12
俺の心臓に男二人組の小刀が刺さっている。奥深く。
血はドバドバ…。
「ははっ、早く死んでくれれば、そんな思いする事無かったのによ」
「馬鹿なガキだぜ、本当に」
ふっ…馬鹿か、そんな言葉、俺、言われた事は無いな。初めて言われ…あっ、違った。誰かに言われた事があったような?
まあ、今はどうでもいい話だ。
『パリーン!』
男二人組は窓を割り、外へと飛び出して行った。あの二人組に俺の血を付けて。
「《超回復》」
俺、HPが∞だった。痛いだけで死なない。嫌な身体をしてるよ、本当。痛みも無いのが最良なんだがな…。
なので、気絶する事なく、血が滅茶出続けていた。痛いけど。
《超回復》にて、心臓等の内臓の損傷を全て治し、元気な身体に戻った。
よし…男二人組を追い掛けるか。
そのまま行くのは流石に不味いよな。窓は割られ、家具などは荒らされている。それに、俺の血が広がっている。
汚い。人の家に居候させて貰っている身として、物凄く申し訳ない。
「《広範囲・修復》《清掃》」
二つの無属性の魔法を掛ける。
家具などを《広範囲・修復》で修復し、俺の血は《清掃》で綺麗にした。
これで、心置き無く追い掛けられるな。
***
男二人組は王都から少し離れた場所に逃げていた。
「しめしめ、金品財宝は手に入れた」
「なあ、」
「何だ?」
「この魔剣…さっきよりも、重いんだが?気のせいか?」
「…確かに重いな?」
「見付けた」
男二人組は「見付けた」の声に悪寒がし、後ろを振り向いた。先程に聞いた覚えが多少ある声に。
「な、何故…」
「お前、死んだ筈じゃ…」
男二人組の後ろに立っていたのは、殺した筈のアヴィルだった。
***
少し進みすぎた時を戻し、俺がメルヴェルの自宅から出た所から話を始めよう。
「《血図》」
この魔法は闇属性の魔法で、俺が日本に転移する前に造っていた魔法。自分の血が付いたものを探し当てる魔法である。
男二人組には俺の返り血が付いている。探すのには、この魔法がもってこいであろう。
と言うか、この魔法を発動するために、態々、小刀でザクザク刺されてやったんだから。
場所が解った所で…。
「《瞬間移動》」
いやー、本当に便利だわ、魔法って。
男二人組は、奪っていった金品について何か話している。【魔剣ヴィヴァロ】を持ったりしながら…。
まあ、見付けたんだから、お決まりの言葉位、良いだろう。
「見付けた」
男二人組に気付いて貰わなくちゃ。
俺の声に反応して、男二人組は後ろを振り向いた。それは、それは、幽霊を見たみたいに青筋たてて、震えている。
俺は幽霊でも亡霊でも無ければ、死霊でも無いんだから。歴とした人間なんだから。酷いわー…。
「ひ、火の精霊よ、わ、我に力を!《火傷》!」
「み、水の精霊よ、わ、我に力を!《低温火傷》!」
俺に向かってそれぞれ、火属性魔法の《火傷》、水属性魔法の《低温火傷》を放った。
直撃したが、それといって火傷とかは無い。無傷。俺には無意味。
「な、何で効いていないんだぁっ!?」
「お、お前、人間かよ!?」
所で、魔法師と言われる人のレベルは100以上。つまり、多分魔法師であろう、男二人組の魔法の威力は、一般市民にとって脅威である。
余談はここまでにして、酷い言われようである。
「俺は歴とした人間だ」
明らかに人間以外のものを見るような目で見ていやがる…。
「お、俺達はなぁ!」
「悪魔様が憑いているんだぁ!」
…何を言ってんだ、こいつら。
「…!?」
俺は驚いた。先程よりも、男二人組の魔力が格段に上がっている事に。そして、周りの空気に漂う魔力が汚染されつつある事に。
「あ~あ、早く死んどけば、こんな事する必要は無かったのによぉ~」
「ガキはガキらしく、五月蝿くしなければ済んだのにな?残念だ」
力に溺れる男二人組。
立場が逆転した途端に、調子に乗っている。俺としては、逆転したとは認めないが。
「ん、何だ?急に黙り込んだか?」
「いっそ、首を斬るか」
「名案だな。魔王様に献上する生首にしよう」
「賛成♪」
男二人組は俺の首を斬ろうとしている。
俺の生首は、魔王に献上…か。
「何か良い刃物はねぇか?」
「そうだな…この魔剣はどうだ?」
俺の首を斬る為に男二人組の盗品の中から引っ張って来たのは、【魔剣ヴィヴァロ】だった。
重そうに引き摺りながら。
「お前らに、その剣を振る事が出来るのか?」
聞いてみた。斬られるまでに、十分な程の余裕があったからだ。
「何だとぉ?」
「重くて、持てないんだろう?」
「ははっ…持てないなら、こうすれば良い!彼の者の身体を高めたまえ!《身体強化》!」
【魔剣ヴィヴァロ】を持っている方の男は、無属性魔法の《身体強化》を使い、短時間だけ身体を強化した。
しかし、重たい【魔剣ヴィヴァロ】が持ち上がらなかった。
「な、何故だ!?」
俺は考えた。
【魔剣ヴィヴァロ】は、身体ではなく、魔力の方をもっと強化する必要があるのではないかと。
男二人組はその考えに、いつまで経っても至らなかった。
終いに、【魔剣ヴィヴァロ】を放り投げた。
ああ…俺の得物よ。
「闇の精霊よ、我に力を!《呪殺》!死ねェェッッ!!」
闇属性魔法の《呪殺》。苦しみを与えて終いに死をもたらす魔法である。
俺はその魔法を直撃してみせた。
こういった類いの魔法を無効化する対抗魔法がある。そう、光属性の――。
「《浄化》」
これは、毒や呪い等を消す専用の対抗魔法。使える人はそうそう居ない。
一応、俺のオリジナルではない事だけ言っておく。
「苦しめ、苦しめ…ん?魔法が効いてないだと!?」
「悪魔様に貰った力に闇属性の魔法は威力を増す筈…」
俺が《浄化》を使って消したのを、気付いていない様だ。
少し面白いから、煽ってみるか。
「お前らは本当に馬鹿だな」
「アアッッ!?」
「死ねェェッッ!!」
「俺に死ね?俺が死ぬ?いや、違うな。死ぬのは、お前らだ」
男二人組は怒り狂いながら、拳を握り、襲い掛かってきた。
今更ながら、魔法師かも知れない男二人組は、自棄に物理攻撃が多いな。
「《雷撃》」
魔力を多めに込めて、男二人組に放った。
「「ガアアアアッッ!!??」」
……。
一時の静寂が起こる。
男二人組は息絶えていた。絶命したのだ。
「本当に馬鹿な奴らだ…《腐敗阻止》」
男二人組の死体が腐るのを抑える為に《腐敗阻止》を使った。
…。
「誰か居るのか?出てこいよ」
俺はずっと、他者の視線を感じ取っていた。それも、この場所に来てから。
だが、どの方位に居るのかは解らなかった。
「フフフ…キミ、本当に人間ですか?」
後ろの方から男性の声がした。
直ぐに俺は振り向いた。
「誰だ」
「ボクですか?」
「お前以外に誰が居るんだ」
「先程の男二人組の言っていた悪魔様ですよ」
死んだ男二人組の言っていた悪魔が何故…ここに?
少し殺気でも帯びながら、睨むとする。
「キミ、良いカオしてますね~。イイ感じにゾクゾクしてきます」
悪魔とやらが、何か興奮しだした。気味が悪いのと、気持ち悪いのが共存している。
突然、悪魔が手を鳴らし、こう言った。
「そうです、ボクの眷属となりませんか?キミ」
はい…?
「これ程、光栄な事は無いです!魔王様直属のボクの眷属ですからね」
眷属??
「何を言っているんだ、お前は」
「人間と言うのは、強い力を欲する生き物なのではないんですか?現に先程の男二人組はそうでしたよ?眷属になれば、強い力が手に入るんですよ?」
強い、力。
今、十分と言っても過言ではない俺にとっては、力を欲する欲など無い。
「眷属になるだったか?断固として断る」
俺には必要無い。
「そうですか…残念です」
「グフッ…!?」
悪魔は嘆き、拳で力強く腹パンしてきた。
遠くまで飛ばされた。
ああ、少し痛い。
悪魔は飛ばされた俺を追うようにして、羽を羽ばたかせながら飛んできた。
悪魔に羽と先端が尖った尻尾があった。その羽である。
「《回復》」
少し痛かった。お腹は少し赤く腫れていた。
光属性魔法の《回復》で十分治る位。
「何故ですか?キミ、死んでないんですか?」
「残念だったな、俺はまだ生きてる」
「可笑しいですね…人間はこれだけで、簡単に死んでしまう筈なんですが…」
遠回しに化物扱いされているような…?
「実に面白いですね、キミは」
何が面白いんだか…。
「キミを魔王様に献上すれば、きっとお喜びになられるでしょう!」
「俺を献上?」
「ええ、キミの死体をです」
成る程…この悪魔とやらは、俺を殺す気であるのか。
「残念だったな悪魔。俺はまだ、死ぬつもりは更々無いんでな」
「そうですか、仕方ないですね。強行突破としましょうか…ね!」
また悪魔は、俺を遠くまで飛ばした。無論、拳で。
この悪魔も、男二人組の様に物理攻撃をするな…。
先程よりも強く力を込められていた。
「あー、いててて…(棒読み)」
でも、まだ、軽い内出血程度。
「まーだ、死なないんですか?わざとらしい、声を張上げて…余裕なんですか?」
「少しだけだが、本当に痛かったんだが?」
「冗談を言う前に、キミも反撃したらどうですか?」
反撃しろ…か。反撃しろと言うなら、仕方ないな。
「じゃあ、死んでくれよ。《雷撃》」
「そんな魔法でこのボクが死ぬとお思いで?」
弱めの電気から徐々に強くしていきます。
「どうだろうな?」
「…っ!?」
どんどん強くなり、悪魔の髪の毛がチリチリになり始めた。
「まだまだだな」
「ええ、これ位で死にませんよ」
「体力の消費が激しい様に見えるが?」
「そんなことは…ありませんよ」
しぶとく生きているな。
「ガハッ…!」
悪魔は血を吐き出した。
「もう少しで死ぬな、悪魔。最後に言って置きたい事があるなら、聞いてやる。命乞い以外でな」
「フフフ…キミは…優しすぎますよ…。それに…ボクは…悪魔ではありませんよ…」
何を言っていやがる、コイツ。死に間際に不思議な事を言いやがる。
「ボクは…イステア。ボクを…殺すキミは…何て名前…なんですか…?それと…ボクは…魔族です…」
悪魔では無く、魔族か…魔族は何処かで聞いたことがあるような、無いような気がする。
イステアと名乗ったその魔族の奴は、俺の名前を聞いてきた癖に、応える前に息絶えた。
「まあ、お前に名乗る名など、無いんだがな」
俺は男二人組の死体のある所まで、イステアの死体を持ちながら移動し、放り投げた。
盗品などだけ、持ち帰る。勿論、【魔剣ヴィヴァロ】も。
俺の背中には朝焼けが射し込めていた。
さあ、メルヴェルの自宅へ帰ろうか。
ここまで読んでくださり有り難うございます。
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次の更新は8月28日の予定です。




