決着!!
突然の事に驚きつつ、ナイフの飛んできた方向へと視線をやる。そこにはそれまで消火活動に勤しんでいたベル君が、これまで見たことのない様な、精悍な顔つきでしっかりとワイバーンを見つめている。その手には複数のナイフを確かに握っている。
『やるじゃねぇか!!』
カインもそれに気付いて見直したと言わんばかりに称賛の言葉を送る。
『このままどこかへと飛び立ってくれれば良いんですけど…。』
ブレスを途中で強引に中断させられて、尚且つ片目を潰されたワイバーンは今尚苦しそうに唸り声をあげ、空中で身をよじらせている。
『余り動かれると自信ありませんがっ。』
それすら許さないとばかりに、再びベル君の手元からナイフが放射される。今度は数本纏めて標的の頭部へと向かって行く。
惜しくもそのほとんどは狙いが逸れてワイバーンの固い鱗に阻まれてしまうが、放射したうちの一本が残された、開かれていた眼球へと着弾する。
――GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!!!――――――
両目を潰されたワイバーンが先程よりも大きな叫び声をあげ暴れまわる。
『どうだっ!?』
敵はひとしきり暴れまわると、もう録に見えないはずであろう両目で此方を見据える。その様子からは先程までの余裕のある雰囲気はなくなり何処か怯えているかのようにも見える。そして、このまま続けると不利とでも思ったのだろうか、身をひるがえし飛び立ってしまう。
『あぶなー。ナイス、ベル君。いやベルさん!』
飛び立っていく背中をが小さくなり、もう大丈夫かだと、ほっと息をつき、見事決め手に欠けていた、状況を打破した男の子に声を掛ける。少年はいつもの様に自分のしたことを遠慮がちに謙遜する。
『いや、もう弾切れでしたし…。逃げてくれて良かったですよ。あのまま滅茶苦茶にブレス打たれていたらどうなってたことか…。』
確かにそうなっていたらと想像すると背中に嫌な汗を感じる。しかし、実際にはそうはならず、結果として五体満足みんな無事に終わるという最高の形になったのだからもっと胸を張れば良いのにと思う。
『いやいや、たいしたもんだぜ実際!なんだアレか!能あるなんだかは何とやらッてかオイ!』
『そうだね。正直、驚いたよ…。』
前衛で体を張り続けていた2人からも惜しみない称賛を浴びる。ベル君は気恥ずかしそうに少し下を向いて顔を赤らめている。そのやり取りに胸が軽くなり、再度窮地を切り抜けた事を実感する。
『助かったぁ~~。』
『まぁ、何とかね…。』『なんとかですね…。』
俺も同じような顔をしているのだろう、疲れた表情で2人が同意する。
『終わってみれば、大したことなかったんじゃねぇの!』
1人はいつもの勝気な笑みで堂々と。
『大丈夫ですか!これはっ!』
あれだけ派手にやり合ったのだ。当然森の外へも緊急事態は伝わってはいたのだろう。ウォルス先生が額に汗をかきながら、先程まで戦場だった現場へ姿を現した。
あぁこれで本当に安心だと、俺は完全に肩の力を抜いて。
そして、そのまま倒れ込んだ。




