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 俺の心臓に男二人組の小刀(ナイフ)が刺さっている。奥深く。

 血はドバドバ…。


 「ははっ、早く死んでくれれば、そんな思いする事無かったのによ」

 「馬鹿なガキだぜ、本当に」


 ふっ…馬鹿か、そんな言葉、俺、言われた事は無いな。初めて言われ…あっ、違った。誰かに言われた事があったような?

 まあ、今はどうでもいい話だ。


 『パリーン!』


 男二人組は窓を割り、外へと飛び出して行った。あの二人組に俺の血を付けて。


 「《超回復》」


 俺、HPが∞だった。痛いだけで死なない。嫌な身体をしてるよ、本当。痛みも無いのが最良なんだがな…。

 なので、気絶する事なく、血が滅茶出続けていた。痛いけど。

 《超回復》にて、心臓等の内臓の損傷を全て治し、元気な身体に戻った。



 よし…男二人組を追い掛けるか。

 そのまま行くのは流石に不味いよな。窓は割られ、家具などは荒らされている。それに、俺の血が広がっている。

 汚い。人の家に居候させて貰っている身として、物凄く申し訳ない。


 「《広範囲・修復》《清掃》」


 二つの無属性の魔法を掛ける。

 家具などを《広範囲・修復》で修復し、俺の血は《清掃》で綺麗にした。

 これで、心置き無く追い掛けられるな。

***

 男二人組は王都から少し離れた場所に逃げていた。


 「しめしめ、金品財宝は手に入れた」

 「なあ、」

 「何だ?」

 「この魔剣…さっきよりも、重いんだが?気のせいか?」

 「…確かに重いな?」

 「見付けた」


 男二人組は「見付けた」の声に悪寒がし、後ろを振り向いた。先程に聞いた覚えが多少ある声に。


 「な、何故…」

 「お前、死んだ筈じゃ…」


 男二人組の後ろに立っていたのは、殺した筈のアヴィルだった。

***

 少し進みすぎた時を戻し、俺がメルヴェルの自宅から出た所から話を始めよう。


 「《血図(ちず)》」


 この魔法は闇属性の魔法で、俺が日本に転移する前に造っていた魔法。自分の血が付いたものを探し当てる魔法である。

 男二人組には俺の返り血が付いている。探すのには、この魔法がもってこいであろう。

 と言うか、この魔法を発動するために、態々(わざわざ)小刀(ナイフ)でザクザク刺されてやったんだから。



 場所が解った所で…。


 「《瞬間移動》」


 いやー、本当に便利だわ、魔法って。


 男二人組は、奪っていった金品について何か話している。【魔剣ヴィヴァロ】を持ったりしながら…。

 まあ、見付けたんだから、お決まりの言葉位、良いだろう。


 「見付けた」


 男二人組に気付いて貰わなくちゃ。

 俺の声に反応して、男二人組は後ろを振り向いた。それは、それは、幽霊を見たみたいに青筋たてて、震えている。

 俺は幽霊でも亡霊でも無ければ、死霊でも無いんだから。歴とした人間なんだから。酷いわー…。


 「ひ、火の精霊よ、わ、我に力を!《火傷》!」

 「み、水の精霊よ、わ、我に力を!《低温火傷》!」


 俺に向かってそれぞれ、火属性魔法の《火傷》、水属性魔法の《低温火傷》を放った。

 直撃したが、それといって火傷とかは無い。無傷。俺には無意味。


 「な、何で効いていないんだぁっ!?」

 「お、お前、人間かよ!?」


 所で、魔法師と言われる人のレベルは100以上。つまり、多分魔法師であろう、男二人組の魔法の威力は、一般市民にとって脅威である。

 余談はここまでにして、酷い言われようである。


 「俺は(れっき)とした人間だ」


 明らかに人間以外のものを見るような目で見ていやがる…。


 「お、俺達はなぁ!」

 「悪魔様が憑いているんだぁ!」


 …何を言ってんだ、こいつら。


 「…!?」


 俺は驚いた。先程よりも、男二人組の魔力が格段に上がっている事に。そして、周りの空気に漂う魔力が汚染されつつある事に。


 「あ~あ、早く死んどけば、こんな事する必要は無かったのによぉ~」

 「ガキはガキらしく、五月蝿くしなければ済んだのにな?残念だ」


 力に溺れる男二人組。

 立場が逆転した途端に、調子に乗っている。俺としては、逆転したとは認めないが。


 「ん、何だ?急に黙り込んだか?」

 「いっそ、首を斬るか」

 「名案だな。魔王様に献上する生首にしよう」

 「賛成♪」


 男二人組は俺の首を斬ろうとしている。

 俺の生首は、魔王に献上…か。


 「何か良い刃物はねぇか?」

 「そうだな…この魔剣はどうだ?」


 俺の首を斬る為に男二人組の盗品の中から引っ張って来たのは、【魔剣ヴィヴァロ】だった。

 重そうに引き摺りながら。


 「お前らに、その剣を振る事が出来るのか?」


 聞いてみた。斬られるまでに、十分な程の余裕があったからだ。


 「何だとぉ?」

 「重くて、持てないんだろう?」

 「ははっ…持てないなら、こうすれば良い!彼の者の身体を高めたまえ!《身体強化》!」


 【魔剣ヴィヴァロ】を持っている方の男は、無属性魔法の《身体強化》を使い、短時間だけ身体を強化した。

 しかし、重たい【魔剣ヴィヴァロ】が持ち上がらなかった。


 「な、何故だ!?」


 俺は考えた。

 【魔剣ヴィヴァロ】は、身体ではなく、魔力の方をもっと強化する必要があるのではないかと。

 男二人組はその考えに、いつまで経っても至らなかった。

 終いに、【魔剣ヴィヴァロ】を放り投げた。

 ああ…俺の得物(玩具)よ。


 「闇の精霊よ、我に力を!《呪殺》!死ねェェッッ!!」


 闇属性魔法の《呪殺》。苦しみを与えて終いに死をもたらす魔法(呪い)である。



 俺はその魔法を直撃してみせた。

 こういった類いの魔法を無効化する対抗魔法がある。そう、光属性の――。


 「《浄化》」


 これは、毒や呪い等を消す専用の対抗魔法。使える人はそうそう居ない。

 一応、俺のオリジナルではない事だけ言っておく。


 「苦しめ、苦しめ…ん?魔法が効いてないだと!?」

 「悪魔様に貰った力に闇属性の魔法は威力を増す筈…」


 俺が《浄化》を使って消したのを、気付いていない様だ。

 少し面白いから、煽ってみるか。


 「お前らは本当に馬鹿だな」

 「アアッッ!?」

 「死ねェェッッ!!」

 「俺に死ね?俺が死ぬ?いや、違うな。死ぬのは、お前らだ」


 男二人組は怒り狂いながら、拳を握り、襲い掛かってきた。

 今更ながら、魔法師かも知れない男二人組は、自棄に物理攻撃が多いな。


 「《雷撃》」


 魔力を多めに込めて、男二人組に放った。


 「「ガアアアアッッ!!??」」



 ……。



 一時(ひととき)の静寂が起こる。

 男二人組は息絶えていた。絶命したのだ。


 「本当に馬鹿な奴らだ…《腐敗阻止》」


 男二人組の死体が腐るのを抑える為に《腐敗阻止》を使った。

 …。


 「誰か居るのか?出てこいよ」


 俺はずっと、他者の視線を感じ取っていた。それも、この場所に来てから。

 だが、どの方位に居るのかは解らなかった。


 「フフフ…キミ、本当に人間ですか?」


 後ろの方から男性の声がした。

 直ぐに俺は振り向いた。


 「誰だ」

 「ボクですか?」

 「お前以外に誰が居るんだ」

 「先程の男二人組の言っていた悪魔様ですよ」


 死んだ男二人組の言っていた悪魔が何故…ここに?

 少し殺気でも帯びながら、睨むとする。


 「キミ、良いカオしてますね~。イイ感じにゾクゾクしてきます」


 悪魔とやらが、何か興奮しだした。気味が悪いのと、気持ち悪いのが共存している。

 突然、悪魔が手を鳴らし、こう言った。


 「そうです、ボクの眷属となりませんか?キミ」


 はい…?


 「これ程、光栄な事は無いです!魔王様直属のボクの眷属ですからね」


 眷属??


 「何を言っているんだ、お前は」

 「人間と言うのは、強い力を欲する生き物なのではないんですか?現に先程の男二人組はそうでしたよ?眷属になれば、強い力が手に入るんですよ?」


 強い、力。

 今、十分と言っても過言ではない俺にとっては、力を欲する欲など無い。


 「眷属になるだったか?断固として断る」


 俺には必要無い。


 「そうですか…残念です」

 「グフッ…!?」


 悪魔は嘆き、拳で力強く腹パンしてきた。



 遠くまで飛ばされた。

 ああ、少し痛い。

 悪魔は飛ばされた俺を追うようにして、羽を羽ばたかせながら飛んできた。

 悪魔に羽と先端が尖った尻尾があった。その羽である。


 「《回復》」


 少し痛かった。お腹は少し赤く腫れていた。

 光属性魔法の《回復》で十分治る位。


 「何故ですか?キミ、死んでないんですか?」

 「残念だったな、俺はまだ生きてる」

 「可笑しいですね…人間はこれだけで、簡単に死んでしまう筈なんですが…」


 遠回しに化物扱いされているような…?


 「実に面白いですね、キミは」


 何が面白いんだか…。


 「キミを魔王様に献上すれば、きっとお喜びになられるでしょう!」

 「俺を献上?」

 「ええ、キミの死体をです」


 成る程…この悪魔とやらは、俺を殺す気であるのか。


 「残念だったな悪魔。俺はまだ、死ぬつもりは更々無いんでな」

 「そうですか、仕方ないですね。強行突破としましょうか…ね!」


 また悪魔は、俺を遠くまで飛ばした。無論、拳で。

 この悪魔も、男二人組の様に物理攻撃をするな…。

 先程よりも強く力を込められていた。


 「あー、いててて…(棒読み)」


 でも、まだ、軽い内出血程度。


 「まーだ、死なないんですか?わざとらしい、声を張上げて…余裕なんですか?」

 「少しだけだが、本当に痛かったんだが?」

 「冗談を言う前に、キミも反撃したらどうですか?」


 反撃しろ…か。反撃しろと言うなら、仕方ないな。


 「じゃあ、死んでくれよ。《雷撃》」

 「そんな魔法でこのボクが死ぬとお思いで?」


 弱めの電気から徐々に強くしていきます。


 「どうだろうな?」

 「…っ!?」


 どんどん強くなり、悪魔の髪の毛がチリチリになり始めた。


 「まだまだだな」

 「ええ、これ位で死にませんよ」

 「体力の消費が激しい様に見えるが?」

 「そんなことは…ありませんよ」

 しぶとく生きているな。

 「ガハッ…!」


 悪魔は血を吐き出した。


 「もう少しで死ぬな、悪魔。最後に言って置きたい事があるなら、聞いてやる。命乞い以外でな」

 「フフフ…キミは…優しすぎますよ…。それに…ボクは…悪魔ではありませんよ…」


 何を言っていやがる、コイツ。死に間際に不思議な事を言いやがる。


 「ボクは…イステア。ボクを…殺すキミは…何て名前…なんですか…?それと…ボクは…魔族です…」


 悪魔では無く、魔族か…魔族は何処かで聞いたことがあるような、無いような気がする。

 イステアと名乗ったその魔族の奴は、俺の名前を聞いてきた癖に、応える前に息絶えた。


 「まあ、お前に名乗る名など、無いんだがな」


 俺は男二人組の死体のある所まで、イステアの死体を持ちながら移動し、放り投げた。



 盗品などだけ、持ち帰る。勿論、【魔剣ヴィヴァロ】も。

 俺の背中には朝焼けが射し込めていた。

 さあ、メルヴェルの自宅へ帰ろうか。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。

***

次の更新は8月28日の予定です。

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