準備の時間は楽しいものです
かなり時間を開けちゃいました。はたしてまだ見ていてくれてる人はいらっしゃるのでしょうか…。
『いやぁ。満喫したねぇ。』
『満喫しちゃいましたねぇ。』
休日の夕暮れ、俺達は寮の自室へと戻ってきていた。始めこそ、何やら不穏な感じで始まったものの、終わって見れば大満足の結果である。
『お嬢様がまさかあんなにノリノリで食いついてくれるなんて、思っても見ませんでした。』
そんなことを言うセシィの手には大きな袋が下がっていて、無論その中には今回の成果物がたんまりと収まっている。
『く、今になって思うと何故あんなにはしゃいでしまったのか。』
休日の昼下がりについテンションが上がって、セシィの『これ魔法使いぽくないですか。』なんて甘言に乗せられたのが始まりだった。
『まぁ、以前進めたものよりは、レースなども少なめですし着やすいのではないでしょうか。』
『うーん。まぁ確かに。』
うん。確かに、女の子っぽい服ではあるものの、以前のよりは派手ではなく、何というかフリフリ、ではなくフワフワ、という訳でもなく、どことなく庶民的な感じである。セシィは見事に俺の羞恥心のぎりぎり大丈夫な線に収めることに成功していた。
『少々貴族としては庶民的といいいますか、慎み深いような気も致しますが。』
『いやいや、十分十分この位なら、何の抵抗もなく着られるよ。動きやすいし丈夫そうだし、課外学習にも着ていけそう。』
『本当ですか!では早速今一度、着てみましょうチェックです!!もう一回チェックしなければ!!。』
『…それはいや。』
少々不服そうなセシィは放ておいて、来週の課外学習に思いをふけらせる。リザリーと違う班になってしまったのは残念だが、一体どのような場所で行われるのだろうか。思えばこの体になってからというもの、録に体を動かす遊びなどはしたこともなく、楽しみな物は楽しみである。
近隣の林だとフォルス先生は言っていたが、所詮貴族のボンボンが多い学園のレクリエーションであるし、少し緑豊かな公園で行われるピクニックみたいなものだろうか。少し物足りないような気もするが、危険が少ないという意味では気楽な物である。
『それでは私は部屋で休ませてもらいます。結構歩いたから疲れちゃったし。』
『はい。では、ご飯の支度が出来たらお呼びいたします。』
こうして入学して初めての休日は、明ける週への期待に胸を膨らませつつ過ぎていった。
――――――
『おはよう!リザリー。今日も素敵だね!』
『あら今日は早いのね。』
何時もより少し早い教室で、既にやってきていたリザリーに声を掛ける。
『へぇ。貴女のことだからてっきり制服で来るものだと思っていたけど…。』
彼女は俺の方に目を向けると、いつもと違う洋服を着こんだ姿を物珍しそうにじろじろ眺めてくる。私服をこうも眺められると中々恥ずかしいものである。
『ちょっとあまり見ないで。…恥ずかしいから。』
『いいじゃない別に。似合ってるわよ。』
『…!』
リザリーからの思いもよらぬ賛辞に言葉が出なくて。一瞬うつむいてしまうが、彼女の私服姿を目に焼き付けようと改めて視線を前に向ける。
『あ、初めて会った時と同じだ。』
彼女とポートセル路地で初めて会った時の情景がフラッシュバックしてくる。最もほんの一瞬の出会いではあったが。
『そうだったかしら。まぁこの服は気に入っているし、そうであって不思議ではないけど…。貴女よく覚えているわね。』
そういう自分だって、ネックレスのこと覚えていてくれたくせに、とは思うが口には出さない。今まで生きてきた中でも印象深い出来事だったので俺ははっきりと覚えているが、もし彼女にとってもそうであったのだとしたら嬉しい。
リザリーと会話を弾ませていると少しずつ教室内は人の気配が増えていき賑わい始める。そしてそろそろ始業のベルがなろうかという頃合いにフォルス先生が教室の扉を開け中へと入ってくる。
さぁ楽しい課外学習の始まりである。




