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悪役に恋して  作者: 冷凍みかん
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魔法!②

今日2投稿目です。明日から平日。少し更新頻度がゆったりするかもしれません。

『ところでさ。セシィは魔法とか使えないの?』


『使えないという訳ではありませんが。使いものにはなりませんね。私では落とし物一つ拾うだけでクタクタになってしまいます。それならしゃがんで取った方が良いというものです。』


どうやら、魔法というのは、人によってその恩恵の大きさが左右されるものであるらしい。平気な顔して雑務に使用している父を見ているため、才能による個人差があったとしても、それほど極端な物ではないと思っていた。しかし今の彼女の言葉を省みると、認識を改める必要がありそうだ。


『え、それは、セシィが極端に魔法が苦手とかそういう。』

『私の様な一般の人間で、日常的に魔法が使える者はほとんどおりませんよ。まぁ中には例外も存在していますが。』


『そうなの?それは練習すれば改善するとか、セシィがサボっていたとかいう訳では無くて?』


もし違うとしたらどうしよう。前世で言うところMPが足りていません。伸びる見込みもありませんということだろうか。だとすると少し不安になる。才能が無くても努力して何とかしてみせると思っていただけに中々ショックな事実である。



『どうなのでしょう。そこまで、魔法を覚えようとも思ったこともありませんから。詳しくは明日から来られる講師の方にでも聞いてみては。』


それもそうだ。学ぶ環境が無ければ使うこともないだろう。そもそも使い方が分からないのだから試しようがない。俺だって魔法の存在を知ってから、何度か試しに手のひらから炎とか出そうとしたこともあるが、上手くいったことはない。きっと学ばなければ理解できないことがあるのだろう。


『そうね。うわー、やだなー。折角許可してもらったのに、才能が無くて使えませんでしたとか。ついはしゃいじゃった分恥ずかしくて死ねる。』



偉大なる魔法使い所の騒ぎではない。一般の、いやそれよりも落ちこぼれの魔法使いにすらなれない可能性だってあるのではないか。


『ねぇ、そういうのって事前にわからないものなの?こう手相とか雰囲気とかで。』


『聞いたことありませんね。そのあたりも、明日見てくれるのではないでしょうか。』


なるほど確かに。そうなるともっと不安だ。折角来てもらった先生に、お前は才能がないので無理とハッキリ告げられたら、恥ずかしいし、死ぬほどへこむ。まぁでも待つしかないかなぁ、なんて考えていると、不意に妙案が浮かんできた。



『ね!ね!セシィはさっき物を浮かべさせることができるって言ってたよね。すごく疲れるけど!それを私に教えて、実際に使ってみたらわかるんじゃないかな!』


そう目の前の人物ははさっき、使い物にならないけど使えなくはないと言ったのだ。ならばちょっと予習しておくのも良いのではないか。是非したい。早く魔法を使ってみたいのだ!


『駄目です。そんな簡単に出来るのであれば講師なんて要りませんし。よしんば出来たとしてお嬢様がお疲れになられたら午後のお勉強に支障が出ます。まぁヘタヘタのお嬢様を見たいとは思いますが…。』


やはりダメか。少し気になる発言もあったが。しかしここで諦めきれないのが、前世から受け継がれている男心というやつだ。もうひと押し、仕掛けることにする。


『じゃあせめて、見るだけ!見るだけで良いから!やって見せてお願い!格好良いセシィが見たい!』


『恰好良い…。なるほどその手が…。』


何か言っているが気にしない。ツッコんだら流れが変わってしまう。どうやら食いついてくれたようだし、このまま様子見を決め込む。


『コホンっ。良いでしょう。でも本当に疲れるので1回だけですよ。』


そう言うとセシィは何やら目を閉じて集中を始める。俺もそれを集中して食い入るようにその様子を見つめる。5秒ほど経っただろうか、セシィが目を開くと本棚の方に手を伸ばし、そして…


『フライっ!』  ことんっ。


本棚から一冊の本が落下した。


『ぜ、はぁっ!本重っ!そう言えば前拾い上げたのは、紙切れ、一枚でしたっ!』

『お、おぉ~。』


なるほど。確かに紙切れ一枚でクタクタになるのだったら、本は重いよな。それにしてもこんなに極端に消耗するものなのか。


『えっと目を閉じて、集中してー。』


どうすれば良いのだろう、イメージだろうか。こう力の循環的な。全くわからないが、駄目でもともと、男は度胸、女だって度胸だ。セシィのマネをしてみる。



目を開いて、一冊だけ落ちている本に手を伸ばす。


『おやめください!お嬢様!お体が!!』


静止の声が聞こえてくるがもう止まれない、立ち止まれない!というかどうせできないし!!


『フライ!』 ・・・ぽすっ。

落ちていた本が浮かび上がり、ゆっくりと弧を描き膝の上に到着する。

お、おぉ~。どうせ今まで通り発動しないと思っていたのだけれど、なんとまぁ、こんな適当な感じであっさりと


『できちゃった。』


『お嬢様!お体に異常は!!大丈夫ですか!?』


『え、うん。大丈夫。何ともないよ?これ本当に疲れるの。』



結果から見ると落ちていた本は、今手元にあるわけで、魔法は成功したのだろう。ただ、先程のセシィの様子と今の自分の具合を比べるとどうも実感がない。今まで一人で練習していた時は一切何もおこらなかったのに、急にどうしたのだろうという疑問まで沸いてくる。


『ははーん。さてはセシィ。私で遊んだわね。』


俺が手を翳したタイミングできっと魔法を使ったのだろう。さっきのはおそらく疲れる演技だ。中々の演技派である。


『いえ。そんなことは…。とにかく!もうこの様なことはなさらないでください!!私も魔法に関しては明るくないので、なにかあったら…。』


どうやらセシィは本気で心配してくれているようだ。ヘタヘタの少女をアレコレといってた人間の反応ではない。


『…ごめんなさい。もうしないわ。今日は。』

『今日はって。はぁ。ちゃんと魔法の先生と旦那様から許可を得るまでは、です。お嬢様。お嬢様に何かあったら私…。』



むぅ。そこまで本気で心配されると何も言えなくなってしまう。この後、夜一人になった時にでも、今いろいろと試してみたかったのだけれど。


まぁ明日から、魔法は学べるわけで、そう急ぐようなことでもないかと自分に言い聞かせる。本音を言えば、興味はものすごくあるし、今すぐにでも連発したいものだが、それでセシィに心配をかけるのは良くない。それに確かに俺は魔法について、小説の中の知識くらいしかないのだ。今回急に使えるようになった件に関しても良くわからない以上、無理はしない方が無難だ。うん。理性ではわかっている理性では。俺は本棚に手を向ける。


『ふらっ『お嬢様!!!』



つい本能的に向けてしまった手をセシィに掴まれる。



『違う。わざとじゃない。私のせいじゃない。』

『お嬢様の意思じゃないとしたら。お手を拘束する必要がありそうですね。安心してください。身の周りの世話は任されました。ご飯からお風呂まで。』


『ごめんなさい!ごめんなさい!私が悪いです!!もうしません!!!』

目がマジだった。あと気持ち嬉しそうだった。


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