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 俺の攻撃により、ボトボトと、コウモリの様な魔獣は落ちていく。全て絶命した状態で。


 「アヴィル!ここで、そんな大きな魔法は危険だろう!?」

 「安全を確認した上で発動した。魔法は壁や天井には触れず、魔獣だけに当たった」

 「そうかも知れぬが…!」

 「続き、歩いて行くか」

 「そうだな…結びの神様はどんなお姿をしているのだろうな?」


 ナシェリアは大変忙しい人だと言うことが判った。




 あれからどれだけ歩いた事だろうか。

 目の前には大きな扉が現れた。


 「いよいよ、御神体だな!」

 「そうかもな」


 ナシェリアが扉を開けた。

 そこは御神体であったかも知れないものが崩れていて、瓦礫の山と化していた。

 それを囲む格子には、『これは結びの神様の御神体です』と書かれている。御神体であったものと見受けられた。


 「ご、御神体が…壊れておるだとー!?」


 ナシェリアは泣きながら怒っている様だ。


 「誰がこんな事を…」


 結びの神に一ミリも興味が無かった俺でさえ、真相究明したいものだ。


 「先の《雷撃》では無いのか?」

 「魔獣を一掃した時のか?」

 「うむ」


 魔獣と敵対したのは、コウモリに似た魔獣だけである。

 そして、面倒だった為、記憶を操作していない。しなくても、大丈夫だと判断したからだ。ナシェリアは大丈夫だろう、と。


 「いや…ここまで届かないな。流石に」

 「そうか?まあ、近付いて、魔法の痕跡とか視れば解るだろう」


 魔法の痕跡の一つ、魔力波動は個人特定が出来る。魔力の波動は人それぞれだから。

 壊した時に、魔法を使っていればの話だがな。

 ナシェリアは格子を乗り越えて、破壊されている御神体の近くに寄った。

 俺も、ナシェリアに付いていく。


 「…魔法の痕跡は一切、視られぬ。物理で壊されたのか」

 「直すか」

 「馬鹿か?直すとしたら、《修復》を使うのだろう?魔力の消費が激しすぎるぞ。戻れなくなっても知らぬぞ?」


 これ位の大きさなら、魔力の消費など微々たるものだ。どちらかと言うと、王都で家を直した時の方が、魔力の消費が激しいと思う。


 「動けなくなったらなったで、休めば良いだろう。ナシェリア、少し離れてくれ」

 「分かった。だが、本当に知らぬぞ。どうなっても」


 そこまで心配される事ではないが…。


 「それじゃ、《修復》」


 御神体は一瞬にして、元通り?になった。

 何故、元通りで疑問符を付けているかと言うと、元の姿を見た事は無かったからである。初めて見るものに、元通りとか言っても…って言うのがある。


 「アヴィルー!大丈夫か?」

 「心配ご苦労。大丈夫だ」

 「良かったぞ…本当に心配したのだからな」


 ナシェリアは大粒の涙を出しながら、俺に抱き付く。

 先程の涙とは別物の涙である。何で泣かれているんだろう…?今は良いか。


 「ナシェリア、結びの神はこんな感じだったんだな…」

 「そうなのだな…ぐすっ」


 ナシェリアは鼻をすすりながら会話している。

 結びの神の御神体は、立ち姿の女神だった。名前はラフターレ。俺達の今、留まっている村の名前でもある。


 「…思った事は無いか?」


 何かを祈っていたナシェリアは、俺に突然、聞いてきた。


 「何が?」

 「この国には神様が多すぎる事についてだ」

 「あー…」


 小さな村でも、一つは神が祀られ、その場毎に別の神が祀られている。

 俺の故郷の村も祀られている神の名前だったっけ…。

 日本も神が多いし、どっちもどっちだろう。


 「アヴィル、何かをお願いしたか?」

 「結びの神に?」

 「無論」


 特に結ばれる様な事は願わない。メルヴェルと、ずっと一緒にいられるだけで良い。


 「ふっ…」

 「何故笑う!?」

 「ナシェリアは何を願ったのかなー?と思ってさ」

 「縁を求めるとは言ったが、内緒だ。誰と結ばれたいのかなどはな!」



 俺達は御神体のある、ここを出て外に戻った。同じ道を通り、同じ位の時間を掛けて。


 「いやー、すっかり夜だな!」


 外は夜。街の商店街は明るく、賑わっている。

 日本だと、寝ない街?

 ナシェリアは突然、こう言ってきた。


 「アヴィル!妾が毎食奢るぞ!」

 「は?宿の夕食は?」

 「彼処は朝食しか出んぞ?夜はナイトバーらしいからの!」


 え?

 周りから見ると、(三十歳超えだが)幼女(体型の)に奢って貰っている、ヤバいヒモに見えているのでは…!?


 「何の心配をしておるのだ?救世主」


 ナシェリアが遂に俺に対して(対面で)救世主と呼んだ!


 「救世主と呼ばれるのは嫌だったか?」

 「まあ…」

 「うむ、気を付けよう。元より、救世主と呼び始めたのは、この地の領主だな」


 マジですかぁ…。


 「妾はな、これでも、返しきれぬ恩を感じているのだよ」

 「…はて?」

 「ははは…判らぬよな。あの盗賊共は、妾にとって大事な物を金目の物として奪った。それを返してくれたアヴィルには、多大な恩を感じているのだよ」

 「そうか…返しきれるその時まで、恩を返せ続ければ良い」

 「…有り難う。さあ、何処の飲食店に行こうか?」


 ナシェリアに腕を引っ張られ、ナシェリアに勧められた料理を口にする。

 …まあ、肉料理ではあったがな。美味しかった。

***

 アレドラントSide


 魔法師団の食堂にて。

 メルヴェル殿が昨日の夕食から、作りに行かなくて良いと言われた。

 罰当りなアイツ(アヴィル)に作りに行かなくて良いのは嬉しい。

 だが、寂しく感じている。



 私は王都出身の位の高めの貴族だった。家族はいつも仕事、仕事で家に帰ってくる事は少なかった。

 当時、幼い私は毎日、一人で食事を取っていた。

 出世した今も、一人で食事を取っていた。そう、同期に遠慮されていたからだ。



 副団長になり、団員を統率する事となった。

 その時に、前任のガードラーレ殿に言われた事が、「私には足りなかったんだろうな…団長殿にはあるものが。そして、アレドラント。お前にも足りない」と。

 私にはやっと解ったような気がします。

 私にアイツに食事を作れと、命令したメルヴェル殿に感謝ですかね…。

 そう言えば…何故、作らなくて良くなったんだろうか?

 アイツ――アヴィルとは一体、何者なんだろうか。アイツは、団長殿のローブを触っても魔力酔いを起こさなかった。

 …まさか、アイツが団長殿本人なのか?いや…そんな訳無いか。

 五十年前に居なくなった団長殿だぞ!あんなに若いわけが無い。



 そして、私は考えるのを止めた。

 今日は、一人で食事か…。


 「はぁ…」


 私から溜息が漏れた。


 「溜息か?やはり、寂しいのか?副団長」

 「お前らしいと言うか、な」

 「えっ!?め、メルヴェル殿とガードラーレ殿っっ!?」


 気付かなかった…。

 メルヴェル殿とガードラーレ殿は、私の座る席の目の前に座った。


 「何故、こんな私に…」

 「いや、何か副団長の今が、かつての団長殿にそっくりだったなと思ってな。なあ、ガードラーレさん」

 「えっ、あ、まあ…そんな感じだったな…」


 何の話なんだろうか。

 メルヴェル殿が語りだした。


 「十歳頃に魔法師団に入られた若き団長殿は、食事の度に溜息を吐かれていた」

 「十歳頃…」


 団長殿が若くして入ったとは聞いていたものの、そんなにも若かったとは…。


 「一年半後位に団長殿は団長になった。自分よりも年上しか居ない、この場所で」


 詳しい年齢まで知らなかった。

 私が副団長になるよりも、若い…ではなく、幼い。


 「あ、副団長」

 「何ですか、メルヴェル殿」

 「また、命令する時が来るかも知れない。覚悟して待っていれ」

 「聞いても良いですか?何故、急に作りに行かなくても良いと仰ったんですか?」

 「彼の者が、帰省をすると言うことだ」


 アイツが帰省…。アイツは王都出身では無かったのか。

 何を気になっているんだ?私は!

 取り敢えず、呼吸を整えて…。


 「そうでしたか」


 私は食べ終わり、片付けに行った。

***

 ナシェリアSide


 妾は昨日の乗り合いで助けて貰い、知り合った()の子と、一緒に行動をしている。

 男の子の名は、アヴィル。家名は知らない。

 平民でさえ、家名を持つご時世、アヴィルは家名を言わなかった。何か隠したい理由でもあるのだろうか?…人の詮索はあまり良くないな。

 兎に角、妾はアヴィルが気になるのだ。

 年齢は妾と離れていた。なんと、アヴィルの方が結構な年下だったのだ!それでも、気になる事は気になる。



 今日、アヴィルと結びの神が祀られる神殿に行った。

 偶然に感謝しかないと思った。

 妾の願った事は、「アヴィルと結ばれますように――」と。まあ、一目惚れっていう奴なのだが。

 アヴィル本人に言える訳が無いだろう。そして、気付かれる事も無いだろう。とは言え、願いが叶う事はゼロでは無いと思う。これは、妾の勘でしかないのだが。



 神殿から外に戻り、アヴィルに毎食奢る事を約束した。

 妾はアヴィルの宿代、食事代の全てを全額出す事に決めた。

 妾の大切な物を取り返してくれたのだ。それ相応の恩を返すのは当たり前。

 だが、それでも恩は返しきれない。そう言った時、アヴィルは全て返せきれないなら、その時まで返し続ければ良い、と言ってくれた。

 本当に優しいのだな、アヴィルは。

 それに、とても強く、頼りがいがある。

 アヴィルの服装は魔法師団の制服。ローブは金の刺繍がされていて、高等団員であろう。

 妾は王都に戻るまでと言ったが、関係無しに参るぞ!アヴィル、覚悟して待っておれよ…。

 アヴィルの初めてを奪ってやる。


 「ぐふふふ…」

 「何か…大丈夫か?」


 宿まで戻ってきていた妾等は、寝床に就く前に談話をしていたのだ。

 アヴィルに心配された。とても嬉しい。


 「だ、大丈夫だ!この通り、元気だ!」


 妾は腰に手を当てて、胸を張って言った。


 「なら良いけど。俺はもう、寝る」

 「あ、ああ…お休み、アヴィル」

 「お休み」


 アヴィルは横になった途端に熟睡していた。

 寝るの、速いな!?

 …妾は思う。初めてを奪うのではなく、きっと、奪われる側に立たせられるのが、妾なのだと。



 恥ずかしくて、当分、寝られなかったが、気持ち良いベッドで、快眠であった。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。

***

余談(飛ばしても大丈夫です!)


とある人Side


 アヴィル達が来る五日前の事。



 清々しい風が吹いている。

 今日も結びの女神ラフターレ様にお祈りを捧げるとしよう。



 ラフターレ様の御神体がある洞窟内を進んで行くと、段々、何かを破壊する破壊音が聞こえてきた。

 誰かが魔獣か何かと戦っているのだろうか?

 だが、戦っているにしろ、こんな破壊音は出ない筈…もし、ラフターレ様を破壊しているのだとしたら…。

 ヤバい、ヤバい、ヤバい。

 ああ…ラフターレ様がご無事であります様に…。

 進むスピードを早め、御神体の場所まで走って行った。


 「こんな所で何をしている!?」


 御神体の場所に着いてから、我先にと声を張り上げて言った。

 そこには、少し遠くで朧気(おぼろげ)だが、女性二人が御神体を壊していた。


 「人間に見付かるとは…もう少し細かくしたかったのですが、ここは退散しましょう」

 「…ちっ」


 その二人はあっという間に、何処かへ消えて行ってしまった。

 ラフターレ様が…。


 **

 アヴィル達が来た日の翌日。



 今日もラフターレ様にお祈りを捧げる為にやって来た。

 だが、ラフターレ様の御神体は壊されてしまっているのだが、それでも毎日欠かさずにお祈りしている。



 御神体の場所に行った。


 「あれ…?ラフターレ様が直ってる?」


 そう、壊されてしまった筈の御神体が綺麗に元通りの姿に直っていた。

 誰かが直してくれた様だった。

 良かった、直ってくれて。

 誰がなんか関係無い。我等ラフターレ村を救ってくれたんだから。

 顔をも知らない誰か、彼方は村の救世主ですよ。

***

次の更新は9月15日の予定です。

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