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朝、いつも通りに起き、一階へと降りた。
「おはようございます、団長殿」
俺よりも早く起きていたメルヴェルが、俺の気持ち良い朝を迎えさせてくれる。有り難い。
「おはよう」
俺は挨拶を返した。メルヴェルはとても、嬉しそうだった。
「朝食は既に出来ています。朝食を御一緒出来ないのは悔やんでおりますが、私はもうじき、王城に行かなければなりませんので、失礼させていただきますね」
「そっか、行ってらっしゃい」
「はい!」
元気にメルヴェルは返事を返していた。
そして、メルヴェルは行ってしまった。次、会えるのはいつ頃になるんだろうか。
メルヴェルの作る最高に美味しい料理を一人で味わって食べた。
俺が日本に居た頃に食べていた料理が最悪だったのが、今じゃ、全然思えないな。毎日、カップ麺・冷凍食品の俺が、人に作って貰った料理だもんな…。
よし、今日は何をしようか。
『DONDON!』
手を頭の上で組んで伸びていたら、ノックする音が聞こえた。
アレドラントが初めて料理しに来た時も、ノックしてたな…アレドラントかな?
ドアを開けてみた。
「…どちら様ですか?」
知らない人が居た。
魔法師団の制服を着た男二人組だった。
「ここは、メルヴェル殿の御自宅だろう?男なんて居たか?」
「情報に無いな…」
二人組は俺が居る事も気にせずに話を進める。
「聞いても良いか?少年」
この世界で五十年前の人に少年ね…。実際、精神年齢も十八歳だし、良いとしましょう。
「何だ?」
「ここはメルヴェル殿の御自宅で間違いは無いか?」
「本当の事を喋れよ。真偽は偽れないんだからよ、俺達の前では」
この男の言っている事は確かだ。
日本で言う、嘘発見器みたいな魔法かこの世に存在しているからである。
嘘なんて直ぐにバレるから、嘘は言わない方が良いと、注告してくれたんだな。優しい。
「メルヴェルの自宅で間違いは無い」
男二人組は其々の顔を見詰めている。
「…少年は真実しか言っていない」
「だとしてもよ、何故、ここに少年が居るのだ?」
「俺にもわかんねーよ…」
また男二人だけで話が進み出した。
聞きたい事があるなら、目の前に居る俺に直接、聞いたらどうなんだろうか?
「あー、用がないなら、帰れ」
俺がそう言うと、男二人はこちらを見て、こう言った。
「用がない訳では無いんだ。だが…」
「ちょっと、少年にはキツすぎると言うかだな…」
俺には言えないってのかい?
むー…。
「しょうがない、また後で伺わせて貰う」
「そうだな」
「後とはどれくらいなんだ?」
取り敢えず、聞いといてやろう。
「えーと…今夜位だな」
そうか、今夜か。
「メルヴェルは帰ってこないぞ。日を改めるか、王城にまで行くかするべきだな」
「少年、情報を有り難う」
情報?
「礼を言う」
男二人組は去っていった。
何だったんだ?
ま、いっか。気にする事ないだろう。
俺はドアを閉め、ダイニングへと戻った。
…本当に毎日、暇だな。
魔法を極めるとしても、既に極めきった様なものだしな。
久し振りに剣でも振ってみるか?ああ…懐かしいな。剣と言ったら、幼少期を思い出すよ。家族との思い出って奴。
あ、剣は持っていなかったっけ…。
王都の街に剣位は、売っているだろう。…木剣で十分なのだが。
よし、買いに行くか!
昨日、買った服に手や足を通し、いざ出発!
剣を売っている所は何処かな?
武器屋…武器屋…おっ?ここかな?何かそれっぽいし。
「らっしゃい!」
店内に入ると、店主らしき人が声を掛けてきた。
「んー?兄ちゃん、魔法使いか?」
店主らしき人は話を進める。
「あー、まあ、そうだな。何故、判った?」
俺は魔法師なのだが、敢えてここはそのまま魔法使いと言う事にしておこう。
「兄ちゃんみたいなヒョロヒョロな体型に、肌白…剣士や騎士様みたくは無いからな。あと、聖職者だとしても、口が悪い!」
店主は笑顔。とても、話を楽しんでおられる…。
ヒョロヒョロで肌白か…。
人を見た目で判断するのは良くないと思うが…。
「そんな兄ちゃん、何故この店に来たんだ?」
本題入りまーす。
「最近、暇でな」
「おう」
相槌打ってくれる…!感激!じゃなくて…。
「剣をやろうかなと思ったわけだ」
「そうかそうか。諦めな、兄ちゃん」
「何故?」
「ここの剣はお遊びの剣は売ってねぇ」
ちっ…まあ、そうだわな。魔法使いや魔法師が剣をやるのは、式典か遊びの時位だもんな。
因みに遊びに使う剣は豪華な装飾が付いてる。俺が望んだお遊びの剣は質素な奴で良いんだけどね。
とは言え、俺の最初で最後(今のところ)の得物は、実家にあるんだよな…暇潰しの為に、そこまで遠出しなくちゃならんのですか…?
その為にそこまで行くのは嫌だ。
「兄ちゃん、その剣を見たって、重すぎて持てないだろう?」
目線をずらして見ていた先にある剣の事を店主は指している。
「持ってみても良いか?」
「別に持ってみても構わない。持てなきゃ、意味ねぇぞ」
ん?意外と軽いな。楽々持てる。重すぎるにしちゃ、軽すぎんだろ、コレ…。
「な!?何故、【魔剣ヴィヴァロ】が持てるんだ!?」
この剣、【魔剣ヴィヴァロ】と言うのか。へー…。
「この剣はなぁ、騎士様でさえ、持てない程の凄い剣なんだ!それを…兄ちゃん、何者だ!?」
そこまで凄いのか?この剣。
「魔法使いの兄ちゃん、剣はやっていたのか?」
「五歳位まで、数ヶ月に一回程度、習ってたな…」
「数ヶ月に…一回?それも、五歳位まで?それで…兄ちゃん、気に入った!その【魔剣ヴィヴァロ】を持っていきな!」
「…幾ら?」
「幾らぁ?金なんて要らねぇよ!兄ちゃん、次の来店、待ってるからよ!」
何故か暮れた。
俺は【魔剣ヴィヴァロ】を持って、武器屋を出た。
…そう言えば、魔剣って何だっけ?まあ、いっか。
***
メルヴェルSide
「…自我を持った魔獣を“魔族”と言うのか?」
「はい、過去の古い文献に載っていました」
私は昨日、団長殿が話した内容について、報告した。
それから、副団長のアレドラントなどその他の有力者に話した。
そのかいあって、私達はある仮説をたて、古い文献で調べ、色んな事が解ってきた。
それは、自我を持ち、人語を話す魔獣を魔族と言う事。そして、魔族は魔獣に比べられない程、強いと言う事。魔族全ては魔王が創ったって事。
過去に同じ境遇にあったと言う事なんだろう。この国が。
…団長殿に報告しなくては。
「本当に魔王が活発に動き始めているんですね…」
アレドラントが発言した。
魔王が魔獣、魔族を創り出す。活発に動き始めたのは、魔族を創り出したのが証拠となる。
「短期間で勇者達をより強くしなくてはならないな」
私はそう言った。
「ええ、そうですな」
ガードラーレさんが、頷きながら応えた。
魔王がもっと、力を付ける前に倒さないと…この国が滅亡してしまう。
団長殿も魔王討伐にご協力を願いたいが…。勇者達が今の望みである。
そして、その考えは、満場一致だと思われた。
***
【魔剣ヴィヴァロ】を丘の上で振り続けている俺である。
この、白と黒を調和するような灰色の魔剣は、一体、どんな魔剣なんだか。
…懐かしい思い出が蘇ってきた。
母親と弟と一緒に剣を振り回す思い出が。
元気にしているだろうか、俺の家族は。
王都に出てきたのが、七歳の頃だった。魔法師団に入る前まで年に一回以上、帰省していたが、魔法師団入団後、それきりだ。
近頃、実家に帰っても良いだろう。と言っても、年相応の顔をしていない俺だしな…これを、どう説明する?年相応の両親だったら、ひっくり反ってそのまま…。弟は…まあ、大丈夫な気がする。
うーん…。
行きたくなったら、行こう。
そして、俺はまた、魔剣を振り続ける。
夕暮れ、メルヴェルの自宅に帰った俺は仮眠をとる。あれから、ずっと魔剣を振っていて、疲れたんだろう。
お休み…。
「本当にメルヴェル殿が帰ってない」
「しめしめ、金品財宝掻っ払うぞ!」
俺が仮眠をし始めてから、およそ一時間後位経った頃。男二人の話し声が聞こえてきて、目が覚めた。
侵入者か?当分、俺は寝た振りをする事にした。
「朝の少年か…?」
「寝てるなら、そのままにしておけ。時間を無駄にするな」
「わかってる」
朝の少年…と言う事は、朝に来た男二人組か。魔法師団の制服を着た。
「気持ち良く、寝てるな」
「速くしろ」
「おう」
男二人組は階段を降り、一階に行った。
付いていくか。
寝た振りを止め、バレないように静かに付いていった。
「おっ?これなんか、良いやつじゃね?」
「魔剣か…凄そうだな」
男二人組が手に取った魔剣…俺が今日、手に入れた【魔剣ヴィヴァロ】だな。仮眠前にダイニングで放り投げてた魔剣。
「この水晶も貰ってくか」
「そうだな」
俺が自分用に創った水晶。魔法師団の本部にある水晶よりも、パワーアップしている。今はオブジェ化している水晶。
いつ、どのタイミングで出るべきか…。
「おっ?やっぱあるじゃん、カネ♪」
「よく見つけた!」
ん?その、袋に入ったお金…メルヴェルから貰った俺の小遣い!
次第に、メルヴェルの自宅が荒らされていく。
我慢出来ねぇ…よくも、俺の小遣いとメルヴェルの自宅を…逃げる前に取っ捕まえる!
「意外と沢山、入ってんじゃん」
「おい、後ろ…」
「何だよ」
「後ろ!」
「あっ…朝の少年」
殺気立てて、男二人組の後ろに入り込んでいった。
「お前ら、こんな所で何をしてんだ?」
「こ、こんな所って…まあ、少年には口封じと言う事で、逝ってもらうぜ!」
「俺達を知ってしまったんだ、社会勉強だ、社会勉強」
男二人組はそれぞれ、小刀で俺を切り付けようとしている。
これって、男二人組は俺を殺そうとしているんだよな?なら、殺しても、正当防衛だよな?
男二人組の最初の攻撃を華麗に避けた。
「すばしっこいガキだな?」
「早く死ねば、痛い思いなんてしなくて済むのによ、馬鹿なガキだ」
「馬鹿はお前らだ」
「「ああっっ!!??」」
男二人組は、俺に攻撃を仕掛ける。
俺はその攻撃を、態々、当たりに行った。
そして、攻撃が直撃した。
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次の更新は8月25日の予定です。




