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 「彼の物に力を分け与えよ《魔力譲渡》!」


 アレドラントは、俺の魔力を補充してある指輪からドアへ、魔力を移動させる。


 「開いた…だと?先は開かなかったのに…」


 アレドラントは驚いている。多少、嬉しそうだった。


 「ほら、出れたじゃねーか」


 やれやれと、俺は腰に手を当てながら、そう言った。


 「と言うか、貴様!ちゃっかり、国宝でもある団長殿の私物を持ち出しているとは!」

 「なんだ、元気で良かった、良かった」

 「良くないわ!」

 「ま、気にするな」

 「気にするな以前の問題だ!」


 このまま、俺とアレドラントはメルヴェルの自宅に直行した。この後、アレドラントは魔法師団として、副団長としての仕事も無いのだとか。そして、夜はアレドラントの作る夕食を食べて寝た。

***

 翌日、アレドラントと朝食を取り、アレドラントが外に出ていった後。



 俺はある一通の手紙を(したた)めた。

 それは、メルヴェル宛に、俺が一ヶ月位、メルヴェルの自宅だけではなく、王都まで離れる事についてである。

 はたまた、一ヶ月ではなく、二ヶ月、三ヶ月と離れるかも知れないとまで記述しておいた。



 荷物は、この間に買った服、魔法師団の制服、俺専用のローブ、魔法書、【魔剣ヴィヴァロ】である。

 俺専用のローブは、王都から離れた所から身に付けよう。それまでは、借り物のローブ。

 着替えの服、魔法書はとてつもなく便利な魔法で持ち運ぶ。


 「《収納》」


 これは無属性魔法で、動かないものは何でも入れられる。

 【魔剣ヴィヴァロ】は…腰に差しっと、よし、手紙を王宮の誰かに…いや、アイツで良いや。

 アイツと言うのは…そう、魔法師団本部で門番の団員である。

 日本から転移で帰ってきた、その日に門番をしていた男性の魔法師団団員。


 「――と言うわけで、メルヴェルに渡しておいて。今日の昼頃までに」

 「いや、ちょっと待て?俺が?メルヴェル殿に?」

 「宜しく。じゃあ、またいつか」


 俺は丁度、そのアイツが門番していたので、渡してきた。

 …よし、ここからが長くなるぜ。

***

 奈菜(なな)Side



 「早く、団長殿に御御御付(おみおつ)け出来る所まで強くしてやりたいが、今日は大事な話がある」


 今日は座学としてメルヴェル様が説明している。私達が倒す相手かも知れない者について。


 「前に自我を持たず、暴れまわる猛獣の事を魔獣と言う事を、話したが、先日、自我を持つ魔獣が現れ、古い文献から魔族と呼ばれるものだと解った。自我を持つものを創れるようになった魔王は、確実に力をつけている」


 魔王…魔族…。


 「新たに解った魔族の特徴を話しておく。それはこんな羽と、先の尖った尻尾である」


 メルヴェル様は()の死体を持っている。

 いや、コウモリの様な羽に先が尖った尻尾…悪魔の様な者の死体の髪の毛を掴んでいる。

 クラスの皆は…口を手で押さえている。顔は青筋が立っている。

 実を言うと私も。人では無いにしろ、人に似た者の死体を見たのは初めてであり、吐き気が込み上げる。


 「…これだけで吐き気とは…。この世界で生きるには、対人戦も必須だ。慣れろ!」


 メルヴェル様はそんな私達を気にせずに、罵った。


 「す、すみません…質問…良いですか?」

 「受け付けよう。して、質問とは何だ?」


 メルヴェル様に、手を挙げて質問をしようとしているのは、私とパーティーが同じになった有田(ありた)くんだった。


 「人を襲うのですか?」

 「何故、当然の事を聞く?ああ、人を襲う。魔獣なんか比ではない程に脅威だ」

 「その魔族は何処で現れたんですか?」

 「この魔族か?この魔族は王都に現れた。魔族の名はイステアと名乗った(そうだ)」


 メルヴェル様に有田くんは魔族について詰め寄る。

 王都で現れていたなんて…。こんなに近くに。


 「先程は、名乗っていたと言っていましたが、魔族に名前があるのですか?」

 「名乗ったんだ、そうなんだろう。まだ、情報が足りないのでな。全ての魔族にあるかどうかは解らない」

 「…そうですか」

 「質問は終わりか」

 「はい。ありがとうございました」

 「うむ。…各自準備してダンジョンへ潜れ。以上だ!解散!」


 各自と言うのは勿論、パーティー毎。

 はあ…また今日も、ダンジョンに潜るのか…。まあ、仕方無いよね。まだ、力は魔王を倒すのに十分では無いんだし!


 「奈菜、準備しに行こう!男達は準備しに行っちゃったしさ!」


 パーティー仲間である、早璃南(さりな)が声を掛けてくれた。


 「うん!」


 私は早璃南と準備して、有田くんと原田(はらだ)くんと合流し、今日もダンジョンへと潜る。

***

 メルヴェルSide


 私は今、勇者達に魔族について、今、解っている事を話した。

 勇者達は見込み以上に強くはなっている。だが、まだ弱い。やはり、団長殿にも魔王討伐を頼もうか…いや、団長殿の手を煩わせるなど、あってはならないわね…。

 王宮の外に出て、勇者達の支度を待つ。

 土地勘の無い勇者達を、ダンジョン前まで引導する事にしているから。


 「メルヴェル殿ー!」


 王宮の門番に憚れながらも、私の名前を呼ぶ男が居た。

 それは、団長殿が帰ってきた事を連絡してくれたあの日の門番の男の魔法師団団員であった。


 「何の用だ?」

 「め、メルヴェル殿…団長殿から手紙です…」

 「手紙?団長殿から?」

 「ええ、はい!」


 私は団長殿からの手紙を受け取った。

 内容を見た私は驚いた。

 また…遠くへ行ってしまうのですか、団長殿!


 「確かに受け取りました」

 (…メルヴェル殿、いつもと口調が違う…ああ、団長殿に言っているのか)

 「団長殿に承った事を言いたいが、既に王都には居ないだろう。ふっ…ご苦労であった」

 「これにて失礼させていただきますっ!」


 手紙を渡してくれた団員は、私に敬礼をして、本部に戻って行った。



 団長殿の帰省に邪魔はさせてはなりませんね。団長殿が戻られるまでに勇者達を魔王に送り込める程に強くしてみます。

 ああ、そうだ…今日の夕食から作りに行かなくても良いと、副団長(アレドラント)に言わないと。

 いつでも、私の団長殿が帰ってこられる事を信じていました。今回も、絶対に帰ってきてくださいね、私の団長殿。

***

 薄暗く、廃れた城のような大きな屋敷。

 昼間でも気味が悪く、昼間の様な明るさは無い。

 その場には、玉座に座る男と、その目の前でメーディいる。メーディは、その男に(ひざまず)いている。


 「今回も豊富に亡者の魂が回収出来ました」

 「ええ…確かに豊富ですね」

 「お褒めのお言葉…勿体無きお言葉です」


 メーディがアヴィルの自宅で回収した人の魂を全て玉座に座る男に渡した。


 「お耳に挟んでおきたい事がございます」


 メーディがそう言った。


 「何ですか?」


 男は顔面全体を黒い仮面で覆っている為、メーディにもどんな表情をしているのかが分からない。怒っているのか、笑っているのか、悲しんでいるのか…などが。


 「発言させていただきます。私の魔法が効かない者が居まして…その者は私の魔法自体を消しました」

 「ほぅ…精神を腐らせる魔法に特化するように創ったお前の魔法が効かない…ですか。…さん、やりますね」


 メーディは魔族だ。魔族を創るのは他でもない、魔王のみ。

 つまり、玉座に座る男は勇者達が討伐すべき存在である、魔王その者である。


 「何重にも重ね、簡単(人間)には消せない様になっている魔法ですが、意図も簡単に消されました」


 メーディが魔王に話している人間とはアヴィルの事である。しかし、メーディにアヴィルは名乗っていない為、名を知らない。

 だが、魔王は何処かそのアヴィルを知っている様でもある雰囲気である。


 「…良いでしょう。これは、メーディを創り変えれば良い話なのだから」


 メーディは小刻みに震えている。


 「お前が怯える事はないですよ。創り変える…只、強く強化すると言う話ですよ。例え、性格が変わっても、気にする必要は無いですし」


 魔王はメーディの額に手を当てて、創り変えようとしている。


 「アガガガガGAGA…!!??」


 メーディは創り変えられるその時まで、激痛で、その城には、メーディの悲鳴だけが響き渡るのであった。

***

 今は乗り合い馬車の中。

 俺は王都を出てから二時間位、経っている。

 俺の向かう実家のある村は、辺境すぎる為、直行便の乗り合い馬車が無いのだ。乗り継ぐしかない。



 この馬車の行き先は、実家のある村の(まだ全然だが)途中にある、都市に停まる。

 王都発の為、まだ、ローブは付け替えていない。この馬車の行き先に着いたら、付け替えようと、思っている。

 馬車はずっと動いている。着くのは、今夜。それまで、寝ていよう…。




 …。


 「金目の物を出せ!」

 「キャアッッ!」

 「坊主も出せ!」


 頬を叩かれる感触に、目が覚める。


 「着いたのか?…着いてねぇじゃねーかよ…起こしやがって…」


 俺は悪態をつく。

 すやすや揺れるがままに寝ていたのに、起こすなよ…。くそっ…。


 「金目の物を出せよ!…なら、死ぬか?」


 金目の物を出すor死ぬなんですか?何で死ななきゃならん?

 周りの人々が悲鳴をあげている。

 ナプキンを口元に巻いた男が三人。典型的な盗賊だ。早速、巻き込まれるとは。


 「俺の眠りを阻害した罪は重い。よって、ビリビリの刑だ。ああ、死なない程度にしてやるからよ《雷撃》(×三回)」

 「「「ああー!!」」」


 《雷撃》により、男三人は気絶した。

 取り敢えず、息を確認する。力加減を間違えていないか、確認する為だ。


 「…うん。生きてる。気絶しているだけだな。《拘束》」


 闇属性魔法の《拘束》で、男三人の手足を縛る。良さそうな縄とかが見付からなかったからだ。


 「取られた物があるなら、取るが良い。男達は当分、起きない。馬車が着く先で衛兵に男をつき出せば良い。では、俺は着くまで寝る」

 「…」

 「おおー!」


 ああ、騒がしい。


 「救世主だぁー!」


 いや、普通だろう…?俺は、救世主なんかじゃねぇ…。



 俺は周りが喜び、叫んでいる中、ぐっすりと寝た。

 ああ、因みに金は《収納》の中だから、安心せよ。

 長い帰省の始まりが、盗賊と遭遇か…。この帰省に、あんまり良くない事が、起こる予感がしていた。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。

***

余談(飛ばしても大丈夫です!)


 アヴィルが乗っていた、乗り合い馬車を襲った哀れな盗賊達


 俺達は誇り高き盗賊。

 名の知れたカリスマ的な、凶悪盗賊だ。



 …しめしめ、今日のカモがやって来た。

 王都から離れた道中で、毎日同じ時間にやって来る、乗り合い馬車を狙うのだ。

 俺達は口元をナプキンで巻き、いざ乗り込む。


 「キャアッッ!?」

 「何をするんだ!」


 馬車に乗る馬鹿な奴らめ。この辺に、兵など少ないんだぜ。助けを呼んだって無駄…。


 「すー…」


 俺達が暴れているのに対し、気持ち良さげに寝ている奴が居る。俺達に気付いていないのか?周りの奴らの悲鳴があっても、起きやしない。



 俺は頬を数えて百回以上はビンタした。



 何故か俺にはそこからの記憶が抜けてて、気付いた時には、仲間と牢屋の中だったのだ。

***

さーて、次の更新は9月8日の予定です。

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