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悪役に恋して  作者: 冷凍みかん
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疲れた後は

『ここは…。何処だ?見慣れない…。いや見たことある天井かなこれ。』


確か、課外学習でワイバーンと戦って、追い払って、先生が来て。


『安心して寝ちゃったんだっけか。』


そのまま、学院寮の私室まで運び込まれたというところだろうか。情けない姿をみられてしまったなと思う。これでは本当に身体が弱いみたいだ。


そういえばと、戦いの最中、魔法を乱発したことを思いだす。あれほどまでに連続して発動させたのは、実家で魔法を習いたてのころ興奮してつい夜更かししてしまった時以来だ。きっと急な実戦の緊張感と相まって少し疲れてしまっていたのだろう。何時もよりも動き回っていた気もするし。


体を起こして小さな火球を作り出す。


『うん。体調は特に悪くないな。むしろよく寝て清々しいくらいだ。』


――ガチャ――


不意にドアノブが捻られる音がして扉が開くと。私室にセシィが入ってくる。


『おはよー。せし『お嬢様ッ!!』』


軽い挨拶をしようとしたが、言葉を言い切る前にセシィに一瞬で距離を詰められ、そのまま起こしたばかりの身体を抱きしめられる。


『おっふ。』


『お嬢様。よくお目醒めにっ。もういよいよ駄目かと。』


いよいよ駄目にとは如何に。なんだか元々駄目だったのがより駄目になったみたいじゃないか。たかだか疲れて居眠りしただけで大げさである。前から少しいや大分思っていたが、少々この侍女は過保護がすぎないだろうか。


『そんな少し寝た位で大げさな。かなり大変だったんだから、もっと寝てても良いくらいでしょ?』


『そんなっ。3日もお目を覚まされなかったのですよ!それをこれ以上だなんてっ。もう1日遅ければ私も後を追う覚悟でした!』


何とも恐ろしい事をのたまう。そんなロミオとジュリエットの様な展開はお呼びではない。もっともあの話のヒロインの様になるつもりはさらさらないが。


『勝手に殺さないで!恐ろしい事言わないでよ。…って3日!?』


『そうですよ。そうですよ。私が何回も寝たり起きたりしている一方で、一向にお嬢様はお目を覚まさないから、もう、もうっ。』


なんということだ。この話が本当であれば、事が起きた後、疲れたから少し寝すぎてしまったなんていう様な可愛い話ではない。今まで、前世に今世合わせても日付を跨いで寝過ごしたことは無かったのに、衝撃である。そんな事は物語の中の脚色でしかないとさえ思っていた。


『まさか、冗談でしょ。少し疲れただけで人間がそんなに眠れるわけ。』


『こんな事態に冗談なんか言いませんっ!お嬢様はもう少しお身体を大事になさってください!思えばっ…!』


もの凄い剣幕で窘められる。近づいた彼女の顔には事態の真意を確信させるに確かな表情がありありと浮かんでおり、今回とても心配させてしまったことが見て取れる。


『そう、なんだ。ごめんねセシィ。でも見ての通りもう全然平気だからっ。少し、いやかなり疲れただけだよ。身体は何ともないよ。』


自分が言えた身分ではないが、少しでも安心してもらえるように言葉をかける。


『まぁ、お医者様にも見てもらって、病気ではないことは確かめては貰いましたが、それでもっ!気が気ではなかったんですよ!私は!!』


寝てる間に医者にかかるくらい大事になっていたのか。


『本当ごめんって。でも3日か、確かに少しお腹が空いてるかも。』


『全く。今お持ちしますけど、起きたばかりなのですから、消化に良い物でないとダメですからね。』


そう言うとセシィは一回外に出て、3日ぶりの食事の準備をしに行く。そして戻って来た彼女は水気の多い粥の様なものを盆にのせていた。


『なんか、ふよふよしてる。流動食みたい。』


気にしだすと、止まらないもので既に空腹ははっきりとしたものに変わっていた。この程度じゃ足りないのではないかと、彼女の方へうらめしい視線を送る。


『ダメです。いきなり、普通の食事をされては胃が驚いてしまいます。まずはこれからです。ハイどうぞ。』


そう言って目の前に具の乗ったスプーンが差し出される。


『いや、それはちょっと恥ずかしいというか、1人で食べれるから。』


『ダメです。おとなしく口を開けてください。おっと逃げられませんよ。病み上がりに抜かれるほど、脇が甘くなった覚えは御座いませんので。』


もう食べるしかなかったそれは、恥ずかしかったが少しの塩味が確かに胃に染みて美味しかった。


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