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第十六話 

セオングの身体からは、だんだんと力が抜けて行き、黒いエネルギーのなすがままになろうとしていた。

そのころ、宿では宝珠が火のついたように泣き始めた。


「うわぁぁぁ~~~ん。あ~~んあ~~~ん」


その声はセオングにも聞こえてきた。

不思議なことに、その声と同時に男の身体はこわばり、黒いエネルギーが徐々に消えてゆく。

動けるようになったセオングが、男をはねつけると同時に、後ろに跳び退り、柱に突き刺さっている剣をひとつ抜き、男に切りかかる。

男は舞うように優雅に攻撃をかわすと、柱に突き刺さっている残りの剣をひとつ抜き、ゆっくりと振り返る。


「何者だ?今の泣き声のようなものは・・・私の力を消してしまうとは」


少し不思議そうな顔をするが、セオングを見つめ笑みを浮かべる。


「少しは楽しませてくれるのかな・・・?私は力だけに頼ってはいないぞ」


剣を持ったまま構えもしない。

セオングは真正面から切り込む。相手は微動だにしない。

いける!そう思ったときだった。

寸前で剣が止められ、男は笑みを浮かべたまま剣をはじき返す。

何度か剣を交えた後、セオングは後ろに跳び退る風に見せて一瞬の隙をつこうと、しゃがんで勢いをつけて切りつける。

その攻撃を受け止められ、セオングの持っていた剣が衝撃で折れ、セオングの左目に刺さる。

顔面の左側に衝撃が走り、焼けるような痛みが襲ってくる。

セオングはその場に倒れ、刃の先を抜き、手で押さえるが流れ出す血は止まらない。


「おやおや・・・大変だ」


ニヤニヤと笑いながらセオングを見つめている男。

痛みと大量の血で気を失いかけていた。


「ここで倒れるわけには行かない・・・んだ」


立ち上がろうとするが、もう身体に力は入らないのだった。


先ほどの小さな赤子のような鳴き声・・・

思い当たるのは宝珠しかいない。


「宝珠・・・」


セオングは完全に気を失ってしまう。




その頃、宝珠の周りでは、鈴華が近所にお乳をもらいに行ったり、蓮華があやしたりするのだが一向に泣き止む様子がない。

そばでは白虎がうろうろしながら耳を押さえている。

麒麟は、隣の部屋でイーテオンの町のほうでの不穏な空気を感じ取っていた。



ないていた宝珠が突然泣き止み、連華たちがほっと一息ついたときだった。何もない空間を瞬きもせずにじっと見つめている宝珠。その時、カッ と宝珠の身体が光り始める。光はだんだんと大きくなり、宝珠の小さな身体は、蓮華の腕から浮かび上がり、そのままどこかに行ってしまいそうになるのを白虎はひょいと手を伸ばし、掴み、引き寄せる。

光が消えると、白虎の手には赤い髪で、左目が赤く右目は黒い、小さな小さな2歳くらいの少女がぶら下がっていた。


「うわ!なんだ!?」


思わずびっくりして手を離す白虎。


「び・・・白虎さま!!」


鈴華があわててそれをキャッチする。

女の子は鈴華の腕の中から逃れようともがき、暴れる。

女の子は赤い瞳を光らせ、手を鈴華にかざすと、炎の塊が鈴華を貫き鈴華は消える。

小さな女の子は、立ったまま手を空間にかざす。その手の先の何もない空間が、ゆがみはじめる。


「その体では無理じゃ宝珠!」


そう叫ぶと、隣の部屋から駆けつけた麒麟が、空間のゆがみを止める。


「ほうじゅ・・・?」


あまりにも違う容姿に白虎は信じられないでいた。

宝珠は麒麟に力を抑えられ動きを取れないでいたが、だんだん炎のような光が麒麟の力を押し上げていく。

それとともにだんだん体が成長してゆく。幼女から少女へ…四肢はすらりと伸び、赤く燃えるような髪、左目の赤い瞳は怪しく光り、成長と共に力も大きくなってゆく。

麒麟は宝珠の力を抑えきれなくなってくる。


「宝珠!!」


麒麟が叫ぶ。宝珠の力は尋常ではなく、麒麟の抑えも限界で、とうとう跳ね飛ばされてしまう。


「麒麟様!」


連華が体を張って麒麟を受け止める。

次の瞬間、宝珠は白虎の腕の中で気を失っていた。

白虎が当身で気絶させたのだ。


「大丈夫か?」


宝珠を抱きかかえながら麒麟たちを見ると、蓮華に支えられた麒麟が呆けた顔をしている。


「大丈夫かおまえ?」


声をかけられふと我に返るが、深刻な表情に変わる。


「今…セオングの…気配が消えた…」


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