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再び沼。水の弾丸VS石の盾

全身泥まみれになったローブの男とドレスの女が、改造拳銃を撃ってくる。二人の立っているところだけ固い地面で、周りは先程のように沼地となっていた。


徒歩組で比較的体力の残っているフウが飛び出した。彼のタロットは愚者。風属性をもっている。


「やっと俺の出番だぜ。シャッフル。ワンオラクル」


 走り出すフウの足裏を風が押して加速。銃撃の合間に男の懐に入り込む。

男は一拍置いて目を見開く。フウは拳銃を持っている手を押さえつけて殴りかかる。拳を躱され、フウにカウンターパンチが入る。頬骨あたりを打たれたようで、彼の頭が大きく揺れた。


風に味方されて素早くなったフウの攻撃と、タロットの発動をするタイミングを逃した男との応酬はほぼ対等だった。

しかし僅かに男は上手を行き、フウは微少なダメージを蓄積して動きが鈍くなって見える。


ドレスの女まで、拳銃をフウに突きつけている。ヒルが駆け出していく。


「俺もまだいける」ワンオラクルを詠唱しするヒル。


「もうボロボロじゃないか!」手を伸ばし、彼を止めようとするテン。しかしヒルは半裸にズボン姿。掴む裾がなく、手は空を切った。


拳銃を持つドレスの女の所へ、ヒルはジグザグ走る。女は銃の照準を定められないようで、苛立っている様子がうかがえる。


 ヒルのタロットが発動し、周囲の小石が右手に集まり始める。ドレスの女に急接近。女が引き金を引けば必ず当たる距離だ。シンは手に汗を握る。

ドレスの女が、よろめいて下がる。ヒルの拳が命中していれば立っていられないだろうから、掠めた程度だろう。発砲音。凝縮された水の固まりが、ヒルの胴体目がけ発射。咄嗟に小石を胴に集めるヒル。水属性は地属性より強い力を持つ。

石の盾を突き破り、それはヒルの胴を抉った。


 テンが彼の名を叫び、木霊する。

死神の仮面を付けたミカミが颯爽と駆け出し、地面に転げたヒルを庇うように間に入った。

おそらく彼は失語症の類いだ。昨日から、如何なるピンチに陥っても言葉を発していない。つまり、タロット魔法を詠唱することができないということだ。


シンが瞬きをする内に、ミカミは突き刺さるように両足を揃えて女を蹴飛ばした。沼から顔を出したヒルが、ポカンと口を開けている。


「何者なんだ」沼の上を走ったのか。シンは困惑した。


 沼にドボンと落ちたドレス女が、自分の作った沼の中の小さな内陸に上がろうと身を乗り出す。それを、すでに内陸に立っていたミカミが一蹴り。

 片足を軸に回転して、ついでにローブの男を回し蹴り。巻き込まれたフウまで沼に落下。内陸には倒れ込んだヒルと、不気味な死神の面を付けて飄々と立っているミカミ。


「ばかやろう」フウが沼から顔をザバッと出して吠えた。


「本当に、こんな同級生いたか」

 ヒルは脇腹を押さえながら起き上がっている。離れた距離にいても、地面が血だらけになっているのがシンには分かった。

「ヒルお前、入学式しか来てないだろ」

 フウはミカミの手を借りて内陸に上がる。実際のところ、ミカミも半年後には学校に来なくなったため、なぜ彼がこんな変貌を遂げたのかは誰も知らないのである。


 未だ、誘拐犯の一味であるローブ男と、ドレスの女は元気そうに銃を構えている。女がタロット魔法を解いたのだろう。内陸が水に変化して、全員沼の中に落ちた。


「俺も参戦しよう」シンは痛むからだに鞭を打って立ち上がり、タロット魔法を唱えようとしたが、後ろから腕を引かれた。振り返ると、テイが目を丸くして、シンの腕をつかんでいた。


「いや、なんでテイが驚いてんの」


 止めたのはお前だろうと、シンは眉をしかめる。


「ええと、シンは体育の成績も悪いし、タロット魔法の授業もイマイチだし」


 なぜ急に悪口を言われなければならないのか。テイ自身も言っていて訳が分からなくなっているようで、目がうろたえている。


「怪我してるし。ええと私が代わりに行ってくるから。シンよりは元気だし。心配なのは私も一緒。任せてよ」


 ガッツポーズをしてみせるテイの、包帯が巻かれた拳に、シンはそっと触れた。テイは痛みに顔を歪めている。人間の手はたくさんの骨や細い神経繊細によって繊細な造りをしている。テイは、その手に風穴が空いているのだ。キョウコではないが、傷口から菌が入ったら感染症にかかる危険もあると心配していた。


「俺、テイに守ってもらいたくない。側にいてくれる必要もない」


 ワンテンポ遅れて、テイは悲しそうに下を向いた。シンは罪悪感に苛まれたが、こうでも言わないと言うことを聞いてくれないだろう。


「ここで待ってて。絶対に動くなよ」


 シンはテイの目を見て強く言うと、力ずくで振り払って、振り払っ、振っ「力強ぇ!」


 渋々離してもらうと、シンは一度岸に残った皆を見回した。リオが横たわっていて、キョウコとヨウは眠ったままだ。傷の浅いのはテンとノワだが、二人とも華奢で、主戦力になるとは思えない。シマは泣いているのか、殴られた顔が痛むのか、三角座りで顔を隠している。メンタルを思い切りやられているだろうから、敵の攻撃が逸れてここに来たら、心細いがテイとテン、ノワになんとかしてもらうしか他はない。


「倒れてる皆を任せた」シンはタロット魔法のワンオラクルを詠唱。手から煙が発生、すぐに火が発生する。一気に燃え上がった赤い炎は、徐々に青色になっていく。


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