画竜点睛3‐3
ロビンたちの夜襲は敵の戦力を削ぐだけではなく、惑わせるのにも効果があった。
正体不明の襲撃者の話は怪談のように広まり、帝国軍に恐怖を与えた。
浮き足立った帝国軍の包囲網を突破するのは簡単だったのだろう。ロビンの守る城に、トウソンという武将が救援物資を届けに現れた。
「感謝します」
「今日はあなたに会いたいという者を連れてきましたぞ」
トウソンの後ろから、先日夜襲をかけた竜族の一人が姿を現した。
「どうだ。竜族の集まり具合は」
「もうしばらく時間がかかりそうです」
「そうか……」
ロビンとしてはできるだけ早く決着をつけたかった。もし竜族が集まらなかったら、現状の戦力では厳しい。ロビンはトウソンの顔を見た。
「朝廷からの援軍はどうですか」
「送る気配がない」
トウソンは首を振った。
「しかし、よくぞここまで軍をまとめあげたものだ。おぬしの奮戦は、民の勇気になっていることだろう。私も、できるかぎり力を貸そう」
トウソンは近いうちに付近の部下を率いて救援に向かうと約束した。
長い雨が止んだ日、トウソンは宣言通りに、まとまった軍勢を帝国軍に差し向けた。
だが、結果は惨敗だった。帝国軍はすでに尻込みした状態から立ち直っており、トウソン軍は増水した河の勢いを借りても砦は突破できず、多大な犠牲を出して撤退した。
「切り札は、竜族か……」
トウソンは悔しそうに顔を歪ませた。
南の大国の朝廷は、ロビンやトウソンが戦っているあいだ、何もしなかったわけではない。ワケツコという武将に指揮をさせ、援軍を送ろうとした。しかし、宰相がこれを中止させた。
「竜族がいるのだ。最強といわれる竜の力をもってすれば、帝国などどうということはない」
だが、いつまでも変わらない戦況に、宰相はいらだちを募らせていった。
「遅い。やつらは何をしている」
自分が竜族を副業をせざるを得ない状況に追い込んでいることが、まわりにまわって、戦況の停滞を招いていることに、宰相は気づかない。
南の大国は少しずつ、破滅へ近づいていく。