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「美味っ!」
王都ブラブラ中の俺は、王都にある定食屋で出された料理を頬張っていた。
もう、手が止まらねー。久し振りに昼御飯を食べた気分…。気分ではなく、本当かも知れないが。
「美味そうに食ってくれるじゃねーか、坊主!」
店主らしき男性が、俺の髪をぐしゃぐしゃした。撫でたとも言うが、どちらかと言うと、だ。
「美味しいからしょうがないだろう?」
やっぱ、店の味。やっぱ、たまには良いよね。
「嬉しい事を言ってくれる!…坊主、金色のドラゴンが王都に出てきた時に、ドラゴンの目の前に居た坊主だろ?大丈夫だったのか?」
金色のドラゴン…ああ、三日程前の夜に、出現したドラゴンか!まさかとは思うが…。
「あれ?俺に「逃げろ」って言ってたか?」
「ああ、俺が言ったな」
あの時の…無視してすみませんでしたね。一応、心配してくれたのに。
「金色のドラゴン、倒す為に逃げなかったな」
「…はははっ!嘘ならもっと、ましな嘘をつきやがれ、坊主!」
事実っす。信じてくれないなら、それまでの実力しか無かった事だな…うん、違うな。
「んで、結局の所、誰が坊主を助けてくれたんだ?魔法師団の方達か?近衛騎士団の方達か?」
「魔法師…団?」
自分だけど、魔法師団で合ってる筈、一応。自分自身が魔法師団の団長ですから!
「あんなに強いドラゴンだ。近衛騎士より強い魔法師団の魔法師じゃないと、倒せないよな!」
「魔法師団って、そんなに強いのか?」
「そりゃそうだろ」
えー…?そう、決め付けなくてもさー…近衛騎士団の人達が可哀想じゃん?
「じゃあ、魔法師団の魔法師の中で誰が一番、強いんだろう?」
「そりゃ、副団長になった奴だろ?魔法師団の最高峰ってやつさ」
…あれ?一番強いのって、アレドラントなの?
「副団長が?団長じゃねーのか?」
「団長だぁ?誰がどう、足掻いても団長にはなれっこないぜ?」
何かこの話をしていると、次第に心が病んでくるって言うか何て言うか…。
「まさか…坊主、Jobは剣士なのか?」
失礼な、剣士ではなく、魔法師だわ。何処が、剣士に見える!?それに、俺、魔法師団の団長だぞ?どう、足掻いてもなれない、魔法師団の団長!くそぅ…。
「魔法師だよ…」
「坊主…嘘は良くねぇって、言ってるよな?」
嘘はついてねーよ!?俺、そんなに魔法師に見えないのか!?
店主が何か俺に呆れている。何で!?
物凄く、気不味いような空気になりつつも、料理は完食し、店を出た。また来る、と言って。
殆どの飲食店は先払であると、供述しておく。
いやー、美味しかったけど、凄い気不味かったな…。
まだ、お昼過ぎ。王都をブラブラするのを、再開するとしましょうか。少し、気分も晴らしながら。
本屋らしき店舗を見付け、入店してみた。
本…か。俺が書いた魔法書、全巻売ってないかな?
俺がもしも、自分の自宅が手に戻って来たら、必要無いと言うか、勿体無い。買わなくても良いって訳だ。
俺は自分が書いた魔法書を探す手を止め、ある本を見付けた。
これ、買ってみよう。
その本は、俺の魔法書にある魔法を使える様にする為の指南書である。要は、魔法書の魔法を要約して誰にでも使える様に簡単にした魔法書と言うこと。
間違いとかあるかも知れないと思い、面白半分で購入した。
魔法書は高いが、俺が買った指南書は比較的安い。
早速、メルヴェルの自宅に帰って、間違い探しに没頭しますか!
これにて、王都ブラブラは昼ちょっと過ぎに終了した。
***
メルヴェルSide
昼過ぎ。
私は今日も、召喚された勇者達の訓練を手伝っている。
昼前にダンジョンから帰ってきた勇者パーティーの一つが、とんでもない物を持って帰ってきた。
それは、団長殿かも知れない魔力波動が魔法痕跡に残っている魔獣。その魔獣に団長殿が魔法を使った証拠が残っている事が、私にとってとんでもない物である。
ああ、私が知らない間に、団長殿、貴方はダンジョンに潜っていたんですね…。
ですが、ちゃんと確認をしておかないと。団長殿が攻略していたのかどうか。
うふふ…今夜は寝させませんよ、団長殿…。
「あっ、メルヴェル殿!」
ちっ…私の思考に団長殿以外の邪魔者が乱入したか。
今の魔法師団副団長アレドラント・ミレファームに、声を掛けられた。
私はこの副団長に最近、良い印象は持っていない。団長殿に喧嘩を吹き掛けた馬鹿で愚か者であるから。そして、とても短気であるな、とも感じられるから。
上に立つ者が荒々しくて、どうする。
本当に不満しかない相手である。
「何だ、副団長」
「今日の夕食ですが、作りに行けません」
これは、私が勝手ながら罰として団長殿のお食事を作らせている。
泊まり込みで勇者達の力を強くする為に帰れず、団長殿にお食事を作れない私は、仕方無く命令を下した。
副団長が作りに行けないのは、勇者達との会食の為であると知っているし、前日に代わりを派遣すると言った筈だが、こうして報告に来るのは、評価する。
だけど、私は今日、会食を不参加で団長殿に会いに行くので、代わりには行かなくて良いと言ってある。
確か、まだ、副団長には言ってなかったな。
「今日の会食は、私は不参加する事にした。今日の夕食と明日の朝食は作りに行くとかの心配はしなくて良い」
「分かりました、失礼させて頂きます」
散ってくれた。
ふ~…私自身の思考回路を全て団長殿にして…。
「メルヴェル様!」
また、邪魔者…。
今度は勇者の内の一人の女子。この女子の所属するパーティーが、団長殿の魔力波動の残っているダンジョンボスの死体を持って帰ってきた。
えっと…確か、ナナ=シラトリだったか?
「あの、《広範囲・回復》が出来るようになったので、見てください!」
光属性魔法であり、《回復》の広範囲バージョンである《広範囲・回復》が出来るようになったのか。まだまだこれからだと思うが、光属性の使い手として、少し見込みはある。
「それじゃあ、外で見てやろう」
私はその女子を引き連れて、外に出る。
***
はい、メルヴェルの自宅に帰ってきた俺ですが、ちゃんと間違い探しに没頭してますね。
簡単にしたらしいけど、俺の魔法書ってそんなに、難しいのかな?
そして、こう言う感じの指南書を書けば、何かとチヤホヤされるらしい。魔法師団団長に最も近いとか何とか…。
会ったかどうかも知らない様な人と近いなど言われたくは無いね。俺からすれば。
指南書の間違い探しをしていて、気付けばすっかり夜。
お腹の空く頃。
アレドラントの代わりは早く来ないもんかね…。
『がちゃり』
がちゃり…?鍵が開いた?
ああ、やっと来たんだな。
「お久し振りです、団長殿!」
年老いた女性が俺に抱き付く。
この家の持ち主、メルヴェルだ。
「メルヴェル!?勇者共と会食じゃなかったのか?」
朝、アレドラントが言ってたし。
「いえ、私はその会食を欠席してきました。団長殿、直ぐに夕食を作りますね!」
年を感じさせない、とても元気な女性だ…ではなくて、欠席?ここ最近、王宮に泊まり込みのメルヴェルが、王宮で開かれてる(多分)会食を欠席?態々、何の為に…?
「私が会食を欠席してきた理由を知りたい顔をされてますね?」
「そりゃ、気になるけど…」
「私は団長殿にお聞きしたい事がありましたので」
聞きたいこと??
逆に、聞きたいことだらけなんだが?
「最近、ダンジョンなどへ、行かれましたか?」
「へ?ダンジョン?行ったが?何かあるのか?」
聞きたいこと?これが?意外な質問だな。
「まだ人間がダンジョンボス部屋に踏み入れた事の無いダンジョンへ?」
「ああ、行ったな。暇潰しに」
あのダンジョン、人間は入った事が無いんだったよな。
それにしても、何を聞いているのだろうか、メルヴェル…。
「やはり…ダンジョンボスを倒されましたね?二匹」
「倒したが?一匹」
「えっ…?」
「ん?」
あれー?ダンジョンボスって、あの牛の様な魔獣だよな?
「ダンジョンボスは二匹では無かったのですか?」
「ダンジョンボスなら、牛みたいな魔獣だろう?」
「牛みたいな魔獣もそうですが、筋肉マッチョな、気持ち悪い人形の魔獣も居ませんでしたか?」
アイツか…?
「居たけど、その魔獣自身から、ダンジョンボスとは少し違うって言ってたな」
「少し…ですか?」
「ソイツは牛の様な魔獣を食らっていた。ソイツを倒した後に、腹をかっ割いて、牛の様な魔獣で出てきたって訳だ」
嘘ではない、よな。
「ちょっと待ってください?あの気持ち悪い人形の魔獣が言ってたんですか??」
む…反応が少し遅い!
…メルヴェルに何を望んでいるのだろうか、俺は。
「喋ったが?」
「魔獣が…喋った?」
メルヴェルは、何を言っている?とでも言っている様な表情になっている。
それもそうだよな。魔獣は人語を喋る筈が無いもんな…。自我が無いとまでも言われる。
何故、俺はこんなにも、不思議だなと、感じ無かったんだろうか?
「魔獣が自我を…」
「この前さ、この家の目の前に金色のドラゴンが現れたんだ。ソイツも、喋ってたな」
「金色のドラゴン…この前に報告があったドラゴンかも知れません。まさか、そのドラゴンを?」
「倒したな」
「流石は団長殿ですが…そのドラゴンも自我を持っていたと言う事ですね」
「まあ、そう言う事だな」
普通、喋る筈が無いもんな…。
魔獣の自我について、謎が深まるばかりだ。
「なあ、メルヴェル」
「はい、何ですか?」
「もう、寝ないか?」
俺自身としては、少し眠気。そして、進展しない話を延々と続けるのは気が引けた。
「ね、寝る!?あ、あ…」
メルヴェルが急に顔を赤らめて、何か興奮している。どうしたんだろうか?
声を掛けてみるか。
「おーい、メルヴェルさん?大丈夫ですか?」
こんな感じだろうか?
「…あ、まあ、そうですよね。団長殿、お休みなさいませ」
(私、団長殿に寝る間を惜しんで貰って、問い質そうと思っていましたのに…)
メルヴェルは興奮から覚めた様で、少し微笑んで二階へと上がって行った。
よし、俺も寝るとするか。
久し振りに三階の寝室のベッドで寝られる。(いつもアレドラントが使っていた)
寝床に着くと、俺はいつの間にか眠りに就いていたのだった。
ここまで読んでくださり有り難うございます。
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次の更新は8月21日の予定です。




