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悪役に恋して  作者: 冷凍みかん
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深く、暗く

普段の頼りなさげな様子とは裏腹に、ベルは何か確信を持ちながら森の奥の方に向かい歩いていく。他に頼る物もない俺たちもそれに従い進んでいく。


『ちょ、ちょっとベル君。本当にこっちで合ってるのかな。だんだん森が深くなってる気がするんだけど!


森の入り口付近はまだ、多少開けた場所も多く、どちらかというと林といった様な雰囲気で、爽やかなピクニックと表現してもギリギリ許せる範疇であった。しかし先頭を歩く彼に従って奥へ奥へと進んでいくとそうも行かない。の木々は大きく育った物が多くなり、生えている密度も濃くなる。その分視界も悪くなり、挙句の果てには、日光でさえ葉や枝に遮られ薄暗い有様である。


『まるで、ここだけ、陽が落ちてしまったかのようだな。』


進めば進むほど様変わりしていく、森の表情に気をとられることも無く、彼は力強く前を歩く。


『まさか適当に歩いてるんじゃねぇだろうな。』


『え、ち、違いますよ!』


カインの悪態に、ようやく彼は後ろに付き従って歩いていた俺たちの方へと振り向くと、何時もと変わりない様子へと戻った。それを見て少しほっとする。


良かった。何か悪いことがあったわけじゃ無かったんだ。呪いとか。そう例えば呪いとか。



『てっきり、森の何か悪いお化けとかに洗脳でもされてるのかと思ったよ。ほらベル君なんか何時もと違って、男らしかったし。』



『酷いですよ!水の音がする方を目指してただけですよ。ほら、よく聞こえるじゃないですか。』


水の音、はてそんなもの聞こえるだろうか。意識を集中して聞き耳を立ててみるも、そんなものは全く聞こえてこない。


『え、全然聞こえてこないけど・・・。やっぱり、悪いものに・・・。』


『そうだな、一回ぶん殴っといた方がいいかも知れねぇ。』


『酷いですよ!すごく酷いです!』


あんまりな俺たちの言葉に、心外だと声を上げるベル君。するとまだ横の方で目を瞑り耳を澄ませてたロイが突如目を開く。こう、なんと言うか『クワッ』という擬音が似合いそうなほどわざとらしく目を開く。


『確かに、聞こえるかも知れない。でもこんな小さい音良く。』



『えー。またまたぁ。』


俺もまた、ロイがかすかに聞こえたという音を、自分の耳で捕らえるべく再度耳を澄ませるが、やはり水の音とやらは聞こえてはこない。聞こえるのは木々が擦れあう音だけである。



『これはロイも殴った方が良いな。』


『そうだね。そうしよう。二人ともそこに直りなさい。』


『聞こえるから!本当だ『ですって』!』



必死な様子で自分の正気を訴えかけてくる、2人を信じて、とりあえず俺とカインも、どちらがどちらを殴るのかという相談を止めて、とりあえずもうしばらく付いていこうと決める。


奥へ奥へとさらに歩みを進めていくにつれて、森の不気味さはより一層深まるばかりである。



『ね、ねぇカインやっぱり、あの2人何かに憑かれてるんじゃないかな。どんどん気味の悪いほうへと進んでいる気がするんだけど。』


『あ?なんだ情けねぇなぁ。それならそれで面白ぇし。もう少し様子を見てみようぜ。』



そうは言うものの、新入生のレクリエーションで態々こんな深くまで潜ることを求められるものだろうか。改めて周囲の景色を眺めると、午前とも思えぬ薄暗さであり、ロイのせりふではないが。まさしく陽の届かない場所といったところである。


果たして本当に夜になったらどうなってしまうのだろうか。もし迷って出られなくなってしまったらと思うと、ゾッと背筋が冷える思いである。


---パシッ---


『ヒィッ。』


『わぁっ!びっくりした。何かあったのかい。』


『い、嫌何か今高い音がしたような。』


こんな不気味な森であるから。


『あ、わりぃわりぃ。俺が石を弾いた音だわ。暇だから手遊びしちまった。』


音に敏感になるのも仕方が無いのである。ニヤニヤするのを止めろ。


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