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悪役に恋して  作者: 冷凍みかん
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格闘術?いえ剣術です。

『先生。格闘術というのは、木剣が必要な授業なのでしょうか。』


先生が背中から降ろした木剣の束を目にした生徒の一人が当然の疑問を投げかける。俺も見てみぬ振りをしようとしてみたが、やはり気になるものは仕方がない。便乗して質問をしてみることにする。


『フォルス先生。今から始まるのは格闘術ではなく、剣術の授業なのでしょうか。もしかして場所を間違えてしまいましたか。』


案内には、格闘術の他にも剣術など、それぞれ専門の武術を学ぶことのできる授業も記載されていたはずである。もし目の前に転がっている木剣を使った技術を学ぶのであれば、格闘術という授業の内容が、剣術の授業とだだ被りである。それとも素人には分からない違いが両者にはあるということだろうか。


『いえ、格闘術の授業であっていますよ。ただ何分、急な話でしたので、何も準備してなくても、私が教えられるものといったらこれくらいでして、剣術の講師の方には申し訳ありませんが内容が少し被ってしまうかもしれませんね。』



成程。急ごしらえの授業のため、フォルス先生にもカルキュラムを作り上げる時間がなかったということなのだろう。そんな中でも剣術であれば教えられるというのであれば、中々腕に覚えがあるのだろうか。余りそういう感じには見えないけれど。



『まぁと言っても、剣術の講師も私なのですけどね。2つ受講しておけば、良い評価が取りやすいかもしれませんよ。』


成程覚えておこう。




『では適当に2人1組になってください。』



フォルス先生がそういうと、受講生たちはいっせいに自分の相方を探し始める。是非リザリーと組みたいところだが、彼女の方に目をやるとまだ、カインと騒いでいる様子が見て取れる。正直余り近づきたくない。しかしリザリーと組まないとなると、彼女もまた別の人と組むことになるわけで、大丈夫だろうか。怪我なんかしないと良いのだけれど。


そんなことを考えながら、少しの間様子を眺めていると、2人に巻き込まれる形となっていたロイが、視線に気づいてコソコソとこちらの方へ歩いてくる。



『2人を放って逃げてくるなんてロロちゃん、ちょっとひどいんじゃないかな…。』


『いや、君にだけは言われたくないよ。』


喧嘩を止められずこちらへ逃げてきたロイを茶化すが、至極最もな返答を返されてしまった。しかしこれで相方に関してもう悩む必要もないだろう。



『でもちょうどいいや。一緒に組もう。』


『本当に受けるのかい。君は体が弱かったはずだろう。無理しない方が良いよ。』


『大丈夫、大丈夫。もうすっかり元気だから。』


そう言って回復した証にと軽く力こぶを作って見せる。回復した証といっても、そもそも病気だったことなどありはしないため、真っ赤な嘘である。




―――「なんでこんなやつと組まなきゃいけないのよ!!」―--

―――「まぁ他の奴らはもう組み終わってるみてぇだし、仕方ねぇだろ。」―-




どうやらリザリーはフォルス先生に注意されて、強制的にカインと組むことになったらしい。もう見なくても聞こえてくる声から手に取る様に憤慨している様子が分かる。クラスメイトだし、これを機に仲良くなってくれれば良いのだけれど。剣を交えて生まれる友情。学園っぽくて実に良いと思います。



『全員ペアになりましたね。では向き合ってそれぞれ構えてください。』



なんと、いきなり試合をするのだろうか。普通であれば、基本的な戦い方、剣の扱い方などを教えてくれるものだと思うのだけれど。もしかすると先生は見た目とは裏腹に脳筋なのではないかという心配が脳裏をよぎる。



『フォルス先生。何も聞かされずいきなり打ち合えとは、少々無理があるのではないでしょうか。』


俺以外もみんな同じことを思っていたのだろう。取り敢えず目の前で未だ剣を構えていないロイが先生に向かって発言する。



『申し訳ありません。説明不足でしたね。今組んでいただいたのは仮のペアです。それで取り敢えず打ち合ってもらい、その後実力に合わせて、こちらでまた組み分けをします。毎年事前に習っていた方もいれば、そうでない方様々ですので。』


ふむ。そういうことなら、まぁ納得ができる。最初の試合の内容を見て、授業の中でさらにコースを分けるということだろう。初心者コースから上級者コースまで。周りをよく見れば、ちらほら学年が上の生徒もいるようだし、ますます納得である。


ちなみに学園では学年ごとにネクタイの色が違っていてそれで判別できるそうだ。うむ、さっきリザリーが言っていたから間違いないだろう。お洒落で色を変えているのだと思っていたと言ったら笑われてしまった。そう言えば、この形のネクタイはなんていっただろうか、たしかクール、ループ、まぁどうだっていい話である。



『よし。うん。ロロちゃん!構えようか。』


『え、今ので納得したのかい。いきなり…、怪我とかさせちゃうかもしれないし。』



全く、心配ご無用である。こう見えて、いやまぁこう見える前の話だけれど、剣道なら少しばかり、昔に嗜んでいた物である。これで結構良い所まで行ったことだってあるのだからむしろ怪我する方を心配してもらいたい。と言ってももう15年振っていないため、全く体は覚えていないかもしれませんが。


心配そうな表情をしながら、ロイもしぶしぶといった感じで剣を構えて、開始の合図を待つ。


『では始め。』



先生の合図とともに踏み込んで、胴体に切りかかる。しかしまだこちらを心配しているのかロイからは攻撃してくる姿勢は微塵も見て取れず、取り敢えず胴を受けようと木剣を動かしている。


『もらい!』


木剣同士がぶつかり合う直前に剣を引き、狙いを面に変える。これは入っただろうとつい確信して声に出してしまう。あ、そう言えば面付けてない、ヤバい。



『はや!あぶな!!』



しかし、頭をかち割る勢いで放った一撃は見事に防がれてしまう。そしてそのまま鍔迫り合いに流れていく。…流れていったのだが意外と。


『くっ。強!意外と力強!』


『いや、そうでもないと思うけど…。えいっ。』



力比べで一杯一杯な様子のロロちゃんを無視して木剣を引くと、彼の体制が前方に崩れる。そして俺は思い切り首を目掛けて!


―――ポンポンッ―――



『ロロちゃん…。ちゃんとご飯食べないから…。』


『え、あれ。なんで?』




――――「リリィさん〇っと。」――--



ロロちゃんの間の抜けた声と、どこからかフォルス先生の紙にペンを走らせる音が聞こえた。


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