整えた。


 「あ、有り難う…アヴィルよ」

 「よし、ナシェリアは起きたことだし、宿を探すか」

 「こ、ここも、お勧めの宿があるのだ!」

 「じゃあ、任せる。どうせ、宿代は全て、ナシェリアが払うんだからな」


 そう言う約束。


 「妾に任せるが良いぞ!」


 ナシェリアは胸を張って、先導した。



 そして、今回も二人同じ部屋に泊まる事になった。多分、ナシェリアの故意的な所があるのだろう…。宿代はナシェリア持ちだから…何も文句も言えない。

 時は進み、夜となる。


 「よし、屋台へ()くぞ!」


 ナシェリアは俺の腕を引っ張っている。


 「まさか…」

 「ん?何だ?」

 「ここも、夕食は出ないのか!?」


 ナシェリアは嬉しそうに首を縦に振り、肯定。

 ああ…ナシェリアに宿選びを任せれば、夕食は必ず、出る日は無いだろう。絶対に。

 ナシェリアに聞こえない、小さく深い溜息を俺はしたのだった。



 パワレント村の屋台に向かう為、宿を飛び出した俺達は、外が物凄く明るい事に驚いた。


 「何か、騒がしいな」

 「祭事でもやっとるのか?」


 俺達は頭の上に疑問符を浮かべていた。


 「おら、ガキのカップル」


 ガタイの超絶ガッシリとした、筋肉マッチョな大男に声を掛けられた。

 ガキのカップル…。俺とナシェリアはカップルでは無いのだがな。


 「妾はガキでは無いぞ!これでも成人はゆうに過ぎとるわ!」


 ガキ(子供)と言われて、ナシェリアは滅茶怒っている。


 「嘘だろ…」


 大男は目を丸く、驚いているようである。俺も内心、驚いているがな。

 俺は取り敢えず、聞きたい事だけを聞くとした。


 「なあ、今、祭りでもやってるのか?」

 「んあ?ああ、まあな。明日が武闘祭だからな。今はその前夜祭みたいなモノだ」


 武闘祭?何か戦うのか?まあ、そんなとこだろう。


 「何故(なにゆえ)に、そこまで盛り上がるのか?」

 「このパワレントは戦いの神を祀ってんだからよ。武闘祭は神聖な祭りなんだぞ」


 大男は「えっへん」と腕を組み、「うんうん」と頷きながらそう言っている。


 「武闘祭って魔法の使用は――」

 「Job(職業)が魔法使い・魔法師なら、確か…許可されてた筈だぞ」


 Jobが戦士、魔法使いでは身体の作りが異なる。それぞれに適した体つきになるのだとか。だから、もし、魔法の使用が不許可なら、魔法使いや魔法師は不利になる。

 だからこそ、ちゃんと不利にならないようにルール設定をしているんだな。


 「アヴィル、次の馬車は明後日だ!妾はその武闘祭に出たいぞ!」


 ナシェリアは目を輝かせて言ってきた。本当に出たいらしい。


 「勿論、坊主の方も出るよな?」


 大男は言った。

 この流れで断れば、何か不味い空気に絶対になる。

 事実、俺は出場はしたくない。そして、目立つような事もしたくない。それ以上に目立つような事はしてきている筈だし。


 「アヴィルも出ようぞ!」


 ナシェリアを含め、大男も勧誘する。断りづらくなる…。


 「仕方ない、俺も出てやる」


 ああ、言ってしまった…。後で後悔して、痛い目を見るぞ、俺ェ…。


 「そうこなくっちゃな!俺はマクリエル・ヴェラリクスだ」


 大男…もといマクリエルは、俺達に手を出してきた。これは、握手か。


 「妾はナシェリア・ランドゥルフだ。明日の試合楽しみだぞ」


 ナシェリアはマクリエルと少々、熱すぎる握手を交わした。


 「俺はアヴィルだ。まあ、お互いに頑張ろう」


 俺も名乗り、マクリエルと握手を交わす。


 「アヴィル…家名は名乗らないのか?」


 やはり、コイツ(マクリエル)も、俺が家名を名乗らないのを気にするか。


 「あったとしても、名乗る必要性は感じられない」

 「アヴィルは妾にでさえ、教えてくれぬのだ。マクリエルは気にする必要は無いぞ」


 おお…ナシェリアがフォローしてくれた。

 ナシェリアは俺の顔を見て、無言で「必ず、妾に教えるのだぞ」と言っている。そこまで知りたいか。



 今日の夕食はマクリエルのお勧めで、奢ってもらい、宿前で別れた。

 ナシェリアは「妾がアヴィルの食費を払うのだぞぉ…」と不貞腐(ふてくさ)れ、マクリエルは「アヴィルはヒモなのか!?」と騒いでいたのは、悪い思い出となった。ナシェリアのヒモになっているつもりは無いが。




 宿。


 「必ず、勝つぞ!」

 「わっ!?」


 ナシェリアが突如、言い出した。こんなに、驚いたのは久し振りか。


 「何だ、いきなり…」

 「何だは無いだろう?明日は妾達が優勝を飾るのだ!」


 わざと負けようとしていた俺の心を、釘さしていくナシェリア。


 「あ、あのさ…手を抜いても…」

 「許さぬ。例え、アヴィルが誰よりも強かろうが、手を抜くのだけは許さぬ」

 「そこまでする必要性が感じられないと言うか…」


 ナシェリアのメラメラと燃えているのが伝わってきて、喋っている途中で、俺は固まった。

 その時の俺は、この上無い恐怖を味わったとか、いないとか…。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。

***

余談(飛ばしても大丈夫です!)


馬車の中(第三者視点)


 Bランクの女冒険者パーティーが飛び出していった。その後に続くようにしてアヴィルとナシェリアが飛び出していってから、少し経ち、ナシェリアが冒険者達(気絶状態)を一人一人ずつ運び込んできた。


 「やっと、最後か」


 ナシェリアが一息をついた時、同乗している内の一人、初老の男性が話し掛ける。


 「嬢ちゃん、大丈夫だったか?」

 「妾の事を嬢ちゃんと呼ぶでない。まあ…妾は無事だ。この女子(おなご)達は寝ているだけだ」


 初老の男は「おおっと、すまん」と言った。

 また別の初老の男性が話す。


 「もう一人、飛び出していったよな?ソイツは大丈夫なのか…?」


 ナシェリアはアヴィルが戦っている外を見た。


 「ゴフッ!」

 「アヴィルゥゥッッ!!」


 ナシェリアが丁度見たのは、アヴィルはロプスアに腹を殴られて、血反吐を出した瞬間だった。

 アヴィルにナシェリアが叫んだ。

 届かないだろう、その叫びを。


 (死なないでくれ…アヴィル。妾に光属性のMr(魔法耐性)が有ったのなら良かったのに………)


 ナシェリアは馬車の中で、唯ひたすらに、アヴィルが死なない事を祈るだけだった。



 そんな心配をして、意味が無かった事を知るのは、もう少し後の事である。

***

次の更新は9月25日の予定です。

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