18
翌朝。
昨日と変わらずの朝を迎えた。
朝食のビュッフェも変わらず、ナシェリアの肉三昧な朝食を見ながら、俺は栄養面を考えた朝食を食べた。
今、俺とナシェリアは、宿の前で立ち尽くしている。
暇だな…。
「なあ、今日、何する?」
俺はナシェリアに聞いた。
「特にする事も無いな…」
そこで俺は提案を持ち掛けるとする。
「だったら、模擬戦やらないか?」
「模擬戦?決闘ではなくてか?」
「ああ」
そこまで本気になって戦う理由なんて無いしな。
「決闘、はたまた模擬戦であろうとも、負け知らずの妾だが、流石にアヴィルとは…妾、天に召される日なのか?うむ、きっとそうなのだな」
「いや、流石に天に召される事は無いと思うが?」
ナシェリアを殺そうなんて一ミリも思ってないから!
何で俺に殺される前提なんだよ…。天に召されそうな怪我を負ってしまったら、ちゃんと治すし。
「それを聞いて安心し――」
「誰かー!助けてー!」
ナシェリアの発言は、大声で助けを呼ぶ女子の声に書き消された。
「あーもう!妾の発言を中止したのは誰だ!」
「今、怒る事では無いだろう?兎に角、助けに行くぞ!」
俺は勘づいている。助けが必要な場所には魔獣が居ることに。それも、大型のが大量に。
多分、同じくして、ナシェリアも勘づいているだろう。
「気に食わないが…そうだな!」
「…空を飛んで様子見に行った方が良いよな?」
「《飛行》か?妾は残念だが、風に魔法耐性が無い!」
ナシェリアのMrに風が無いのか。
無いのなら、風属性魔法である《飛行》は、使えないな。残念。
「じゃあ、助けを呼んでいる場所に一瞬で移動するのは?」
「《瞬間移動》か…。妾の分も合わせて頼めるか?」
「お安いご用だ、掴まれ!《瞬間移動》!」
俺は無属性魔法の《瞬間移動》で、俺とナシェリアは、助けを呼ぶ場所に辿り着く。
『GOOO…』
「まさか、オークの大群とは」
ナシェリアがそう呟いた。
オークとは魔獣の中で、特に人間に近い(体型)とされている。
だが、自我は無さそうなので、魔族では無いだろう。
「水の精霊よ。我に力を《スコール》」
ナシェリアはオーク軍団に向かって魔法を発動した。
アレドラントと決闘をした時に使われていた魔法と同じ魔法。威力は、同程度位か。
『GYOOO!?』
酸性雨に当たり、身体が溶けていくオーク達は、戸惑いを隠せていない。
「《超レインコート》」
俺はあの酸性雨の中へと突っ込むのだ。それ相応の対策が必要だ。
「じゃあ、オークを一掃してくる。《飛行》」
「!?…うむ、頼んだぞ」
「ああ」
俺がナシェリアに声を掛けたら、ナシェリアは何か驚いていた。何故だろう。
取り敢えず、俺達の居た場所とは反対側に向かった。
そちらでは何人かオークと戦っていた。
それを見ていると、俺とナシェリアよりも苦戦している様に見えていたのだ。
その近くに降り立とうとしたが、止めた。
戦っている人に見覚えがあったからだ。
…何故ここに白鳥さんが!?あと、多分クラスメイトの三人。
少し時間は掛かっているが、一体ずつ確実に倒していっている。でも、オークに押され、戦況が悪い事も確かだ。
よし…降りるか。
俺専用のローブにフードが取り付けられた特注品。フードを被って、白鳥さん達の目の前に降り立つ。
「《雷撃》」
オークに放つ。別にナシェリア側から撃っても良かったが、いきなり倒れ、勇者共の力の過信にならないようにした。
「《飛行》」
誰にも顔を見せることなく、そこを飛び去る。戻るはナシェリアの元。
「ナシェリア」
「何だ?」
「俺達の居る方とは反対の向こう側に勇者が居たぞ」
「ふうむ…となると、オークを刺激して被害を出してしまった感じかの」
「そうかもな」
本当にそれだけなら良いけどな。本当に。
***
奈菜Side
今、オークを討伐する為に、森へとパーティーの皆で昨日から潜っていた。
「ねえ…オークさ、何か多くない?」
早璃南が突然、そう言った。
「確かにそうだね…ずっとオークを倒してきているのに、全然、減らないね」
有田くんが早璃南に応える様にして言った。
確かに、昨日の昼頃からオークを倒している。しかし、一向に減る余地が無い。
「ねえ、まさかだけと…」
「何?奈菜」
私が言いかけると早璃南が直ぐに反応してくれた。
「魔獣大量異常発生…じゃないのかな?」
「スタン…ピード…」
「奈菜殿の言う通りかも知れぬな」
「うん…僕もうっすらそう考えてたね」
早璃南は、成る程と腕を組み、原田くんは私に賛同し、有田くんは私と同じ事を考えていたらしい。
スタンピードと言うのは、突然、その種の魔獣が異常に大量発生する事を言う。
オークが何故こんなに多いのかは、スタンピードが理由だと私は考えたのだ。
「一旦、退いて、メルヴェル様に報告をしないといけないんじゃ…」
早璃南は青筋立てて、そう言った。
その早璃南に有田くんはこう言った。
「だけど、今の現状、退く事が出来ないな」
立て続けに原田くんも言った。
「今、この場で背を向ければ、危険である!」
「でもさ…」
早璃南は渋んで居る。
「《雷撃》」
『GAAA!?』
突如、私達パーティーの目の前に、フードを被った男の人らしき何者かが、降り立った。
光属性魔法を使う私にはよく判った。これは《雷撃》と言う、光属性魔法。結構、上位に位置する魔法だった。その魔法一撃で、オークの大軍を消し去った。
その後、そのフードの男の人は飛び去って行ってしまった。
「さっきの人…凄い」
早璃南は呟いた。驚きと感動などを含んで。
「Jobが魔法師の早璃南さんが言うから、相当の強者だね」
「でも、一撃で倒せる魔法であるものなのか?その《雷撃》って魔法は」
有田くんは納得し、原田くんは少々疑問を抱いているようだった。
原田くんの質問に私が答える。
「光属性魔法の《雷撃》は、雷を落とす上位の魔法なの。それでね、大軍を一撃で倒す威力のある雷を出す事は難しいの。例え、メルヴェル様でもね」
「メルヴェル様でも相当難しい事をやった、あのフードの男…一体、何者なんだろう?」
「「「さぁ…?」」」
有田くんは腕を組ながら呟いた。
それが判れば、苦労しないのだけどね。
私達は、メルヴェル様に報告をする為に王城に戻った。
「…フードの男か…私のローブの様な刺繍をされていなかったか?」
メルヴェル様は不思議な事を聞いてきた。
「刺繍…?」
「刺繍か?」
原田くんと有田くんは記憶を探っている。現に私も。
「されていた気がします。私、記憶力は良い方なので」
早璃南はそう言った。
「スタンピードと言い、フードの男と言い、情報提供ご苦労だった。今日はゆっくりと休むが良い。明日の訓練に遅れぬように!」
え、て事は休暇?厳しいメルヴェル様の口から出る言葉とは言い難い…。
「私の口から、休めと言うのは可笑しいか?これは、団長殿が大切にした『功労者を労り、休暇を与える』に順したものだ。だからこそ、休暇を求めて魔法師団の団員共は、奮闘するのだ」
「これだけは有り難う、団長さん」
有田くんは澄んだ瞳で清々しく言った。
「心より感謝するであるぞ、団長」
原田くんは腕を組んで、上から目線で偉そうに言った。
「これだけに関しては神同然ね、団長さんは」
早璃南は合掌して拝んでいる。
「…初めて団長さんって良い人なんだなぁと、思った…」
私もありのまま、思った事を言い放った。
「お前ら…団長殿の事を何だと思っていた?」
メルヴェル様の雲行きが怪しくなり出した。
「パッと居なくなる無謀者だと…」
有田くんがハッキリと答えると、私達は同じ気持ちだと言う意思表明として頷く。
「失礼な奴等め…明日からの訓練はもう少しきつめにしなくてはならない様だなぁ…?」
メルヴェル様がキレ出した!!
「「「「失礼しましたぁー!」」」」
私達はそう言って、この場を後にした。
***
「本当に何でもアリなのだな…アヴィルは」
ナシェリアはそう言った。
俺は今、オークの大軍の死体全てに《腐敗阻止》を掛けていた。
それで、掛けている途中に、「その魔法は何なのだ?妾は初めて見るぞ…」と、聞かれたので、「死体を腐らせるのを抑える魔法だ」と、答えたら、「オリジナル魔法だと言わないだろうな?」と言ったので、頷いて肯定の意を示した所である。
「死体の密集する場所は臭いがキツいと言うのだが…それをも覆すなどとは…」
ナシェリアは俺のオリジナル魔法である、この《腐敗阻止》に興味があるのだろうか…。
「…取り敢えず、全てに掛け終わった。今日はもう、宿に戻らないか?」
「一つだけ聞いても良いか?」
「ん…?まあ、答えられるものなら良いけど」
「うむ、礼を言う。それでだな…その魔法の効果はどれくらい継続するのだ?」
効果…ね。考えた事も無かったけど…。
「無属性魔法の《魔法削除》とかで消さない限りは、永久的に継続するだろうな」
多分だがな。
「え、永久的にって…」
俺だから成せる技とでも言っておいてやろう。
「じゃあ、宿に戻るか?」
「あ、ああ…そう言えば、模擬戦とかと言う話はどうなったのだ?」
んー?そんな話もあったなー?
「それは次の中継地点で立ち止まった場所で」
「そうかそうか!なら、その合間に妾も強くなっとかんとな!」
「じゃあ、ナシェリアがその気なら、俺もか」
「え?そんな事、しなくても良いのだぞ?」
何で?
(そんな事されたら、妾は死んでしまうかも知れぬからな…)
ナシェリアに青筋が立っていたのを俺は知らない。知る日は無いだろう。
***
俺達は宿に一旦、戻った。
一旦と言うのは、宿が夕食を用意しておらず、外食になるからである。まあ、変わらず、朝はビュッフェとして朝食が用意されているけどな。
そうして、夕焼けになるころまで、部屋でゆっくりとお寝んねしてました。
…する事が無さすぎて寝る事しか無かったとだけ言っておこう。
ここまで読んでくださり有り難うございます。
誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。
***
余談(飛ばしても大丈夫です!)
ナシェリアの夢
妾は今、何処に居るのだろうか。
見たことも無い様な場所で、椅子に座っている。
「お待たせ致しました、ナシェリア様。本日のコース料理一品目はササミをふんだんに使ったスープでございます」
「…アヴィル!?何でこんな所で、何をやっているのだ!?」
「何って、ウェイターをやってますが…?」
アヴィルがここで、ウェイターをやっているだと…?今日明日くらいに地殻変動でも起こるのか?
妾は出されたスープを綺麗に平らげると、アヴィルが別の料理を持って来た。
「続きまして、二品目でございます。前菜のサラダでございます」
「野菜が入っているではないか!」
「全て、着色させたお肉でございます」
「うむ、なら…」
本当に肉だった。
態々、着色させる必要があるのか…?
「――本日のメインディッシュ、特大ステーキでございます」
「おー!」
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「…肉が沢山…フルコースで全て肉……すー…」
ナシェリアが不思議な寝言を言っている。
何の夢を見ているんだ?
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次の更新は9月18日の予定です。




