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悪役に恋して  作者: 冷凍みかん
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それは本当に突然のことで

それは突然のことで、しょうもないことで項垂れていた俺の意識を叩き起こす。


『なにごとっ!』


前を見ると、グループの皆も足を止めて周囲を慌ただしく探っているのが分かる。


『分からねぇ、でもただ事ではなさそうだ。』


化け物の1体や2体出た方が面白いとまで言っていたカインも、先程の切羽詰まった様子の声を聞き真面目な表情だ。


『行こう。ベル、聞こえた方へ案内を頼む。何か聞こえたらすぐに報告を。』


リーダーも普段のしっかりしているようでどこか抜けているような雰囲気とは違い、力強く今後の方針を示す。


『え、ででも僕達が行ったところで、どうしようも、そうだ!先生たちを呼んできた方が!』


『間に合わねぇかもしれねぇだろうが!』


『カインの言う通りだ、でも無理にとは言わない、ここは僕達2人で行こう、君たちは素早く戻って先生を呼んで来てくれ。』


弱気な案内役に対して、2人の態度はそれぞれ対照的ではあるが、共通して助けに行く意思は変わらないらしい。普段の2人の姿勢からして、ロロちゃんは確かに印象通りではあるが、カインがこんなにも慌てているような、焦っているような様子を見たのは初めてかもしれない。意外と人情に厚い人間なのかと感心していると、その間にも2人は声のした方にあたりを付けて前へ前へと進んでいく。



…ちょっと待て、何故しれっと俺を戦力外にしてくれているんだこの2人は。俺は2人の後を急いで追いかけようとする。


『いやいやいや、私も行くから!ベル君は先生の所に!課題の品も忘れずにね!』


いまだ立ち竦んだままの少年に声をかけて先を急ぐ。カインの言うことなんて普段は冗談ばかりで聞き流す物だが、今回ばかりは同感である。一刻も早く何が起きているのか確かめに行けなければ行けない。


『もう知りませんよ!何が起きても!行きますよ、行きますとも!』


勇気を奮い立たせて少年は、既に歩き出していた俺を追い越すように進んでいく。

最終的に俺が皆について行く様な形になってしまったが、結局4人全員が声の方へ向かって行く。



何とか直前に動き出した少年には追いつくことができ、横へ並ぶ恰好になるが、先に駆け出した2人は先へ先へと既に進んでいて、その背中も随分と小さくなっていた。周囲の茂った木々にも遮られ、気を抜くと見失ってしまいそうだ。


『ベル君!ほんとにこっちで合ってる!?実は全然見当違いでした!とか笑えないからね!』


2人を見失わないことに必死で周囲の様子まで気にしている余裕はない。ただでさえ初めて足を踏み入れた森の中なのだ、冷静さを欠く余り迷ってしまっても何ら不思議ではない。


『2人ともっ。足はやくてっ。聞き耳を立てる余裕はありませんでしたけどっ。最初に聞こえて来た方という事ならっ。合っていると思います。』


余裕はないと言いながらも、最初に音のなった方角を把握している辺りさすがである。彼がいる限り道に迷うということはなさそうだ。


『そんなこと言ってっ。2人に離されないあたり実は相当鍛えていると見た!きっとコソココソ隠れマッチョなんだね貴方はっ。』


『冗談言ってると見失いますよ!』



ふざけている場合ではないでしょうと、こっちを見たベル君に窘められていると、前の2人の足が急に止まる。これは…。


『着いた!』


迂闊にもつい声を上げながら、ロイとカインの傍に駆けていくと、2人とも一瞬だけ此方を見るが、すぐに正面へ向き直した。その時ちらりと覗いた表情からは先程駆け出す際に見せたそれよりも強い焦りが表れていた。


『・・・ッ。ワイバーンッ!』


横でベル君が何かを言っている。いや既に声は後ろから聞こえてくる。それはベル君の声だけじゃないかもしれない。2人に追いついて見た物は、大きなモンスターがクラスメイトに今まさにその鋭い爪の生えた手を伸ばそうとしている姿だったから。そうだったから、俺は。




駆けてきた勢いそのままにドロップキックをくらわしていた。


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