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 オークの大軍を一掃した日の夕食。

 宿で寝てたら、良い頃合いに夜になっていた。


 「アヴィルの好きな店で良いと言ったが…まさか、魚料理店だとは…」

 「最近、どうも肉料理ばっかでな。魚、食いてー、と思った訳だ」


 俺達はラフターレの街にある、魚料理店に行った。理由は、俺の好きな店で良いと、ナシェリアが言っていたからである。

 まあ…明日、ラフターレを旅立つ俺達の最後の晩餐が、肉料理では無い為、ナシェリアは気落ちをしているのだ。

 明日が、次の中継地点に行く馬車が出発するからな。だから、ラフターレを旅立つ。


 「のう、アヴィル」

 「何だ?」

 「…妾は魚は苦手…」


 何だ、そんな事か。


 「肉は食うだろ?」

 「うむ!大好物だ!」


 ぬおぅっ!?肉の話をしたら、滅茶、元気になった。


 「魚も肉だろう?」

 「…そんな訳、無かろう!さ、魚も肉!?」

 「魚肉って言わないか?」


 魚に肉って書いて魚肉…。

 いつも、上から目線のナシェリアが、ここまで嫌がるとは…恐るべき魚…!凄いな、魚ァッ!


 「現に、魚料理の店だと忘れて、ハンバーグを頼んだんだろ?」


 魚肉ハンバーグだよ。魚料理店ならでは。


 「うぐっ…魚料理店が珍しく、肉料理を出しているな、とは思ったが…魚料理店を甘く見ていた!まさか、このハンバーグでさえも、魚料理とは…!」

 「それも、気付かずに殆んど食べ終わっている所が凄いと思うぞ」


 率直な感想と共にお送りしましたー。なんちゃって。


 「ナシェリア、明日の朝、早いからな。忘れるなよ」

 「む…?妾が毎日、寝坊してるような言いぐさは止めんか」

 「早く寝てくれ。と言う意味なんだが…」

 「それなら気にするでないぞ?」

 「なら、良いけどさ。二人とも食べ終わったみたいだし、宿に戻るか」

 「て、手を…繋いでやっても良いのだぞ?」


 何だ、急に。

 因みに、料理の代金は前払いね。


 「昨日とか、手を繋いで無いだろう?」

 「うぐっ…わ、妾が手を繋ぎたいだけだ!」


 開き直った。自棄に顔が真っ赤だな。

 そして、周りの老若男女の人々はニヤついている。ある人は「手を繋げ!」とか、「早くしろ!」だの、「羨ましい奴だ!憎らしい!」とか叫んでいる。


 「はぁ…分かった、手を繋げば良いんだろう?」


 俺はいつから周りに流される様になったんだろうか?それとも、元から?

 渋々、ナシェリアに手を差し出すと、パアッと笑顔になった。

 そうすると、憎みを含んだ視線と、見守りの視線が交わる変な視線が感じ取れる様になった。

 俺達は宿に、手を繋ぎながら戻った。

 身長差のせいで、俺にとっては子供と手を繋いでいる感覚があった。

 アレと一緒。

 高校の課外活動で、幼稚園と言うものに行った時に幼児と手を繋ぐ感覚。




 俺達は宿に戻った後、就寝した。

 ナシェリアは、手を繋いだ後の余韻に浸っていたが、その後、直ぐに寝付いたのだと。

***

 そして、このラフターレを立つ日の朝がやって来た。

 この宿ともおさらばだ。多分、帰りも寄ると思うけど。

 そして、持ち物全てを纏め、ナシェリアと一緒に乗り合い馬車に乗った。次の中継地点行きの。


 「ナシェリア、俺はこれから寝る。邪魔するな」

 「話し相手になっとくれよ~…」


 ナシェリアが涙目で、縮こまった。

 ただをこねる子供の様…。


 「騙されないぞ」

 「でも、これから二日間はずっと馬車の中。頼むから!何でもする!」

 「…何でもする、って言ったな?しょうがない、話し相手になっといてやる。夜は寝るがな」

 「有り難く思うぞ、アヴィル!」


 二日間の馬車でナシェリアの話し相手となった。いや、多分、これからもだ。

 そう言えば、出会った時に、ナシェリアが付いてきた理由は、話し相手になって欲しいからだったな。


 「んで、話の題材は?」

 「改めて自己紹介とかはどうだ?互いに名だけしか知らぬしな」


 なるほど…自己紹介か。深入れは止めとこう。

 取り敢えず、ナシェリアのを聞いて、何を言うのか決めよう。


 「妾が先で良いな?」

 「ああ」

 「妾の名は知っての通り、ナシェリア・ランドゥルフ。しがない、魔法師だ」


 意外にもアッサリとした自己紹介だった。


 「俺はアヴィル。家名は…その内、解るだろう」


 どうせ、俺の実家のある村までご一緒なのだから。

 俺は自己紹介を続ける。


 「俺は、魔法師の端くれだ」

 「まあ、そうだろうなぁ…妾も結構、凄い魔法師なのだが…嫌味のつもりか?妾とて、自信を失うぞ?」


 全然、嫌味ではありません、が…。


 「嫌味か。散々、言われた言葉だな」

 「どれだけの人々の自信を失わせていったのだ?アヴィルは」


 ナシェリアは溜息を吐いている。


 「…それに、何時になったら家名を名乗るのだ?妾は(将来の名字が)気になって仕方ないのだぞ?」

 「言っただろ?その内、解るって」

 「その内に解るものなのか…?」


 …多分な。本来なら、そうならない事を願ってるが、そうなりそうな気がする。それに…何故、そこまで気になる?

 兎に角、俺はナシェリアのその問いには答える事は無かった。


 「まあ、その内、解ることを期待して――」


 期待しなくて良い。


 「次だ。アヴィルのMr(魔法耐性)は何だ?光属性の魔法以外の属性の魔法をも使えるのだろう?」

 「一応、全属性だな。ナシェリアは?」

 「ぜ、全属性…やはり大物だな、アヴィルは。妾は、火と水と闇だな」

 「三つか…中々、凄いな」

 「…アヴィルに言われると嫌味にしか聞こえぬぞ」


 俺には嫌味を言っている感覚は無いな。先程から、ずっと。

 一応、進言しておこう。


 「まあ、気にしてたら、何も進まないぞ」

 「騎士も魔法師も、切磋琢磨する上で、自分自身の力を気にするものなのだ。悔しいから強くなるのだぞ、アヴィル。そんな気持ち、感じた事はあるか?」


 何かスゲー事言い出した…。

 切磋琢磨する上で…か。悔しいから強くなるのか。

 イマイチ、よく解らない事だな。


 「無いと思う」

 「まあ、そんな事だろうとは思った。これはな、妾のリスペクトする御方の教えなのだ」

 「ナシェリアには解ったのか?後、リスペクトって言う意味も」

 「リスペクト位は解るわ!妾を何と思っている?」

 「さあな」

 「まあ、良い…それに、御方の教えは、最近になってようやく、理解出来――」


 『ガタッ』


 馬車が急停止した。


 「魔獣が出たぞー!」


 一緒の馬車に乗っていた一人の男が叫ぶ。


 「安心して!このBランク冒険者パーティーの私達が居るからね!」


 武装した女性四人組の冒険者パーティーが馬車から飛び降りた。

 足元が(すく)われたり、腰が抜けてて立てなさそうに無い者達が、「安泰だ!」とか「助かった!」とか言っている。


 「のう、アヴィル」

 「何だ?」

 「妾達も行った方が良さそうな予感がするぞ…」

 「ああ…そうだな。あの冒険者パーティーじゃ、ちょっとヤバそうだしな」


 俺とナシェリアも馬車から飛び降りた。

 外では既に冒険者パーティーは飛ばされた後だった。


 「先程、飛び出して行った女子(おなご)達が、血だらけだぞ!?」

 「ナシェリアは魔獣を頼むぞ。俺は冒険者パーティーの治療をする!」

 「任せたぞ」

 「おう!《広範囲・超回復》」


 範囲は、この冒険者パーティーのみ。

 虫の息に血がドバドバだった冒険者達は、息は整い、血は止まり、怪我は綺麗さっぱり。

 冒険者パーティーは、静かな寝息を立てて寝ている。もしくは、気絶している。


 「ナシェリア、そっちはどんな感じだ?」


 ナシェリアは魔獣に魔法を放っている。


 「駄目だ、全然効かぬ」


 色んな魔法を放っているみたいだが、それ一つすら、ダメージが無いらしい。


 「それにのう…この魔獣が、人の言葉を喋っておるのだ…」


 は?


 『遂に現れたな、強者』


 魔獣の種類名サイクロプスが喋った。


 「ああ、喋ってるな」

 「だろう?」


 ここで喋る魔獣…否、魔族に会うとは。


 『我が戦友、イステアを倒した強者よ。我と戦え…!』


 イステア?イステア、イステア…。


 「…ああ!イステアか!」

 「話の道筋がよく解らぬのだが…知り合いなのか?」

 「知り合いにこんな奴が居たら困る」

 『奇遇だな、アヴィルよ』


 俺は目の前に居る魔族を睨む。


 「何故、俺の名前を知っている?」

 『魔王様から聞かされている。本物の強者はアヴィルだと』


 俺って、魔王にも名前が知れているのな。人気者だなぁー俺は。ある意味、魔王に俺の名前が知られているのは、それはそれで嫌だなぁ…。


 「今、どんな状況になっているのか、誰か教えてくれんかのう…」

 「ナシェリア、一旦、馬車に戻ってくれるか?」

 「わ、判った…くれぐれも死ぬのだけは避けるのだぞ?」


 俺は首を縦に振って、肯定。まあ、この場で死ぬ事は無いだろうけど。



 ナシェリアは馬車に戻った。


 「お前、名前は?」

 『何故、それを聞く』

 「名前を持つ魔族が居るだろ?イステアやメーディが良い例だ。それに、俺の名前だけお前が知っているのはズルいだろ?」

 『そうだな。我の名はロプスア。強者を求めて放浪している者だ』


 放浪しているのかよ…。

 それで良いのかよ、魔王。お前が創ったであろう、コイツは放浪してやがるぞ。


 「なあ、ロプスア」

 『何だ、アヴィル』

 「魔王の住む所を教えろ」


 ド直球で聞いてみた。

 何か最近、メルヴェルが死物狂いで捜索していると聞いたからな。(アレドラント情報)


 『教えんことも無いが…我に勝ったら教えてやろう!』


 うん。まあ、そんな事だろうとは思ってたけどよ。


 「じゃあさ、イステアとお前、どっちが強いわけ?」

 『戦友で良きライバルであるが、無論、我だ。我が全勝している』

 「それってライバルと言うのかよ…」

 『イステアは強がりでな。我はどちらでも良いのだが、ずっと「お前だけは倒す!」と言いながら、戦闘を挑んで来るのだ。それを、我が全て跳ね返すだけだな』


 へぇー。

 要は、イステアが馬鹿だった訳だ。


 『話とやらは終わりか?なら、始まりだ!』

 「魔王の住み処を教えて貰うために勝つしかないか」

 『人間は直ぐに忘れてしまうが、これは殺し合いではないぞ?これは戦い(遊び)だ!』

 「それぐらいは承知している。そうでもしないと、聞きたい事が聞けないからな」


 俺と魔族のロプスアの戦いが始まったのだ。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。

***

余談(飛ばしても大丈夫です!)


 ロプスアとイステア(ロプスアSide only)



 我、ロプスアと良き友イステアは、魔王様にほぼ同時刻に創られた。

 我と友に各々のコンセプト的なものがあった。我は武力、イステアは知力。

 イステアは知識が豊富で、地頭は良かったが、それ以外になると阿呆だった。我は知識は無く、馬鹿なのだろうが、学んでいく事は容易い。



 我が友イステアは、よく我に戦いを挑んできた。

 後ろから不覚を取られたとしても、振り払えてしまう程に弱かった。だが、我はそんな何気無い事が楽しかったのだろう。

 勝てないと解っていながら、何度も挑むイステアは、いつか魔王様の御側に立つことだろう。…武力ではなく、知力で。



 ある日、魔王様から告げられた一言で、我は強者を求めて放浪する事になる。それは…。

 ―イステアが倒されました。いつか、出会うでしょう、イステアを倒した人間に。言っておきます、本当の強者はアヴィル。イステアを倒した者の名前でもあります――と。



 我が強者を求めて放浪しているのではなく、我が友を倒した人間(アヴィル)を探して放浪していたのだ。

 遂に、会えた。我が友の仇を討つぞ。

***

次の更新は9月22日の予定です。

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