見慣れぬ姿
出せるうちに出せるものは出すの精神。何か月ぶりかの連続更新。よろしくお願いします!
『さてと何時までもここにいてもはじまらねぇ、とっとと森の中に入っちまおうぜ。』
『確かにそうだね。フォルス先生も開始の合図だけして颯爽とどこかにいってしまわれたし。』
『まさか、森の周りを歩いているだけで手に入れられるようなものではないでしょうし。』
『・・・はぁ。』
そんなことはどうでも良いのだ。森を目の前にした借り物競争である。無論森の中に入らなければ何も始まらないのは当然である。フォルス先生は開始の合図をして去っていってしまった。文字通りサッとだ。瞬きしている間に消えてしまった。きっとまた小難しい魔法でも使ったのだろう。それについてもどうだって良い。いや彼に問い詰めたいことがあるから憂鬱なのであり、ささっと姿をくらましてくれたことに文句は確かに少し言いたいものではあったが、まぁそんなことは、やはりどうでもいいのだ。
『何だよ。しょっぱなから溜息なんてつきやがって。辛気臭ぇなぁ。』
『カインにはわからない。わからないんだよ。』
『まぁ、お題の意味も良くわからないしね。でも無いものを指定するほど意地が悪いことも無いだろうし、きっと大丈夫だよ。』
違う、違うのだ。そんなことはどうでもいいのだ。どのくらいどうでも良いのかというと。もういっそただの水に、絵の具でもぶち込んでしまえば良いのではないかと思うくらいどうでも良いのだ。
『食事は勝手に、各々で。それじゃあ、リザリーとご飯食べられないかもしれないじゃん!!』
『そんなこと?そんなことで悩んでたの!?』
『借り物なんかどうでも良いんだよ!適当に絵の具でもぶち込んどきな!私はちょっと今からリザリーについていくから!』
『落ち着いてください!リザリーさんたちは真っ先に森の中に入っていったので、今から追うのは無謀ですよ!』
はやる俺を班員が総力を挙げてなだめる。
『落ち着いたか。よし!さっさと行こうぜ。』
『そうだね。迷惑を掛けちゃってごめん。じゃあとりあえず敵情視察と行こうか。1番取るにも先ずは敵を知らなければ。では!』
『…。おい、そいつが勝手なまねしないようによく見ておけ。』
『わかった。『わかりました』』
至極真面目にまともな作戦を立案したはずなのに、カインに襟首を捕まれ止められる。何故なのか。
『しかし意外と爽やかな物なんだね。森ってもっと、なんというかじめじめした物だと思ってたよ。』
『それは場所によるだろ。それにここだって雨季になればお前の言うじめっとした感じも出てくるかも知れねぇぜ。』
班員全員に見張られて、どうにも離脱、いや偵察ができそうに無い状況を察し、俺は結局借り物大大会のお題を探しにみんなと一緒に森の中へ入っていた。
周囲にそれらしきものは無いかと目を凝らして様子を伺うが、中々そんな簡単には見つかってはくれない。
『水色の水ねぇ。瓶詰めした香水でも隠してあるのかな。』
『どうかなぁ。そうなると、外から見た限り、中々どうして広さはありそうたし。中々骨が折れるかもしれないね。まぁピクニックみたいなものだと思えばいいか。』
ははっと、気楽そうな感じでロイが笑って言うが。笑い事ではない。当ても無くただひたすら足元を気にして歩き回るなんてぞっとする。気持ちの持ちようなのかもしれないが、ただの散歩とは違ってそれは、さぞさぞたっぷりの疲労感を俺の脚にくれてくれることになるだろう。
『うげぇ。嫌だよそんなの、疲れちゃう。』
『大丈夫だろ。噂と違って案外元気そうだしな。』
そんなこと無い。俺はひ弱なレディである。
『でしたら、とりあえず水場でも目指しましょうか。紙に書いてあった手がかりなんてそれくらいですし、多少強引でも目的地があったほうが気もまぎれるのではないでしょうか。』
確かにとりあえずはっきりと紙に書いてあったのは『水』という情報だけである。その前に水色のと付くことからおそらくは人の手が入ったものであり、天然物では無いだろうが、どの道闇雲に歩いても埒が明かないのだ。とにもかくにも、目的地がほしい。
『いいねベル君!じゃあ早速出発しよう。』
『でも何処に水辺があるかなんて僕らにはわからないし、結局当てずっぽうに歩くことになるんじゃ。』
ロイがなにやらつまらないことを言うが早いか、ベル君がなにやら目を瞑って何かに集中し始める。
『・・・こっちです。行きましょうか。』
確信を持って進むべき道を示す姿には、普段の不安そうな様子は欠片も見当たらなかった。




