第一話〜天と地の狭間〜
朱雀の風第一部はこちら
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ここはボンファングの山の見える草原
宝珠がこの地に初めて来たときに休憩をし、花を摘みながら迷子になったあの懐かしい草原だ。
色とりどりのきれいな花が今までには見たことのないくらいたくさん咲いている。
宝珠がその花に手を伸ばすと自分の手が小さくなっていることに気がつく。
体中を見回してもなじみのある自分の身体。10の頃の宝珠だ。
ほっと一息をつく宝珠。
「びっくりしましたわ。いきなり大きな身体になっていて…あれは夢でしたのね」
ふと草原の向こうを見るとジョンウォンとレイレイと春欄が馬車に乗ろうとしている。
春欄は宝珠より少し大きい。最後に出会った春欄だ。これも夢なのだろうか?とふと思う…
宝珠は手を振り父と母を呼ぶ。聞こえていないようだ。
「とうさま〜〜かあさま〜」
と叫ぶが馬車が出始める。
走って追いかけようとしたとき…
目の前の白い影にドンとぶつかった。
見上げると綺麗な顔をした白い服の剣士だ。顔に見覚えがある。
「…あなたは…夢の中のわたし…?」
宝珠がそうたずねるとその剣士はにっこり笑って
「そう…私はお前。炎珠だ。だが、夢の中はこちらのほうだ」
「お前はここから先へは行くな。私が行く。お前はあっちへ帰るがいい」
あっちと指をさされたほうを向く宝珠。
真っ暗な何かが渦のようにうごめいていてとても恐ろしい。
「いいか?お前は強い。どんなときでも何があろうとも前を向いていける」
「いや…です。とうさまとかあさまのところにいきますわ」
炎珠を振り払って先を急ごうとする宝珠。
それを止め両肩に手を置き瞳を見つめる。
「宝珠…あんたの8年間を…護るためとはいえ奪ってしまって…すまない」
本当にすまなそうに宝珠を見つめる。
「いいえ… ”私” は幸せでしたわ。とうさまと、かあさま、春欄がいつも一緒にいましたもの。…これからもずっと家族一緒にいますわ」
そうにっこりと笑顔できっぱり言う。すべてを理解し、家族についていく決心をしているようだ。
「”あなた”は幸せでしたの?」
まっすぐ炎珠をみつめる。
「………」
宝珠のひとことに言葉を返すことができないでいると、宝珠がそっと…ぎゅっと抱きしめる。炎珠は少し驚いた表情で宝珠を見た。
「ごめんなさい…そして私を8年間護ってくれてありがとう…」
抱きしめながら、ゆっくりとひとことひとことに愛をこめて炎珠にささやく。ぽたぽたっと宝珠の肩になにかが落ちる。
宝珠が見上げると炎珠が涙を流していた。少し照れくさそうに笑いながら。
「ほらね…あんたは強い。ほんとうの強さは力があることでも戦うことでもない。そうやってすべてを包み込んでしまう優しさなんだよ」
「それにあんたはまだ自分のしたかったことをやり遂げてない…それはあんたにしかできないよ」
ふと宝珠は小さな頃からの夢を思い出す。
「…それにセオングが待ってる」
「…おにいさま…?セオング兄様は炎珠さんのことを待ってますわ。幼い私が帰るより炎珠さんが帰られたほうが喜びます」
にっこりと笑顔で答える宝珠。炎珠はその前の一瞬の寂しそうな顔を見逃さない。
炎珠はくすくすっと笑い
「どうかな?…言っとくけど宝珠の一部から私が生まれた。私などたかが宝珠のほんの一部だ。それに…いや…なんでもない」
何かを言いかけてやめる炎珠。
だんだんと暗い渦が小さくなってゆく…宝珠の頑固さは宝珠の一部の炎珠であるからこそよくわかる。早くしないと宝珠は帰れない。少しあせる炎珠。
「すまない…でもこれも私の役割なんだ。悪く思わないでくれ」
にっこりと笑って、宝珠を黒い渦のほうへ、ドンと突き飛ばす。
宝珠は黒い渦へと飲み込まれていく。
「きゃぁぁぁぁ〜」
「それに…セオングに必要なのは宝珠…あんたなんだ」
花畑に一人立って渦が小さくなるのを見ながらつぶやく。
渦が消えると一陣の風が炎珠のほほをなでていくのだった。