プロローグ
「《超回復》」
「あ、有り難うございます!」
俺は魔法師。仕事の遠征先で負傷した住民達の治療をしている。
この《超回復》で、負傷した部分全てを治す。
一人一人丁寧に、治療をしていっている。遠征に出向いた魔法師全員で。
住民達全員が重傷を受けており、治療に時間が意外にも掛かっていた。
そして、残りあと一人。
「《超回復》」
「おおっ!?見える!見えるぞ!」
顔がぐしゃぐしゃに潰れながらも、生きていた人である。治って何より。
ふー…やっと、治療、終わったか。
「お疲れ様です、団長殿」
「ああ」
「はい、タオルですよ」
そう、俺はこの魔法師達を纏める魔法師団の団長である。
丁度、十歳年上の部下の女性が声を掛けて、タオルまで渡してくれた。このタオルは汗拭き用。別に魔法があるから、必要性は無いのだが、気分的に嬉しい。
「有り難う」
「どういたしまして」
この女性の頬笑む顔が、俺の生き甲斐。
魔法師団は国の軍隊同様に戦争に駆り出される。若くして戦いの最前線に立った俺にとっては生き甲斐になるものだ。
「団長殿、近くまで魔獣の大群が押し寄せています!」
魔法師団の男性が、俺に報告しに来た。
魔獣と言うのは、魔王の創り出した獣の事である。この遠征の目的はこの魔獣の大群の惨滅である。
「よし、分かった。俺一人で行こう」
これに、誰も止めやしなかった。俺の実力を知っているから。
「《雷撃》」
この魔法だけで、俺は魔獣の大群だけを消し去った。
「いつ見ても、団長殿の魔法は凄いわ…」
先程のタオルを渡してくれた女性が呟いた。
「撤収しよう」
俺が魔法師団の団員(遠征に出向いた)に指示した。
誰か一人、こう、ぼやいていた。
「俺達、遠征に出向く必要なんてあったんすかね…」と。
それに、答えてあげようと思った。
「皆のお陰で予定より早く、住民達の治療が終わったんだ。お礼をしたいと思う!」
これは、本当に感じた事。
魔法師団団員達は「やっぱそうだよな!」とか言っていた。
こうして遠征が終わり、帰ってきた。
その日の夜の事だった。
俺は二十一歳も離れた魔法師団の副団長に呼ばれていた。
「それで、何か用か?」
俺から切り出した。
「ふっ…引っ掛かったな、団長殿!」
意味が解らん。
「二十歳以上も下のガキの癖に、私の上に立つのが悪いのだ!」
はぁ…。
魔法師団に年齢など関係無いでしょうに。大人気ない。
「貴様が居る場所は私が長い間、準備した《転移》の魔法陣の上に居るのだ!」
「何だと!?」
「魔法陣から出られないようにしている。魔法陣を囲うようにして《障壁》も張ってある」
く…そう…俺は誰も知らない異世界に行ってしまうのか。もう、二度とあのタオルを渡してくれた女性の笑顔を見られないのが心残りだが、仕方ない。
――諦めて、飛ばされよう。
そう思っていたら、いつの間にか俺の足元が光り、俺の視界が変わった。
***
転移後の世界。
魔法も剣も無い世界。こう言う時に魔法が使えた俺は情報操作した。まるで生まれも育ちもここだったかのように。
それきり、魔法を絶った。使えないことはないが、使わないように心掛けた。それは、この世界に順応するため。まあ、何かとその方が楽だからね。
高校?と言うものにも通っている。
受験?滅茶、勉強したんだよ。
俺は、高校三年生になっていた。多分、このまま帰れないだろうから、大学受験だ。受験勉強が始まりを告げた頃だ。
今、授業中であり、教科は数学。
俺は理数系志望である。何でも、数式の立てる所が、魔法構築に似ているんだよ…。魔法を絶った癖に、そんなことを考えている俺である。否、忘れられないんだろう。
集中を黒板から教科書に移した瞬間…床が光った。あの時のような魔法陣…。
転移!?いや…この場合は、召喚になるのか?
クラスメイトが何か騒いでいたが、それも無くなり、別の場所に視界が変わった。
そこは、何処かで見たことのあるような気がする。いや、よく似た場所かも知れないが、そう言う場所だった。
「初めまして、勇者様達。私は彼方達を召喚しました、シスナータ・ティナラータです。このティナラータ王国の王女です」
ティナラータ王国…俺の元居た世界だ。
俺はどうやら、故郷の世界に帰って来られたらしい。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。誤字脱字の指摘や、感想などをくれると幸いです。
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今回はプロローグなので少し短めですが、次からの話は1話毎に約4000字を目指して書きます。
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次の投稿は7月28日になる予定です。




