02(殺人事件)
ユウイチがガンニョム課の係長室に戻ると、エイコが居た。
「お嬢ちゃん、ここは関係者以外立ち入り禁止だよ〜」
「ユウイチ叔父さん、忘れちゃった? エイコよ」
「エイコ? ああ、姉さんの娘か。大きくなったな〜」
「今日は私の16歳の誕生日なの。それなのに、火星旅行がキャンセルされて。お金持ちのアイドルはチャーター便で行けちゃうし」
エイコは涙ぐむ。
ドピュ二郎もガンニョム課の係長室に入ってきた。
『大変だよ、ユウイチ』
「どうした?」
『殺人事件!』
「何!? またガンニョム課に持ってきたのか? 厄介だな」
『手が空いてるのはここだけだよ』
「ぐすっ……叔父さんは殺人事件まで担当してるの?」
「まあ、泣くな。……で、ドピュ二郎、誰が殺されたんだ?」
『専用機ラウンジでアイドルのコットン・ミサキが死体で見付かったよ』
「嘘!? さっきのアイドル……」
『ユウイチ、この子は?』
「姪のエイコだ」
「このポンコツ! さっき会ったばかりじゃない」
『ポンコツとはなんだ! 僕は1ヨタバイトの超高性能ロボットだぞ!』
「すまんな、エイコ。ドピュ二郎は的外れでカンシャク持ちなんだ」
「何よそれ。AIロボットでしょ?」
「それより、鑑識は? まさか、また俺にやらせるつもりか?」
『管理官は暇なガンニョム課のユウイチをご指名だよ。AIポリスより正確だって』
ユウイチはウイスキーを一口飲む。
「仕方ない、行くか」
「叔父さん、待って。私も行く」
「好きにしろ」
――ユウイチ、ドピュ二郎、エイコの3人はラウンジに行くと防災シャッターが閉まっていた。
「ドピュ二郎が遠隔操作で閉めたのか?」
『犯人を逃がさないためにね。規制線の代わりだよ』
「他に被害者が出たらどうする?」
『多分、大丈夫』
「不安しかない」
『第一発見者はラウンジのマスターだよ』
3人がラウンジに入ると、二十歳前後の女性が倒れていた。胸から血を流して。血溜まりがラウンジのカーペットに染み込んでいる。
「胸を一突き。防御創がないな。知り合いの犯行? 不意討ちか。傷口が細長く、少し焼け焦げてる……凶器はレーザーカッターかな」
「叔父さん、そのアイドルは死んでるの?」
「生の死体を見るのは……初めてだろうな」
「うん」
ピピピピ。ドピュ二郎が防犯カメラの映像を洗い始めた。
『高速演算処理した結果、死体が発見されてラウンジ内に残ってるのが2人。シャッターを閉める前に出ていったのが多分、1人だよ』