始まりの不穏
『それでは移動を始めましょうか。皆さんそれぞれの班に分かれてください。』
フォルス先生の一声で、生徒たちはぞろぞろと動き始める。
『じゃ、私も行くわ。』
リザリーもそういうと自分の班のメンバーがいる方へと歩いて行く。
『昼ごはんは一緒に食べようねー!』
諦めの悪い俺の言葉に、彼女はヒラヒラ手を振って答える。そう言えば休日何があったのか聞き忘れてしまった。まぁ人のプライベートに深入りしすぎるのもどうかと思うので、これはこれで良かったのかもしれないが。しかしながら、こうして去っていく姿を眺めているとやはり名残惜しいものである。
『あーあ。やっぱり一緒の班が良かったなぁ。』
俺は一人自分の席で溜息をつく。仕方ない過ぎてしまったものだと、気持ちを入れ替えていると頭に軽い衝撃が走る。
『お前も少しは動こうとしろ。』
後ろを振り向くと自分の班のメンバーがすでに集まって控えていた。
『女の子の頭をブツとか、あんまり良くないと思う。』
『それはお前が一向に動こうとしねぇからだろうが。』
俺の頭を叩きやがった、カインに対して抗議の目を向ける。
『まぁまぁ、どんな理由であれ、女の子の頭を叩いてはいけないよ。』
我が班の班長が、やんわりと乱暴者のカインをたしなめる。
『叩いてねぇよ。こんなの手を置いただけだろうが。まぁ女子に負けるようなロイには違いがわからないかも、しれねぇがな。』
『そうだねロロちゃんにはわからないんだよ。』
『止めに入ったのになんでそこまで言われないと行けなのかな!』
もう既に移動を始めている他の班に習って、俺達もフォルス先生についていく。どのようにして会場まで向かうのか、特に何も言われてないが、近隣と言っても流石に少し歩かされるのだろうか。
先生の誘導の元、正門の前まで俺達はたどり着く。するとそこにはちょうど班の数だけの馬車が並べられてあった。
『はい。では班ごとそれぞれ乗り込んでください。』
『はい!先生!近隣だと伺っていたのですが、何故馬車が必要なのでしょうか。』
恐らくクラス一同共通で持っている疑問を代弁する。
『馬車で2時間もかからない程度、十分近隣ですね。はい、早く早く。』
成程どうも少し先生と此方の感覚にはずれがあるようだ。
『しかし、わざわざ馬車で移動なんてな、一体どこまで向かうんだか。』
『まぁ歩いて行ける所でも馬車で行くのが貴族だけどね。』
『違いねぇ。』
先生の指示に素直に従い、馬車に乗り込む。流石貴族ご用達の学園が所有している者ということもあり、内装は華やかである。最も4人も入れば少々手狭であるが、数時間の移動であればこの程度が丁度良いというものである。
移動の間は雑談に花を咲かせる。もっぱら話題はこれからの課外活動についてだ。
『そう言えばフォルス先生は探し物を取ってくるとしか、仰っていなかったね。何を探せというんだろう。』
『…危険がなければ良いんですけど。』
『は!むしろ獣とか魔獣とかわんさか出てくればって思うけどな。その方が面白れぇ。』
『まぁ、その辺はきっと会場についてからのお楽しみってことで、私はリザリーとご飯が食べれればそれで良いよ。』
『良いいのかよそれで…。』
馬車に付けられている窓から外の景色を眺める、もう王都の門を出て暫く立ったのだろうか、雑談に気を取られて意識していなかったが、王都の外壁もすっかり小さくなっていた。
『あ、あれじゃない?』
『お、どれどれ、ちょっと俺にも見せろ。』
俺の言葉にカインが身を乗り出して視界に割り込んでくる。実に邪魔である。
前方には木々が高々と並びたち、緑豊かな景色が広がっている。仮に上空から眺めることが出来たとしたら、さながら緑のじゅうたんといったところだろうか。
カインほど無遠慮ではないが、きほかの二人も窓から見える景色に目を移す。
『流石学園。林のスケールもケタ違いだね。こんな林、私見たことないもの。』
『いやこれは林というよりも。』
『どう見ても森だな。楽しくなってきた。』
どこからか、獣の鳴き声が聞こえた気がした。




