お買い物に行きましょう③
ねえ。ところでみんなは電子書籍派? それとも紙で持ってたい派?
私は最近の本は電子書籍で買うんだけど、思い入れのある本は形に残る紙で欲しいかな。あと、昔から集めてるシリーズはそのまま本で買ってるんだ。それでね、もう高校生の頃から集めてる本の新刊が出たらしいから、書店に来たわけです。
(ちなみにミドリは予想が大当たりしてコーヒーを飲めずにオレンジジュースを飲みました)
で、その最新刊を求めてすでに三店舗回ってるの。でも置いてないわけ。どういうことなの? って思うよね。1軒目ではまあ小さいところだったしないのも仕方ないかなって思ったんだけど、二軒目ではえーーーこんなに大きなところなのにないの?って思ったし、三件目では殺意さえ湧いて来たよね。
もう諦めて通販で買いなよって頭の冷静な部分はささやきかけてくるんだけど、闘志を燃やした私の心は「諦めんな!!」って叫ぶわけだ。
つまりは戦いだよね。私と世間様の需要ってやつとの一騎打ちよ。
いや、昔は置いてあったのよ。でもある時新刊が出なくなって三年経ったんだよね。
(あの時は絶望した。もう続きは出ないのかもって思ったし、作者さんはSNSとかしてないから近況は分からないし)
そのあたりから本屋に置かれなくなって今に至るのよ。ああ、無情。
「ミドリ、本は触ってもいいけど、丁寧に扱ってね。売り物だから」
「たくさんあるけど、全然売り物?」
「そうだぞ〜! 色んな本があるんだよ」
店の中を颯爽と歩きながら、目当ての本が有りそうなコーナーへと向かう。
新刊コーナー!
目標物ありません!
右、左、上、下。棚の中へ視線を移す。
目標物はありません!
うん、ない!知ってた!悔しくないぞ!
ごめん、嘘ついた。普通に悔しい。
「うう……」
嘆く私を気にせずミドリはその辺りを興味深そうに見ている。そこでふと気付いた。話は出来るけど文字は読んだり書いたり出来るんだろうか。
「ミドリ、これ読める?」
「よくわからないかな」
ふむ、小説は難しかったか。では絵本は?
「うーん? かわいい絵だね」
本格的に文字が読めないぞ。読めないってことは書けないってことだ。つまり、教育が必要……?
「文字の教育ってなんだ? 絵本の読み聞かせでいいのかな? ドリルみたいなの買うべき? うーん」
遠い昔、自分も勉強したはずだが、どう覚えたか全く思い出せない。あの頃の記憶と言えば、かわいい文房具やシールを集めていたことと夕方まで全力で遊んでいたことくらいだ。勉強の記憶などほとんどない。
「とりあえず絵本でも買ってみるかなあ。ミドリ、好きなの一冊買ってあげるよ」
「じゃあ、これ」
猫のイラストの表紙の絵本だ。親近感だろうか。猫が猫の絵本読むってちょっと可愛い。ふふ。
小説の代わりに絵本を買って、店を出た。
小説はもう通販で買おう……!